Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。

 

12回目は、ローラント(Roland)号です。1969年の運行開始当時、ドイツからイタリアまで総距離1183.7㎞はTEEグループ内の長距離列車のひとつに数えられていました。加えて、当時の長距離列車に散見された、優等列車間での車両交換もローラント号では行われており、その内訳は複雑なので、原典を丁寧にあたって噛み砕いてみます。

 

 

列車名の由来は?

ローラントとは、史実、伝説ともに多くの物語が存在する人物のようですが、この列車との関連ですと、ブレーメン市庁舎前のローラント像がこの列車名の由来のようです。伝説の騎士、シャルルマーニュの甥、ブレーメンに住み、778年没とのこと。

 

 
運行されていた国 西ドイツ、スイス、イタリア

 

運転時期と区間

1939年にドイツ国内の急行列車として誕生

 

【初代】

1969年6月1日〜1971年5月22日

 ブレーメン~ハノーファー~フランクフルト~ハイデルベルク~バーゼル~ルツェルン~ミラノ ※1183.7km

 

1971年5月23日〜1979年5月26日

ブレーメン~ハノーファー~フランクフルト~マンハイム~バーゼル~ルツェルン~ミラノ ※1184.3km

1975年4月5日と6日にヴァッセンとゲッシェネン間のゴッタルドトンネル経由ルートが雪崩(なだれ)のために通行不能になったとき、ローラント号はレッチュベルクトンネル経由で迂回運転されています。下記に迂回区間のみをピックアップしてみると、

TEE 50075(迂回用の臨時列車番号) バーゼル→オルテン→ツォリコフェン・オスタームンディゲン接続線→トゥーン→シュピーツ→ブリーク→ドモドッソーラ→ミラノ。対向の50074便はその逆ルートを経由した模様。

 

【2代目】

1979年5月27日〜1980年5月30日

ブレーメン~ハノーファー~フルダ~フランクフルト~シュトゥットガルト

些末ながら、90列車と、91列車でマンハイム〜フランクフルト間の走行線が異なっていたようです。北行90列車はマンハイム駅で方向転換してGroß Gerauを含むリートバーン線を経由しましたが、南行91列車は途中Biblisでライン川を渡り、Wormsを経由する形で進行方向の転換が不要なルートで運転されたようです。90列車があえて進行方向転換を余儀なくされるルートを取ったのかですが、TEEラインゴルト号との接続が関係しているようです。なお、当時のマンハイム中央駅の配線等詳しくないためこの記述でとどめておきます。

 

1981年にインターシティーとして復活

 

【他列車の車両交換や併結】

1973年6月3日〜1979年5月26日 

 75列車はバーゼルで、ハノーファーからのIC 107(ラインプファイル号、デュイスブルクでTEE 7と併結)、ならびにフーク・ファン・ホランドからのTEE 7(ラインゴルト号)からの直通車両と交換しミラノまで併結。

 対向便である74列車も、ミラノから併結した直通車両を、バーゼルにて、TEE 6(ラインゴルト号)と車両交換。その内訳はフーク・ファン・ホランド行のTEE 6とハノーファー行(ラインプファイル号、デュイスブルクからIC 106)が混在している。なんとも複雑な運用です。

 

使用された車両、編成

【西ドイツ】

ラインゴルト型客車

編成両数の詳細は割愛しますが、1970年代ではブレーメン〜ミラノ間の直通車両や途中駅バーゼルでの車両交換を含めて4〜8両程度の編成長となっていたようです。食堂車はDSG社の運営。

 

一例として、初代の1969年誕生時の編成例 

6両編成の構成内訳

ブレーメン〜ミラノ間 【4両】コンパートメント車1両、オープン座席車1両、食堂車1両、1等・バー合造車1両 

★ブレーメン〜クール間 【1両】コンパートメント車1両 

★ブレーメン〜バーゼル間 【1両】コンパートメント車1両

★はバーゼルで車両交換。代わりにラインゴルト号からミラノ行直通車両【2両】を併結

 

2代目の編成にも触れておくと、

1979年5月時点では、6両編成で、コンパートメント車4両、オープン座席車1両、コンパートメント・バー合造車1両

その後4ヶ月後の9月末では、3両編成(コンパートメント車1両、オープン座席車1両、コンパートメント・バー合造車1両)と短編成化されてしまいました。

 

 

牽引機

西ドイツ】

112交流電気機関車 1969年など運転開始初期のみ

103交流電気機関車 1970〜80年

111交流電気機関車 1979〜80年

【スイス】

Re 4/4 I 、Re 4/4 II  交流電気機関車

下記リンク先の写真はRe 4/4-I型(Re410)です。最近の保存車両なのでピッカピカですw

 

 

イタリア】

E444、E646 直流電気機関車

イタリアの機関車は主にE444型が牽引担当していたようです。スイス/イタリアの機関車交換はキアッソで行われました。

 

 

実際の時刻表紙面

1975年夏のダイヤ
75列車 ブレーメン発8:14 →バーゼル(SBB)発15:58→ミラノ着21:00
74列車 ミラノ発9:26→ バーゼル(SBB)発14:37→ブレーメン着22:07
記事の通り、ブレーメン〜クール間で直通車両が設定されてますが、バーゼルSBB駅〜クール間はTEE料金不要ですのでローラント号ではありません。食堂車の運営も、クール~バーゼル間はスイス国鉄の運営だったようです。
また、バーゼル~ミラノ間は同じTEEであるラインゴルト号がフーク・ファン・ホランド(以下、HVH)から連れてきた車両を車両交換し運転している事がわかります。ちなみに、ブレーメン〜クール間、HVH〜ミラノ間の直通車両はいづれも1両のみだったようです。
ThomasCook Continental TImetable May 1975 より
 
 
1979年〜80年冬ダイヤ
1979年夏ダイヤから、従来の国際TEE列車から、西ドイツ国内TEEと運転区間の見直しが行われました(=2代目ローラント号)。この列車番号91・90は、かつてのTEEブラウエル・エンツィアン号のもの。ブレーメン〜マンハイム間は従来と同じルートでマンハイム以降経路を変えシュトゥットガルトが終点となりました。なお、2代目ローラント号の運転日については、初代の毎日運転から、月曜〜金曜のみ運転と、平日移動のビジネス客にあわせたダイヤになっています。
91列車 ブレーメン発7:57 → シュトゥットガルト着14:38
90列車 シュトゥットガルト着15:24 → ブレーメン発22:03
ThomasCook International Timetable January 1980 より
 
 

今回は以上です。

 

すでに取り上げたTEE列車の一覧ページです。こちらもご参考ください!

 

参考資料:

・Cooks Continental Timetable August 1969 ほか

・Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年

・TEE, la légende des Trans-Europ-Express : entre luxe et grande vitesse/Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina/LR PRESSE 2007

・TEE Zuge in Deutschland/Peter Goette/EK-VERLAG 2008

・Die Geschhichte Des Trans Europe Express /Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina 2009

参考サイト:TEE、インターシティー(ドイツ)、Roland (train)(ともにWikipedia)、welt-der-modelleisenbahn.com

ページ内写真:Flickrのリンクより

カバー画像:Deutsche Bahn AG, converted by  , Public domain, via Wikimedia Commons