AMHと卵子の質の関係は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、AMHと卵子の質の関係について検討したものです。

 

Fertil Steril 2017; 108: 518(ブラジル)

要約:2365名2688周期の健常な体外受精新鮮胚移植実施者を対象に、妊娠成績をAMH(低0.08〜1.60、中1.61〜5.59、高5.60〜35.30 )と年齢別(33歳以下、34〜36歳、37歳以上)に比較検討しました。結果は下記の通り。

 

妊娠率と出産率(有意差ありを<で表示、有意差なしを=で表示)

36歳以下:AMH値群<AMH値群

      AMH値群<AMH値群

      AMH中値群=AMH高値群

37歳以上:AMH値群<AMH値群<AMH値群

      AMH値群<AMH値群

 

流産率(有意差ありを>で表示、有意差なしを=で表示)

33歳以下:AMH低値群=AMH中値群=AMH高値群

34〜36歳以上:AMH値群>AMH値群

        AMH値群>AMH値群

        AMH中値群=AMH高値群

37歳以上:AMH値群>AMH値群

      AMH低値群=AMH中値群

      AMH中値群=AMH高値群

 

ロジスティック回帰分析を行ったところ、それぞれ単独で流産率と有意な関連の見られたのは、年齢(正の相関、1.07倍)とAMH(負の相関、0.93倍)のみでした。

 

解説:AMHは卵子の数を示しており、質を意味するものではないと考えられています。一方で、卵子の質も反映するのではないかとする報告も散見されます。つまり、質については賛否両論ありました。本論文は、年齢因子で補正しても、AMH低下が単独で、妊娠率と出産率の低下および流産率の増加に結びつくことを示しています。しかし、本論文だけでは結論づけることはできません。

 

下記の記事を参照してください。

2016.5.24「不育症では卵巣予備能が低い?

201.5.14「不妊症の方はAMHが低いのか?