書いたり、書かなかったり

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Inscryptionのストーリー考察記事を毎週土曜日に更新していました

まだ考察ネタ募集しております→ https://odaibako.net/u/m0ch1m0ch1Ak1ta

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2022.8.29.考えあぐねもくじリンクを増設しました

2022.12.17.考察お題箱回答まとめリンクを増設しました



こんにちは。

考察記事もあといくつ書けるか……と思ったところでもくじ②の文字数が上限に達してしまったので、いくつかまとめてこちらに移動しました。

 

ネタバレありもくじなのでネタバレ注意!

 

 

 

考察記事もくじ

 


 


考察お題箱回答リンクまとめ↓













































 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

もくじ

 

 

#24 マグニフィカス仮説⑤ P03との攻防戦について

 

#25 マグニフィカス仮説⑥ Act2最終決戦のセリフと「最もつまらないヤツ」の検討

 

#26 マグニフィカス仮説⑦ 本当の野望が悪魔関連だったとしたら:OLD_DATA追究、悪魔崇拝

 

#27 マグニフィカス仮説⑧ 本当の野望に悪魔が関係ないとしたら:「Inscryption」の作り替え

 

#28 レシーとグリモラの死生観対立②、ペンチはこの死生観によるものではないか、カメラを渡した理由の考察

 

#29 ホロ商人まとめと、OLD_DATAに触れたキャラクターたちの考察

 

#30 Act2でマグニフィカスを消したのは骨の王ではないか、という仮説


#31 油絵とリング、グレイト・スモークはレシーがより戦いを楽しむための仕掛けだったという考察


#31.5 レベッカ(Rebecha)から見るInscryptionとThe Hexのつながりのまとめ


#32 悪魔の混沌志向:OLD_DATAとカーネフェルコードから考える


#33 悪魔の混沌志向:The Hexのサドから考える


#34 Inscryptionのゲームキャラクターはいつから自我を持つか


#34.5 コンソール版InscryptionでのARGのまとめと、そこで明らかになったロアの話



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

#24 マグニフィカス仮説⑤ P03との攻防戦について

 

 

 

 

 

 

#25 マグニフィカス仮説⑥ Act2最終決戦のセリフと「最もつまらないヤツ」の検討

 

 

 

 

 

 

 

#26 マグニフィカス仮説⑦ 本当の野望が悪魔関連だったとしたら:OLD_DATA追究、悪魔崇拝

 

 

 

 

 

 

 

#27 マグニフィカス仮説⑧ 本当の野望に悪魔が関係ないとしたら:「Inscryption」の作り替え

 

 

 

 

 

 

 

 

#28 レシーとグリモラの死生観対立②、ペンチはこの死生観によるものではないか、カメラを渡した理由の考察

 

 

 

 

 

 

 

#29 ホロ商人まとめと、OLD_DATAに触れたキャラクターたちの考察

 

 

 

 

 

 

#30 Act2でマグニフィカスを消したのは骨の王ではないか、という仮説

 『Inscryptionのストーリーを考察したい#30 仮説:邪魔者を消したのは誰か』どうもこんにちは。アーミン(冬毛のオコジョ)の毛皮についているあの黒いのってなんだろう? と思っていたんですが、あれしっぽ(の先端)なんですね。あの黒い部分の…リンクameblo.jp


 



#31 油絵とリング、グレイト・スモークはレシーがより戦いを楽しむための仕掛けだったという考察



 


#31.5 レベッカ(Rebecha)から見るInscryptionとThe Hexのつながりのまとめ





#32 悪魔の混沌志向:OLD_DATAとカーネフェルコードから考える






#33 悪魔の混沌志向:The Hexのサドから考える






#34 Inscryptionのゲームキャラクターはいつから自我を持つか







#34.5 コンソール版InscryptionでのARGのまとめと、そこで明らかになったロアの話





2023.7.7. 幽霊船表記を海賊船表記に修正しました


どうもこんにちは。Twitterの方では二次創作なりなんなりをしていましたが、ブログはひっさびさの更新になります。

 

 

 

Inscryptionネタバレを含みます。

また、The Hexのネタバレを含みます。致命的なほどではありませんが、ご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 考察お題箱・お題箱回答まとめ
 
