先の日曜日、11月10日、東京都東京都美術館で始まった第50回記念現代童画展(会期11月10日(日)~16日(土))に行ってきました。

 

現代童画会は、昭和50年12月、新しいナイーブアート(童画)の創造と発展を目指し、日本で唯一の童画の公募団体として創立され、翌年2月、第1回展を東京都美術館で開催されました。

その後、半世紀の時を経て、今回は、第50回記念展とのことであり、特別展示として、過去の現代童画会大賞の作品の一部の展示がされています。

 

私が、最初に現代童画展を拝見したのは第43回展からで、その歴史は浅いですが、それ以降、毎年、現代童画展に足を運び、多くの作家の方々の作品を拝見するとともに、ブログでその感想・紹介をすることを通して、自分なりに理解を深め、作家の方々の交流を深めるなどして、大変楽しませていただいています。

 

今回も、会場で馴染みの作家の方々を中心に作品を楽しませていただきましたので、その紹介・感想等を書かせていただきたいと思います。

 

まずは、第1室中央に展示されている小澤会長の作品です。

左「スペイン椅子のゴーティエ」、中「赤頭巾」、右「西洋人形(赤い実)」

小澤清人 常任委員 各50M 油彩 埼玉県

中央の作品です。

小澤会長の定番、西洋ドールの作品です。

現代童画会のHPを拝見すると、「現代童画会の歩み」(以下「歩み」といいます。)が掲載されており、その記述によると、小澤会長は昭和53年(1978)2月開催の第3回展において新人賞を受賞されています。

 

そして、第8回展(昭和58年(1983))において、大賞受賞をされており、今回その作品が特別展示されています。

第8回展「シルク・ド・シャ」小澤清人 120P 油彩

 

昨年4月、小澤会長の個展に伺ったとき、サービス精神旺盛の小澤会長が、その場で、購入した画集に猫の絵をサラサラっと描いていただきましたが、その絵が、この大賞受賞の猫にそっくりではないかと思い、その画集を見直してました。

 

 

ご覧の通り、描いていただいた猫が、大賞の猫とそっくりであることがわかり、感動しています。

 

次は、糸井副会長の作品です。

右「戦う対岸の地」、左「争い(あらそい)」糸井邦夫 常任委員 各120Fアクリル 埼玉県

右「戦う対岸の地」

左「争い(あらそい)」

先の「歩み」によると、第1回現代童画展において、会友推挙者の中に糸井副会長が含まれており、現代童画会を小澤会長とともに歩んでこられたことがわかります。

今回の、二つの作品から、猫と鳥との争いを糸井副会長らしい表現で描いた作品に思いますが、作品のテーマから、現代の世界の紛争に憂えた作品ではないかと考えます。

 

糸井先生の個展には、度々、伺っていますが、先生の作品には猫が多く登場します。

その中で、次の小品が私の手元にあり、私の好きな作品の一つです。

「運命」 2018年

 

 

 

特別展示の糸井副会長の大賞受賞作です。

第9回展「愛の日」糸井邦夫 150F アクリル

糸井副会長の大胆な構図を彷彿させるダイナミックで、情感あふれる作品です。

 

有賀忍先生の作品です。

「カドイデ ノ アーチ」有賀忍 常任委員 91×145 アクリル、板絵 東京都

ここでいう「カドイデ」は、意味するところは「出立(しゅったつ)」であり、子どもが家を出て学校にいったり、遊びに出かける。子どもたちは、未来に向けてわくわくして、日々のカドイデをする。それを見守る父さん、母さん。有賀先生は、それを滋養のエールとおっしゃています。そういう気持ちで子どもを育てれば、きっと幸福感あふれる子供の笑顔を見られる。(有賀先生のフェイスブックを私なりに意訳しました。)

有賀先生らしい、夫婦、親子愛に溢れた作品です。

 

私は、有賀先生がプロデュースしたNHKの「こんなこいるかな」のファンで、現代童画会展や個展でお目にかかったことをきっかけにしていて、ささやかな交流をさせていただいています。

 

今回、会場の入口で有賀先生にお目にかかり、色々お話を伺うことができ、「こんなこいるかな」のピンバッジをいただきました!

