AMHと妊孕性 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、卵巣予備能(AMH、FSH)と自然妊娠するまでの期間(TTP)について検討したものです。

 

JAMA 2017; 318: 1367(米国)doi: 10.1001/jama.2017.14588

要約:2008〜2016年に自然妊娠を目指している30〜44歳の不妊症でない女性(妊娠目指し3ヶ月以下)750名を対象に卵巣予備能のパラメータ(AMH、FSH)と自然妊娠するまでの期間(TTP)について前方視的6〜12ヶ月間検討しました。なお、不妊症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症の方は除外しました。結果は下記の通り、全ての項目に有意差はありませんでした。

 

AMH   TTP<6ヶ月   TTP<12ヶ月

<0.7     65%      84%

0.7〜8.4   62%      75%

8.5<     59%      66%

 

FSH   TTP<6ヶ月   TTP<12ヶ月

<10     62%      75%

10<     63%      82%

 

解説:AMHは卵巣予備能の指標として有用であり、残りの卵子の数を反映しています。しかし、卵子の質を反映していませんので、妊孕性の指標にはならないとされていますが、これには賛否両論があります。本論文は、卵巣予備能(AMH、FSH)と自然妊娠するまでの期間(TTP)について検討したものであり、AMHおよびFSHと妊孕性には関連がないことを示しています。

 

*本論文の著者らが同一の集団を用いてAMHと流産率の関連を報告した論文は、2018.7.9「AMHと流産との関連」でご紹介しました(AMH >1.0 ng/mLと比べ、AMH <0.4 ng/mLの方では2.3倍に流産率が増加)。