2023年、監督は石橋夕穂、唐田エリカ、芋生悠の共演による作品。

唐田、芋生の二人は昔から仲が良かったそうで、初めての共演となった。

二人はその後、Netflixの「極悪女王」でも共演している。

 

唐田エリカ。

彼女の雰囲気はやはり本物。

徐々にではあるがスキャンダルから立ち直っていっているのが嬉しい。

 

芋生悠。

好きな女優さんだが、ステッカーという事務所から株式会社明後日という、小泉今日子が社長の会社に移籍。芸能プロではなく制作会社だが・・・。

ドラマ、映画にもっと出てもらいたい。

 

76分の作品でノンフィクションのような造りで話が進んでいく。

そのため、ナチュラルな会話ややりとり、何も特別なことは起こらない日常が淡々と描かれていく。

 

唐田エリカ演じる主人公の飯塚希は、何らかの問題を抱えて生きていた。

勤めていた広告代理店を退職し、会社を辞めたことは親にも言えず、コンビニのバイトを続けながら無気力な生活を送っている。

そんなある日、あまり仲良くもなかった中学時代の同級生の大友加奈子(芋生悠)と偶然出会い、交流を深めていくうちに、彼女の中で少しずつ何かが変わっていくというお話。

 

何も劇的なことが起きるわけでもなく、スペシャルイベントが起こるわけでもない。

ある時、希と加奈子は飲んだ後、加奈子の実家の部屋で飲みなおすことになる。

そこで希は自分の苦しみや辛いことを加奈子に話す。

 

この時彼女の口から出た「重い話だよね」というのが、印象的だった。

若いうちに人生上手くいかないことなんか、誰にでもある。

希を追い詰めていたのは、そのことを「重いこと」と受け止めて、誰にも「気軽に」話せなかったこと。

会社の役に立つことができず、半年で辞めてしまった自分が許せなかったのだろう。

 

でも、そんなことは実は長い人生においては、大したことではない。

加奈子に打ち明けたことで、初めて希はそのことに気づいたのだ。

そして、希の話を受け入れて聞いてくれる加奈子という友人の存在。

たったこれだけのことに出会える人と、そうでない人がいる。

 

この年になると、当たり前のように思えるそんなことが、20代では見えなかったりする。だからこそ、若い人が一人悩んで道を踏み外したりしないでほしい、と願う。

 

唐田エリカは、この映画の制作当時、本人もかなり厳しい状況だったに違いない。

劇中で流した涙はきっと本物だった。

そして、それを受け止めた仲良しの芋生悠の存在も大きかったと思う。

 

二人が居酒屋で愚痴をこぼしたり、世間話をするシーンはとてもナチュラルで、演技か本当の会話なのかわからなかった。それほど穏やかで仲睦まじいカットだった。

ボウリングのシーンでも、本当に二人が仲のいいのがわかる。

微笑ましい。

 

共演者はあまりいない。矢柴俊博、安倍乙くらいか。

 

正直、万人受けする作品ではないだろう。

唐田エリカと芋生悠という、20代なのにまるでベテラン女優のような落ち着いた演技をする二人の女優の芝居を楽しむ作品、ということだと思う。