Jホラーはそれほど見ている方ではないが、小説版も含めた「リング」が、最初で最後のJホラー傑作ではないか、とまたも思ってしまった。

これまでも何度か次こそは、と期待しながら観てきたが、あまりにストーリー性を軽視し過ぎている気がすると感じる。

 

「リング」は貞子という強烈なキャラクターのおかげで、一般的にはホラー映画として認識されているが、小説版を読んだ人は理解している通り、あの作品は「ミステリー」に分類される。貞子とは何なのか、なぜ、貞子という存在がこの現代に復活したのか、という謎を少しずつ明かしていく過程で、登場人物と視聴者が同化することにより得られる恐怖が秀逸だった。

 

Jホラーを観る機会が少ないので、すべての作品がダメとは言えないが、少なくとも今回の作品からは、残念ながらピンとくるものはなかった。

これなら、黒澤清の映画を観ていたほうがいいか。

色々あるけど、「クリーピー偽りの隣人」なんか、下手なホラー映画よりよっぽど怖い。

 

ということで、あまり書くことがない。

主演の杉田雷麟は、最近では「ガンニバル」にも出ていて、そのミステリアスな雰囲気が印象的だった。

そして森田想。「3000万」で鮮烈な印象を残した若手実力派女優だ。ちなみにちょい役ではあるが、その「3000万」で共演していた木原勝利も出ていて、ドラマファン的には注目ポイントであった。

森田想。

「3000万」の投げやりな人生を送る犯罪者の女性とは、真逆の新聞記者の役。

こういう逸材がまだいたのか、と思う将来性豊かな女優さん。

 

そのほかには藤井隆、日向丈など。

 

旧いビデオテープの映像から、過去の記憶が蘇り、弟の失踪事件の真相に迫っていく、、、とプロットは良かったのだが、活かしきれてないかな。。。という感想。

ホラーは好きなので、いつかいい作品に出合える日を夢見て、また探すとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

今をさかのぼること13年、まだ40代だったMATTは、忙しさを言い訳に日々衰えていく体力から目を背けないように、小さな挑戦を重ねていた。

 

しかし、アラフィフも通り越してアラ還になろうとしている最近は、そんな小さな挑戦すらしないほど落ちぶれてしまっている。

 

そんな毎日を打破するべく、というような大げさなものではなかったが、10数年ぶりの小さな挑戦を今日体験。

 

水曜、木曜とアシスタントとして東京・秋葉原にある子会社の業務監査に。

二日目の今日は予定よりも少し早く終了した。

MATTは免許証の更新をいつしようか、と悩んでいた。

15時半ころまでに宇都宮の駅に着けば、帰りに警察署に寄って手続きができる。

そのためには秋葉原を14:21の電車に乗って出発しなければならなかった。

 

だが残念ながらその電車には乗れず、14:35の電車で出発。

15:00発のやまびこには乗れたが、小山をすっ飛ばすこの便でも宇都宮着は15:48。

12分。。。。微妙だ。

だが、久しぶりに小さな挑戦を実行してみることにした。

 

いつも乗る車両よりも宇都宮駅ホームの階段に近い車両に乗り、宇都宮到着前にドア付近に移動。駅に着いたらすぐに飛び降りて、窓口で乗り越し清算、やや小走りで駐輪場に行き自転車に飛び乗る。この時点で残り7分。

 

ここからはいつもよりも必死に自転車をこぐ。もちろん安全には注意して。

しかし、気温34℃近い猛暑の中、もうすぐ56になる運動不足の肉体はすぐに悲鳴をあげる。

それでも踏ん張ってこぎ続け、警察署に着いたのは受付締め切りの2分前。

なんとか間に合った。

 

汗だくにはなったものの、まだまだなんとかなる。

小さな挑戦を続けることで、人間は自信を保つことができる。

ほんと、ちっちゃいけど。。。。笑

2023年、監督は石橋夕穂、唐田エリカ、芋生悠の共演による作品。

唐田、芋生の二人は昔から仲が良かったそうで、初めての共演となった。

二人はその後、Netflixの「極悪女王」でも共演している。

 

唐田エリカ。

彼女の雰囲気はやはり本物。

徐々にではあるがスキャンダルから立ち直っていっているのが嬉しい。

 

