連休になったので、書きかけ途中で放り出してあった日記をこの機会にやっつけてしまいます。
最近になって、中古レコード屋さんでアナログレコードで見つけて、懐かしさに思わず買ってしまったのが(八百円)、『K.ODA』小田和正の1stソロアルバムです。
これ、発売当時(僕は高校生でした)にカセットテープで購入したんです。懐かしさに、当時買ったカセットも出してきて、並べて写真を撮ってみました。
『K.ODA』と、その二年後の2nd『BETWEEN THE WORD AND THE HEART』は、小田さんがオフコース在籍中に作ったアルバムで、いわば「ラブ・ストーリーは突然に」の大爆発前夜の作品たちです。
僕は小田さんの作品すべてを聴いてるわけではないのですけども、1stアルバム『K.ODA』は高校生の少ない小遣いで買ったせいか、元を取ろうと何度も繰り返し聴いたもので、不思議と思い入れがあります。
カセットとLPと歌詞カードの色が違う。LPのは青地に白い字なのです。
オフコースの小田和正がソロアルバムを出す、と聞いて、当時のクラスの女子とか《小田さんのソロでしょ?絶対に良さそうだよね》と話題にしていたのを耳にするほどに、田舎の高校生の間でもそれなりに話題になってました。
で、カセットで買って、聴いてみた。その時の僕の正直な感想を言えば、オフコースほど良くはないな、と思った。なんか、歌詞もメロディもオフコースっぽくない、煮え切らないな、と感じました。
僕が勝手に思っている《オフコース節》な小田さんの歌詞の特徴といいますか、ハッ!とするシリアスなフレーズを連ねつつ、言葉の装飾を削げるだけ削ぎ落としてゆく《引きの美学》の歌詞。そんなオフコース節とは違って、『K.ODA』の収録曲のいくつかは、ぶっちゃけ野暮ったい、陳腐な装飾表現のフレーズがチラホラ。え、小田さんがこんな歌詞をOKとしたの?と不思議な気分になったものでした。
歌詞だけでなく、メロディも違う。どの歌もオフコースのものよりキーが低く、ハイトーンボイスがわりと控えめ。なんだよ、サビでガツーンとハイトーン聴かせてくれよ、と、俗な感想を持つほどに、ちょっと物足りなさがありました。
その中でも「明日、あの海で」だけは分かりやすくサビがハイトーンで格好良かったので、この一曲だけは高校の昼休みによく放送で流してましたっけ(放送委員の特権)。
先行シングルの「1985」と、カップリング曲の「哀しみを、そのまゝ」は、かろうじて歌詞にオフコース節が残ってるように思う。
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「哀しみを、そのまゝ」。小田さん一人アカペラのこの歌、保険か何かのCMソングになってましたね。
そんな訳で、ユルいアルバムだなァとずっとエラソーに思っていた『K.ODA』を、今回アナログレコードで久しぶりに聴いてみたのです。これが、意外にも、とっても良かった。
いや、昔に散々聴いてたからどの曲も懐かしいーってなるんだけど、昔に野暮ったいと思っていた歌詞が、こういうのも悪くないな、と思える自分がいた。いま聴くとおおらかに楽しめたのです。
あと、ハイトーンが少なくて不満だった楽曲たちも、これはこれで味わい深い。何よりサウンドがあの当時流行りのの洋楽っぽくて、これがシミジミと聴けるのですね。
タイミングよくその数日後、またまた中古レコード屋で、今度はCDで『K.ODA』と2nd『BETWEEN THE WORD AND THE HEART』の二枚を見つけちゃって(どちらも550円)、勢いで衝動買い。
これで『K.ODA』はカセットテープ、CD、レコードの三組が揃ってしまった。
2ndソロ『BETWEEN THE WORD AND THE HEART』って、発売した時にすぐレンタルで借りて聴いたのですが、これは『K.ODA』より良い!と、その時はホントにそう思ったのです。「I miss you」とかサビがハイトーンで格好良かったですからね。これこれ!って思いましたっけ。
