The Key of Midnight -7ページ目

議論

今日、「12RIVEN」について議論していたら、気づけばサークルの時間が終わっていました。

正確には、12R自体というわけではなく、

「積分したら次元が上がるというのはどういうことか? そのようなことは有り得るのか?」

という小さな疑問から始まり、サークルメンバーの内三人で色々議論していたら、


そもそも次元とは何か、数学的な意味と物理的な意味で異なるのではないか?

秒の定義におけるセシウム原子は重力の影響を受けないのか? そもそもどうやって測定しているのだろうか?

過去に戻ることと、過去の世界に行くことは別ものか?

平行世界がどうとかで研究に金をかけるのは無駄か?

・・・・・・といった物理的なテーマから、

美しいとはどういうことか、美とは何なのか?

赤って何? その本質は?

哲学的に考えすぎると、結局は何も信じられなくなるのではないか?

では、コギト・エルゴ・スムをひっくり返してみたら?

・・・・・・と、いつのまにかクオリアやらイデアやらが絡んだ話になってきて。


そんなこんなで、2時間近く。

思えば、良くまあ積分の話題からここまで発展するな、と自分でも言いたくなりますが。

・・・・・・なるほど、こういうのが好きなんだなあ、と実感できた一日でした。

こんなことを話していても、何も得るものはないかもしれない。中途半端な知識では、どんなに考えてもやがては行き詰まる。

それでも、やっぱり考えずにはいられない。


・・・・・・最近、こんなことを考えてばかりです。

でも本当に大切なのは、考えることよりも、どこで考えることを止めるかなのではないか、とふと思いました。

ただ、このように”考える場”とそれに付き合ってくれる友人がいるのは本当に恵まれたことだな、と。

普段は当たり前のように思っていたことですが。

感謝、です。

路。

進路を決めました。


どれだけ先延ばしにしていたのかわかりませんが、ようやく、納得の行く道を見つけることが出来ました。


10ヶ月前 にさかきさんにアドバイスを頂いたことが、本当に大きかったです。


”何がやりたいのか?”――それを見つけるための、日々でした。高校に入学したときから、そして十ヶ月前から。悩みつづけて、この一ヶ月間で結論を出しました。


・・・・・・何ででしょう。前は”選ばなかった道を捨てる”のが進路選択だと思っていたのに、今は、自分の道を”選び取った”というほうが、近い感覚です。不思議ですね。


元からやりたいことは沢山ありました。一年近く、”絶対に将来、現代物理学をやろう”と思っていた時期もありました。というのも、”時間”というものに強い関心があったからですが・・・・・・。同時に”意識”や”心”といったテーマも関心があり、心理学も学びたい、と思っていました。

そして、もう一つ、”人は何故フィクションを求めるのか?”という疑問も、これまで長い間考えてきたテーマでした。

・・・・・・それら”やりたいこと”を一つ一つ検討して、いろいろ調べて。

結果的に落ち着いたのは、哲学でした。漠然としてはいますが、何を学びたいのか、と言われれば、思想なのだなあ、と。

考えることが好きで、書くことが好き。

そんな根本的なことを考えた上で、”記述”を武器にできる場所はないか、といくつかの大学を調べ、またその中から家庭の事情により国立大学を選び出したところ、最終的に東大の文化三類が一番希望に沿った場所である、と判断しました。


周囲――特に両親や、祖父母の反対が激しかったのですが、最終的に両親には納得してもらうことが出来ました。

”そんなんじゃ就職できないよ”と何度も言われましたが、後悔はしていません。

学びたいことがあって、その先にやりたいことがある。それ以上のことは、ありません。

まだ祖父母には反対されていますし、今まで実質理系コースを辿っていたため、今から文系・・・・・・というのは厳しいものもあるのですが。それ以前に、学力がまだまだ追いつかない、という根本的な問題も残っています。