 
 
 
 
 

 

 

考察記事もくじ

 

 

 

 

 

 

 

 

考えあぐねもくじ

 

 

 

 

 

 

表記・考察用語について

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




目次

 

▶︎コンソール版InscryptionでのARG
▶︎ARGの概要

▶︎明かされた物語

▶︎この物語からの示唆

 

 

 


 

 

 

コンソール版InscryptionでのARG

 

Kaycee’s MODで海賊船チャレンジをアンロックする謎解きが行われたように(#14.5参照)、コンソール版InscryptionにおいてもARGが開催されました。

 『Inscryptionのストーリーを考察したい#14.5 考察の材料が増えた話』どうもこんにちは。考察記事は一回スキップさせていただいていますが、考察材料が増えたのでそのことに関しての記事になります。Inscryptionのネタバレ注意!…リンクameblo.jp




そこで新しい物語(ロア)がつまびらかにされたため、前半はその紹介を、後半はそれを受けた考察をしようと思います。

 

 

なお、コンソールを所持していないため、内容とスクリーンショットは完全に後述の動画頼りになっています。

Switch版、PS版を持っている方は(英語ですが)内容を確認できるのでぜひやってみてくださいね。

 

 

 

ARGの概要

 

例によってFlemmonade氏の動画を参考にこの記事を執筆しています。

 

 

 

前半(シークレットハント開始のいきさつ〜最初の鍵の回収)

 

 

 

 

 

 

 

後半(残りの鍵の回収〜ARGのエンディング)

 

 

 

 

 

 

 

ざっくりした流れは以下のようになります。

 

  • アーカイビスト戦で見ることができる”seeming_important.png”から、3つの鍵からなる計16文字の暗号を解くことになった
  • 「16文字」から、Act1での死のカードの名前入力に入れる暗号だと判明(グリッチ演出、特定のNPCのセリフが暗号文に)。また、Daniel Mullins氏から「Switch版では限界がある」(=PS版で解くことになる)とアナウンス。
  • 3つの鍵は、
  • ①Act1,3で(ニューゲームカードの)フラッシュのそばにいる時のコントローラーの明滅でのモールス
  • ②Act1でレシーをカメラでカード化した後、部屋の特定の位置で起きるコントローラーのバイブレーションでのモールス
  • ③Act2のP03戦でメルターを倒した時にコントローラーから流れる音声 から解が得られた
  • 得られた解を死のカードに入力することでJAMES COBBの死のカードを入手できるようになり、特定のNPCが彼の物語を語るようになる(後述)
  • このJAMES COBBのカードと同じスタッツ(攻撃力0、体力3、印なし)のカードをAct3で作成することでスキャナーのモニターにログが表示される(後述)
  • これらのセリフや文章で強調された計11文字からYouTubeの動画IDを得、ARGはエンディングを迎える

 

 

と、いうことで、このARGにおいてはInscryptionのロアが新たに明かされました。

この中には、考えあぐねで取り上げた「メルターの正体」も含まれています。

 

 

 

 

それでは、新しく提示されたJames Cobbを巡る物語を紹介していきます。

 

 

 

明かされた物語

 

James Cobb(以下ジェームズ)について言及するのは以下のキャラクターたちです。

 

  • グーバート(Act1)
  • Amber(Act2、魔法の神殿で2番目に戦う弟子。ARG内で名前が明かされた)
  • 菌学者(Act2)
 
グーバートやAmberの語るところによると、ジェームズはかつて「マグニフィカスの弟子」のNPCで、Amberの先代のRuby Mage(ルビーの魔法使い)だったようです。
 
 
作中でもマグニフィカスの弟子たちはそれぞれ苦しい目に遭わされていますが、ジェームズもその例に漏れず、「体のあちこちを……変身させられた!変形させられたんだ!(PARTS OF HIS BODY… MORPHED! TRANSFORMED!)とグーバートは語ります。
 
が、ジェームズが"EVEN STRANGER"(さらにもっと妙だった)のは、それを楽しんでいたことです。
 
これをマグニフィカスは気に入らなかった。「それを許せなかった」のです。
THE MASTER COULDN’T ALLOW THAT…
 
  

 

()で囲われているところがYouTubeのIDに使われる文字です

 

 
 
その後ジェームズに起きた出来事を、Amberは「痛みを和らげるのに、もっと悲惨な目に遭うとしたらとしたらって考えるの… 私の前にいた魔法使いみたいにね。」として語ります。
(原文:To soothe the pain I imagine how things could be worse... like that Mage who came before me.)
 
