本論文は、AMHで妊孕性が予測できるかについて検討したメタアナリシスです。
Hum Reprod 2023; 38: 1789(フランス)doi: 10.1093/humrep/dead147
要約:2021年4月までに発表された、AMHと妊孕性に関する32論文のメタアナリシスを行いました。ART(体外受精、顕微授精)治療では27論文あり、AMHと累積出産率に非線形の正の相関を認めました。出産できないAMHの下限値はありませんでした。また、人工授精やタイミング治療におけるAMHと累積出産率に関する十分なデータはありませんでした。
解説:AMHは、TGFβファミリーに属する糖タンパク質であり、前胞状卵胞および胞状卵胞の顆粒膜細胞から産生されます。胎児期の妊娠25週から分泌が始まり、25歳頃まで増加し、その後減少し、閉経の数年前には検出できなくなります。1990年代後半に検査法が開発され、その後改善され現在に至っています。AMHは卵巣予備能の優れたマーカーであり採卵数とよく相関しますが、卵子の質とは相関しません。したがって、AMH値が自然妊娠を予測できるかどうかについては不明です。ART治療では、2014年と2015年に発表された2つのメタアナリシスで、AMHと出産率に弱い正の相関が認められました。しかし、AMHと累積出産率の関連を分析した研究はほとんどありません。本論文はこのような背景の元に行われた検討であり、ART治療ではAMH値と累積出産率に正の相関があることを示しています。しかし、出産が達成できないAMHの下限値はありませんので、AMH値が低いことを理由にART治療を拒否することはできません。また、メタアナリシスの難点である不均一性として、異なる母集団、異なるプロトコル、異なるAMH測定方法などが考えられます。
下記の記事を参照してください。
2023.2.12「☆卵巣予備能低下と将来の妊孕性」
2020.12.18「卵巣予備能:ASRMの公式見解」
2020.8.4「☆卵巣予備能低下の35歳以下の女性の妊娠予後」
2018.9.5「38歳未満の方ではAMH低下により卵子の質は変わらない」
2018.7.22「AMHと妊孕性」
2018.7.9「AMHと流産との関連」
2018.7.7「卵巣反応不良の方の出産率」
2018.3.13「AMHは出産率の予測因子になるか?」
2017.10.3「AMHと卵子の質の関係は?」
2016.9.21「AMHに影響を与える生活習慣」
2016.5.14「不妊症の方はAMHが低いのか?」
2013.6.16「☆☆☆AMHは年齢とともに低下しません⁈」