Inscryptionでロア上考えあぐねたもの② 材料を溶かしているだけ | 書いたり、書かなかったり

書いたり、書かなかったり

Inscryptionのストーリー考察記事を毎週土曜日に更新していました

まだ考察ネタ募集しております→ https://odaibako.net/u/m0ch1m0ch1Ak1ta

 

2023.5.26. 公式から新しい情報が入ったため加筆する旨を追記

2023.6.17.上記について記事を書いたためリンクを追加



どうもこんにちは。

もう間もなくPS版Inscryptionが発売ですね!

私はPSを持っていないので体験できないのが大変はがゆい……。

 

PS版で考察に影響が出る要素が追加された場合、当該箇所を整理・確認した上で反映できればと思います。

 

 

 

で、今回は考えあぐね記事になります。

ネタバレ注意!

 

 

 






https://odaibako.net/u/m0ch1m0ch1Ak1ta





考察記事もくじ



 『Inscryptionのストーリーを考察したい 目次② #12~#23.5』2022.8.25.もくじ③へのリンクを追加、もくじ③に#24-#29を移動 もくじを更新しようとしたところ、「文字数が60000文字を超えている」という嘘み…リンクameblo.jp







表記について



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こぼれ話:

 

日本語版で「コゥフ」と訳されてる技術のカード、もともとは”49er”です。

49er(フォーティナイナー)は1848-9年のカリフォルニア・ゴールドラッシュで押し寄せた探鉱者・採掘者のこと。

「コゥフ」は「鉱夫」を他のロボットたちの名前に合わせてカタカナにしたのかな?


……技術のカードになんで鉱夫がいるんだ……?????




 


 

 

目次

 

▶︎ゲーム的には

▶︎演出からうかがえること

▶︎土台としてのそもそも論

▶︎M3atBotをどう捉えるか?

▶︎メルターを"こう"したのは誰か?

 



 

 

「Inscryptionでロア上考えあぐねたもの」の初回を飾るはずだったメルターの話です。
お題箱に投稿いただいたものの返信から、大幅に加筆・構成再編してお送りします。




※2023.6.17.追記

メルターの正体に関して、コンソール版InscryptionでのARGにおいて、公式の設定が示唆されました。

詳細はこちらの記事を参照のこと。



 

 

ゲーム的には

 

メルターはAct2、技術の神殿=P03の工場に登場する2人目の「従業員」「作業員(worker)です。
Act3の精錬場に対応する部屋で鉄を溶かす(melt)仕事をしています。

真顔のような目をして赤文字で一瞬「出して!」「たすけて」と助けを求める時と、笑顔にも見える表情で黒文字で話す時があります。


カードバトルに勝利すると「ダメダメダメダメ」と赤文字で叫ぶのを制止するように「アハハハハハ!やるのよ!P03様のために!」と言ってラインに飛び込みます。
飛び込んだ直後に溶かされてしまうのですが、その後は頭蓋のようなものが残ります

その後P03とのバトルでは、ラインを流れていったメルターをスキャンしたと思しき「メルター」のカードが場に出されます。
「氷どけ」の印を持ち、倒すとミ→トボット(M3atBot)が解放されます。





 

 

 

で。
メルターは私の考察上は演出として扱っています。

ストーリーに影響がない上に考察材料が少なすぎるからです(ブログ#23.5参照)。

 

 

 

 

 

何の演出かというと、「小屋編で(勝手に)仲間だと思っていたオコジョって実はヤバい奴なのでは?」とプレイヤーに思わせるためのものかなと思います。

負けたら殺される小屋で、最初から手元にいるしゃべるカードとして愛着が湧いていたところに、
送られてくるボットがクソ」という理由で従業員をラインに飛び込ませる。
さらにRebechaの話によると「ドレッジャーに残業させてる※」(Act2、橋修理後の桟橋での会話)。
少なくとも人間であるプレイヤーの感覚では非情と感じるわけです。

※残業ということは所定労働時間があってそれを超えて働く(work overtime)わけなので、ロボットだからといって24時間労働ではないらしいことがうかがえます。労働時間以外は何してるんでしょう……?



​機械の耐用的に時間制限がある可能性もあるといえばある


 

 

それでもメルターは何者か、どういう設定だったのか、考えてみましょうか。

 

 


 

演出からうかがえること

 

 

まず言えるのは、抑圧する側とされる側、少なくとも2以上の人格があるらしいということです。
(抑圧される側が2以上かもしれず、抑圧する側も2以上である可能性があります。今回の類推には関係しません)

私たち- 私は」(We are- I amなど)という言い換えから、抑圧サイドの人格の認識としては"複数の人格で「メルター」"で、

挑戦者の手前「私」単体と話していることを強調しているように見受けられます。



​私→アナタの言い換えは今回意識してません


 

次に、赤文字の発言について。
出して!」(LET ME OUT)からは意に反して閉じ込められていること、
たすけて」(HELP ME)からは今の状態が苦痛であることが分かります。

