お久しぶりです
毎日日の出と共に起床し(猫に二時間かけて起こされる)10時には寝てしまう実に健康的な生活になってしまった。朝は、ペッツたちの世話に追われ、仕事をし、海まで5分なのに全く浸かる時間が無い。近所の者は5月の連休あたりから嬉々として海にボードを持って入り、貝の密漁をしお土産に持ってくるのが癪に障る。「貝は食べたくないんだよ。」仕方がないから海にリリースしたり、砂抜き用の海水を取りに行き、みのる(リサイクルショップのオッサン)に渡した。「砂抜きはしてあるんだろうな。」わざわざ仕事帰りの疲れた体に鞭打って、海水を取りに行ったのに、みのるのそんな言い方が癪に障った。「おめえさん、毎日布団干してるだろう、通りから丸見えだぞ。」みのるは毎日家の前を通って通勤しているようだった。ジイサマ達に新居を教えたのは間違いだった。「しかし、わざわざ海水まで汲みに行き、貝を届けたのにその言いぐさはなんだ。」はっきりとみのるに伝えた。みのるは毎日私が布団を干しているかどうかが一番の関心ごとのようだった。リッカルドは一歳になった。私はこの猫を飼うまで、猫はほおっておけば勝手に一人で過ごしている、ツンデレで、ペッツとして飼いやすい類のもんだと思っていた。シャツの袖口に入ってみたらしい。私が家に居ればご機嫌でいるのだが、ひとたび仕事に出掛けるのがわかるとオーオー泣き叫び、今生の別れのような悲しい顔をして、どうせめちゃくちゃにされるからと千円で購入した一畳カーペットの上に横たわり、窓の向こうからひたすら飼い主が帰って来るかどうか漬物石のようにじっと座って観察している。私が帰ったらずっと体の一部を密着させ、ザリザリとこちらが望んでもいないのに毛づくろいをしてくれる。私は毛づくろいされるのがとっても嫌いだ。夜は一晩中私の顔に身体を密着させ、朝まで一緒、暑くてたまらないし私が起きると再び一緒についてきてストーカーする。仕事場に行けば、現在4匹の野良猫に餌を待ち構えられ、ひとたび満腹になるとストーカーし仕事の邪魔をし、餌が無くなると私が仕事中でも中に入ってきて、餌が無くなったとオーオー泣く。4匹にもなると朝から夕方までどんぶり2杯のカリカリを完食し、さらに夕飯も置いていけとオーオー言ってくる。つまり私は家でも外でも、24時間猫にストーカーされ、そばに来られ、身体を密着され、私の嫌がることをわざとやられて仕事を増やされ、気に入らないとズボンに爪を立ててオーオー泣く。ということが続いてすっかり猫が嫌いになってきた。3月に仕事場のマルグリットがお産をしたはずなのに一匹も子猫を連れてこない事があった。マルグリットは隣の土建屋の物置で出産し、私のところまでフラフラ餌を食べに来ていたりしている間に、土建屋のおっちゃんたちは、あっ子猫がいるとまだ目のあかない子猫3匹を自宅に連れ帰ったり、友人まで届けて哺乳瓶で乳を与え、ラグジュアリーな生活をさせているのだと知った。おっちゃんは「もうかれこれ連れ帰って7匹目になりましたわ。目が開いてなかったんでね、女房になんて言われるかわかんなかったけど、連れ帰ってしまいましたよ。」と死んだ魚のような目をして遠くを見ていた。おっちゃんの目は、もう猫たちにはくたびれましたよと語っていて、おぬしもか、同志よのうとおっちゃんの肩を抱きしめてやりたい気分だった。この地域では猫は外から拾ってくるもの、最低3匹、10匹くらいはまだまだいけるという感覚があるようだった。私の一匹くらい、飼っていないのと一緒だというそういった感覚があるようだった。来週にはまた三匹は生まれるだろう。マルグリットの腹の両脇に小さな二匹の頭を触診で確認できた。おっちゃんたちはまたため息をつきながら家に持ち帰ってくれるのだろう。とにかく一日中猫のストーカーのせいですっかりくたびれてしまい、それだけでただ忙しい、そういった感覚の中生きていた。もう猫なんて充分です。一生分飼いました、そういった気分だ。金魚は追いかけてこない。私にとって最も飼いやすい生き物は金魚だと思った。