それでも、この道を選ぶことにしました。


・・・・・・本音を言えば、進路を選ぶ上で念頭にあったのは、中澤工さん のことでした。そして、打越鋼太郎さん のことも。憧れというわけではなく、ただ好きなクリエイター、というわけでもなく。ただ一ついえるのは、このお二人の存在が無ければ将来を考えることはできませんでした。そして、このお二人とその作品について考えていた三年間の日々が、そのまま自分の進路を考えることにつながっていた、といっても過言ではありません。

ここまで影響を受けてしまっていいのか? とは、何度も考えましたが・・・・・・。

突き詰めれば、例えば加納さんにお会いしたあの日が無ければ、こんな進路は考えなかったでしょうし。三年前、古本屋で手に取った『夏と冬の奏鳴曲』がなければ、今の自分は無かったでしょうし・・・・・・。


思えば、色々な”物語”の影響抜きにして、現在の自分など考えられるわけがないのです。


だから、今の自分に忠実な選択を。


それが結論、です。

「Myself;Yourself」第一話感想

アニメ「Myself;Yourself」公式サイト


どうも毎週感想を書いている余裕はなさそうなのですが、

せっかく第一話が放送されたので、

少し考察も兼ねて、記念に感想を書いてみます。


まず、一見した感想。


・・・・・・噂に違わぬ、”王道学園青春もの”だなあ、と。

予想していたより遥かに、王道な展開です。

特に何も考えないでみていても、普通に面白いでしょう。

とはいえ、よく見直すと既に色々な伏線らしきものがあるのですが。

以下、その伏線らしきもの。

あくまで”らしきもの”ではあるのですが・・・・・・。

一応、ネタバレです。


まず、OPムービーから。


ムービー中に何度か出てくる、”時計”。

佐菜:腕時計(アニメ中では、○-CHOCKと表記されています。○の部分は不明。G-SHOCKのもじりでしょう)

若月兄弟:柱時計。12時を前にして、進まない針。

麻緒衣:砂時計。どうでも良いかもしれませんが、上の砂のほうが多いです。ひっくり返したばかり?

雛子:歪んだ時計。時空?


トリックなどは無いとしても、”時間”というものがストーリーに関わってくる可能性は高いですね。

そしてサビの直前、瞳の中の謎の人物。

サビ。演奏シーン。

佐菜は、サイトの設定だと、

”少しだけピアノが弾ける”ということになっていますが、何故か手にしているのはギターらしきもの。何故?


本編のほうで印象に残ったのは、


・主人公が聞いている音楽。

 OPを始めとして、いくつかのシーンで出てきています。

 ”音楽にこだわっている”作品というだけあって、これも何らかの伏線なのは間違いないでしょう。

・親から電話がかかってきた時間(PM 11:52 or AM 01:52、何でこんな遅い時間に?)。

 また、佐菜は携帯を所持しているにも関わらず、電話は固定電話のほうにかかってきています。


・菜々香の髪留め。

 冒頭の回想シーン、Aパートの祭の回想シーン、Bパートのラストシーンのそれぞれで確認。

 

とりあえずは、これくらいでしょうか。

まだ、主要人物が全員そろっていない段階ですし。


しかし、主人公が明らかに影のある設定なのが気になりますね。

わざわざ高校二年で田舎に戻り編入する理由も謎ですし・・・・・・。


ここらへんの謎は、追々明かされていくのでしょうか。

楽しみです。

道尾秀介 「ソロモンの犬」

道尾 秀介
ソロモンの犬

友情、片思い、ときどき死――。

話題の新鋭が描く青春ミステリー。さっきまで元気だった陽介が目の前で死んだ。愛犬はなぜ暴走したのか?

