新型コロナでの、多くの国民の皆さんの反応を見ていると「正解がある」と思い込んでいる方が、とても多いなあと感じました。
科学的な考察が正しいかどうかは言えますが、「正解」を出せないのが科学です。
そのことを理解できないから、安易な陰謀論のようなものを信じてしまう方が多いのかもしれません。
あるいは、「他国はこうしているから日本は間違っている」などと、他国に正解を求めてしまうのかもしれません。
テレビ等によく出ている某科学者が「コロナウイルスはマスクの網の目より遥かに小さいからマスクは不要だ」と、およそ科学的でないこと(コロナウイルスは飛沫の中に潜む)を話しておられましたが、話が上手いということと、専門外であっても大学教授という肩書きで、大衆は「正しい」と信じてしまう傾向にあるようですね。
さて、本書は日本テレビのアナウンサーを辞めて同志社大学で「サイエンスコミュニケーション」を学び始めた著者が、様々な科学者に「サイセンスコミュニケーション」について話を伺うものです。
山中伸弥「研究にはステップがある。報道はどのステップの研究なのかを伝えない。」「ウイルスより、人間の行動を予測する方が難しい」
大隈良典「大学が貧しくなり、日本の科学技術力は弱体化している。基礎研究にもっと力を注ぐべき」「メディアは美しいところしか報道しない。自然はそんなに美しくない部分も多いので、本当の科学が伝わりにくい」「わかっていることと、わかっていないことの両方を報道することが大事」
篠田謙一・小川義和「科学博物館では、伝えたいことをあえて思い切り全面に出さずに間接的に伝える」
「新型コロナでは正しいことを言うよりも、わかりやすい説明をする人が目立った。すると話が上手な人の言っている説が正しいと思われてしまう」
「科学は占いと違って、信じる信じないではなく、証拠に基づいて推測するもの」
藤田誠「化学の研究は、創造活動。発見するものではなく、何もないところから創作していくもの」
「基礎研究は0から1を生み出すもの。おうよ研究は1から100を生み出すもの。基礎研究は一人の研究者が一生をかけて、一つできたらいいほう。基礎研究は難易度が高い」
山本尚「イノベーションは、論理から生まれるのでは無く、センスがあってはじめて生まれる」
「純粋研究は、お金になるとか、役に立つとか考えたら絶対にダメ」
佐藤健太郎「さかなくんのように熱量を持って化学を伝える人がいたらいいですね。人を動かすのは、最後は熱量かもしれません」
石浦章一「サイエンスコミュニケーションに興味のある大学院生が増えている。しかし、社会に出てそれを活かす機会が無い。サイエンスコミュニケーターという職業がない」
「桝太一が聞く科学の伝え方」桝太一(東京化学同人)
【令和4年9月18日読了】
【オススメ度★★★】
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