で、懐かしく2ndをCDで聴いてみたら、あくまで今の自分の感想ですが、昔に思ったより楽曲が弱くて、全体の印象が弱い?。セルフカバーの「僕の贈り物」もそれほど面白くない。もう、圧倒的に『K.ODA』のほうが良い。『K.ODA』圧勝なのです。音の耳触りがモダンでぜんぜん違う。海外レコーディングは意味があるのだな。
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このサウンドですよ。今聴くと「1985」って格好良い。イントロからヤバいです。
個人的な『K.ODA』のベストトラックは「切ない愛の歌をきかせて」ですね。
小田さんの歌詞の変化についてもう少し書きます。
ユーミンがエッセイ「ルージュの伝言」の中で、オフコースはもう言葉が極限まで削がれてしまって、どの曲も似たようなことしか歌っていない、という意の、結構シビアに評してた文を読んだことがあります。けだし慧眼だと思います。
このユーミンの指摘を小田さんが読んでたかは知りませんが、おそらくご自身でも歌詞作りの行き詰まりは意識していたと思う。当時の作品を聴くといろいろ試行錯誤してたのが分かります。
じゃあどうするか。引きの美学で言葉を削いでいったなら、今度は足すしかないワケです。
僕の勝手な目線で見ると、
小田さんまずは《男女のやり取り》というシチュエーションの増量を始めて、四人オフコースのアルバム第一弾『The Best Year's Of My Life』の「恋人たちのように」辺りを皮切りに、『K.ODA』なら「夜の行方」とか、一歩間違うと下世話に響く内容をなんとかコントロールできないかとやり始めます。
『The Best Year's Of My Life』での小田作品は、それまでのオフコースのイメージとのバランスをかろうじて保ってたと思う。ちなみに《男女のやり取り成分》増量の最高傑作はオフコースのシングル「call」だと思ってます。
でも、この路線も「call」で完成されちゃうと、この後は味付けのバランスをどこかしら欠いています。小田さん、言葉を引くセンスは抜群ですけど、足すセンスとしてはボキャブラリーが正直多くない。足すの、めっちゃ不器用じゃん、って凄く思う。
ああ、自分は歌詞作りは向いてない、って自覚があったからこそ、引くセンスが磨かれたのかも。結局それでたどり着いたのが、素直な自分の言葉で人生を語る、ってメッセージ路線ですね。
小田さんはもう、最新作までずーっとコレです。等身大メッセージソング。プラス、これまでのノウハウで(引きの美学のハッとするフレーズ)と(男女のやり取り)のラブソング要素を味付けにしてる感じ。
オフコースのアルバム『as close as possible』の「It's AllRight」から少しずつメッセージ成分を増やしていって、シングル「君住む街へ」で完全にそちらへ振り切った感じ。
「君住む街へ」は、もう小田メッセージの究極とも言える歌で、ぶっちゃけこの後もずっと同じこと歌っているじゃん、ぜんぶ「君住む街へ」じゃん、って思えちゃうほど。これは素直な自分の言葉だ、自分に正直だからこれでいいんだ、ってやり方へシフトチェンジした。
ガチガチだったオフコース期の価値観から、今ではこういうのもアリだな、という嗜好の変化もあるのでしょうね。小田さん自身がおそらく変わってきた。
素直な人生メッセージ路線の小田さんソロは、悪くない。アルバムで聴くと(僕にとっては)ツメの甘い歌詞もあるのですけど、技のハマった歌にはオッ小田さんさすがですねと思う。オフコースの頃の作品って、聴いていて小田さんの笑顔がほとんど見えてこないけど(そこがいい)、近年の作品では小田さんが笑ってる様子が感じられる。それは小田さんにとっては良い事でしょうね。
「風のように」「woh−woh」「忘れてた思い出のように」「さよならは言わない」「今日もどこかで」、などなど、アルバムで一曲でもこういう名曲を見つけると、小田さん聴いて良かった!と思えます。
長々と書いてしまいましたが、僕は昔、自分で歌詞を書きたい、と思った時にオフコースの歌詞の構造からとても勉強させてもらったので、小田さんの歌詞の変化はずっと思うところがあったのです。
GWです。夜勤の時差ボケしてます。午後からマムゼルで歌ってきます。
マシス