☆BMIと妊娠予後 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、BMIと妊娠予後に関する全米データを用いた後方視的研究です。

 

F&S rep 2023; 4: 77(米国)doi: 10.1016/j.xfre.2022.11.014

要約:2012〜2015年の全米データ(SART CORS)を用いて、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)で新鮮胚移植を実施した8,351名9,521周期を対象に、BMIと妊娠予後について後方視的研究を行いました。なお、年齢40歳以下、生理不順あり、AMH>4.45を条件としました。正常体重(BMI 18.5〜24.9)を基準としたオッズ比は下記の通り(有意差ありを赤字表示)。

 

BMI    〜18.4  18.5〜24.9  25.0〜29.9  30.0〜34.9  35.0〜39.9  40.0〜  P値

臨床妊娠率  1.04    基準     0.93     0.93     0.79    0.65  <0.001

出産率    1.07    基準     0.87     0.82     0.73    0.57  <0.001

流産率    0.90    基準     1.41     1.67     1.74     2.31  <0.001

予後良好*   1.14    基準     0.83     0.81     0.62    0.49  <0.001

*予後良好=37週以降で2500g〜4000gの児を出産

 

解説:BMI高値は妊孕性低下および妊娠予後不良になりやすいことが知られています。本論文は、BMIと妊娠予後に関する全米データを用いた後方視的研究であり、BMI>25.0で出産率の有意な低下と流産率の有意な増加が生じることを示しています。

 

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BMIについては、下記の記事を参照してください。

2023.3.29「☆PCOSにおけるBMIと体重減少の効果

2023.3.3「☆母体BMIと周産期予後:自然妊娠 vs. ART妊娠

2023.1.12「ART治療や母親の肥満とお子さんの健康状態の関連

2022.12.14「肥満マウスの食事療法で卵子の質が改善

2022.12.13「肥満で子宮内膜のタンパク質の発現パターンが変化

2022.12.12「肥満で卵胞液中のタンパク質の発現パターンが変化

2022.10.14「☆ライフスタイルによる体重減少の効果:メタアナリシス

2022.4.25「☆女性のBMIは異常胚とは無関係

2021.12.5「BMI増加で胚盤胞発生動態は?

2021.11.21「☆BMI高値で不育症リスクが増加!?

2021.9.28「BMI高値は受精卵の染色体異常とは無関係

2021.7.21「☆女性の肥満で流産率が増加

2021.5.5「女性のBMIは卵子に影響?着床に影響?