民放で唯一、攻めるテレ東。
地上波ではNHKと並んで、安心して観られる作品を作ってくれる。
丸山正樹原作、脚本は「金魚妻」「復讐の未亡人」などの的場友美。
MATT的には「サロガシー」「SHUT UP」「やんごとなき一族」などが記憶に残っている。
主演の安達祐実は、最近、ようやく彼女の実力を活かせるドラマ出演が多くなってきたと感じる。「3000万」に続いて、市井の主婦が事件に巻き込まれる(今回は起こす、だが)というシチュエーション。セリフひとつひとつが、緊迫感と臨場感にあふれている。
彼女を見ていると、同じベビーフェースの演技派、ジョディ・フォスターを思いだす。
もう一人、童顔のベテラン演技派といえば、永作博美。おっと池脇千鶴も忘れてはいけない。
今回は磯山さやか、相武紗季という個性派二人も加えたトリプル主演。
3人の主婦が事件に巻き込まれるサスペンス、というと古典は桐野夏生の「OUT」。
最近では、2023年に日テレで放映された「彼女たちの犯罪」が面白かった。
そして、このドラマも次から次へと繰り出されるピンチ、最後までどちらに転ぶかわからない展開など、サスペンスはかくありたし、という良質な作品だった。
そこに、社会性も加えた作りは、数多ある名ばかりのサスペンスドラマには見習ってもらいたいほど。
タイトルがうたう通り、3人の女性の夫はどの男もクセ強な、殺したくなる夫ばかり。
甲本麻矢(安達祐実)の夫、光博(竹財輝之介)は、マイペースでコミュ障。
加賀美璃子( 相武紗季)の夫、弘毅(高橋光臣)は、異常なまでの愛情で束縛しようとする。
榊友里香(磯山さやか)の夫、哲也(塚本高史)は、モラハラ・パワハラ男。
3人の夫も、それぞれキャラが立っていて面白い。
塚本高史の切れっぷりはさすがだし、高橋光臣はヘンタイな役をやったら、ムキムキの体も相まって異常者にしか見えない(失礼)。
竹財輝之介は優男役が多いが、MATTは「寂しい丘で狩りをする」の異常者役が初めてだったので、このドラマでの彼がすんなり受け入れられた。
ヘンタイ役が天下一品な高橋光臣。りこりこ~~♪
これまでも、社会的にも家庭的にも虐げられてきた女性が、声をあげて障害に立ち向かうドラマはあったが、その系列にあるこのドラマは少し異質だ。
それは彼女たちが、過去に殺人を犯していながら、最後の最後まで社会的な制裁を受けていないことだ。
だが、それも最終回のあるシーンで少し含みを持たせている。
夫と晴れて離婚し、シングルマザーとなった里香の娘はぬいぐるみを持って異常な行動を、お腹の子は不倫相手の子だが、よりを戻すことになった璃子の夫は、やはり自分を変えることはできないと苦悩する。
麻矢はというと、自身の殺しに必ず象徴的に関わってくる「熊」の肉を食べながら、悪態をつく。その自信に満ち溢れた笑顔が、逆に彼女の未来に立ち込める暗雲を想像させる。
(このシーンの前に、 柳憂怜演じる刑事に疑いの目を向けられている)
これらラストの暗示的なシーンが印象的なのも、彼女たちが夫を排除しようとするためにあの手この手を尽くした様々な出来事が、ようやく実って最後の熊鍋の食事会につながっているからだ。
確かにひどい夫たちだ。
あんなに愛していたのに、なぜこんなことになってしまったのか?
どうして自分だけ、こんなに苦しまないといけない?
女たちの叫びは、これまで男たちに虐げられ搾取されてきた、数多の女たちのものだ。
3人はそれら犠牲者の声にならない叫びを自ら行動を起こし、幸せをつかんだ。
だが、それは本当に安寧な幸せなのか、はこのドラマでは描かれずに終わっている。
そこが、またいい。
共演に、久保田悠来、新山千春、遊井亮子、森優作、吉岡睦雄、松浦りょう。
ゲストには池田良に、松下由樹。
松下由樹は同じテレ東の「ディアマイベイビー」のキャラ役での特別出演。(コラボなのね)
エンディングテーマを歌っている、さとうもかも最終話で特別出演。
彼女が歌う「愛は罠」は、とてもパンチの効いたいい曲で、ドラマにマッチしている。
3人の夫婦を演じた役者たちの熱演で、かなり出色のサスペンスドラマとなった。
衝撃の最終回まで、できれば撮りためて一気見したい作品。
安達祐実の次回作が楽しみだ。