Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。9回目は、ブラウアエル・エンツィアン(Blauer Enzian)号です。

 

列車名の由来は?

ドイツ語で「青リンドウ」という意。バイエルン州に群生するリンドウを意識した命名のようですね。花の名前の列車名といえば、日本では「さくら」「ライラック」「すずらん」など。他国でも同じ発想に行き着くのですね。

CouleurによるPixabayからの画像 


運行されていた国 西ドイツ、オーストリア

 

運転時期と区間

 

1952年にハンブルグ〜ミュンヘン間のF-Zugとして運転開始

 

1965年5月30日〜

 ハンブルグ 〜 ハノーバー 〜 ヴュルツブルグ 〜 ミュンヘン

 

1970年5月31日〜1979年5月26日

 ハンブルグ 〜 ハノーバー 〜 ヴュルツブルグ 〜 ミュンヘン 〜 クラーゲンフルト(70年12月18日からはツェル・アム・ゼー)

 

それ以降は、ドルトムント〜クラーゲンフルト間のインターシティーに降格

 

ドイツ南北に位置する大都市を、ほぼ一直線で結んだTEEのため、一見ビジネス向けと思いきや、オーストリアのリゾート地(夏はクラーゲンフルト、冬はツェル・アム・ゼー)へも季節に限って直通運転されていた特急列車です。

 

 

使用された車両、編成

ラインゴルト型客車

1969年時刻表の情報によると、オープン座席とコンパートメントが混合された6〜7両編成、食堂車(48席)の編成。車内販売はDSG(ドイツ寝台車食堂車会社)が担当。

 

牽引機

【西ドイツ】 

103型(E03)交流電気機関車 

運転初期のころはE10形、E12形でした。

 

 

【オーストリア】 

1010型、1042型交流電気機関車

西ドイツ、オーストリアともに交流電化(16.7Hz、15000V)されていたため、ドイツのミュンヘンで機関車付替えを行い、そのまま国境を越えてオーストリア国内を牽引したようです。写真は1042形です。

 

 

 

実際の時刻表紙面

1969年夏のダイヤ
ハンブルク〜ミュンヘン間の西ドイツ国内完結のTEEです。ミュンヘンからオーストリアのクラーゲンフルトまでの延長運転(1969年は6月1日〜9月27日)については、1等車のみの編成ながら、TEE扱いではなかった模様。理由は不明です。ミュンヘン〜クラーゲンフルト間の経由地にザルツブルクの名が挙がるのもリゾート地へのアクセス列車であることを感じさせます。
54列車 ハンブルク・アルトナ駅発7:39→ ミュンヘン中央駅着15:03
Ex549(F54) ミュンヘン中央駅発15:15→クラーゲンフルト着20:35
 
Ex550 クラーゲンフルト発10:04→ミュンヘン中央駅着15:15
55列車 ミュンヘン中央駅発15:25→ ハンブルク・アルトナ駅着22:51  
Cooks Continental Timetable August 1969 より
 
 
1969年〜70年の冬ダイヤ
オーストリアへの乗り入れ先が、冬場はツェル・アム・ゼーに変わっています。途中のキッツビュール(Kitzbühel)はスキーといったウィンタースポーツのメッカとのこと。こちらの延長運転も1等車のみの編成ながら、TEE扱いではなかった模様。
54列車 ハンブルク・アルトナ駅発7:39→ ミュンヘン中央駅着15:03
 Ex548(F54) ミュンヘン中央駅発15:23→ツェル・アム・ゼー着18:22
 Ex559(F55) ツェル・アム・ゼー発12:00→ミュンヘン中央駅着15:09
55列車 ミュンヘン中央駅発15:25→ ハンブルク・アルトナ駅着22:51  
Cooks Continental Timetable March 1970 より
 
 
1972年〜73年冬ダイヤ
ミュンヘンの先について、クラーゲンフルト、ツェル・アム・ゼーの2方面への直通列車が連結される季節運転の「多層階列車」となりました。ただし記事から分かる通り、ミュンヘン〜クラーゲンフルトは期間中毎日、ツェル〜は期間中の週末のみというダイヤ。ちなみにこの2方面の列車の分割作業はローゼンハイム駅で行われたようです。
91列車 ハンブルク・アルトナ駅発7:24→ クラーゲンフルト着20:35、(81列車)ツェル・アム・ゼー着18:25 
90列車 クラーゲンフルト発9:35、ツェル・アム・ゼー発11:46→ (80列車)ハンブルク・アルトナ駅着22:53 
Cooks Continental Timetable March 1973 より
 
 
1977年〜78年冬ダイヤ
この頃は、冬のツェル・アム・ゼー行きがなくなっていますが、1973年〜74年冬ダイヤでツェル・アム・ゼー行き打ち切りが行われた結果です。
また、ハンブルク〜クラーゲンフルト間通しでTEEとして運転されているものの、ミュンヘン〜クラーゲンフルト間は季節運転となっています。
91列車 ハンブルク・アルトナ駅発7:24→ ミュンヘン中央駅着15:09(クラーゲンフルト着20:35)
90列車 (クラーゲンフルト発9:25)ミュンヘン中央駅発14:50→ ハンブルク・アルトナ駅着22:41 
ThomasCook International Timetable January 1978 より
 
 

今回は以上です。

 

すでに取り上げたTEE列車の一覧ページです。こちらもご参考ください!

 

 

一冊まるごとこの列車について、というドイツ語の本です。何しろ情報満載な一冊

 

 

参考資料:

  • Cooks Continental Timetable August 1969
  • Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年
  • 写真で楽しむ 世界の鉄道 ヨーロッパ3 交友社 1965年

参考サイト:TEE、ブラウエル・エンツィアン、インターシティー(ドイツ)(ともにWikipedia)

ページ内写真:Flickrのリンクより

カバー画像:Deutsche Bahn AG, converted by  , Public domain, via Wikimedia Commons