飄然たるユーモアと痛切なアイロニー。青春ミステリー傑作。


 ◆ ◆ ◆


今最も注目されているミステリ作家、道尾秀介の新刊。

道尾さん初の青春ミステリとのことで、発売前から期待していた、のですが・・・・・・。


これはまた。

凄い形で驚かせてくれました。


作中で起きる事件は、決して派手なものではありません。

人が死んでいるにも関わらず、日常ミステリのように感じてしまうほど。

その真相もタイトルとマッチしていて、小粒ながら良く出来ている・・・・・・のですが。


それとは別のところに仕掛けられたトリックが、何とも。

感想が書きづらいです。

一つだけいえるのは、”この仕掛けにはほとんどの人が騙されるはず”ということでしょうか。

だから何だ、といわれればお終いですが、確実に騙される作品ではあります。

これに騙されない人がいたら、相当勘が良いのだろうとしか思えません。

個人的な感想を言えば、驚くより先に、思わず笑ってしまったのですが。

「片眼の猿」よりは、こちらの仕掛けのほうが好きですね。

確かに騙すことにこだわっているなあ、と改めて感じさせてくれました。


予想以上に青春小説としても良い出来で、読後感も意外に爽やか。

ミステリというよりも、青春小説として読んだほうが面白いでしょう。

ミステリ好きの人にはお薦めしませんが、”絶対に騙されない”という自信を持っている人は、ためしに読んでみるのも良いかもしれません。

アンフェア、というわけではないかと思います。

何ともいえないバランスで成立している作品で、どこか不安定さもあるのですが、やっぱり道尾作品は面白い、というのは変わらず。

勿論、ミステリを通して人間を描くという試みも為されていますが、この姿勢を貫いているのは純粋に凄いと思います。

段々ミステリから離れていっている気もしますが、この姿勢は変えないで欲しいものです。

7点

中澤工作品、次々と・・・・・・

嬉しさのあまり、若干混乱していて、うまくまとめられないのですが・・・・・・。


中澤工さん(ご本人のサイトはこちら )関連で、色々な発表&進展がありました。


まず、1つ目。

以前このブログでも紹介 した、中澤さんの「Myself;Yourse;f」のアニメ がそろそろ始まります。

もう、何といっても中澤作品初のアニメ化。それだけで見る価値は十分にあります。

中澤さんのことですので、きっとアニメにも何らかの”仕掛け”が用意されているはずでしょう。

楽しみで仕方がありません。


そして、二つ目。

「シークレットゲーム -KILLER QUEEN-」(公式サイト )発表。

この原作自体には中澤さんは関わっていないのですが、PS2版のディレクターを中澤さんが担当されています。

以前、中澤さんがブログでも紹介していたこの作品。まさか、ご本人が関わるとは予想していませんでしたが・・・・・・。

シナリオも一新、原作の2~2.5倍の量があるとのことで、これはシナリオに中澤さんが関わっている可能性も・・・・・・!?

とにかく、ゲームもののサスペンス(Liar Gameやら、バトルロワイアルやら)が好きな人は必見。公式サイトの<STORY>を一度見てみてください。


そして三つ目。

「車輪の国、向日葵の少女(仮)」(公式サイト )発表。

これも、中澤さんがブログで紹介していた作品。これも、原作に中澤さんは関わっていませんが、コンシューマ版のディレクターが中澤さんです。

一見、中澤さんの過去作品と比べると浮いているように見えますが・・・・・・?

これもまた、<仕掛け>に拘り、西澤作品がお好きと仰っている中澤さんがディレクターを担当するのに、とても相応しい作品。

上の「シークレットゲーム」とは別の意味で、ミステリファンなら一見の価値がある・・・・・・はず。


以上三作、一から中澤さんが担当しているのは「Myself;Yourself」のみですが、それにしても、三作品全て十分期待できます。

必ず、何らかの驚きを与えてくれるであろう、この三作。

決して見逃せません。



・・・・・・それにしても、色々落ち込んだりしていたのが、これで完全に吹っ飛びました。

何より、改めて、中澤さんは”道の先”にいる人なんだなあ、と実感できたのが、最大の希望。


これで迷わず進めます。

近藤史恵 「サクリファイス」

近藤 史恵
サクリファイス

勝つことを義務づけられた〈エース〉と、それをサポートする〈アシスト〉が、冷酷に分担された世界、自転車ロードレース。初めて抜擢された海外遠征で、僕は思いも寄らない悲劇に遭遇する。それは、単なる事故のはずだった――。