芋生悠。

好きな女優さんだが、ステッカーという事務所から株式会社明後日という、小泉今日子が社長の会社に移籍。芸能プロではなく制作会社だが・・・。

ドラマ、映画にもっと出てもらいたい。

 

76分の作品でノンフィクションのような造りで話が進んでいく。

そのため、ナチュラルな会話ややりとり、何も特別なことは起こらない日常が淡々と描かれていく。

 

唐田エリカ演じる主人公の飯塚希は、何らかの問題を抱えて生きていた。

勤めていた広告代理店を退職し、会社を辞めたことは親にも言えず、コンビニのバイトを続けながら無気力な生活を送っている。

そんなある日、あまり仲良くもなかった中学時代の同級生の大友加奈子(芋生悠)と偶然出会い、交流を深めていくうちに、彼女の中で少しずつ何かが変わっていくというお話。

 

何も劇的なことが起きるわけでもなく、スペシャルイベントが起こるわけでもない。

ある時、希と加奈子は飲んだ後、加奈子の実家の部屋で飲みなおすことになる。

そこで希は自分の苦しみや辛いことを加奈子に話す。

 

この時彼女の口から出た「重い話だよね」というのが、印象的だった。

若いうちに人生上手くいかないことなんか、誰にでもある。

希を追い詰めていたのは、そのことを「重いこと」と受け止めて、誰にも「気軽に」話せなかったこと。

会社の役に立つことができず、半年で辞めてしまった自分が許せなかったのだろう。

 

でも、そんなことは実は長い人生においては、大したことではない。

加奈子に打ち明けたことで、初めて希はそのことに気づいたのだ。

そして、希の話を受け入れて聞いてくれる加奈子という友人の存在。

たったこれだけのことに出会える人と、そうでない人がいる。

 

この年になると、当たり前のように思えるそんなことが、20代では見えなかったりする。だからこそ、若い人が一人悩んで道を踏み外したりしないでほしい、と願う。

 

唐田エリカは、この映画の制作当時、本人もかなり厳しい状況だったに違いない。

劇中で流した涙はきっと本物だった。

そして、それを受け止めた仲良しの芋生悠の存在も大きかったと思う。

 

二人が居酒屋で愚痴をこぼしたり、世間話をするシーンはとてもナチュラルで、演技か本当の会話なのかわからなかった。それほど穏やかで仲睦まじいカットだった。

ボウリングのシーンでも、本当に二人が仲のいいのがわかる。

微笑ましい。

 

共演者はあまりいない。矢柴俊博、安倍乙くらいか。

 

正直、万人受けする作品ではないだろう。

唐田エリカと芋生悠という、20代なのにまるでベテラン女優のような落ち着いた演技をする二人の女優の芝居を楽しむ作品、ということだと思う。

田牧そら。

 

子役出身で18歳ながら、芸歴も14年と長い。

「ハルカの光」では、黒島結奈の幼少時代を演じていたよう。

「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」 「正直不動産2」にも出ていたが、あまり記憶に残っていない。だが「スカイキャッスル」では、密かに母親の仇のための復讐を実行に移す、意志の強い少女を演じて印象に残った。

 

「I,KILL」のトキ役は、時代劇、ゾンビと普段の自分が置かれている環境では経験できない役どころの中での演技が必要で、若い彼女にとっては過酷だったに違いない。

でもそれを感じさせない堂々たる演技は、正直驚いた。

 

個性的な顔立ちで、意志の強さを感じる佇まいは蒔田彩珠に近いところもあるけど、彼女がどちらかというと陰なら、田牧そらは陽かもしれない。

 

昨今ブレーク女優ともてはやされるのは20代前半~半ばが多いが、その下の10代に才能豊かな女優さんがたくさんいる。

彼女も間違いなくその一人だ。

芳根京子ちゃん出演なので気にはなっていたものの、最近ドラマが不発続きのフジが苦し紛れに作ったラブコメかあ、、、と勝手に見る気を失っていた。

だが、ネットでの評判を見て少し遅れて観始めたら、意外に良い出来。

 

芳根京子は、その演技力と長いキャリアが全然活かされていない。

大体のドラマは芳根京子の無駄遣いに終わっている。

主役にこだわる事務所の方針なのか、ずっと残念に思っていた。

少し下の世代だが小芝風花は、主役ではない様々な役にチャレンジして役者としての幅を広げ、開花した。芳根京子も、このドラマをきっかけに大きく羽ばたいてほしい。

ほんとは、もっとサブキャラ的な役もやってもらいたいんだけど。。。。

芳根京子ちゃん、和服もいいけど洋装も可愛い。よくお似合いです。

 