 

また、先の「歩み」によると、有賀先生は第2回展で奨励賞を受賞され、第3回展においては大賞を受賞されています。

特別展示の大賞受賞作です。

第3回展現代童画大賞受賞 有賀忍 右「花の野」50変 板絵、左「星の海」同

 

有賀先生によると、現代童画会創設間もない当時は、熱い気持ちがあり、この作品にも当時の思いが込められていたといった趣旨のお話を伺いました。

 

多田すみえさんの作品です。

「リンとルチナ」多田すみえ 常任委員 80M ミクストメディア

現代童画展において、多田すみえさんの猫の作品は、大変ユーモラスで愛らしく、独特の世界観があるので、いつもその作品を拝見することを楽しみにしています。

また、昨年4月、横浜関内の画廊楽Ⅰでの個展で、初めてお目にかかり、現代童画会の事務局長としていろいろとご苦労されているお話を伺いました。

 

また、特別展示では第19回展に大賞を受賞されています。

第19回展現代童画大賞受賞 多田すみえ 右「午後の沐浴」100S油彩、左「黒猫」同

 

中村景児さんの作品です。

「秘石」中村景児 常任委員 80F アクリルエアーブラシ 神奈川県

少年の頃の、夢と冒険心をくすぐる中村景児さんの作品です。

中村景児さんの個展は、私が度々伺った横浜中華街の画廊art Truth拝見してきましたが、多くの絵本を出版されており、「ピーマンマン」や「もいもい」というユニークなキャラを生み出してきました。

 

その一つ、私の手元にある、ピンクの怪獣「もいもい」の小品です。

「もいもいの秋」 水彩 10.5×10.5㎝

 

 

中村景児さんは、先の「歩み」によると、第4回展(昭和54年(1979))新人賞を受賞されており、また、第28回展において、大賞を受賞されています。

特別展示の作品です。

第28回現代童画大賞受賞 中村景児 「宙(そら)」アクリル

 

次は、鳥垣英子さんの作品です。

「青い夜」鳥垣英子 常任委員 油彩 大阪府

青い世界。後景にはビルを配置し、手前には身近な草花が繊細に描かれています。

中央には、鳥垣さんが最近よく描かれている花鳥が2羽飛んでいます。

一見、抽象絵画にみえるようですが、草花はかなり写実的に描かれており、その青い色彩を基調とした独特の世界が描かれています。

 

こうした鳥垣さんの世界観や色彩の魅力、そして最近は私が好きな鳥や花がテーマになっていることが多いので、これまで、個展やグループ展で鳥垣さんの作品を拝見してきました。

直近では、今年の4月に個展でお目にかかりました。

その時に入手した、花鳥の小品です。

「花鳥1」岩絵の具・銀箔・水干 15×10㎝

 

 

また、以前、鳥垣さんが飼われていたイグアナを描いた作品で、現代童画展大賞を受賞されたというお話を伺っており、是非、実物を拝見したいと思っていたところ、今回の特別展示で出会うことができ、感激でした。

第29回展現代童画大賞受賞「ゆるり」鳥垣英子 150F 油彩 

 

次は、佐藤美絵さんの作品です。

「天地𢌞遊」佐藤美絵 委員 130×182 キリエ+ 神奈川県

佐藤美絵さんの作品を初めて拝見したのは、初めて行った第42回現代童画展でした。

そこで、佐藤美絵さんは「行方・遭遇」という作品で、文部科学大臣賞を受賞されていました。

 

その後、現代童画展や選抜展、それに個展等で作品を拝見し、また、ご本人にも何度もお目にかかり、親しくさせていただいています。

直近では、今年4月の個展でお目にかかり、次の小品を入手しました。

【姫ノ咲イタ】チューリップのハナが L/127×89mm和紙 AG アクリル板

 

 

今回の特別展示において、第46回の大賞が展示されていましたが、この作品はリアルタイムで拝見し、感動した作品です。

第46回現代童画大賞受賞「足柄山御殿」佐藤美絵 140.3×301 キリエ

 

次は丁子紅子さんの作品です。

「喜怒哀楽。」丁子紅子 145.5×388 委員 日本画 埼玉県

丁子紅子さんの作品は、これまで数多く拝見してきましたが、会場の入口近くに展示されたこの作品は、初めて拝見する4連の作品です。それぞれの作品を一枚一枚写真を撮りました。左から

