【マンガ感想】
『へうげもの 12巻 (山田芳裕)』
へうげもの(12) (モーニングKC)
山田 芳裕 講談社 2011-03-23 by G-Tools |
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【あらすじ】
朝鮮戦線泥沼化。キリシタン大弾圧。海外侵略と内政混乱、豊臣政権内憂外患。数奇の玉座を目指す古田織部は、わび、さびと一線を画す「乙」の境地に開眼。「めぎゅわ」なやきもので日の本を統一すべく、日夜物欲と創意をたぎらせる。日ごと病み衰える秀吉に死期が近づく。唯一の「友」として、己は何をするべきか。織部が選んだはなむけは、「贅」の男にふさわしい「祭り」であった。
功名よりも茶器に興味を示す人物・古田織部を主人公とした戦国時代を舞台とするマンガ。
この古田織部は実在した人物で、利休の弟子で、利休七哲のひとりであり、
織部焼・織部流の創始者としても有名な人物です。
戦国時代のマンガといえば、戦争で生き残り、立身出世が主流でありますが、
このマンガは『文化』・・・特に茶の湯の世界が中心に描かれています。
そのおかげで、このマンガは非常に新しい視点から戦国時代を描かれております。
千利休の影響で、茶の湯が多くの大名に流行ったことは有名ですが、
漫画というジャンルで、本格的に安土・桃山文化の世界を描いた作品は他に読んだことがありません。
そういった意味で、多くの読者にとって、『新しい作品』であると思います。
『戦国時代のもう一つの顔』である安土・桃山文化を描いているということで、
どうしても地味な印象を受けるかもしれませんが、文化的なことだけでなく、
ちゃんと戦国マンガらしい部分(独自解釈が多いけど)も描かれているので
そういった意味でも、戦国ファンが安心して買える作品だと思います。
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ここからは、12巻の感想。
12巻では、ついに『豊臣秀吉』の死が描かれることとなりました。
そして、その『豊臣秀吉』の死に対して、それぞれの勢力の思惑が描かれることとなり、
次の時代の王者を決める新たなる戦いが始まることとなりました。
そんな12巻のメインは、もちろん『豊臣秀吉』の死ですね。
補佐役であり実弟である『豊臣秀長』の死をきっかけに、大きく人格が変化してしまった『豊臣秀吉』。
そんな『豊臣秀吉』は、2回の朝鮮出兵、関白・『豊臣秀次』の切腹、側近・『千利休』の切腹などの
家臣でも理解しがたいイベントを次々と起こすこととなります。そんな状態の中、ついに『豊臣秀吉』が
倒れてしまうというイベントが発生してしまいます。
自分の寿命が尽きようとしていることに気づいている『豊臣秀吉』は、急遽、五大老・五奉行を集め、
「自分が死んだ後は、豊臣秀頼のもと、五大老・五奉行の合議のにて政を行うように」という誓書に
血判を捺させます。 もちろん、天下を統一した『豊臣秀吉』にとって、その誓書が何の意味の無い
モノであることは重々承知のことであるわけですが、自分の息子・『豊臣秀頼』のために何かを
しなければという思いがそのような行動に至ったのだと思われます。
そんな中、『豊臣秀吉』は、次の天下を取るであろう『徳川家康』を呼び出します。
そして、改めて、『豊臣秀頼』のことを頼みます。 もちろん、『豊臣秀吉』は上記の誓書と同じく、
意味の無い頼みごとであることは重々承知であり、逆に、『徳川家康』に対して、天下を取るための
忠告を話し出します(その言葉は天下人ならではの忠告であり、これからの『徳川家康』に対して
大きな影響を与えることとなると思われます)。
そんな『豊臣秀吉』に対して、『徳川家康』はこれからも“家臣”として『豊臣秀頼』を補佐することを
約束します。 とはいえ、その後のイベントで描かれた息子・『徳川秀忠』との会話からも、天下を
狙っていることは間違いないようで、上記の画像の台詞も演技の可能性が高いようです(もちろん、
この“へうげもの”の徳川家康はかなり律義者風に描かれているため、上記の画像の台詞が本心で
ある可能性もゼロでは無さそうですが・・・)。
そして、『豊臣秀吉』の死は、様々な人々の欲望を駆り立てていきます。
特に、現在の豊臣政権を牛耳っている『石田三成』や、『豊臣秀頼』の母・『淀君』の動向はかなり
印象的に描かれておりまして、次の時代の覇者になるべく、動き始める様子が描かれていきます。
そして、ついに『豊臣秀吉』が死が描かれます。
具体的にどのような死が描かれたのかはまだ読んでいない方へのネタバレになってしまうので
詳しくは書きませんが、この作品らしい華やかな演出でありましたし、何よりも、権力争いの蚊帳の外
である主人公・『古田織部』が活躍したことが良かったですね。
いや~、面白かったです。
次巻も楽しみです。
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【総評】
ついに、『豊臣秀吉』が亡くなりました。
そのため、次巻以降は、これまでの“わび数奇”の世界の話は描かれることが少なくなり、
戦争描写が中心に描かれていくのだと思われます。 この作者が、この血生臭いな時代を
どのように描いていくのか気になりますね。 次巻も楽しみです。
点数的には
96点
です。
では、ここまで。