 
マグニフィカスはジェームズを追いやるにあたり、”He even got The Blue Man involved.”、「青い男まで巻き込んだ」ようです。
青い男はAct3のタロット「塔」に出てくる「青い男」、つまりThe Hexに登場するアーヴィングのことです。
 
アーヴィングは「ゲームを生み出す施設」ゲームワークスで、プレイヤーキャラクターやNPCの管理や配属をする人物です。
 
Making NPC isnt(原文ママ。復号された他の文章でもアポストロフィは表示されていません) cheap and all that”(NPCを作成するのも容易くないとかなんとか)ということで、
新しいNPCを用意してもらう代わりに、マグニフィカスはジェームズを役立てられる誰かを探すという取引に。
 
 
そして、その誰かはP03でした。

 

  

 

The Hex、塔=ゲームワークスにて

 

 

 

菌学者の話は、Act3のモニターに表示されるログの話と一緒にするとわかりやすいです。

 

菌学者はジェームズについて、「我々が手術をした。(We operated on him.)と語ります。

あのスキャナーは生身には動作しない。だから我々の出番になった

25%ロボット化、54%ロボット化、75%……うむ、ここで彼はおかしくなりはじめた。

 (原文:The Scanner doesn't do flesh so we

worked on him./ 25% bot, 54% bot, 75%… Mm, Thats when he started to get crazy.)

 

 

“あのスキャナー”がP03のスキャナーのことであることはログで確定します。

 

Act3のモニターのログで、P03はこのように書いています。

75%までボットになった。なのにまだスキャンしない。

だからボクたちは奴の頭をメルターに入れたんだ。それから新しい頭をつけてやった。

(原文:Reached 75% bot. Still wasn’t scanning so we put his head in the Melter. Popped a new head on top.)

 

 

菌学者の手術により75%までロボット化したジェームズですが、スキャンはうまくいきませんでした。

「ボクたち」はP03と(おそらく)菌学者のことで、ジェームズの頭部を切断し、付け替えることで解決を図ったようです。

 

 

ロボット化し、頭まで付け替えられたジェームズはそれでも死んでいませんでした。

このことに驚いたらしくP03は「自分がラグってんのかと思ったよ」(I thought I was lagging)と表現しています。

ジェームズは「まだ記憶を持っており、魂を持つ」かのように振る舞いました。そこでP03は「彼の名前を尋ね」ます。

(原文:Still had his memories… his soul? Asked him his name and he shot a pattern into my factory floor…)

 

my factory floor”に打ち込まれた弾痕は、ARGのエンディングとなる動画で確認できます。

彼は"PLASMA JIMMY”と答えていました。

 

 

 

めちゃめちゃ正確無比な銃撃

 

 

 

まとめると、

 

  • Amberの先代の魔法使いジェームズは試練を楽しんでいたためマグニフィカスに疎まれた
  • マグニフィカスはアーヴィングに掛け合い、ジェームズを誰かに役立てさせれば新しいNPCを用意してもらえるという取引をする
  • 取引の結果ジェームズはP03のスキャナーでカード化されることになったが、生身ではスキャンできないため、菌学者がロボット化の手術をした
  • 75%までロボット化したところでジェームズは発狂。スキャンもうまくいかず、P03はジェームズの頭をメルターに入れ、代わりに銃を頭部に据える
  • その状態でも自我を維持していたジェームズは、P03に名前を訊かれて「プラズマ・ジミー」と答える
 
このような感じになります。

 

 

 

この物語からの示唆

 

この一連の話から複数の考察が得られます。

(そのうちいくつかはARGのメタ的性格や設定が後付けである可能性を考慮する必要がありますが……)

 

 

