なんで黙ってるの?
社長・・・何かいってくださいよ・・・。
と、そのとき・・・
目の前にコーヒーカップが差し出された。
「新製品のチョコ、買ってきちゃった。震災応援キャンペーンとか書いてあったからつい・・・」
事務の女の子が、コーヒーカップとお菓子の箱を差し出しながらいたずらっぽく笑った。
「お!サンキュー!腹減ってたんだよねー」
パターンナー君がお菓子の箱をバリバリ開けた。
「君はいいもの持ってるんだけどな~。うちでそれを活かせないかといま模索中なんだよね。ボクだけでは君を活かしきれない。だから今日はみんなにも残ってもらって意見を聞いたんだ」
みんなにも残ってもらって・・・
あ・・・
あたしはついさっきまで考えてもいなかったことに気づく。
「みんなだって帰りたいのに・・・」
就業時間過ぎてからよってたかってケチをつけられ、なんてかわいそうなあたしと思ってた。
もしかして・・・
ふてくされてるのはあたしだけ?
ふたりだって・・・というかふたりこそ他人事だよね。
だけどいやな顔一つせず、このミーティングに付き合ってくれている。ぶっちゃけもう少しやさしく意見はいってほしいけど(笑)
「ありがとう、ごめんね・・・」
そんな言葉が自然に出ていた。
あたしのなかで何かが変わり始めていた。
「じゃ、どの辺をいじったらこの服よくなるかな?」
誰がどういったからとかじゃなくて、ここにいるみんながほれ込むような服を作りたい!それを今夜中に決定したい!
たった一着の服のデザインが決まったのは、終電間近になった時だった。
(つづく)
あゆみです
「夢をかなえる」
明日は22時にお届けしたいと思います。
最初から読みたい人はこちらを見てね。
夢をかなえる『プロローグ』
夢をかなえる『失業』
夢をかなえる『全滅』
夢をかなえる『希望』
夢をかなえる『満開』
夢をかなえる『決意』
夢をかなえる『暴力』
夢をかなえる『終電』
夢をかなえる『復興』
夢をかなえる『過去』
夢をかなえる『動揺』
夢をかなえる『沈黙』
読んでくれてありがとう、またね