「喜怒哀楽。」という作品名で、4つの絵がありますので、一つ一つが喜・怒・哀・楽に呼応しているのかと思いながら作品を紐解いていくと、顔の表情からは、なかなか読み取れませんが、顔の向く方向、手の表情、体の姿勢から左から喜怒哀楽の順で表現していることを漠然と感じました。(後で、丁子さんのフェイスブックを拝見し、それで正解であることがわかりました。)

また、別の見方をすれば、この作品は、左から右へにかけての流れるような動きが魅力で、その全体で、絶えず流転する人の感情である喜怒哀楽を表現しようとしているのではないかとも感じました。

 

丁子紅子さんは、私のブログに最も多く登場している作家さんの一人で、いつもその精力的で気配りの素晴らしさにも感心しています。

直近では、今年6月に個展に伺いました。

 

また、今回の特別展示で、次の大賞受賞作が展示されています。

第45回展「さよならで見た夢の続きを」丁子紅子 100F 日本画

 

この作品も、私はリアルタイムで拝見しており、当時、受賞作の前で、お客様一人一人にご挨拶されている丁子さんの写真を撮らせていただきました。

 

さて、ここで今年の現代童画大賞の受賞作を掲載しておきます。

左「薫り立つ cerulean field」、右「薫り立つ tiny flowers」川村美佳子 委員 150×91水彩 静岡県 現代童画大賞

 

次は、戸井田しづこさんの作品です。

「最果ての虹」戸井田しづこ 50F 委員 アルキド 埼玉県

黒い闇の中に、仄かに見える白い焔のように浮かび上がる女性の姿。

その姿は、妖艶でもあり、寂しげでもあり、優しくもあり、心を癒してくれます。

ここ数年、現代童画展において、戸井田さんの作品は、丁子紅子さんと並んで美人画でのツートップであり、その魅力は、少なくとも私の中では揺るぎません。

 

これまで、現代童画会における展示や個展・グループ展に足繁く通い、戸井田さんの作品を拝見してきましたが、最後にお目にかかったのはいつだったか、暫くお目にかかっていないのが残念です。

 

田中アユミさんの作品です。

「narcissus」田中アユミ 50F 委員 油彩 東京都

大正、昭和にかけての浪漫を感じさせる少女画が魅力の田中アユミさんの作品です。

最近は、現代童画会の第1室展示が定着してきており、丁子さん、戸井田さんとは異なった独自の美人画であり、拝見するのが楽しみな作家さんです。

 

コムロレイコさんの作品

「虹の鳥、顕現す」コムロレイコ 100P 会員 ミクストメディア 千葉県

くっきりとした色遣いで、ユニークな動物を描くコムロレイコさんの作品です。

コムロレイコさんの作品は、私が絵画鑑賞にはまった当初から、現代童画会の展示や横浜中華街の画廊art Truthでのグループ展などで拝見する機会が多く、お目にかかりお話を伺う機会も良くあったように思います。

その後、作品はずっと注目してきましたが、コロナ禍もあり、しばらくご本人におめにかかることがなかったのですが、この日、会場で久しぶりにお目にかかり、楽しいお話を伺うことができました。

 

天野利恵さんの作品

「月昇る星舞う天の川」天野利恵 100F委員 アクリル 群馬

大きな月が出、星が散りばめられた青い宇宙を背景に、麗人と2匹の精悍な犬が登場する作品。

高尚で気品ある世界における物語を想像させる作品です。

天野利恵さんの作品に登場する犬や狼は、精悍で迫力がありますが、フェイスブック等で拝見する天野さんの愛犬は甘えん坊で、可愛らしく、いつもそのギャップを楽しませていただいています。

 

右「冴ゆる月」、左「青青(せいせい)」50S、中「風道」50M たかむらゆき 会員 アクリル 栃木県 会員作家賞

最近、グループ展でよくたかむらゆきさんの小さ目の可愛らしい作品を拝見することが多いのですが、こちらの作品は、そのテイストを失わず、大きく壮大な作品で、正直、驚いた作品でした。