このドラマも西原はちの原作、泉澤陽子の脚本の良さがあったのは間違いないだろうが、同じフジで前節放映され評価の高かった「嘘解きレトリック」で見せた、NHK朝ドラばりの昭和レトロ路線を受け継いで成功しているのも一因か。

 

ヒロインの関谷なつ美(芳根京子)と、海軍将校の江端瀧昌(本田響矢)が、親が決めた見合い話で結婚し、新婚生活をスタートするところから物語は始まる。

このドラマの面白いところは、二人の間で繰り広げられる、まるで小中学生のような、観てる方が恥ずかしくなるほどのピュアな関係だ。

 

これを現代劇でやったら間違いなく初回で脱落者98%になるであろう、初々しい(すぎる)二人のやり取りが楽しめてしまうのはなぜだろう。

二つの理由があるかな、と考えた。

 

その一つの理由は、もはや昭和レトロがファンタジーになっているから。

明治・大正生まれの多くの方がこの世を去り、戦前戦後の話を聞く機会は減っている。

我々含め、若い世代もこの頃のことを良く知らない。

もしこの時代を生きた人が存命なら、「こんなんじゃあ、なかったよ」などと言われるかもしれない。そんなリアルを聞く機会がなくなったことで、想像(妄想?)の世界がうんと広がる。

 

そしてもう一つは芳根京子の、コメディエンヌとしての才能がここで大きく発揮されたことか。

彼女の豊かな表情の変化は、彼女独特のものだ。

もちろん、心情の変化や気持ちをセリフだったり、手や顔の動きで表現するのも上手いが、表情の作り方が本当にテクニカルで計算されている。

 

そして、泣きの演技は彼女の真骨頂。

今作でも中盤で、瀧昌に想いのたけを伝えて、こらえていたものが一気に崩れて泣き出すシーン。映画「記憶屋」のラストシーン以来、思わずもらい泣きしてしまった。

彼女の泣きの演技は涙腺崩壊指数150%だ。

 

こういった要素が軸となるこのドラマだが、毎回のエピソードは振り返るとあまり大変なことは起こっていない。夫が滅多に家に帰ってこない海軍の軍人という、やや特殊な環境の若い夫婦の日常が描かれているだけだ。

「結婚できない男」が、桑野という変人と彼を取り巻く常識的な人たちの、くすっと笑える日常を描いたように、本作も平凡な日常に起こる何気ない幸せを描いている。

それがまた心地よい。

 

共演も朝ドラのように安定感あって、ドラマファン視点で見るとキャスティングにはこだわったなと感じた。

関谷家は、高橋勉、紺野まひる、森カンナ、 咲妃みゆ。

森カンナは「まどか26歳、研修医やってます!」に続いて、芳根京子と共演。

なつ美、瀧昌を取り巻く人々に、和久井映見、小木茂光、小関裕太、山本舞香、戸塚純貴。

物語を引っ張る弁士役に生瀬勝久。

安定のキャスティングに、朝ドラを意識しているように思える。

 

瀧昌の同僚の将校・深見役の小関裕太と山本舞香の二人の恋物語がなかなか良い。

「silent」「恋がヘタでも生きてます」などでも、サブカップルの物語が秀逸だった。

本作でも小関・山本の二人の関係が、なつ美・瀧昌カップルのお子様ランチ的な関係と対比するように、少し大人の駆け引きが描かれていて、楽しめた。

小関裕太と山本舞香。

二人とも若手の中では実力あり、好きな俳優さん。

今後もっと見たい二人。

 

ゲストに前川泰之、筒井真理子、前原滉、小島藤子、竹財輝之介、白山乃愛、野間口徹など。こちらゲスト陣も手堅い。

 

お家騒動というか、企業の存続の危機に直面している最近のフジTV。

再生が実現したら、ドラマ部門も過去の栄光は捨てて新たなフジのドラマを確立してもらいたい。昭和レトロ路線の成功は、一つの光明になるか。復活のフジに期待だ。

 