二転三転する〈真相〉、リフレインの度に重きを増すテーマ、押し寄せる感動! 青春ミステリの逸品。


 ◆ ◆ ◆


自転車レース、と聞いて真っ先に思い浮かべたのが、竹内真さんの「自転車少年記」

本書も、ロードレースを舞台とした青春ものです。

ただ、「自転車少年記」と一つ違うのは、本書は青春小説であると同時にミステリでもあるということ。

前半を読んでいる限りは、確かにスポーツ系の青春小説にしか思えないのですが・・・・・・。

後半、ある事件が起きると同時に、少しずつミステリとしての側面が見えてきます。

そして、本書の最大の特徴は紛れも無くそのミステリ部分。

このミステリ部分があるからこそ、この小説は成り立っている、といってもよいくらい。

真相が明かされると同時に、はっきりと浮かび上がってくるテーマ。

ロードレース、という舞台にも必然性があります。

真相自体は大変シンプルで、決して大きな驚きは無いのですが、その印象は強烈。読了後、じわじわと心にしみこんできて、決して離れない。

これは、傑作といっても過言ではないでしょう。

時間がたっても、印象が薄れるどころか、むしろ膨らんでくる。

短い話ですが、まさかここまで余韻が残る本だとは思いませんでした。


ミステリとしても優れていますが、むしろ一般の人にこそお薦めしたい一冊です。

ロードレースに興味が無くても、きっと引き込まれるはず。「自転車少年記」で、自転車レースが面白い、と感じた人は、間違いなく読んだほうが良いといえます。

ゆっくりと押し寄せてくる、感動。

シンプルなテーマを、およそ考えうる限り最高の形で伝えてくれる。

良い本でした。8点

僅かな時間

サークル関連の問題に、宿題、塾、進学と色々問題が積み重なって、思った以上に動けない今日この頃。


やはり、この時期になると厳しくもなるものですね。

先日、小学校の頃の同級生たちに会う機会があったのですが、

みんなしっかり自分のこと考えているんだなあ、と実感し、あせりを感じてしまいます。


・・・・・・これからどうなるのか不安。


そんなわけで。

17歳になりました。


何故でしょう。幼いときから、「16歳までは子供、17歳からは大人」という考えを持っていたのですが・・・・・・。


何も変わらない現実に、どこか違和感を感じずにはいられません。

本当、実感が湧かない・・・・・・。


しかし、そう言ったことは置いておいても、

そろそろ、高校在学中に”読む本”をまとめてしまわないときついかもしれない、と改めて思いました。


さすがに、もう一年に百冊単位で読むことは不可能でしょうし・・・・・・。

これから卒業するまであと何冊の本を読めるのかはわかりませんが、折角なので”今のうちに読んでおいたほうが良い本”を優先的に読もう、と。

・・・・・・といっても、都合よくそんな作品のリストがあるわけでもなく。結局は自分の気分次第で適当に読んでいたりするのですが。


そこで、何か、”これは高校生のうちに読んでおいたほうが良い”という皆様のお薦めがありましたら、教えていただけると助かります。

宜しくお願いします。

米澤穂信サイン会 2007

前回のサイン会 から、約一年。

今年もまた、米澤さんの「インシテミル」サイン会に参加してきました。


去年の経験があったので、今回は余裕を持ったスケジュールに。

11時ごろに新宿到着、まずは紀伊国屋書店の新宿南店を回って、相変わらずの本の多さに驚き。

やはり、東京の書店は良いですね。

こちらの書店では、思わず近藤史恵さんの「サクリファイス」を衝動買いしてしまいました。熱のこもったお薦めのコメントの数々に、「これはもう買うしか!」とつい・・・・・・。

一緒に行った他の二人も、道尾さんの「ソロモンの犬」を衝動買いしていました。

・・・・・・これだから、東京の書店は怖いですね。


新宿南店を出た後は、マクドナルドで軽く昼食を取り、そのまま本店へ。

整理券を貰って並んだのですが、開始30分前の時点で、並んでいるのが自分たちを含めて8人だけ!

