本論文は、AMHと流産との関連について検討したものです。
Fertil Steril 2018; 109: 1065(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.01.039
Fertil Steril 2018; 109: 1008(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.02.140
要約:2008〜2016年に自然妊娠を目指している30〜44歳の女性533名を対象に妊娠成立後流産に至ったかどうかを前方視的に検討しました。なお、不妊症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症の方は除外し、流産は妊娠20週までに発育停止となった場合としました。母体年齢、人種、流産歴、肥満度を補正したところ、AMH低下に伴い流産は増加しました。例えば、AMH >1.0 ng/mLと比べ、AMH <0.4 ng/mLの方では2.3倍に流産率が増加しました(ただし、AMH 0.4〜1.0では流産率に変化なし)。各群のAMHは下記の通り。
妊娠判定から流産までの期間 人数 平均AMH
3日以内 9(2%) 5.0
4〜14日 32(7%) 2.2
15日以上 70(15%) 1.9
出産 349(76%) 2.6
解説:AMHは卵巣予備能の指標として有用であり、残りの卵子の数を反映しています。しかし、卵子の質を反映していませんので、妊孕性の指標にはならないとされています*。本論文は、AMHと流産との関連について検討したものであり、AMH低下に伴い流産が増加することを示しています。しかし、流産率が増加するのはAMH <0.4の方だけであり、早期の化学流産(妊娠判定から流産までの期間が3日以内)では逆にAMH 5.0と高値です。これらの理由は明らかではありません。コメントでは、本論文では流産胎児絨毛染色体検査を行っていない欠点を挙げています。従って、結論を出すには大規模な検討が必要です。
*本論文の著者らが同一の集団を用いてAMHと自然妊娠するまでの期間(TTP)との関連を報告しています(JAMA 2017; 318: 1367)。こちらの論文については、後日ご紹介いたします。
下記の記事を参照してください。
2017.12.29「卵巣予備能低下と流産の関係は?」