ミオイノシトール、プロバイオティクス、微量栄養素サプリの効果は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、ミオイノシトール、プロバイオティクス、微量栄養素サプリの効果を自然妊娠で検討したものです。

 

Fertil Steril 2023; 119: 1031(英国、シンガポール、ニュージーランド)doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.01.047

Fertil Steril 2023; 119: 1043(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.03.034

要約:2015〜2017年に、英国、シンガポール、ニュージーランドで妊娠を計画している18〜38歳の女性1729名を対象に、標準サプリメント群(葉酸、鉄、カルシウム、ヨウ素、β-カロテン)標準サプリメント+ミオイノシトール+プロバイオティクス+微量栄養素(ビタミンB2、B6、B12、D、亜鉛)の介入群にランダムに分け、妊娠までの期間(TTP=time to pregnancy)を前方視的に検討しました(ダブルブラインド)。なお、糖尿病あるいは不妊治療を受けている女性は除外しました。介入群736名と対照群701名の中で、1年以内に臨床妊娠(胎嚢確認)が成立したのはそれぞれ316名(42.9%)と299名(42.7%)でした。20%の方が自然妊娠成立するまでの日数は、介入群90.5日、対照群92.0日で有意差はみられませんでした。各種交絡因子で補正後の累積妊娠率も介入群と対照群で同等でした。サブグループ解析では、BMI 25〜30の女性でのみ、介入群におけるTTPが有意に短縮されました(介入群84.5日、対照群117.0日、P=0.016)。一方、BMI>30では、介入群におけるTTPが延長しました(介入群132.7日、対照群108.5日、有意差なし)。 この効果は主に肥満の非白人女性で観察されました。

 

解説:本論文は、ミオイノシトール、プロバイオティクス、微量栄養素サプリの効果を自然妊娠で検討したものであり、BMI 25〜30の女性でのみTTPが有意に短縮したことを示しています。 断定的な結論を得るためには、さらなる研究が必要です。

 

コメントでは、ダブルブラインドのランダム化試験である本研究を賞賛しながら、ミオイノシトール、プロバイオティクス、微量栄養素サプリの効果は限定的であり、万能薬ではないことを強調しています。

 

日本人は、BMI>30の方はほとんどおられず、せいぜい25〜30ですので、逆にこれらのサプリメントが望ましいものである可能性があります。

 

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BMIについては、下記の記事を参照してください。

2023.6.21「☆女性のBMIと年齢と妊娠成績の関係

2023.4.19「☆BMIと妊娠予後

2023.3.29「☆PCOSにおけるBMIと体重減少の効果

2023.3.3「☆母体BMIと周産期予後:自然妊娠 vs. ART妊娠

2023.1.12「ART治療や母親の肥満とお子さんの健康状態の関連

2022.12.14「肥満マウスの食事療法で卵子の質が改善

2022.12.13「肥満で子宮内膜のタンパク質の発現パターンが変化

2022.12.12「肥満で卵胞液中のタンパク質の発現パターンが変化

2022.10.14「☆ライフスタイルによる体重減少の効果:メタアナリシス

2022.4.25「☆女性のBMIは異常胚とは無関係

2021.12.5「BMI増加で胚盤胞発生動態は?

2021.11.21「☆BMI高値で不育症リスクが増加!?

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