《上手くなるのを待てず、とりあえず人前に飛び出したので、演奏技術が止まってます》
↑これは僕の日記の自己紹介に載せた一文。これは松本零士の『クイーンエメラルダス』のエピソードから頂いたものです。
文庫のクイーンエメラルダスの1巻からのお話ですが、主人公の海野広(蛮野ゼロ)のセリフがとても印象的で、僕の数少ない座右の銘的のようなエピソードと言えます。
以下あらすじ。
手作りの宇宙船が故障して、とある惑星に不時着した海野広。その星でラメールという少年に出会います。
ラメールはロケット工学の天才で、
《設計に大きなミスがいくつもある》
と、海野の手作りロケットをケチョンケチョンにクサすのです。
《計算を重ね、精巧に作り、精密に組み立て、テストを繰り返さないと完璧と言えない》
《ジックリ腰を据えてかかるのは無駄じゃないんだ》
それに対して海野は
《ムダもヘチマもあるか。僕には時間がなかったんだ》
《ムチャクチャでも飛ばなきゃいけない時があるんだ。あとのことはなりゆきで決まってくらぁ》
呆れるラメール
《そうさ。だからなりゆきで君はここへ落ちた。当然のなりゆきだ。ただしい因果関係だ》
そして、ラメールは最新の設備の整った自分の研究室へ海野を案内します。
《いろんなものをたくさん作ってみたよ。どれも君の乗ってきたあの出来そこないよりは素晴らしいものだ》と、スクリーンパネルで自作のロケットを自慢するラメール。
海野《実物はどうした?》
ラメール《破壊したよ。あんな不完全なものを残しちゃ、僕の設計者としての名声に傷がつくからね》
そして、自分が設計した恒星間宇宙船の図面をスクリーンパネルで見せながら、ラメールは言います。
《これが完成したら、より安全な宇宙旅行が出来る》
海野《これはいつ出来る?あんたはいつ宇宙に出るんだい。ラメール》
ラメール《そんなことわからないよ。こういうものをつくるには時間がかかるんだ!》
ここで海野は反論するんです。絵だけの宇宙船では空は飛べない、と。
宇宙の海はほんものだ、本当にあそこにあるんだ、おれの船はコンピューターなんか使わなくても、ちゃんとあそこを飛んできたぞ、と。
《あんたみたいなことを言ってたら、研究室で年を取って死んでしまう。おれはそんなのゴメンだ》
《穴が開いた機体でもエンジンがガタピシでもいい。この身体が若くて少しくらいの傷に耐えらえるうちは、宇宙の海を駆け回りたい。それで死ぬなら本望だよ》
これを読んで、本当にそうだよなぁと思ったのです。
僕が人前で歌い始める時、《下手だからまだまだ人前は恥ずかしい》と、部屋に閉じこもってないで、歌いたいならとりあえず外に飛び出して歌ってしまえ、と、僕は海野広に言われたような気がしました。
松本零士の作品の《少年は夢を持て》《男ならムチャをしろ》ってメッセージはとても古典的で王道です。
世に溢れる自己啓発本とか経営コンサルタントとかの、いわゆる《良い言葉》《役に立つ話》の押し付けってのは、僕は大の苦手ですが、不思議なことに、この話はスッと腑に落ちました。娯楽活劇だから良かったんでしょうね。時間は有限だから、決して他人事じゃない。クイーンエメラルダスは僕にとってのイソップ童話に継ぐ自己啓発書物といえます。
この話、ラストもちょっと良いのです。ラメールにはラメールの悲しい事情があったのです。万人にオススメとは言いませんが、興味を持たれた方は読んでみてくださいね
マシス















