すっかり間があいてしまったが、仕事場の猫の出産に伴い、授乳期のせいかキチガイのように餌を貪り、ギャーギャー何か文句を言うおや猫の為にほぼ毎日職場に通った。

子猫の成長を心から楽しみ、歩いては転び、ようやくテーブルに乗れるようになっているのを見て喜んだり、略奪して撫でまくったり、離乳食を与えてみたり、とにかく忙しかった。

一匹は野良猫としてのガッツが足りない気がしたので、近所の農家さんの家に差し上げ、もう一匹は仕事場に入ってしまい、抱き上げようとしてパニックを起こし、風呂場に逃げて風呂釜にストンと脱落した。

それをいまだに恨んでいるようで、あんたが勝手に家に入って風呂釜に落ちたんダベヨと言っても近寄ってこない。

気も強く、こいつは立派に野良猫としてやっていけそうな性格ゆえ、残して勝手に生きて行って貰うように決めた。


そして毎日の子猫の見守り隊長としての任命も解除かと思ったら、お客さんが持て余したケヅメリクガメ、女子8歳体重20キロ超えの物体が来てしまった。

みのる(リサイクルショップのオッサン)の所のジイサマに頼んで、5年前の台風で壊れた門戸に資材置き場でジイサマが拾ってきたフェンスを付けて貰い、亀が逃げれないようにしたり、段差が有る場所にはジイサマお手製のスロープを設置してもらったりした。

ジイサマと必要な金具をホムセンに買いに行った。

私が支払う際にポイントカードを出そうとしたら、すかさずジイサマは自分のポイントカードを私より先にレジにスッと差し出した。

そういう、人としてなかなかやりにくい事を当然のようにやるジイサマなので、帰りにいっぱいの果物や野菜を持たせ金も出そうと考えたが癖になってはいけないので、ハイガソリン代と3千円だけあげた。

ジイサマの時給は1000円という計算だ。


ジイサマは気分を好くして、次はここの台風でぶっ壊れたカーポートの屋根だねとか、おっきな木をぶったぎってあげるよ。

と自分の仕事を勝手に作って得意になり、夕方涼しくなるまで麦茶をガブガブと5杯も飲んで仕事場に居座った。

さっ涼しくなったから帰ろうがジイサマの口癖だった。



ジイサマはたった一人で広すぎる豪邸に住んでいるのだが、クーラーが一台も付いていないから暑くて涼しい場所を求めて日中は移動しているのだと涙を誘う話をし出した。


台風の保険がちゃんと入ったら、可哀想なので安い冷房だけのクーラーを買ってやろうかという気分にもなった。

とにかく私より金もあろうにケチなのはなんなんだろう。


ジイサマは道具もあるし手先は器用だし、時間がたっぷりとある。

しばらく時給千円でこき使おうと思ったら、暑い間は出来ないと言う。


そうだよなここまで暑いともう無理だよね。

私もしばらく海に行くし、台風が終わってからだね。


ジイサマはうなずいた。


癖の強いジイサマを自分のペースに巻き込むのは至難の業であるとうなだれた。