まず、メルターの正体について。

たすけて」「出して」と助けを求めていた人格は、メルターに入れられたジェームズの頭部に由来するものと思われます。

 

P03のログの書き方からするともともと「メルター」というNPCは存在していたようです。

P03への忠誠心が篤い方の人格は本来のメルターのものなのでしょう。

 

ジェームズはマグニフィカスの試練を楽しみ、菌学者の手術も乗り気だった(“But…he volunteered?”と菌学者の片割れが発言)ようですが、

発狂したことが影響したのか、単にこの扱いは望むものではなかったのか、最終的には助けを求めることになっているのが皮肉です。

 

 

image

 

 

 

次にスキャナーの話

Act3のP03のスキャナーには手形のようなものがついているのですが、これもおそらくジェームズのものだと考えられます。

 

そして最終的に、ロボット化したジェームズの体に銃の頭をくっつけたボット「プラズマ・ジミー」はスキャンされ、

それがAct2の技術のカード「プラズマ・ジミー」になったようです。

 

 

また、スキャナーを使ってカードを作ることができるという設定もハリボテではないようです。

 

 

ゲーム世界ではこうですが、現実世界ではどう見えていたのでしょうね。

ケイシーも、いつの間にかプラズマ・ジミーのカードができているのを見たかもしれませんし、

開発ソフトとしてのゲームワークスが追加したデータということになったのかも……。

 

 

 

The HexではRPGの悪役が実際にゲームをめちゃくちゃにする力を持っていますし、ゲーム世界には意外とゲーム設定が反映されるのかも……?

 

 

 

また、マグニフィカスやP03がOLD_DATAの影響を受ける前から自我を持つゲームキャラクターであったことも分かります。

 

レシーが「世界を掌握した」後ではこんなことはできないでしょうし、Act2時点で既にAmberがいるので、

ジェームズの一連の話はゲーム「Inscryption」開発中のできごとということになり、マグニフィカスたちがこの時点で自我を持っていたと分かります。

 

ではAmberはどうか? となるとここはちょっと難しいところ……。

「NPC」という単語を使っているので自分もNPC、ゲームキャラクターである自覚を持っていそうですが、メタ的な都合でグレーゾーンな感じです。

 

 

 

で、The Hexプレイヤーからすると興味深いのはアーヴィングの関与の仕方です。

 

 The Hexでのアーヴィングはキャラクターたちに対して横暴とさえ言えるふるまいをしており、

これについてプレイヤーキャラクターの一人シャンドレルは「たくさんのゲームキャラクターが彼の意志に 従っていたわ。あるいは、少なくとも、彼が強制した意志にね。(???操作時のセリフ)と述べています。

 

それに対して、今回の物語においては、アーヴィングは条件付きながらもマグニフィカスの要望に応じています。

一応ゲームそのものに関しては交渉の余地のある人物だったのかも……?

 

 

 

He even got The Blue Man involved.”という言い方からすると、アーヴィングに掛け合うのは相当なことのようではあります

 

 

 

 

 

 

 

ひとまず、物語上の考察としてはこんなところで。

まさに大興奮ものな新情報でした。

 

半年以上ぶりにブログ記事を書きましたが、The Hexをプレイして、Pony Islandをプレイして、シークレットハントの内容を知って、

……とDaniel Mullins世界を深く知った今になって振り返ると、特にデータまわりの話などは滑稽な気持ちにもなります。

Twitterで二次創作イラストなどを描くうちに、考察のためにニュートラルにしていたのが感情移入が深まったのもあるかもしれません。

 

それでもあの時書かずにはいられなかったInscryptionへの感動に感謝して。

いつか「あの時の自分へ送る記事」みたいなのを書きたいですが、その時はその時で。

 

 

 

今は手描きMADに取り組んでいるので、仕上がったらまたちょっと記事を書きたいなと思います。一年以内には完成させたい(気が長い)

どうもこんにちは。

今回でこのブログも一区切りになります。感慨深いような、そうでもないような。



今回はInscryptionネタバレを含みます。

また、The Hexのネタバレを含みます。致命的なほどではありませんが、ご注意ください。













 
 
 考察お題箱・お題箱回答まとめ
 
 
 
