Inscryptionのストーリーを考察したい#25 最もつまらないヤツ | 書いたり、書かなかったり

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Inscryptionのストーリー考察記事を毎週土曜日に更新していました

まだ考察ネタ募集しております→ https://odaibako.net/u/m0ch1m0ch1Ak1ta



2022.11.7. もくじリンクを追加、誤字を修正しました


どうもこんにちは。

 

「これを考察してみてほしい」というお題を集めてみようかなと思い、お題箱を作ってみました。

匿名ですのでお気軽にご投稿ください。

逐次Twitterでお返事→まとまったらブログ記事、の形にしようと考えています。

https://odaibako.net/u/m0ch1m0ch1Ak1ta

 

 

 

 

 

 

 

そういうわけで今日もInscryptionのストーリー考察を進めていこうと思います。

ネタバレ注意!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

考察記事もくじ

 

 


 

 『Inscryptionのストーリーを考察したい もくじ③ #24~』2022.8.29.考えあぐねもくじリンクを増設しました。こんにちは。考察記事もあといくつ書けるか……と思ったところでもくじ②の文字数が上限に達してしまった…リンクameblo.jp








 

 

 

表記について

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




目次

 

▶︎「力を味わっていたなら」?

▶︎最もつまらないヤツ

▶︎繰り返され続けるサイクルの裏側

 

 

 


 

 

 

引き続きマグニフィカス論Ⅵ……え? もうナンバリング6????

 

 

これまで、「マグニフィカスはゲームリセットのためにあらゆる策を講じてきた」という考察を展開してきました。

 

 

今回はAct2最終決戦でマグニフィカスを選んだ時のセリフと、オコジョ・P03のセリフを検討します。

論拠ゼリフの読み間違いにより当初の明快な結論がお陀仏になり、その結果場合分けが多く内容にややまとまりがない記事になってしまったことを先にお詫びしておきます。

 

 

 

「力を味わっていたなら」?

 

 

Act2の最終決戦でマグニフィカスを選択したときのセリフは以下の通り。

 

"I already know I have lost. I have foreseen it. 

My eye aches again.

Why must my pathetic Slime Mage always fail?

But would I be so meticulous in my preparedness… if I myself had tasted power?

Alas… I may never know."

 

参考:日本語版

 

なぜ、あの哀れなスライムの弟子がいつも失敗するのだ?

しかし、そこまで周到に準備する必要はあったのだろうか…私があの力を味わった後だとな。

ああ… それも分からずじまいかもしれないな。

 

ここ、原文のニュアンスが特殊であり、また日本語版は訳に一部ミスがあるため、2文解説をし、それから以下4点を検討します。

 

 

①always fail

②so  meticulous in my preparednes

③myself

④had

⑤tasted power

 

の4点です。

 

 

​今回はこんな感じのスクショが多いです

 

 

 

 

1. Why must my pathetic Slime Mage always fail?

 

 

日本語版では「なぜ私の哀れなスライム魔法使いはいつも失敗するのだ?」です。

 

ここで使われているmustは義務を指すものではなく、「そうならざるを得ない」「そうなる運命である」という意味合いだと思われます。

Every human must dieのmustです。

なぜスライムがいつも失敗する運命にあるのだ、と嘆いている。

 

スライムは何を失敗したのか? については後ほど。

 

 

 

2. But would I be so meticulous in my preparedness … if I myself had tasted power?

 

 

この文、日本語版は結構ミスがあります。日本語版を元に修正すると、

 

しかし、私はこんなにも周到に準備※しているだろうか…もし私自身が力を味わっていたとしたら?


 

 

この文は疑問文の形を取っていてややこしいのですが、「時勢のズレがある仮定法」になります。

順番を入れ替えるとちょっと分かりやすくなります。

 

If I myself had tasted power, would I be so meticulous in my preparedness?

 

if節はhad+過去分詞の形で、いわゆる仮定法過去完了、「過去にもしこうだったら?」というものです。

一方帰結文はwould+原型なので※、「過去にもしこうだったら、今(または将来)このようだろうか?」というような文になります。

 

 

 

さらにここ、"power"にtheがついていません。

日本語版は「あの力」と訳していますが、、theがついていないということは限定がされていないということになります。

 

 

 

文全体としては反語法に近い疑問文ではないかと思います。

 

「力を味わっていたならこんなにも周到に準備するだろうか?