最期に。

最終回で芳根京子ちゃんが来ていたこのワンピース。

「海に眠るダイヤモンド」で土屋太鳳が来ていたのと同じだったそう。

(よく見つけるよなあ、、、)

まったくの勘で多分第3話のレストランのシーンあたりかな、、、と思って観たら太鳳ちゃん着ていました。時代が何巡かして、こういったデザインが今、新鮮かも。

ゾンビものに外れはない、とよく言う。

なぜだろうと考えるのだが、それはきっと寂しさを感じてしまうからだろう、と思う。

身近な存在だった家族、恋人、友人が、ゾンビに噛まれてしまうと言葉も通じない化け物と化し、どんどん孤独になっていく。

そして自分も、いずれその仲間になってしまったら、自分で無くなってしまう。

この何とも言えない切なさ、寂しさに尽きるのかも。

 

だが、WOWOWドラマの本作は、そんな寂寥感とは無縁だった。

とにかく、ゾンビ化したらどんどんぶった斬ってしまう。

思い出に浸ることなく、あまりに思い切りがよく斬り捨てるので、これってゾンビドラマかいな、と思うほど。

 

舞台は天下分け目の関ケ原の合戦後の日本。主人公のお凛に木村文乃。

忍びの一族だったお凛はある時、トキ(田牧そら)という少女の父親を斬り殺したのち、冷酷なくノ一で母でもある氷雨(富田靖子)に、トキを殺し屋として育てよと命じられる。

その命に背いてトキと共に逃亡したため、氷雨たちに追われることに。

 

医師の源三郎(高橋克実)に面倒を見てもらい、平穏に暮らしていた二人だったが、ある時「群凶」と呼ばれるゾンビに襲われ、大きな陰謀の渦に巻き込まれていく、、、、という物語。

徳川家光の双子の片割れで、ある恐ろしい実験で群凶と人間のハーフ?になってしまった謎の美青年・士郎(田中樹)、徳川家光の家来で幕府の討伐衆のリーダー・十兵衛(山本耕史)。お凛とトキには優しい源三郎も実は群凶の件では、何か秘密を持っているようだ。

ほぼこの顔ぶれが主要メンバーで、全6話の物語は進んでいく。

 

迫力あるゾンビのメイク、滋賀、京都、和歌山などの地方でのロケによる、中世日本の原風景、そしてテンポ良い演出と脚本(若い、ばばたくみとベテランの港岳彦による)で、一気見できるクオリティ。

実在の人物が多く出てくるが、歴史的考証はまったく無視している。というか、そもそもSFなので、まったく問題ない。大権現様(家康公)が、群凶として城の地下に幽閉されていても全然良いではないか。

それよりも殺陣含め、時代劇の雰囲気が大切にされていて、時代劇ファンとしてはゾンビ X  時代劇 X 謎解きドラマとして十分楽しめた。

 

だが物語を観ていくと、それらに加えて本筋は士郎という異形の者の耐え難い絶望と孤独、お凛とトキの血のつながらない母娘の再生の物語であり、奥行きあるストーリーに気づく。

激しいゾンビアクションや殺陣だけに終わらないので、じんわりとドラマの世界観に浸っていける。

 

木村文乃は、自らの意思に反し、人を殺めて苦悩する一人の女を、悲しくも美しく演じていて、お凛という悲運の女性を見事に演じていた。

木村文乃。凛々しい役がぴったりの彼女。素敵です。

 

また、「スカイキャッスル」で注目された田牧ソラも、悲しい過去を背負い、自らも群凶になってしまうという、恐ろしい運命に翻弄されながらも強く生きる少女・トキがピタリとはまっていた。

お凛とのやり取りでは、難しい年ごろの女の子のようにふるまい微笑ましい。

トキという役は難しかったと思うが、やりきった彼女はすごいと思う。

 

田牧そら。

このドラマで、彼女の魅力がわかった。また別途書きたい。

 

お凛を最後まで追い詰める、氷雨役の富田靖子のおどろおどろしさも見ものだ。

最近ちょっと危なそうな人を演じたら、彼女はハマる。氷雨も、実の娘のお凛を平気で殺そうとする、かなりヤバい女だ。

富田靖子。

最近、普通の役が少ない気が。。。。

 