 
 
 

 

 

考察記事もくじ

 

 

 


 

 

 


考えあぐねもくじ

 

 

 

 

 

 

表記・考察用語について

 

 





 


 








 


 








 




 








 



 







 







 























































目次


▶︎Inscryptionにおける自我問題

▶︎The Hexとの対比

▶︎「そうだろ、ルーク?」







 

Inscryptionにおける自我問題

 

「『Inscryption』のキャラクターたちはいつから自我を持つのか」というのが、#2からずっっっっと宿題になっていました。

 

その後、「Inscryptionのキャラクターたちが自我を持つのはゲームワークスによって創られたからだ」というRedditの投稿を#8.5で紹介し、

The Hexをプレイして整理するまで保留にしてきた……というのがこれまでの経緯です。

 『Inscryptionのストーリーを考察したい#2 #1関連の謎』2022.4.17.まとめリンク追加2022.5.2. Daniel Mullins過去作のThe Hexに関して追記(ネタバレ注意)2022.5.5.全体的…リンクameblo.jp


 

 

で、私自身の結論としては

「本来ゲームキャラクターは自我を持つものだが、それがプレイヤーに分かる形で表出したのはOLD_DATAの力によるものである」

という形に落ち着いたので、それを整理して9ヶ月に亘ったInscryption考察に区切りをつけようと思います。

 
 

The Hexとの対比

 
The HexとInscryptionの話はThe Hex感想回後編で一通り整理しました。
 
 
The Hex未プレイの方にも説明すると、Act3のタロットで語られる「三角形」「塔」はゲーム製作ソフト「ゲームワークス」を指します。
そして「三角形の力を用い、ケイシーがINSCRYPTIONの創造を手伝った」というホロ商人のセリフから(タロット「女帝」)
ゲーム「Inscryption」はゲームワークスにより制作されたことが示唆されています。
 
 
 
で、タロット「塔」における「青い男」はThe Hexに登場するアーヴィングのことだと思われ、
The HexとInscryptionは共通の世界であることが暗示されています。
したがって、The Hexの世界設定をInscryptionにも敷衍して考えることにします。
 
 
すなわち、
  • ゲームキャラクターは自我を持っている
  • 一部のゲームキャラクターはメタ認識を持つ(自分がゲームキャラクターだと自覚している)
  • ゲームキャラクターの自由意志はふつう現実世界では確認できない(弊考察では「非対称である」と表現しています)
という点です。
 
  


ホロ商人はゲームワークスについて"know of"という表現を使っており、直接的には知らないらしいことが伺えます。

サブキャラクターである商人は自分がゲームキャラクターであることも、ゲームワークスの存在も知らなかったようです


 
#8.5で紹介したRedditの投稿では「ゲームワークス製なので」キャラクターが自我を持つと考察していましたが、
The Hexのブライスの扱いから、筆者は「ゲームワークス製でなくてもゲームキャラクターは自我を持つもの」と考えています。
 

ブライスをコンバット・アリーナに招くのにライオネルたちはかなり苦労したようです。
ここはThe Hex感想回前編で詳しく書いています。
 
感想回前編の情報に付け加えると、シックス・パイント・インで働いていることについて「ゲームワークスで働くよりマシだ。」と語りますが(ラザロ操作時、キッチンで聞けるセリフ)
ここでいう「ゲームワークス」に出身作である「グラニー・クッキング」が入っているとは考えにくい。

したがってブライスはゲームワークスに命を吹き込まれ」た存在ではなく、別の形で誕生したキャラクターだと思われます。
 
 
 
こうしたThe Hexの世界観に則れば、ビデオゲーム「Inscryption」のキャラクターは全員が自我を持つはずです。
そして、主要登場人物であるスクライブや、
プレイヤーキャラクターである挑戦者は、自分がゲームキャラクターであることも認識していたものと推測されます。
 
 
 
そして、もともと現実世界とInscryptionのビデオゲーム世界は非対称であったらしいことが開発ログ#1から伺えます。

レシーには、会話ファイルで見つからない内容のセリフがいくつか追加されていた。」と書いています。
一連の出来事を「寝落ちして後で夢だったと自分に言い聞かせないよう」書き残しているのは、夢としか思えない出来事だったからでしょう。

