考察記事もくじ
考えあぐねもくじ
表記・考察用語について
目次
▷very intentional creation
▷サドと悪魔とOLD_DATA
▷ウィークポイント
前回から引き続き、「なぜ悪魔はスクライブの対立を煽ったのか」について「混沌を楽しむため」とする考察になります。
前編では悪魔とカーネフェルコードの関わりから混沌志向について考えました。
後編ではThe Hexに登場するサドとOLD_DATA、Pony Islandのルシファーの共通点を考えます。
前回は実質OLD_DATA考察でしたが、今回は実質サド考察です(経緯はあとがきにて)。
very intentional creation
サドについてまずはまとめ。
キャラクター名としては「ダーククラウン・サド」(DARK CLOWN SADO)。
クラウン(道化師)のキャラクターで、The Hex内では計3回登場し、その度に登場人物とプレイヤーを翻弄します。
初登場は格闘ゲームのコンバット・アリーナ、その次がSLGのWaste Worldです。
コンバット・アリーナではこちらを見ていなかった顔グラが、Waste Worldではチラチラとこちらを見るようになります。
3回目はVicious Galaxy……に見せかけたゲームワークス襲撃時。
まっすぐアーティファクト奪取に向かっていた道を閉ざされたジェレミアの「代替案」(チャプター名より)で、
「留置所」で最高レベルの警備化にあった「特に危険な奴」(A particularly dangerous one)であるサドをラザロが解放することになります。
この時にはもう第4の壁のこちら側のプレイヤーをガン見。
で、物語の最終局面、The Hexが開かれた際には蜘蛛がその中に飛び込んでいるのですが、
サドがクモと関連が強いこと(Vicious Galaxyに登場した際のサドの下半身がクモの姿をしていてバトル時にもクモを配下として使う、Walk内でパンチではなくクモを出した後にクラッシュする)、
エンディングの後にライオネルの後ろに浮かび上がるサドの姿から、
The Hexを通してサドが現実世界に飛び出したことが示唆されています。
サドが悪魔の考察に絡んでくるのは、その創造に悪魔が関わっていることが暗示されているからです。
Walk内のコメンタリーで、ライオネルがサドの創造について語るシーンがあります。
壁に貼られたサドのスクラップには赤い五芒星が描かれていて、これはPony IslandにおけるSATANTECH社のロゴマークと共通のモチーフです。
これに関して言うと、タロット「エラー」でカタリナは”her creation was very intentional.”(彼女の創造は意図的なものに他ならない)と話します※。
Walkにおいて、サドのプログラミング体験をしてクラッシュした後のライオネルのコメンタリーによると、
カーラは「彼女はゲームワークスの限界まで挑戦することについてわけわからないことをいくつか話してきた」(She told me some mumbo-jumbo about pushing Gameworks to its limits.)ようです。
カーラ自身が悪魔信奉をしていたか、単に利用されたかは不明です。
ケイシーの開発ログ#12では『彼(カミンスキ)はナ・ティック・マス※」とか何かを言い続けていた。』とカミンスキがおかしな様子をしていた描写があり、
カーラやカミンスキがマインドコントロールを受けていたとも考えられます。
いずれにしても、エラーを引き起こすキャラクター「サド」は意図的に創られたようです。
カタリナは「彼女の能力は、一介のプレイ ヤーキャラクターの範疇を超えている」としており、
前述の勾留所に囚われている汗臭いドラゴンは”You don’t know what she is capable of!”(日本語版未確認。「お主はそやつがどんな能力を持っているのか知らぬのか!」くらいの感じか)と言って彼女の解放を非難しています。
この「力」も、悪魔により与えられたものだと考えられます。
※1
ナ・ティック・マスは「すぐに」(immediately)を意味するポーランド語”natychmiast”であるという説をYoutubeのコメントで見かけました。かなりしっくりくるので私は支持しています。
log.txtのカミンスキ氏のログはポーランド語で書かれていることからポーランド語は恐らくカミンスキの母語なので、単に焦って母語を口走っていただけ、という可能性も否定できません。
今回はマインドコントロール状態にあったと解釈します。
※2
her creationは日本語版では「彼女の産物」と、直前の文の「エラー」を指してエラーを起こすのが意図的と取っていますが、エラーは複数形なのに対しcreationは単数形であること、時制が過去であることから、サドの誕生そのものが意図的なものだったと述べていると解釈します。
サドは「喜々として混乱を生み出すこと以外の動機」をはっきりと持たず、
混乱を生み出すことにその力を使っているようです(タロット「エラー」)。
悪魔の意図により創られたサドが純粋に混沌を好むのだとすれば、それは悪魔本人が混沌を楽しむためにサドを創造させたからではないか。
と、ここだけでも成立はするのですが、
今回はそこからさらに踏み込んで、サドを通して悪魔の考察を試みてみます。
事実上のサド考察ですね。
サドが悪魔の意図により創られ、悪魔の力を引き継いだのだとしたら、
悪魔の意図とはまた別に、「性質そのもの」も引き継いでいるのではないか。
混沌志向を悪魔から引き継いだものと考えるために、サドと悪魔やOLD_DATAとの共通点を挙げてみます。
共通点① いろいろな声でしゃべること
サドはほぼ一文ごとに違う声で喋ります。
時には文の途中で声を変えることすらあり、サドというキャラクターの狂気性を際立たせています。