あともう一人、中盤でお凛の唯一の友人となる女囚仲間の桜を演じる穂志もえか。

演技力は抜群。話題になった「SHOGUN 将軍」で評価されたが、NHKの「TRUE COLORS」での演技も記憶に残る。

桜が群凶となり命を落とす、ススキをバックにした夕景のシーンは、とても美しかった。

これからどんどん出てくるぞ、と期待の女優さんだ。

 

最終回、壮絶な戦いの末、士郎と氷雨は命を落とし、お凛、トキ、十兵衛は新たな人生を歩むことになる。

タイトルの「I,KILL」は、文字通り「殺す」という意味だろうが、ローマ字読みすると「いきる」。

終盤で文乃ちゃんが「それでも私は生きる!!」と叫ぶシーンで、なるほどと思った。

たくさんの命が奪われるが、それでも生きる望みを捨てない、というお凛の強い意志が感じられた。

 

そして、最後の最後にもう一つのオチが。

お凛との悲しい別れを選んで、船で天草へと旅立つトキ。

死に際の士郎に、髪を切って少年として生きていけと諭され短髪となったトキに、船頭の男(近藤芳正)が名前を聞く。

そこで彼女はこう答える。

「四郎(士郎)、天草四朗時(トキ)貞」

そう来たかあ、、、

 

その他、矢島健一、山下容莉枝、高橋光臣、濱田マリ、黒崎レイナ、佐藤江梨子らが出演。

 

ゾンビものの時代劇、面白そうだと思って観始めたが、意外に深いストーリーにちょっと記憶に残る一品になった。お勧めだ。

 

さとうもか。

「夫よ、死んでくれないか」のエンディングテーマ。

 

好き嫌いの別れる声だと思うが、MATTはなんともいえない粘り気のあるこの声は、好きなほうだ。若いのにジャズやオールディーズを愛してやまないとかで、この楽曲もちょっと懐かしい感じでパンチがあっていい。ドラマにもマッチしていた。良い曲です。

 

民放で唯一、攻めるテレ東。

地上波ではNHKと並んで、安心して観られる作品を作ってくれる。

丸山正樹原作、脚本は「金魚妻」「復讐の未亡人」などの的場友美。

MATT的には「サロガシー」「SHUT UP」「やんごとなき一族」などが記憶に残っている。

 

主演の安達祐実は、最近、ようやく彼女の実力を活かせるドラマ出演が多くなってきたと感じる。「3000万」に続いて、市井の主婦が事件に巻き込まれる(今回は起こす、だが)というシチュエーション。セリフひとつひとつが、緊迫感と臨場感にあふれている。

彼女を見ていると、同じベビーフェースの演技派、ジョディ・フォスターを思いだす。

もう一人、童顔のベテラン演技派といえば、永作博美。おっと池脇千鶴も忘れてはいけない。

 

今回は磯山さやか、相武紗季という個性派二人も加えたトリプル主演。

3人の主婦が事件に巻き込まれるサスペンス、というと古典は桐野夏生の「OUT」。

最近では、2023年に日テレで放映された「彼女たちの犯罪」が面白かった。

そして、このドラマも次から次へと繰り出されるピンチ、最後までどちらに転ぶかわからない展開など、サスペンスはかくありたし、という良質な作品だった。

そこに、社会性も加えた作りは、数多ある名ばかりのサスペンスドラマには見習ってもらいたいほど。

 

タイトルがうたう通り、3人の女性の夫はどの男もクセ強な、殺したくなる夫ばかり。

甲本麻矢(安達祐実)の夫、光博(竹財輝之介)は、マイペースでコミュ障。

加賀美璃子( 相武紗季)の夫、弘毅(高橋光臣)は、異常なまでの愛情で束縛しようとする。

榊友里香(磯山さやか)の夫、哲也(塚本高史)は、モラハラ・パワハラ男。

 

3人の夫も、それぞれキャラが立っていて面白い。

塚本高史の切れっぷりはさすがだし、高橋光臣はヘンタイな役をやったら、ムキムキの体も相まって異常者にしか見えない(失礼)。

竹財輝之介は優男役が多いが、MATTは「寂しい丘で狩りをする」の異常者役が初めてだったので、このドラマでの彼がすんなり受け入れられた。

 

ヘンタイ役が天下一品な高橋光臣。りこりこ~~♪

 