つまり、それまでは現実世界のケイシーからは、レシーは自由意志を持たない「ゲームキャラクター」としてしか見えていなかったことになります。

 
そしてこの、本来非対称である世界を対称に近づけたのがOLD_DATAではないか。
 
  


​#9で書いたマグニフィカスにとっての創造主(maker)は開発者ケイシーのことで、ケイシーが故人であるために自分が死ぬことをああ表現した……とも考えられます


 
ゲームキャラクターの自我が表出したのがOLD_DATAの意図か、それともOLD_DATAの力の影響で勝手に起きたことなのか
判断が難しいですが後者の方が自然かなと思います。
 
たびたび引用するタロット「悪魔」の「彼がスクライブの対立を煽った」について、
「悪魔」は自我を持つビデオゲーム世界のスクライブたちに、OLD_DATAの力を手に入れれば「世界を掌握」して自分の思うままにすることができると唆したのだと考えられます。
 
しかし、釣り人が「何かを川から釣りあげ」るまでは開発者ケイシーは「Inscryption」で異常なものを見てはいなかったようです。
さらには、ルークがプレイしている最中に菌学者や商人が自我を表出するようになったように見えます(#29参照)。
 
 

これは、釣り人が最初にOLD_DATA釣り上げた際、または初めてレシーの3D世界に遷移した際(#29参照)にOLD_DATAの力の影響を受け、

スクライブをはじめとしたキャラクターたちの自我が現実世界からも確認できるようになったのではないか。
 
それとは別に、#29で書いたように、次元遷移の際にOLD_DATAに接触したことで、
木彫り師や菌学者、商人が自我を表出させるようになったのではないか、と考えます。


 
  
 

「そうだろ、ルーク?」

 
自我の表出に関してはこんなところですが、キャラクターたちのふるまいについては他にも気になるところがあります。
 
 
まず、スクライブたちは自由意思を持って行動している姿をプレイヤーに見せてはいますが、
プレイヤーを認識していることはプレイヤー(ルーク)に見せないようにしている印象を受けます。
 
 
The Hexの世界設定として「ほとんどのプレイヤー キャラクターはそれ(自分がゲームキャラクターで、開発者とゲームワークスにより命を吹き込まれたこと)を知っている」というものがありますが(Waste World内、2回目のジェレミアとの会話でのセリフ)
NPCでもジャック、ジェイなどは自分がゲームキャラクターである自覚を持つ発言をしているキャラクターがいます(The Hex感想回後編を参照)
 

ただ、ゲームキャラクターだと自覚しているからといって、プレイヤーを認識しているのかは少し議論の余地があります。
プレイヤーへの語りかけは物語終盤で重要な意味を伴って行われますが、それ以外ではプレイヤーに干渉したり、対話したりするシーンはありません。

ただ、キャラクターたちは開発者であるライオネルのことは認識していますし、
ヴァラミールなんかは「フランチャイズが続編を出せないようにしてやるよ」(うろおぼえ)と開発サイドの発言までしているので、
開発のことまで認識しているということは、自分がゲームキャラクターだと分かっているキャラクターは、プレイヤーのことも認識できているのではないかと類推します。
 
  





スクライブたちは重要NPCということもあり、The Hexのことを考えると、元々自我と一緒にメタ認識を持っていたものと思われます。

MODでは「ケイシー…お前か?」とプレイヤーであるケイシー本人に語りかけるようなセリフもあり(「多産」ナーフ発動時のセリフ)
MODが本編より前の時系列だとすると、この時点でスクライブたちはプレイヤーを認識していたと考えられます。


また、P03の「大いなる超越」は「バカで、アホで、間抜けの、典型的なゲーマー」を利用してのものなので、
少なくともAct3以降※、P03もプレイヤーを認識していたことが分かります。
 
※マグニフィカスがグリモラ宛ての手紙に「この「大いなる超越」は、大混乱を巻き起こし、どんな結果を生むかわからないだろう。」と書いているので、Act2時点ですでにプレイヤーありきの「大いなる超越」のプロットを完成させていただろうと思われます。


