ヴェネツィア最後の訪問先は、大好きな大運河に面した美術館ペギー・グッゲンハイムコレクションでした。

 

第一次世界大戦と第二次世界大戦のはざま。激動のパリに暮らし

毎日、ダダとシュールのアーティストと交友を続けながら

時代の寵児を発掘。「毎日、1点」をモットーにアートを買い漁ったペギー・グッゲンハイム。

好きになると相手に奥さんがいても猛アタック。

妻から生卵を叩きつけられてもめげずに

略奪愛で芸術家マックス・エルンストと結婚したという

なんとも迫力のある女性です。

アールデコの女はこうでなくっちゃね!

 

そのコレクションが一堂に介しているのがこの美術館。

最初の結婚で生まれた娘が長年運営していて

彼女が身につけていた

エルンストとダリの描いたイヤリングとか、カルダーが作ったベッドヘッドとか、

彼女の住んでいた足跡も観れるのが楽しい。

 

9月15日まで開催中のキュービズムとフューチィリズムの近代画家マリア・エレナ・ヴィエラ・ダ・シルヴァの展覧会も

綺麗でした。

皆さんも行くと、マルグリットやブランクーシーの有名な作品がここにあることや

マックス・エルンストの怖いけどなんだか引かれちゃう絵に魅了されたり

新しい発見がたくさんあるはずです。

 

庭には彼女が愛した犬たちのお墓もあるんですよ!

いつ訪れても気持ちの良い、

ヴェネツィア詣には欠かせない大好きな美術館。ご近所の魚介専門レストラン

「RISTORANTE CANTINONE STORICO」もおすすめですよ!

www.cantinonestorico.it

 

 

ペギー・グッゲンハイム美術館

 

 

 

ビザンチン時代の歴史的な芸術も残る一方で、

2年に一度、コンテンポラリーアートの展覧会を開催しているヴェネツィアでは近代と現代のアートを堪能することができます。

パリにも財団美術館を構えるピノー氏と

歴史的な建物をコンテンポラリーアートのために適した空間に造りあげることに長けている

安藤忠雄氏のコラボレーションによる建造物が

ヴェネツィアには三箇所あります。

その一つが、私たちが宿泊したパラッゾからほど近い

パラッゾ・グラッジです。

 

パリの財団にもいるリアン・ガンデ作のねずみちゃんがここにもいましたよ。

 

今回のエクスポはイタリアのコセンツア生まれでセネガルのダカールで育ち、フランスやオランダで教育を受け、現在、カナダのモントリオールで生活する芸術家のタチアナ・トゥルヴェが見つけた夢や旅のなかにある、

今まで出会ったことのない不思議や謎の品々がテーマになっています。

彼女はマルセル・デシャン賞も受賞した経験があります。

 

絵画の背景になる

麻布も彼女のアートの一部。また、壁にかかったその街をイメージさせるオブジェも作品です。

 

ご一緒した生徒さんのマダムが

「購入したい」と思わず言ってしまうほど

何気ない、それにお部屋にかざって楽しみたいとおもうような

ある意味身近で、

そして毎日、眺めてその余韻に浸りたいような作品が多いのも彼女のアートの魅力だと思います。

 

コンテンポラリーアートは、その迫力や奇抜さが際立つものがおおいような気がしますが

そうではなく、

生活の一部、また傍において

相棒のように寄り添いたい、そんなアートもあるのだということを発見しました。

 

眺める運河を背景に、なんだかアートにホッとする。

そんな穏やかな時間がここには流れていたのでした。

 

Pinault Collection,Palazzo Grassi

Tatiana Trouvé  ”La vie  étrange des choses"

2026 年1月4日まで

palazzograssi.it

 

 

意気揚々とチエサ・サンパンタロンに出かけると、なんと!当日は休館日。事前に調べたのに!!という出来事がイタリアでは頻繁に起こります。

そこは機転の効くマダム・ジジ。

すぐそばで、18世紀に描かれた最大のキャンバス画よりももっと素晴らしい絵画を観に連れて行ってくれましたよ。

 

スクオーラ・グランデ・ディ・サンロッコ(サンロッコ大信徒会)は、13世紀後半、イタリア中北部を中心に、

信仰と相互扶助を目的に誕生しながら、街の宗教生活と慈善事業をしながら学び暮らす

信徒会「スクオーラ」のひとつです。

スクオーラは種類もまちまちで、職人、外国人、信仰など、さまざまなタイプがあったそうです。

 

ときに、彼らは懺悔の行為として公衆の面前で鞭打たれることもあったのだとか。

 

フランスに嫁いだ敬虔なカトリックである、

カトリーヌ・ド・メディチの息子で王になったシャルル9世が自らに鞭打ちながらパリの街を練り歩いたという逸話を思い出して、

このことなのかしらと思い出しました。オシャレな伊達男だったシャルル9世は自分の結婚式のためにヴェネツィアを訪れて衣裳用のテキスタイルを購入したらしいので、その時にこの行為を見たのかもしれませんね。

 

 

1467年に公式に認められた「バットゥーティ」以外に、16世紀にはこうした大信徒会がヴェネツィアに6つあったそうです。

 

