6月19日。28年度から都響の首席指揮者になるという、ペッカ・クーシストを聴きにサントリーホールへ。
ペッカ・クーシストはフィンランド出身の、ヴァイオリニスト兼指揮者。今日は前半が自身の弾き振りで、シベリウスの「恋人」組曲、ヒルボリの「バッハ・マテリア」(日本初演)。後半がオーケストラの指揮のみで、タッローディの「きりん座」(日本初演)、シベリウス交響曲5番。
シベリウスの「恋人」ではクーシストのヴァイオリンの美音を堪能。滑らかで繊細な響きから、独特の香りがありました。続くヒルボリの「バッハ・マテリア」。今回現代音楽が2曲あり、ヒルボリとタッローディの曲です。これらは不協和音が連続するみたいな曲でなく、聴きやすい音楽で、コンサートで聴く分には悪くないなと思いました。
「バッハ・マテリア」は作曲家がクーシストに捧げた音楽ということで、クーシストは正に水を得た魚のよう。本当に生き生きと演奏をしました。演奏者がチューニングをしているのかと思っていると、実はもう音楽が始まっており、知らないうちにクーシストも加わって、20分程度のヴァイオリン協奏曲といって良いような、音楽になっていきました。即興性を求められる場面があるとかで、かなりジャズに近い響きの部分もあります。同時に、中間部はおそらく緩徐楽章の部分だと思いますが、懐かしいメロディが顔を出し、しっとりと聴かせもします。最初のチューニングを思わせるガチャガチャした響きから、幾重にも別種と思える音楽が重なって、一筋縄ではいかない音楽だと思いました。
このような複雑な音楽をクーシストは軽やかに、のびのびと演奏し、聴衆を驚かせます。只者ではない感じがします。
後半は交響詩の「きりん座」から。分かり易い描写音楽で、夜空に輝く星々とか、夜景に響く動物のさえずりなどを感じさせる音楽でした。聴きやすい音楽で10分程度。
ラストはシベリウスの交響曲5番。
クーシストは粘らないすっきりした演奏で、中々の快速。セクションごとの分離の良い演奏が多い中、若干団子気味ともいえる響きで押し通していきます。ヴァイオリンの主旋律など、やや埋没気味です。特に第1楽章では、後半積み上げられた動機が、北欧の澄み切った青空を思わせるような、大気の厚みを感じさせるような響きとなりますが、ここもこの指揮者は粘らずに、ずんずん進んでいきました。この辺りテンポを落として粘る指揮者も多い中、独特だという感じですね。同時にスケールはそんなに大きくない指揮ぶりだとも感じます。しかしその分シベリウス特有の爽快さは出ていました。
音も決して大きくなく、繊細で、シベリウスに必要な響きです。
第3楽章、今度は打って変わって、場面ごとの描き分けがあり、繊細な響きと相まって個人的には今日一の素晴らしさでした。オケによって、幻想的に切々と雪が降りしきるような印象が与えられる中、木管群によるあの懐かしい響きが歌われる時、シベリウスの音楽の美しさは極まります。
しなやかに響き渡る音楽は中々の素晴らしさです。
終演後はかなり湧きました。確かに相当な才人だと感じさせる演奏会で、驚きだったのは確かです。ただ指揮者としてはどうなんでしょう?シベリウスはあれで良いと思いますが、スケールが大きく、分厚い響きの音楽は難しそうです。
彼の本質は今日聴かせた2曲の現代音楽のような、過去にとらわれない斬新な資質にあるのかもしれません。






