これまでも、社会的にも家庭的にも虐げられてきた女性が、声をあげて障害に立ち向かうドラマはあったが、その系列にあるこのドラマは少し異質だ。

それは彼女たちが、過去に殺人を犯していながら、最後の最後まで社会的な制裁を受けていないことだ。

だが、それも最終回のあるシーンで少し含みを持たせている。

夫と晴れて離婚し、シングルマザーとなった里香の娘はぬいぐるみを持って異常な行動を、お腹の子は不倫相手の子だが、よりを戻すことになった璃子の夫は、やはり自分を変えることはできないと苦悩する。

麻矢はというと、自身の殺しに必ず象徴的に関わってくる「熊」の肉を食べながら、悪態をつく。その自信に満ち溢れた笑顔が、逆に彼女の未来に立ち込める暗雲を想像させる。

(このシーンの前に、 柳憂怜演じる刑事に疑いの目を向けられている)

 

これらラストの暗示的なシーンが印象的なのも、彼女たちが夫を排除しようとするためにあの手この手を尽くした様々な出来事が、ようやく実って最後の熊鍋の食事会につながっているからだ。

確かにひどい夫たちだ。

あんなに愛していたのに、なぜこんなことになってしまったのか?

どうして自分だけ、こんなに苦しまないといけない?

 

女たちの叫びは、これまで男たちに虐げられ搾取されてきた、数多の女たちのものだ。

3人はそれら犠牲者の声にならない叫びを自ら行動を起こし、幸せをつかんだ。

だが、それは本当に安寧な幸せなのか、はこのドラマでは描かれずに終わっている。

そこが、またいい。

 

共演に、久保田悠来、新山千春、遊井亮子、森優作、吉岡睦雄、松浦りょう。

ゲストには池田良に、松下由樹。

松下由樹は同じテレ東の「ディアマイベイビー」のキャラ役での特別出演。(コラボなのね)

エンディングテーマを歌っている、さとうもかも最終話で特別出演。

彼女が歌う「愛は罠」は、とてもパンチの効いたいい曲で、ドラマにマッチしている。

 

3人の夫婦を演じた役者たちの熱演で、かなり出色のサスペンスドラマとなった。

衝撃の最終回まで、できれば撮りためて一気見したい作品。

安達祐実の次回作が楽しみだ。

今年のTBS新春スペシャルドラマだった。

野木亜紀子脚本、土井裕泰演出、主演に松たか子、多部未華子、松阪桃李。

これだけで、観る価値あるドラマと思えたので、とっておいたのだが、、、、、

残念ながら、MATTにはあまり刺さらなかった。

 

最近のヒューマンドラマは、一人で生きる、自分を大切に、寂しさを乗り越える、、、、

などのテーマが多いと思う。

本作は、幼いころに両親、祖母を事故で一気に失った兄弟の物語。

姉の渋谷葉子(松たか子)が母親代わりのようになり、都子(多部未華子)、潮(松阪桃李)と共に生きてきた。

それぞれが自分の人生を生きることになるが、兄弟の絆がそれを邪魔することになる。

お互いを想いあう兄弟の愛、愛し合うがゆえに、新たな人生を歩むことになって兄弟が離れ離れになる寂しさとの葛藤など、3人の想いが交錯する脚本は、さすが野木亜紀子だ。

 

だけど、2時間でそれをまとめるとなると、やや舌足らずになったろうか。

この辺が民放ドラマの限界なのだろうか。

同じような短編ドラマで、最近、NHKで放映した「地平線のうた」があった。

こちらは前後編100分で、しっかりとした感動のドラマとなっている。

NHKが最近、ドラマで独り勝ちなのがわかる。

 

 

俳優陣が豪華なのが、またちょっと残念感を増加させる。

 

星野源、リリー・フランキー、古館寛治、松本穂香、井浦新、池谷のぶえ、菅原大吉、倉悠貴、宇野祥平、中村優子ら。

都子の幼少期の役で、毎田暖乃が出演。

多分、NHKであればここまで有名な役者をキャストしなかったろう。

効果的だったか、というと疑問に思えるからだ。

 

ストーリーよりも、美しい鎌倉の風景、都子が移住する釜山の街並みと、懐かしい韓国料理屋、そして、盆石という伝統的な芸術表現が興味深かった。

 

盆石。

室町時代に足利義政によって確立。風雅だ。

 