会員作家賞を受賞されているのも、審査委員の方々にそうした印象があったのかもしれないと勝手に思っています。

 

他にも次の会員の方々の作品が印象に残りました。

「書物の中へ2024」石澤晶子 100P委員 油彩 東京都

 

「Cavalier family」松本友加里 50F 会員 油彩 神奈川県

 

左から 「昼下がりⅠ~Ⅲ」中村あつこ 50F会員 アクリル 栃木県 綾宏賞

 

「川崎の吉の湯に通うパグ」荒井克子 85.0×59.4 委員 日本画 東京都

 

左「ArchangelousⅠ」右「ArchangelousⅡ」鳥飼規世 各80P 会員 油彩 東京都

 

右「紅葉~夢のバク」、左「柊~星のトナカイ~」みのしまかおる 145.5×178.8 会員 アクリル クレヨン 色鉛筆 神奈川県

 

「記憶が眠る街」土屋恭子 100F 会員 油彩 千葉県

 

「やくそく」 和田聖子 50F 会員 油彩 岐阜県

 

続けて、会友の方々の作品です。

「深窓の佳人」さえサエコ 40F 会友 油彩 神奈川県 会員推挙

天使の羽根を持った上品で、思慮深さを感じる白猫さん。

空中に浮かぶ窓により、神秘的な空間を醸し出しています。

 

さえサエコさんの作品は、たまたま縁があって、私が初めて訪れた第43回展から継続して拝見し、私のブログで紹介させていただきました。当初は女の子の気持ちをテーマにしていた作品が多かったように思いますが、最近は、それに神秘的な雰囲気が加わってきたと感じています。

そして、今回、会員推挙となったことが何よりも嬉しく思いました。おめでとうございます。

 

「あなたに花束を」伊藤夏海 50F 会友 油彩 東京都 会員推挙 坂出市民美術館賞

淡い色合いの花々に囲まれて、淡い光が差す空に向かって、右手を差し上げる少女。

昨年の現代童画会展において、はじめて伊藤夏海さんの作品を会場で拝見し、写真を撮っていたところ、ご本人から声をかけていただきました。

昨年の作品は、お子さんをモデルとした作品で、写実力の素晴らしさと作品への愛情を強く感じられたと記憶していますが、1年経って、今回の作品が大きく変わったような気がして、すごいなあと感じています。

今回も賞を受賞するとともに、会員推挙とのこと、おめでとうございます。

 

 

左「記憶の旋律~空~」、右「希望の旋律~海~」きつないえりこ 80P会友 油彩 千葉県 会員推挙

人魚、タツノオトシゴ、マンボウ…、独特の海の世界を創り出す、きつないえりこさんの作品です。

今回は、右の作品はまさに従来からの私のイメージに合致した作品ですが、今回は空の世界との対となった作品です。

今回、会員推挙とのことで、おめでとうございます。

 

「ユウキトトモニ」sio. 50 会友 アルキド 神奈川県 会友奨励賞

エキゾチックな女性や、動物たちが登場するsio.さんの作品です。

今回は、飛行服をまとった女の子と、精悍な白い犬(狼)が同じ方向を見つめているこの作品、何か張りつめた空気感が心地よい作品です。

 

「穏やかなとき」 川井眞理子 60F 会友 日本画 顔彩 神奈川県

髙く、上にまっすぐ、まっすぐ伸びて霞んでいる大木の下で、森の生きものたちが、楽しそうに、穏やかな顔をして並んでいます。ほのぼのとした心がこもった作品に思いました。

最近、川井眞理子さんと知り合いになり、会場でも、お目にかかりお話がすることができました。

演劇との二足のわらじを履き、活動的で魅力的な方だなあと感じています。

 

「みんな一緒が楽しいね」佐藤千鶴 30S 会友 アクリル 東京都 会友奨励賞

様々な白い動物たちが、雪の結晶にように、それぞれ思い思いに、宙に浮かんでいます。

これまで拝見した佐藤千鶴さんの作品には、様々な動物たちが、花や緑の中で楽しそうに遊んでいる作品が印象的でしたが、今回の作品は、白い幻のような作品にこれまでと異なる印象を強く受けました。

 

以上、長々となってしまいましたが、大変、見ごたえがある展示を楽しませていただきました。