・・・・・・もっと並んでいると予想していたので、少し意外でした。

待っている間、整理券のメッセージ欄に色々と書いて時間つぶし。

普通のメッセージではつまらない! ということで、

色々考えた結果、わけのわからないものになりました・・・・・・。思い返しても意味不明です。

とりあえず、自分はINCITE MILLに掛けたメッセージにしましたが、どうしようもない間違いをしてしまった気が・・・・・・。

普段から英語はやっておけ、ということを改めて実感しました。


順番が早かったので、すぐにサインの番が回ってきたのですが、

前の友人がサインを貰っているときに、

「前にも来ていただきましたよね」との米澤さんのお言葉が。

・・・・・・前、といっても一年前に一度だけ、なのですが。一人一人ファンの顔を覚えているのか、と本当に驚きました・・・・・・。

自分の番が回ってきたときも、書名をお願いしたら「そういえば去年もそうでしたね」と! 凄いです・・・・・・。

「一年間もお待たせして申し訳ありません」と仰っていましたが、それに対して咄嗟に何を言ったのかは覚えていないです・・・・・・。何十年でも待ちます、待っている時間の分だけ面白いんです、とか良くわからないことを云ったような気もしますが。

米澤さんは一年前と全く印象が変わっておらず、優しそうな方でした。

・・・・・・実際にお会いしてみると、確かに米澤さんが殺人を描くのは合わないなあ、と思ってしまいましたが、「インシテミル」は何人も人が死ぬ話だそうで。気になります。早く読まないと。


サイン会が予想以上に早く終わったので、その後もまた新宿をぶらぶらと。

ジュンク堂など他の本屋を回ったり、マジックショップを覗いてみたり。

「エヴァの劇場版を見に行こう!」という話も出たのですが、1時間ほど探索した結果、上映している映画館が見つからず断念。来週あたりに見に行くかもしれません。


しかし、余裕をもって出かけた割には、去年と同じくらい疲れました。夏休みはそこそこハードな生活をしていたので問題ないかと思っていたのですが。一日中歩き回るのは、やはり厳しいようです。気温が高かったから、というのもありそうですが。

この暑い中、サイン会を催して下さった米澤さん、編集者の方、書店員の皆様には、本当に感謝です。

勿論、付き合ってくれた友人にも。


さて、それでは早速「インシテミル」を読み・・・・・・たいのですが、明日から数日は宿題とテストが。

早くそちらを終わらせて、ゆっくりと取り掛かりたいです。

朱川湊人 「いっぺんさん」

朱川 湊人
いっぺんさん (いっぺんさん)

<直木賞作家が描く命と友情と小さな奇跡の物語>
『花まんま』で直木賞を受賞し、ノスタルジックホラーの旗手として多くのファンを魅了する朱川湊人氏が、
ほぼ一年ぶりに刊行する待望の短編集。
いっぺんしか願いを叶えない神様を探しに友人と山に向った少年は神様を見つけることができるのか、
そして、その後友人に起きた悲しい出来事に対してとった少年の行動とは……。
感動の作品「いっぺんさん」はじめ、鳥のおみくじの手伝いをする少年と鳥使いの老人、
ヤマガラのチュンスケとの交流を描く「小さなふしぎ」、田舎に帰った作家が海岸で出会った女の因縁話「磯幽霊」など、
ノスタルジーと恐怖が融和した朱川ワールド八編です。


