その日、出社したあたしに、社長はちょっと驚いたようだった。
コレくらいで会社を休んだりしないの。
あたしには夢があるんだもの。
今日は朝から春キャベツ山盛りサラダに、キャベツのスープを食べてきた。
何かがちょっと変わりかけていた。
その日は一日かけて立体を組んだ。
社長はそんなあたしの様子を黙って見ていた。
今日一日の自信作。
帰り仕度をしてから、社長に見てもらおうと思った。
「社長、できました」
「よし、すぐ行く」
社長は心なしかほっとしてるように見えた。
社長が来るまでの時間、友だちにメールを打った。地震以降会ってない彼女のことをふと思い出してメールしてみたら一度飲もうよということになったのだ。
それから毎日、メールをしあってる。
彼女とはそれまで取り立てて仲良かったわけじゃないけど、震災という非常事態もあったのだろう、すっかり親友みたいになっている。
友だちにメールをする、ただそれだけのことでさえあたりまえじゃなくなった。
「この間いってた飲みのことだけど今日はダメかな?」
そう打って送信しようと思った時、社長が入ってきた。
事務の女の子と、パターンナーの男の子も一緒に。
「じゃ、これからやろうか?」
やるって・・・何を?
もしかして・・・
あたしは手にしていたケータイに目を走らせる。
21:00・・・
今からあたしのくんだ立体をみてみんなでミーティングするというのだ。
友だちへの打ちかけのメールが気になる。
でもま、今日は完ぺきにできたし、社長も昨日の今日だし、すぐオッケーだしてくれるよね。
今から?
ていうか何でみんなも来たの?
あたしは心の動揺を抑えつつ、今日一日の作品を自信たっぷり披露した。
そして余裕を見せるように、みんなにデザイン画をコピーして渡す・・。
と、そのとき。
バリッ!
すごい音がして、コピー機に向かっていたあたしはビクッとして振り向いた。
(つづく)
あゆみです
「夢をかなえる」
明日も22時にお届けしまっす!
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読んでくれてありがとう、またね