卵巣反応不良の方の出産率 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、卵巣反応不良(POR: poor ovarian response)の方の出産率について中国からの大規模な報告です。

 

Fertil Steril 2018; 109: 1051(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.02.001

Fertil Steril 2018; 109: 1004(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.02.011

要約:2002〜2016年に体外受精を実施した卵巣反応不良の方3391名を対象に、出産あるいは治療集結までの経過観察を行いました。なお、卵巣反応不良はボローニャ・クライテリアに基づきました。合計6回実施の採卵周期で14.9%(楽観的に見積もって最大35.3%)の累積出産率が計算されました。年齢別には、30歳未満22.0%、31〜34歳18.3%、35〜37歳17.2%、38〜40歳13.5%、41〜43歳10.5%、44歳以上4.4%となりました。38歳と比べ35歳未満で有意に累積出産率が高くなっており、年齢で補正したところ累積出産率低下と関連する因子は、低AFC、高FSH、累積周期数、自然周期採卵でした。

 

解説:本論文は、卵巣反応不良の方の出産率について中国からの報告で、日本人と近い可能性があり、貴重なデータだと思います。重要なポイントは、AMH低下や卵巣反応不良の方でも、35歳未満の場合には妊娠の可能性が高いこと、自然周期採卵のメリットがないことを示しています。すなわち、35歳未満の卵巣反応不良の方では、しっかり刺激周期を行っておけば十分チャンスがありますので、偽情報に惑わされないようにお願いします。

 

ボローニャ・クライテリア:以下の3項目のうち2項目をみたすものをいいます。
1)40歳以上、あるいは他のPORリスク因子(ターナー症候群、FMRI遺伝子変異、卵巣手術既往、抗がん剤治療後など)
2)刺激周期の採卵にて3個以下の卵子回収
3)AMH < 0.5~1.1 ng/mL、あるいはAFC(胞状卵胞数)< 5~7個
 

ボローニャ・クライテリアについては、下記の記事を参照してください。

2012.11.19「卵巣反応不良の定義:ボローニャ•クライテリア