 ◆ ◆ ◆


久々に出た朱川さんの短編集。

最近はホラー色の強い、後味の悪い作品が多かったのですが、今回の短編集は待ちに待ったノスタルジック・ホラー系の作品ばかり。

読みながら、いつもの朱川さんだなあ、とほっとしました。


・・・・・・といっても、以前に比べれば、後味の悪い作品が多いのも事実。

「蛇霊憑き」などは完全にダーク系の作品ですし、他にもオチがダークな作品はいくつかあります。

ただ、普段のダーク系の作品に比べれば、それらも十分楽しむことができました。

どれも田舎が舞台、だからでしょうか。

特に「コドモノクニ」や「山から来るもの」のラストにはぞっとします。

ただ、やはり朱川さんらしさが最も強く出ているのは、表題作の「いっぺんさん」でしょう。

ノスタルジーを感じさせてくれる一編です。切ないだけではなくて、暖かさもある。素直にいいなあ、と思えるような作品。表紙もこの作品にあっていて良いですね。

また、最後に収められた「八十八姫」も傑作です。これも綺麗で切ない作品。


基本的にはどれも印象の残る作品ばかりで、久々に満足できる短編集でした。8点

「都市伝説セピア」「花まんま」「かたみ歌」あたりがお好きな人は是非。

朱川さんが初めて、という人にもお薦めできるような短編集です。

ただ、今度はもっと、「いっぺんさん」や「八十八姫」路線の作品を多く収録してほしいなあ、とは思いました。

「わくらば日記」の続編や、近いうち刊行予定の長編もあるようですし、次の作品も楽しみに待っています。

「うみねのなく頃に Legend of the golden witch」(ゲーム)

「うみねこのなく頃に」公式サイト


考察半分すぎくらいまで書いた時点で、既に過去最長の記事になっていたのですが、

下書き保存をしないで更新した所為で、全部消えました。

流石に辛いです・・・・・・。

書き直すのも厳しいので、とりあえず感想のほうだけ。

といいつつ、やはり考察も多少ありますが・・・・・・。

まず、本作を知らない人は、公式サイトの作品紹介を是非読んで見てください。


前作の「ひぐらしのなく頃に」は大好きな作品で、また大嫌いな作品でもありました。祭囃し編まで読み終えてから丸一年経ちますが、未だに自分の中でとう捕らえていいのかわからない作品です。

そのため、今回の「うみねこ~」も期待半分、不安半分でプレイしてみたのですが。


・・・・・・驚きました。

「ひぐらし~」であった嫌いな要素が、本作ではほとんど無くなっています。

過剰なキャラクター、狙ったような口癖、掛け合い、中途半端なギャグ要素、etc・・・・・・。

いわゆる萌え要素を限りなく排除している、というか。

恐らく、これは意図的にやっているのでしょうね・・・・・・。

おかげさまで(?)、最初から好印象をもって読み進めることが出来ました。


しかし、そういった要素を除くだけで、これだけ物語を純粋に楽しめるとは・・・・・・。

はっきり云いましょう。

面白かったです。

内容はきわめて正当な孤島&館ミステリなのですが、演出や音楽の効果などもあって、一つ一つのシーンの盛り上がりはかなりのもの。

忍び寄る不穏な気配、衝撃的な第一の犠牲者。

第二、第三と続く殺人。

碑文の謎。

不可能殺人。

19人目の存在・・・・・・。


8時間ほどかかりましたが、ラストまで一気に読んでしまいました。

さすがにひぐらし程の衝撃があったわけではありませんが、完全にミステリの体裁を取っているこちらのほうが好みですね。

これなら、純粋に好きといえそうです。


物語のほうに入る前に、まずそれ以外の要素から。

何より音楽。

素晴らしいの一言です。

「ひぐらし解」にも負けない高クオリティーのBGMばかり。

気に入った曲を列挙してみると、


hope、Ride on、Twering cloud in summer、Core、HANE、夏の扉、Requiem、Bring the fate、goldenslaughterer、牢獄STRIP、システム零


hopeからRequiemまではdaiさんの曲です。

特にhopeの出来は感動もの。ただし、それが欠点になっていると思われるシーンもいくつかありました。

というのも、日常シーンでこのような曲を流している所為で、展開と関係なく何故か泣きそうになるわ、話は頭に入ってこないわで・・・・・・。曲が強すぎる、というのでしょうか。