おそらくしないだろう、しかし知ることはおそらくあるまい。」

 

というニュアンスの文であると解釈して話を進めます。

 

 

 

※meticulousは形容詞で「極めて注意深い、細部まで行き渡った」なので、直訳は「私は準備状態においてここまで注意深かっただろうか?」です。

「周到に」は自然でいいですね。

 

​超重要発言なだけにミスが惜しまれる

 

 

 

さて、ここで上述の①~⑤について検討していきます。

 

①always fail

 

always「いつも」なので、順当に考えれば過去にも失敗したのだということになります。

この失敗した内容について、

 

1.OLD_DATAの獲得(釣り人・ドレッジャーに敗北)

2.ゲームリセットプラン遂行の失敗(Act1、3での失敗)

 

の2つが考えられます。

 

 

2について補足します。

一文さかのぼると、"My eye aches again."と発言しています。

Act2マグニフィカス戦前の会話で「私の目は予知でうずいている。」と言っていることから、

予知には目のうずきが伴うと考えることができます※。

 

そして今回の予知によりスライムが次も失敗することを知ってしまい

mustを使ってスライムが失敗する運命にあると嘆いている。

その未来に失敗する内容を、Act1との共通性から「ゲームリセットプランの遂行」と考える、というものです。

 

 

※一方で、バトル後の会話では取り除かれたことを覚えているから目がうずいている(=目がうずいているのは抉り取られたせい)という旨の発言をしているため、目がうずく=予知とは言い切れない部分もあることに留意。

 

 

これまで続いてきた仮説は「マグニフィカスがOLD_DATAをレシーより先に獲得していた」というものなので、

立場として2.を取ります。

 

 

 

 

②so meticulous in my preparedness

 

 

preparednessは単に準備という行為を指すものではなく、prepare済みなこと、

すなわち備えている状態を言います(個々の準備はpreparation)

したがって、マグニフィカスが用心深いという状態そのものを指します

 

 

で、「周到に準備」しているものは何かというと、「他のスクライブが世界を掌握した場合のプラン」だと考えられます。

 

 これはP03がAct3で述べる「あらゆる『万が一』」に持っていた「プラン」であり、

Act1で「全てを元通りにする」プランとして実行されたもの、

すなわちゲームをリセットさせるためのプランです。

 

 

​この会話はレシーに聞かれてないのか……?

 

 

ここで問題になるのがsoです。

このsoを、

 

1.他のものを参照して「そんなにも

2.単に程度が甚だしいことを言って「こんなにも

 

どちらと取るか。

 

 

1.の場合、参照先が問題になります。

前の文"Why must my〜?"を参照すると考えると、

スライムが周到な準備の一環であるということになります。

 

 

 

 

③myself

 

わざわざI myselfと強調しているということは、「誰か」に対して私自身ということになります。

 

 

④had

 

更新が一回スキップになったのはこいつを見落としていたせいです。had。

hadがあることで仮定法過去完了となり、過去の出来事に対してifを考えていることになります。

 

 

 

⑤tasted power

 

前述の通り、このpowerにはtheが付いていないため、特定されていないことになります。

taste powerの慣用表現はないので(taste of powerで権力欲という言い方はありますが)「力を味わう」が何の比喩なのかを考える必要があります。

 

 

 

 

③④⑤を総合すると、

誰に対してマグニフィカス自身なのか、

過去の出来事とは何を指すか、

その過去の出来事で「力を味わう」とはどういうことなのか、

これらを検討することになります。

 

 

 

「力を味わう」から考えた場合、思い浮かぶのは「世界の掌握」と「力の掌握」です。

 

世界の掌握はレシーが行ったものを、

(世界の掌握を伴わない)力の掌握は本考察におけるマグニフィカスのOLD_DATA獲得のことを指すと考えられます。

 

 

 

したがって、

 

(1)「レシー」に対してマグニフィカス自身であり、「力を味わう」=レシーではなく自分が世界を掌握していたとしたら?

 

(2)「スライム」に対してマグニフィカス自身であり、「力を味わう」=でスライムではなく自分自身だけでOLD_DATAの力を全て使っていたとしたら?

 

 

この二つの可能性が考えられます。

 

 

 

 

(1)の場合レシーではなく自分が世界を掌握していたら、こんなにも周到な準備態勢を取っているだろうか?(いや、取らないかもしれない) という形になりますが、

ここで時制のズレが影響を及ぼします。

 

「周到な準備」は"今"の話なのに、"過去の"世界の掌握で仮定法を使うのはやや不自然な感じがしますが、ナシではありません。

なお、この場合スライムは関係ないため、soは程度を強調するものということになります。

 

 

したがって、マグニフィカス自身が世界を掌握した場合、

他のスクライブに対するゲームリセットプランほどには細かい対策を取らなかったことが考察されます。

 

 

 

 

(2)の場合、さらに場合分けが必要となります。

①力を味わう=マグニフィカス自身が世界の掌握を行う

②力を味わう=他のスクライブの支配に干渉するための力をさらに得る

 

①は実質的に(1)と考え方が同じなので割愛します。

 

 

②は、本仮説で「支配に干渉するためにスライムに力を分け与えた」とした部分にかかってきます。

 

スライムに力を与えるのではなく、自分自身がゲームリセットできるだけの力を求めていたら、周到な準備などそもそも必要ないのではないか?