そして、ルシファーも他の声色で話すことができます。
詳しくはPony Islandプレイ回で書いていますが、レジストリ内のファイルを「改竄」(TAMPER)することでルシファーからコメントをもらえます。
その中で、実際にh0peles$0uLの声を使いながら、"SOMETIMES I LIKE TO TALK IN OTHER VOICES."(私は時々 他の声色で喋るのが好きなんだ)と話しているのです。
ここではh0peles$0uLの声ですが、VOICESと複数形であることから、複数の声を使い分けることができると推測されます。
②(あくまで)楽しんでもらいたがっている
サドはコンバット・アリーナにて、「私はファイターというより、パフォーマーです」と自己紹介します。
ゲームワークス襲撃時にも、「できるだけ楽しませてあげましょう。」ということでポケモンもどきを出したりPUBGもどきをプレイさせたりしています。
ルシファーも根っこは「ゲームを楽しんでもらいたい」です。
Devil Island内のクレジットでは「私のゲームを好きだと言ってもらえるなら、魂だって要らない」と書いていますし、
作中でも、基本的には想定通りの遊び方でゲームをプレイしてくれないことに対して怒っています(Act2、ポニーウィングをチートで入手した時のセリフ)。
サドがエラーを引き起こして顧みないのに対してルシファーは常識的(?)ですが……。
共通点③ バグを引き起こす
タロット「エラー」で、サドは「エラーを引き起こす」と言われています。
Walk内でも、パズルに「キモイ目」が現れた際、ライオネルは「彼女がサドを作って以来、ゲーム内にこの変で、迷惑なバグが現れるようになった」と話します。
また、The Hexの実績でもあるゲームクラッシュ時にはサドのモチーフが使われたり、
隠しエンディングの最後にはサドのジャンプスケアがあったりと、
サドがエラーを引き起こすことと関わっているような描写も散見されます。
悪魔……の話をする前にOLD_DATAの話を挟むと、同じく悪魔の産物であるOLD_DATAもエラーを起こしているようです※。
ルークのビデオは日が進むにつれてノイズが増え、ビデオを回していないはずなのに録画していることに気づいて止めるようなシーンもあります。
※ここについては異論があります。次回の考えあぐねに書く予定です。
で、Pony Islandがバグだらけのボロボロだったのはルシファー自身がバグを生み出してしまっていたからでは、
という突飛な仮説も提出します。
ローディングが途中で止まる、カーソルが取れるなどのバグはプログラミングがお粗末という以上に、
ルシファーという存在がバグを引き起こしてしまっているからである……という説です。
ウィークポイント
この辺りはほぼほぼ類推なので、ウィークポイントは多いです。
今回はとりあえず2つ。
まず、サドのモチーフはクラウン(道化師)であること。
今回はサドに悪魔の性質が反映されているという立場から、
サドが混乱を好むのは悪魔に由来しているのだろう、という形で考察しました。
一方、楽しいという理由で混乱を巻き起こすのは、悪魔ではなく道化師という側面に由来し、悪魔はまた別の動機を持つ可能性も十分に考えられます。
サドがどこまで「本来の設定」通りで、どこからが悪魔の影響を受けているのか、
あるいは悪魔の影響など受けてはいないのか、ここは議論の余地があるところです。
次に、悪魔=ルシファー=GameFuna社CEOだとすると、ルークがGameFuna社に連絡してはじめてディスクを回収しに来るのは不自然であるという点が挙げられます。
悪魔が直接「Inscryption」のキャラクターたちに影響を及ぼしているのだとしたらディスクがどこにあるのかくらい分かるだろうに、
なぜ連絡があるまでディスクを掘り起こしもしなかったのか。
GameFuna社はもともとディスクを回収する気はなくて、ルークが連絡してきたので回収することにした……
と考えるには、ルークの家にやってきた女性(amanda)の行動が過激なように感じられます。
amandaがGameFuna社の人間でボスに命じられて行動しているという前提が正しければ、
なんとか穏便に(?)ディスクを回収しようとして、どうにもならなかったのでルークを殺害しているように見えます。
さらに、「大いなる超越」の結果、そこまでした回収しようとしたディスクの中身が世界中にバラまかれてしまったこととも整合性がありません。
ディスクが悪魔の管理下にあるとすると、イマイチ一貫性がない。
ここは、悪魔(ルシファー)とOLD_DATAを分離するか、悪魔≒ルシファーとするか、どこかで前提をバラす必要があります。
一番考えやすいのは「スクライブたちの対立を煽ったのは悪魔本人ではなく、その性質を引き継いだOLD_DATAである」というものですが、
ホロ商人が「彼」で受けていることとは馴染まないので頭を抱える箇所です……。
そういうわけで、悪魔の意図についてはとてもふわっとしています。今回の考察もサドによりかかったものなのでかなり脆い。
こう考えたよ、というのがあったらぜひお題箱などで教えていただけると嬉しいです。
◇
そういうわけで実質サド考察でした。
実は最初、「サドに悪魔の性質が引き継がれている」しか考えずに一回記事を書き上げて、投稿前日のスクショ入れたり原文確認したりする作業の時に「あれ? サドも悪魔の意図で作られたんだとしたら目的一緒ってことで解決でいいんじゃないか?」って気づいたんですよね……。
内容がなんかごちゃっとしているのはそういうわけです。はい。
次回は悪魔関連考えあぐね詰め合わせになります。amandaの件とか。
できればThe Hex考えあぐねも兼ねたいですが、文字数的にどうなるかな……? また実質サド考察になるかも。
(追記:ワクチン接種で寝込むことが想定されるので、再来週の更新になるかもしれません)