 
 
ところが、本編内でスクライブたちがプレイヤー=ルークに対して第4の壁を超えて語り掛けてくるのは最終盤です。
 
Act3、製錬場の地下で3スクライブと対面した際にレシーの言う「挑戦者であるあなた(“YOU, CHALLENGER”)は、
プレイヤーキャラクターである「挑戦者」ではなく、挑戦者を通してプレイしている「ルーク」のことを指すものでしょう。
「大いなる超越」の説明をしはじめたP03は「そうだろ、ルーク?」とルークの名前を出し、ルークがしてしまったことを解説しはじめます。
 
それこそ演出のためではあるのですが、ここをなんとか理由づけられないか……と思ったものの少し難しかったので、これはこのまま謎として置いておきます。
最終回なんですけども……。
 






 
ひとつ言うとすると、P03がルークの名前を出し、(恐らくインカメラを使って)ルーク本人の映像を映し出したのは、P03の見栄なのではないかということです。

Act4で、グリモラは「名前は…"ルーク"よね?」と名前を確認しています。グリモラはルークの名前に馴染みがなかったことが伺えます。
だとすると、ルークの名前がバレたのはP03が「大いなる超越」の準備を進める中でのことだったと思われます。

アクセス権を許可したり、インターネットに接続したりしたから、お前の名前も知っているし、インカメラだって使える。
そんなことにも気づかなったバカアホマヌケプレイヤーに「大いなる超越」の成功を見せつけるP03なりの演出がこれだったのではないか、というのがロア上の考察です。
 
 
 
 
 
もう一つ気になることがあります。
「挑戦者」です。
 
ビデオゲーム「Inscryption」のプレイヤーキャラクターである「挑戦者」は、自我を持ち、自由意思を持ち、メタ認識を持つキャラクターのはずです。
しゃべることのできない、FPP(一人称視点)のプレイヤーキャラクターはThe Hexにも登場しており、
特にAct1,3の挑戦者はそれに似た存在だといえるでしょう。

 
しかし、挑戦者の自由意思はあまり確認できません。
プレイヤーが指示していない行動は、フィルムロールをカメラに入れるくらいしかしないのです。
スクライブのようにプレイヤーに語りかけたり、自ら行動したりと言う様子はありません。
挑戦者はあくまでもプレイヤーの駒なのです。
 






これについて、挑戦者については世界が非対称である=ビデオゲーム世界側から見ると挑戦者は意図を持って行動していると考えるのが順当ではあります。

しかし、
それでは挑戦者はプレイヤー(ルーク)をどこに連れて行こうとしていたのか?
挑戦者は「大いなる超越」が何なのか見抜いた上でルークに従っていたのか?
ビデオゲーム「Inscryption」の削除を止めようとは思わなかったのか?
こういった部分は謎のままです。

これは「Inscryption」という物語の深みとして、スクライブ側とも、プレイヤー側とも違う次元を考えるヒントにもなるかと思います。
これ以上は考察材料が足りないため控えますが、いろいろ解釈して楽しんでもらえたらと思います。
 
 
 
 
 
 
2022年4月3日からずっと続けてきたInscryption考察ブログも、この記事をもって一段落です。
9か月の間にPS版が出たりSwitch版が出たり、「Inscryption」の感動がよりたくさんの人に届くようになってうれしかったです。
 
1記事3,500字として、だいたい45記事くらい書いているので16万文字は書いてきた計算になります。
長い記事を書くたびに「こんなに長いと読む人が大変だろうに……」と思い、「ま、飛ばし読みしたい人は太字だけ読むだろうからいいだろう」と自分を励まして投稿を重ねてきました。
一度でもアクセスしてくださった方々に感謝です。


一応、考察お題箱ではまだまだネタを募集しております。
回答はTwitterになりますが、もし気になることがあればお気軽にどうぞ。

 
ここまでの考察に耐えてきた「Inscryption」と、それを包むDaniel Mullins世界に改めて敬意を表し、筆を擱きます。
また追加で考察したいことが出てきたり、あとはDaniel Mullins Games新作が出たりしたら復活するかもしれません。
ではまた。