 

この場合、taste powerのpowerにtheが付いていないことの説明は、

OLD_DATAの力で得られた「かもしれない」力を指し、具体性がないため、ということになります。

 

 

 

​地味に原文ではレアなslime発言

 

 

 

 

世界の掌握と捉えるか力の掌握と捉えるかで解釈がかなり変わってきますが、

未来を見る→スライムがリセットプラン遂行に失敗することを知る→こんなに準備しただろうか、の流れの自然さから、

マグニフィカスが自分自身でより力を得ていたらこんなに周到な準備は不要だったかもしれないと考えている、

……というのが考察上の結論になります。

 

 

 

この立場を取ることで改めて明確になるのは、

マグニフィカスがゲームのリセットに強くこだわっていることです。

そしてこれが、「最もつまらないヤツ」と言われる所以だと思われます。

 

 

 

マグニフィカスについて、P03はいくつか形容表現を使っています。

今回はその中でも、「つまらない」という観点から、

 

①killjoy

②tedious 

 

の2つを見ていきます。

 

 

 

①killjoy

 

Act1、カメムシ解放後の会話の後のオコジョのセリフになります。

 

日本語版では「ボクはあいつのこと大嫌いだけど。最もつまらないヤツだから。」で、

原文では"I HATE THE GUY BIGGEST KILLJOY EVER."となっています。

 

​原文ではpersonallyと言っていて、「個人的には」嫌いと断っています

 

 

kill-joyは文字通りjoy(楽しみ)をkill(殺す)、

ということで「興醒め」とか「水を差す」といったような意味合いになります。

 

ということは、P03にとって、マグニフィカスは興醒めな存在であるということです。

しかもBIGGESTでEVERということは、レシーやグリモラどころか、これまでP03が会った誰よりも飛び抜けて。

 

 

 

 

②tedious

 

こちらはAct2最終決戦でマグニフィカスを選んだ時のP03のセリフになります。

 

日本語版は「退屈なじいさんめ…。お前には何の貸し※もないね!」、

原文は”Tedious old guy… I don’t  owe you anything!”となっています。

 

 

​※oweなので貸しではなく「借りがない」かと……

Act1で助けられたことですね。

 

 

tediousは「つまらない」の中でも飽き飽きした、長ったらしくてうんざりした、というような意味合いです。

 

 

これらについて、上述の考察から考えると、ゲームをリセットすることばかり考えていることが興醒めで、

一つのディスクを越えてネットにInscryptionのコピーをばらまこうと考えているP03とは対極の存在だったのではないかと思います。

 

 

 

特にtediousの方で言うと、マグニフィカスは秩序を重んじる部分があるようです。

 

Act2の最初にマグニフィカスを選ぶと、Act2でのマグニフィカスとの対戦前の発言が一部追加になります。

挑戦者が自分に取って代わろうとしていることを嘆くセリフのあと、

It will never happen you see. Even if you defeat me.

But I am bound by certain rules.

(「そのようなことは起こらぬ。たとえ、万が一私を倒せてもな。」日本語版は2番目をスクショ失敗。「しかし私は一定のルールに縛られている。」だったかと思います)

と述べます。

 

 

​スクショ失敗の図

 

 

自分を倒せても魔法のスクライブに成り代われないと言うのは、

おそらくP03による世界の掌握を予見していたからでしょう。

 

それでもカードバトルをして、それが終わってから出ないと話をすることができないことを指して「一定のルールに縛られている」と述べていると考えられます。

 

こうしたルールへの束縛も、P03にはうんざりする部分だった可能性があります。

 

 

 

 

繰り返され続けるサイクルの裏側

 

しかし、ゲームをリセットさせてただ争いのサイクルを回し続けるというだけでは、Rebechaの「恐ろしすぎて言えない(too terrible to say)の説明には全く足りません。

何がそんなに恐ろしいのか。

 

 

この「マグニフィカスの野望」について書いてマグニフィカス論は締めになりますが、

先に断っておくと全て類推になります。

 

木彫り師ARG(#14.5参照)内での木彫り師の発言と、Rebechaの”terrible”という形容だけを取っ掛かりに考えていくことになりますが、

それだけにさまざまな考え方があるだろうと思います。

そういう意見なんかも、最初のお題箱に入れていただけるとうれしいです。

 

 

 

 

"if I myself had tasted power?"のhadを見落としていたダメージは実は非常に大きいです。

単なる仮定法過去では「マグニフィカスは自分が世界を掌握することに興味がなかった」という結論になっていたので、そこが崩れたことでめちゃくちゃ頭を抱えた2日間でした。

 

長いこと続いていたマグニフィカス論も次回で一応一段落になりますが、そういうわけで考察にダメージが入ったので、

一回レシーの話を挟んでからにするかもしれません。