楽しみにして観ただけに、少し残念だった。。。

NHKドラマ「舟を編む 〜私、辞書つくります〜」がドイツで行われた、ワールド・メディア・フェスティバル2025で、Entertainment:Omnia Open部門で金賞を受賞するという快挙。

これまで映画、アニメ、ドラマと作られているが、三浦しをんの原作が、本当に素晴らしいのだろう。

この6月から再放送するというので、もう一度見返してみようと思う。それくらいの価値がある名作だ。

 

そして、以前より映画版を観たかったのだが、アマプラにあるのを発見し早速観てみた。

 

結論から言うと、まずは映画版を観てから、ドラマ版を観た方がよい。

映画版は馬締光也と、林香具矢が出会い、恋に落ち、そして共に人生を歩むストーリーと、辞書を編纂していく過程が絡み合い、濃厚な人間ドラマとなっている。

NHKのドラマ版は、岸部みどりが主人公となっているが、彼女が辞書編集部に来るまでの人間模様が描かれているのが映画版なので、観ておいたほうが、登場人物の立ち位置や心情がよく理解できて、物語を楽しめるだろう。

 

映画版は2013年の作品。舞台はドラマ版ではコロナ禍の日本だったが、映画版では1995年の日本から始まる。

馬締光也を松田龍平、香具矢を宮崎あおいが演じている。

二人が出会う下宿・早雲荘(香具矢の叔母が大家)のレトロな佇まいに、昭和な雰囲気をまとう二人のキャストは絶妙だ。

 

主要キャストもドラマ版との対比が興味深い。

(カッコ内は、NHKドラマ版)

 

馬締光也:松田龍平(野田洋次郎)
林香具矢:宮﨑あおい(美村里江)
西岡正志:オダギリジョー(向井理)
岸辺みどり:黒木華(池田エライザ)
タケ:渡辺美佐子(草村礼子)
三好麗美:池脇千鶴
村越局長:鶴見辰吾
佐々木薫:伊佐山ひろ子(渡辺真起子)
松本千恵:八千草薫(鷲尾真知子)
荒木公平:小林薫(岩松了)
松本朋佑:加藤剛(柴田恭兵)
宮本慎一郎:宇野祥平(矢本悠馬)
編集者:波岡一喜
ポスターの女優:麻生久美子

 

馬締と香具矢が主人公の映画版と、岸部みどりが主人公のドラマ版では、視点の違いからストーリーの細かなところや登場人物に違いがある。

映画版は今観ても、12年前の当時のベストキャスティングだったといえる。

麻生久美子のポスターの女優、というのはクレジットを見て初めて気づき、どこに出てた?と探すと、終盤に「大渡海」のポスターのシーンで写っていたのが、彼女だった。

 

黒木華は、当時演劇界では有名だったが、メディアにはNHKの「純と愛」、「リーガルハイ」やこの映画でブレークをつかんだ。まだ20代前半で、役どころだというのもあったかもしれないが、今よりちょっとキツいイメージ。

ちなみに松田龍平とは先日観た「獣になれない私たち」で再共演している。

共演でもう一つ言うと、オダギリジョーと宇野祥平も、「リバースエッジ 大川端探偵社」で共演。

宇野祥平といえば、桃の木マリン、、、笑

 

黒木華。

20代の頃の彼女は、どこか尖がったイメージが強い。

今の柔和な感じの雰囲気が好きな人は多いだろう。

 

そのほかでは、2023年に引退した萩原みのりが端役で出演していた。

当時16歳なので、もしかして馬締と松本先生がファストフード店で用例採集している時に、3人いた女子高生の一人だったかもしれない。

 

予想していた通りというか、長い年月を費やして辞書を編纂するという一大叙事詩を描くには、2時間強しかない映画版はどうしても物足りない。

もちろん、石井裕也監督による映画版は、作品の出来としては素晴らしかったのだが。

 

NHKのドラマ版では、思い切って岸部みどりを主人公に据え、彼女の成長譚を軸に辞書を作る人たちの情熱や、言葉の持つ歴史や不思議な力、魅力を余すところなく描いていた。

感動するエピソードも多々あり、個人的にはドラマ版に魅力を感じる。

 

この夏はドラマ版を見返して、あの感動のドラマにもう一度浸ってみたい。

 

ドラマ版で話題になった、新旧馬締対決。

松田龍平の役柄は、デジタル版「大渡海」の開発者。

映画版を先に観ておけば、、、と思った。