本論文は、帝王切開瘢痕部の存在は妊娠率を低下させる可能性を示唆しています。
Fertil Steril 2023; 119: 433(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.12.001
Fertil Steril 2023; 119: 442(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.01.006
要約:2015〜2019年に初回胚移植を実施した2,449名を対象に、帝王切開瘢痕部の存在と妊娠成績について後方視的に検討しました。なお、帝王切開瘢痕部は、3D超音波あるいは子宮鏡で2mm以上の欠損を認めたものとしました。また、子宮形態異常、染色体異常、移植胚なし、ドナー卵子などを除外しました。傾向スコアマッチング法(PSM)で補正した結果は下記の通り(有意差のみられた項目は赤字表示)。
帝王切開瘢痕部 あり なし オッズ比(95%信頼区間) P値
出産率 19.0% 30.5% 0.50(0.32〜0.80) 0.004
臨床妊娠率 29.1% 40.8% 0.55(0.36〜0.83) 0.004
着床率 30.1% 46.2% 0.52(0.35〜0.78) 0.002
流産率 32.7% 19.9% 1.97(0.95〜4.13) NS*
*NS=有意差なし
解説:帝王切開瘢痕部の存在が妊娠成績にどのような影響をもたらすかについては賛否両論があり、結論は出ていません。本論文は、帝王切開瘢痕部の存在は、流産率には影響せず、妊娠率や出産率を低下させる可能性を示唆しています。
コメントでは、前方視的検討が必要不可欠であるとしています。
帝王切開瘢痕部については、下記の記事を参照してください。
2023.3.21「帝王切開瘢痕部による子宮内液体貯留と子宮内膜厚の関係」
2023.3.4「帝王切開瘢痕部妊娠の局所塞栓療法:ビデオ論文」
2022.12.29「子宮鏡併用による腹腔鏡下帝王切開瘢痕修復手術:ビデオ論文」
2022.9.19「妊娠初期の帝王切開瘢痕部離開修復術:ビデオ論文」
2022.9.5「帝王切開瘢痕部を修復すべきか:メタアナリシス」
2022.8.23「タイプ2帝王切開瘢痕部妊娠の治療方法による違い」
2022.6.28「帝王切開瘢痕部子宮内膜症:ビデオ論文」
2022.6.3「帝王切開瘢痕部妊娠の腹腔鏡手術:ビデオ論文」
2022.3.30「帝王切開瘢痕部妊娠の治療:ビデオ論文」
2021.12.28「帝王切開瘢痕部妊娠の治療法」
2020.8.10「帝王切開瘢痕部と妊孕性に関する仮説」
2019.5.4「帝王切開瘢痕部の膣式手術による修復」
2019.4.5「帝王切開瘢痕部の単孔腹腔鏡による修復手術」
2018.8.14「子宮鏡手術による帝王切開瘢痕部修復」
2017.2.24「腹腔鏡による帝王切開瘢痕欠損部修復」
2016.4.28「帝王切開瘢痕部妊娠(CSP)の治療」
2014.10.4「反復する帝王切開瘢痕部妊娠のリスク因子」
2013.6.23「☆帝王切開の傷の影響」