そのなかで、1478 年にペスト患者の守護神であるサンロッコ信徒会が誕生し、16世紀に猛威を振るったペスト流行下で

ヴェネツィアのなかでももっとも立派なスクオーラに成長しました。

また、1789年には法皇ピウス6世から大信徒会の称号を受けて、

ヴェネツィア共和国崩壊後も存命した唯一の大信徒会です。

 

サンロッコ信徒会は、16世紀にティツイアーノの工房で修行した

ティントレットことヤコポ・ロブスティによって美しく荘厳に装飾されています。

コントラストと呼ばれた早い筆捌きの作品は、

人物の造形法や明暗のコントラストの特徴的なマニエリズムとミケランジェロの流れを汲んでいます。

 

彼はこのサンロッコ信徒会に20年間従事しながら60点以上の作品を残しています。

 

現在でも男女300人以上の信徒会員のいるサンロッコ。慈善事業以外にも、絵画修復など芸術的な貢献もになっているのだそうです。

 

SUCOLA GRANDE ARCICONFRATERNITA DI SAN ROCCO

www.scuolagrandesanrocco.org

 

 

 

 

ヴェネツィアに誕生した数々の贅沢品のなかでも、

最も有名なのがガラスの工芸品です。

1861年に、ヴェネツィアの市長であり、聖職者でもあったヴァンチェンゾ・ザネッティのアイデアをもとに、アントニオ・コレオー二によってオープンしたのが

ムラノ島にあるガラス美術館です。

コレクターでもあり、研究家でもあったザネッティのコレクションはヴェネツィアのものだけにとどまらず、紀元前のローマンガラスから現代のガラス工芸品まで幅広く、ガラスの歴史を舐めるように見学できるのが醍醐味です。

また、館内にかかっている素晴らしいヴェネツィアンガラスのシャンデリアも極上のものがかかっていて、しばし、うっとり眺めてしまうほど。

その昔、愛する人のために流した涙を保存して

どれだけ愛が深いのかを示したという涙壺。

かつてのお金持ちがテーブルデコレーションのセンターピースとして用いたガラスのお城も繊細で創造力に溢れたものです。

また、どうやって作るのか、コイル状の脚のグラスやピサの斜塔のように今にも倒れそうなバランスのグラスまで、

すべて見終わるのには二時間を軽く要す見応えのあるコレクション。

 

かつてフランス王ルイ14世がスパイを運んで様子を察知させたというムラノのガラス工房。

そこから職人を引き抜いて、フランスで完成したのがかのヴェルサイユ宮殿の鏡の間を完成させたサンゴバン工房です。

 

華麗なるヴェネツィアのガラス工芸の歴史を一堂に介した博物館。この地を訪れたのなら、見逃せないものです。

 

Museo del Vetro

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつては料理雑誌でも仕事していた経験もあるので、アンティーク同様、美味しいもののない旅は味気ない、一言につきる。

 

今回は、計画途中から予定していたレストランが突然クローズになったりハプニング続きでしたが、

その代わりに見つけたのがこのレースで有名なブラーノ島から陸続きで行けるマゾルボ島のレストラン「Venissa」でした。

2018年末にオープン以来、チエラ・パヴァンとフランチェスコ・ブットの二人のシェフは料理を通して、地球温暖化やフードロスといった地球がかかえている問題に料理を通して取り組み、サステナブルな対策法を模索し続けています。

 

彼らの料理はレストラン裏の菜園とワイン畑、飼育している鳥の卵、そして、大運河とアドリア海の食材や北イタリアの近郊から取り寄せた肉に限られて使用されています。そして、野菜の端切れからスパイスを作ったり、小麦を粉にしてパンを作ったりと、さまざまな取り組みが続けられているのです。その甲斐あって、現在は、料理の味やサービス、施設完備を評価するミシュランの一つ星以外に、ミシュラン・グリーンスターをも獲得する世界が認める名店になったのです。

 

 

ミネラル豊富な海藻、日本の納豆や味噌を思わせる醗酵技術。それも生時のものでなく、なんだかとても奥深い。

それもそのはず、シェフ自身も大の日本ファンで、キッチンには二人の日本人が働いているとか。

目で楽しみ、味覚で想像し、そして、美味しく納得する。7つのコースからなるムニュの味の旅を楽しみました。

 

その日のメニュは以下の通り

*BLEU CRAB 醗酵にんじんと野生のガーリックオイル

*CHARD 牡蠣(ひさしぶりの生牡蠣でした)ラグーンカレー

*パンとバター(絶品!)

*LAFTOVER SOURDOUCH TUBETTI ブルークラブの肝、醗酵玉ねぎとオレガノ

*SALADE LEAVES RABIOLI 

*CASTRAURE エルダーフラワー、アーモンドとレンズ豆の味噌

*FERMENTED STRAWBERRY

*サボア風ケーキ

 

ワインはもちろんナチュラルです。最近人気の紅茶キノコカクテルもあって、新鮮な驚きに満ちたランチとなりました。

 

 

IL RISTORANTE VENISSA