助ける=出してあげるだとは思いますが、出してあげることが実際に可能なのかは不明です。


ダメダメダメダメ」の発言から、ラインに飛び込む=死ぬ、と推測されます(以下「身投げ」という書き方もします)。
抑圧する側の人格はそれを躊躇いもなく実行できるというのもポイントでしょう。



P03戦のメルターのカードの「氷どけ」で解放されるミ→トボットも論点になります。


原文のM3atBotはLeet表記でMeatBot、つまり肉ロボットです。
中になにかいる、その「なにか」は人間(またはそれに類する生きもの)である可能性を示唆しています。
 



​すごくわかりづらいスクショ


 

また、これは推論の土台になる部分ですが、メルターはアンドロイド=「人格を持つロボット」と考えます。

P03はRebechaとマグニフィカスから「アンドロイド」と呼ばれています(Act3)。
直訳としては人造人間ですが、ここでは人格のあるロボットと取ります。

ロボットと人格の話をするのは、P03は「it」とも「he(his)」とも呼ばれている※からです。
本来性別のない(はずのロボットを「彼」と呼ぶことから、男性として設定された人格を持つことが分かります。


このP03のアンドロイドという設定を、3人の従業員にも広げて考えます。


※メルターに勝つと「P03がもっといいボットをスキャンしたい」という発言をしますが、原文は”P03 wishes for better bots for his scanner”とhisで受けています。
また、木彫り師ARG(#14.5参照)でも木彫り師はP03に対して2回heを使っています。

 

 

土台としてのそもそも論

 
そもそも、P03は何をしたかったのか?
場合分けを見ていく中でP03の考えが絡んでくるので、少し整理しておきます。


P03が挑戦者を従業員たちと戦わせる名目は、「導線管理リストを仕上げようとしてる」のに「送られてくるボットたちがクソすぎ」るからです。
そして、「もっとマシなの」を送らせること、
必要なら奴らをラインに放り込」むことを要請します。


そのほか、ボットはスキャンするのに使っているということがメルターに勝利した時のセリフで伺えます(英語版ではP03に2回話しかけた時のセリフでも確認可能)。

ボットをスキャンするということは、Act2のイントロムービーやP03の背後のスキャナー・プリンターから考えて、
技術のカードを作ることだと考えられます。

​結局、ゴミみたいなボットが送られてくる理由には触れられませんが……?



ここで、導線管理リストの仕上げそのものにボットのスキャンが必要なのかはなんとも言えません。

導線は原文でコンジットconduit、ざっくり言うとケーブルのことです。
技術のカードで「工場導線」「ヌルコンジット」などがありますがそれです。

筆者が全くの門外漢であることも手伝い、この導線管理と、ボットのスキャン=カード作成がいまいち結びつきません。
ので、導線管理リストについても、カード作成についても今回は取り上げません。



今回注目するのは、結果的にボットの質はあまりよくなっていないことです。
ここ、日本語版は大きな訳ミスになっています。原文は”The bots haven’t gotten much better”なので、「ボットはあまり改善していないな」という文です。

そりゃあ改善しないよね



もう一つ注目したいセリフがあります。


P03に敗北して再戦する際の台詞の一つに、”The old Dredger wouldn’t hop on the line? Do not worry. That is acceptable.”というものがあります。

(日本語版はスクショがなくうろおぼえ。「ドレッジャーのじいさんは飛び込まなかったのか? 心配ない。許容範囲だ」だったかと思います。飛び込まなかった、というより「飛び込もうとしなかった」という意思のニュアンスが強いです)

ドレッジャーがラインに飛び込もうとしなかったことを「許容範囲」としているということは、

ドレッジャーは本来ラインに飛び込むべきとP03が考えていたところをそうしなかったのだと考えられます。


つまり、P03は従業員全員がラインに飛び込むことを想定していたのではないか。



このセリフも、ズルに言及する日本語版は間違いで、「だが(ラインに)飛び込むこたぁできねえ。P03も分かってくれるハズさ。」くらいの感じです



その上で「ボットの質はあまり良くなっていない」と発言したと考えると、

P03は従業員がラインに飛び込むことでボットの質が良くなるか試していた可能性もありますし、
単に命令に従って従業員がラインに飛び込むか試していただけの可能性もあります。


ただ、P03が「ゴミみたいなボットを送ってくる理由」を尋ねてこないことを考えると、後者の方がしっくりきます。

今回は後者の立場で考えます。
 

 

 

M3atBotをどう捉えるか?

