夏は地元海バカンスを満喫し、肩の皮が二度ほど剥けて、日に焼けるもんだから身体が火照ってとにかく暑くて汗ばかりかいている。

 

いつもの年だったらつらいのは半月ばかりなのに今年は春先からずっと暑い。

日本中暑いのだと自分に言い聞かせ、適温10度の更年期の女の古は早く冬になんねえかなあと空を見上げた。

 

毎年海でしか会わない脳筋に

「筋肉を鍛えろ。筋肉をつけなさい。筋肉筋肉」

とずっと叱咤激励されているが、

「50も過ぎてシックスパットはできません。」

とシークエンスはやとも似のジムのトレーナー言われ、脳筋には内緒で筋肉を鍛えるのを勝手にやめている。

 

ニノ(推しのライフセーバー就職で引退)は、最も就職してはいけない女子高の体育教師になってしまい、女子高生のアプローチがすごくてモテてモテて仕方が無くうんざりしているようだった。

「いいかい相手は未成年だし、決して色仕掛けに引っかかってはいけません。

あんたの得意な、はにわ顔で対抗しなさい。それでもダメだったら土偶顔だね。」

とモテないコツをアドバイスしたら、ハイとうなずいた。

それでも存在自体がジャニーズで筋肉をつけていれば、中身が無くてもこうも女にモテるのか、私の理想はロバート秋山だけどなと聞かれてもいないのに、理想の男性像を語った。

 

早朝には坂口さんもサーフインに来るが、私の中では、どうも中身が無いただの性格の良いイケメンという扱いなのだが、家のお客は坂口さんが大好きでとうとう家を突きとめて浮かれている。

仕事でライフラインの検針の必要がある為、用もないのに何度も電話をし、そのたびに坂口さんのオヤジが対応してくるのでなかなか会えない。

その隣には、お客さんのバアサマが住んでいるので様子を聞いたら、全く興味は無い、あたしはいろいろ忙しいんだと全く坂口さんには興味のない隣人に囲まれて、面倒なことは怖いオヤジに任せて田舎ライフをエンジョイしているようだ。

 

海を満喫し、高校野球では仙台育英を応援し、一番バッターの橋本君が出てくるとテンションが最高になり、人の名前を決して覚えられない自分が仙台育英のメンバーは全てそらでフルネームで言えるようになった。

高校球児の外見は、ひとりひとり非常に個性的であり、団体のヤングイケメン歌うたいグループではまずありえない、若い人の顔と名前が一致し名前を全て覚えているという珍しい経験だった。

 

海と高校野球が終わってしまうと毎年恒例のロス気分に見舞われ、夏は終わった感満載になって気力がなくなるのだ。

 

仕事場の二匹の子猫は、一匹性格が良い子を人にあげた(しかも配達させた)のだが、なぜか半月で死なされ、さらにもう一匹貰おうとして海に行こうと準備しているときに勝手に来たので、怒り心頭し、海で頭を冷やしても数日腹が立って仕方なかったので喧嘩上等で言いたいことを全てぶちまけたら気が収まった。

 

その後なぜか子猫が急に家猫のように人懐こくなり、中に入って家猫さながらソファで寝たりして可愛くてたまらないので、今の生きがいはそれだけになってしまった。

それでも夜は人間が居ないから外に出して、トイレは外のお砂でやってもらっているので非常に楽な飼い方である。

 

その人は何故か、猫を13匹も飼っていたと話していたのに、今いるのは二歳と一歳の保護猫だけだと言う。

後の猫はどうしたのか。

しかもこの辺では猫が死んだら坊さんを呼んで読経してもらい、動物専用墓地に塔婆を立ててもらって家族葬をやってするのに、勝手にその辺の空き地に可愛い子猫を埋葬したのだということが引き金になって喧嘩上等になってしまった。

 

「私は、子猫を頂いた後ちゃんと動物病院に連れて行って面倒を見ていた。目ヤニだってなくなったんですから。あなたは野良ネコを病院に連れて行かないじゃないですか。」

と私を非難し、夏風邪をひいて、くしゃみをしている子猫を指さした。

 

「カリニ肺炎だと思うけど免疫付いたら治るとおもうし、親猫がキャリアなんだったらかかるでしょうな。これで生き抜けなきゃ、野良失格ですわ。」

と病院に連れて行かなかったら半月で治って元気に木登りを始めた。

 

動物病院ばかり連れて行って家猫にして半月で死なせるのと、一度も病院に行ったことも無いのに外で八年も生き抜いている病気知らずの親猫と夏風邪も自然治癒の子猫。

 

野良ネコが子猫を産んで、善い人ぶって里親探しなどやり、人にあげるのも考え物だなと思った。

保護猫活動自体、私は?と思っている。

外で生き抜けないのは残らないし、産んだってそんなに増えないものだし、外で自由を満喫するのが幸せな猫だっているし、猫だって餌クレはするが人に迷惑は掛けない。

 

この夏わかったことは、自分はロバート秋山と仙台育英の橋本君が心の底から大好きで、言いたいことは直接本人に会ってタイマンを張ってきちんと言わないと気が済まない人間であるという事だけである。