38歳未満の方ではAMH低下により卵子の質は変わらない | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、38歳未満の方ではAMH低下により卵子の質は変わらないことを示しています。

 

Hum Reprod 2018; 33: 1489(米国)

要約:2012〜2016年に、38歳未満の方を対象に採卵前周期にAMHを採血し、刺激周期による採卵を実施し、AMHが10パーセンタイル未満の方(AMH<0.5)と25〜75パーセンタイルの方(AMH 1.1〜4.5)の培養成績および妊娠成績を比較しました。結果は下記の通り。

 

全ての症例

AMH       <0.5    1.1〜4.5     P

採卵数      6個      14個    <0.001

受精卵数     3個      9個     <0.001

胚盤胞数     2個      4個     <0.001

胚盤胞率/2PN  51.8%     51.2%     NS

出産率/ET    55.9%     57.0%     NS

 

PGT-A症例

AMH       <0.5    1.1〜4.5     P

採卵数      6個      15個    <0.001

受精卵数     4個      11個    <0.001

胚盤胞数     2個      5個     <0.001

正常胚率/胚   70.0%     71.0%     NS

出産率/ET    62.4%     66.6%     NS

NS=有意差なし

 

解説:AMHは卵子の数を示しており、質を意味するものではないと考えられています。一方で、卵子の質も反映するのではないかとする報告も散見されます。つまり、質については賛否両論です。本論文は、38歳未満の方ではAMH低下により卵子の質は変わらないことを示しています。

 

AMHと卵子の質に関しては、下記の記事を参照してください。

2018.7.22「AMHと妊孕性

2018.7.9「AMHと流産との関連

2018.7.7「卵巣反応不良の方の出産率

2018.3.13「AMHは出産率の予測因子になるか?

2017.10.3「AMHと卵子の質の関係は?

2016.9.21「AMHに影響を与える生活習慣

2016.6.21「卵巣反応不良の新しい分類(案)