 

さて。
メルターの正体を考える上で一番キモになるのはミ→トボットを生命体の隠喩と解釈するかどうかです。


メルターからミ→トボットが出てくることを考えると、「出して」「たすけて」と発言していたのはミ→トボットに隠喩される「何か」でしょう。


ここで、
1.単に別の人格があるということの隠喩で、生命体が元になっているわけではない
2.人間などの生命体が元になっている

という2通りを考えます。



1.生命体が元になっているわけではない

これはお題箱に投稿いただいたものがベースになっています。
「メルターは人格のあるロボットである」とすると、複数のロボット向けの人格(AIとも言える)が一つのロボットに植え付けられていることになります。


Inscryptionのストーリーに絡めて考えて、私からは「P03にとって不都合な自我が芽生えたアンドロイドに、従順な人格を植え付けたのではないか」
という説を提示します。


メルターの前に戦うインスペクターはP03に従順で、「P03に忠誠をつくせてうれしかったわ。」と述べます。


一方、「P03からマジモンの文句が来てもおかしくないわ。」「でもP03が直接出した命令に反するのは…」と、P03を恐れるような発言もありますし(敗北・再戦時セリフ)、

身投げの前の発言は、原文では”I… I can send at least one new bot”とためらいと取れる部分があります。
インスペクターも100%従順ではないのです。


#1で「マジモンの悪魔」と書いたのはこのセリフに影響されたものです




これらから、最初はインスペクターのように従順だった人格が次第にP03に不都合なものになったため、
自分に従順な人格をその上から植え付けたのではないか

と考えるのがこの説です。



この従順人格説では、ドレッジャーが飛び込まなかったことを「許容範囲」とすることについて、

P03の命令に背いてはいるものの理由が「(P03から)特別な指示を受けている」からで、不都合というほどではないことを指すと解釈できます。


ただし、この仮説は「不都合な人格があるなら、それを完全に消去して代わりの人格を入れればよいのでは」という弱点があります。
とはいえ、身投げが処罰になると考えれば、そこまで不自然ではないかな? と思います。

 

 

 

 

2.生物(人間)をロボット化した説

ミ→トボット(肉ロボット)が解放されることから中身が生物(人間)と考える説です。

 

人格だけロボットに移植されたか、実はロボットのガワの中身は生物のままなのか……。
いずれにしても1.と同じように、生物の人格の上に別の人格を被せていることになります。



​溶かされたメルター。割とゾッとしました



グラフィックの目の周りに血管のようなものが見えて有機的なこと、溶かされた後に頭蓋骨のようなものが残ることもあり、

こちらの立場の方が自然で一般的かと思います。


メタ的に見ても「人間を無理やりロボット化した」の方が人間の倫理に照らしてヤバそうですしね。

 


しかし、なぜわざわざそんな設定にしたのか/P03がそんなことをしたのか、というロア上の動機面では弱さがあります。

 

 

……そう、この件、まだ考えることがあります。

 

 

メルターを"こう"したのは誰か?

 

メルターのこの設定は「元々のゲーム通り」なのか?

それともOLD_DATAの影響を受けた後、P03が改変したものなのか?

 

 

#23.5で書いた立場と対立しますが、不シギがAct2に出てこないだけで元々のゲームでP03の別人格として登場していたと考えるなら(#5参照)、

改変の可能性は本来視野に入れるべきものなのです。

『Inscryptionのストーリーを考察したい#5 好奇心のかたまりの』2022.5.22.まとめリンクを追加しました2022.7.19.ウィークポイントを追加しました2022.8.9. 上述のウィークポイントへの対応をしました …リンクameblo.jp

 

 

 

 

改変可能性について疑い始めるとキリがないので、メルターの設定と、従業員たちの身投げの設定だけを考えます。

 

かつ、本当はそれぞれについてYes/Noで2*2=4通り考えられるのですが、

簡略化して「どちらも元々のゲームの設定どおり」「どちらもP03の改変によるもの」の2通りだけ考えます。




メルターや身投げの設定が「元々のゲーム通り」だったとすると、P03はもともと人間倫理から外れた存在として設定されていたことになります。


もっと言えば、元々のゲームではP03と不シギの人格が同居していたとすると、

「メルターを"こう"したのは好奇心旺盛な不シギ」という可能性も視野に入れることになります。

 



​だとすると、「P03が彼女(不シギ)を押し込めているのは残念だ」というこのセリフにも影響があります



P03が改変したものとすると、わざわざそうするだけの理由が必要になります。


身投げの方は、前節1.の理屈で「自分の命令を聞くかのテスト」というのが一つ考えられます。
が、メルターをわざわざ多重人格のような設定にしたことの方は、説明するのが難しいです。

 

私が考えつくところでは「世界の掌握後に人格マトリクスを利用するための実験だった」とすると比較的道理にかなうのですが、

合理的説明とは言い難いです。



「何のためなのか」がもっと特定できれば逆算でメルターの正体ももう少し考えられるのですが、

そういうわけでメルターについての推論は尻切れとんぼながらここまでになります。


参考になりましたら幸いです……!

 


 

 

 

 

 

 

実はブログを書き始める前、ネタを整理している段階では、「不シギはP03の別人格説」の対抗として「メルターの中の人=不シギ説」を考えていました。
が、それだと不シギがドレッジャーを差し置いてウーバーボットを担当する理由がうまく説明できないのでボツになりました。

 

 

「考察記事と考えあぐねが交代くらいで更新できるといいな」と書いていましたが、考察ネタのストックがもう2,3しかないことに気づきました……。

しかもかろうじて残るネタはまだプレイしきれていないThe Hexを土台にするので、来週・再来週更新分は考えあぐね記事になると思います。