不妊症の方はAMHが低いのか? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、不妊症の方とそうでない方の卵巣予備能(AMH、AFC)を比較したものです。

Hum Reprod 2016; 31: 1034(デンマーク)
要約:2011~2013年に妊娠治療を行った方382名の卵巣予備能(AMH、AFC)を、不妊症でないい方350名と比較検討しました。なお、年齢は20~39歳とし、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方を除外しました。その結果、不妊症の方とそうでない方の卵巣予備能(AMH、AFC)には有意差を認めませんでした。

解説:卵巣予備能(AMH、AFC)低下の方に対する妊娠治療は、ある意味チャレンジが必要です。不妊症の方は卵巣予備能低下の方が多く、そのために不妊症になっているのではないかとの仮説のもとに本論文の研究が行われました。しかし、本論文は、不妊症の方とそうでない方の卵巣予備能に違いがないことを示しています。つまり、不妊症の方は卵巣予備能低下が著しいために妊娠しにくいのではなく卵子の質、卵子のリクルート法、卵子の選択などその他の要因のために妊娠しにくいことを考えさせます。したがって、AMHが低いから不妊症なのではありません。しかし、卵巣予備能低下の方には早めの対応が望まれますので、積極的な治療が必要です。