日常シーンには、もっとBGMに徹した曲をかけてもらいたいものです。贅沢な悩みですが。


・・・・・・さて、物語のほうに話を戻します。

先の作品紹介を読まれた方ならわかると思いますが、

「うみねこ~」は非常に意欲的で、挑戦的な作品です。

なんと言っても、

「解かせる気は毛頭ない」「正解率0%」ですから。


しかし、そう云われれば云われるほど、推理したくなるのは当然のこと。

今は何が正解なのか、ルールは何か、テーマは何か、といったことはおいておくとして、

とりあえず作者が提示している、

”どこまで犯人人間説を貫けるか”

というその一点で考えてみましょう。

加えて、”魔女の存在を否定する”ということも。


・・・・・・実は、ここが一番厄介かな、と思っているのですが。

魔女の存在を認めたうえで、”人間とトリック”によって真相を解明するのはまだ可能だと思います。

しかし、”魔女の存在を否定して”となると、無理と言えば無理だなあ、と思うのですが。

”魔女の介入を否定して”ならまだしも・・・・・・。


いや、それは置いておきましょう。

とりあえず、不可能犯罪については置いておいて、犯人のほうを考えてみます。もちろん、魔女はなしで。

まず、一番多くの人が考えると思うのが、顔の無い死体=入れ替わりパターン。

ありがちではありますが、この可能性は確かに高そうです。

ただ、それだと無理があるような気もするので、個人的にはもう一つ、19人目の存在=誰かの双子パターンを考えています。そして、一応可能性が残っているのは、互いに殺しあって全員自滅パターン。いくつかの事件でこの可能性は検討しても良さそうです。


まず、一番最初のパターンだとするならば、まず疑うべきはTipsのCharactersの情報が絶対的に正しいかどうか。

これに関しては、Noといっても良いでしょう。なぜなら、TipsのCharacters、特に死亡後のものは、確実に何者かの主観交じりで書かれている上、魔女の存在を否定しなければならないのに、Charactersの情報が絶対的に正しいなら、ベアトリーチェが表示されている時点で否定も何もありませんから

次に、第二のパターン。

この場合、考えられる人物は、子供たちの誰か、あるいは使用人の二通りでしょう。個人的には、使用人説を支持。理由としては、まず生い立ちを知る人間が少ないこと、使用人の内三人が金蔵に接触できること。また、使用人屋敷内を徘徊していてもおかしくないので、双子説においては非常に動きやすくなるはず

そして第三のパターン。

これは、第一の犠牲者六人と、第六~第八の晩の犠牲者三人において、互いに殺し合いが行われた、ということですが・・・・・・。

第一はともかく、第六~は厳しいかもしれませんね。ただ、第一の場合に関して云えば、六人もまとめて殺すのは困難なことから(毒殺等ならありうる)、この可能性は残しておいても良いと思います


さて、以上を踏まえた上で深く考察を・・・・・・したいところなのですが、先ほど書いていて相当長くなったので、また次の作品が出た頃にでも、まとめて書いてみます。

今のところ、まだ妄想の域を出ないものばかりですし。

ただ、とりあえず現時点での犯人予想としては、源氏、および、源次の双子の兄弟説を唱えておきます。

・・・・・・まあ、自分でもこれは有り得そうに無いな、とは思うのですが。

一番多くの人が考えるであろう犯人は、第一のパターンで、金蔵と留弗夫、あるいは郷田が入れ替わっており、死んだと見せかけて犯行を続けていたというものでしょうが。

それこそ、一番最初にたどり着くような仮説ですし、ミスリードの可能性が高いかな、と。

この第一のパターンに、第二のパターンも併せて考えれば、一番正解に近づけそうな気がします。


で、実際はこれとは別に、もう一つの可能性を考えています。

作品紹介を読んだりゲーム自体をプレイしてみたところでは、

”魔女の存在を否定して”、”魔法ではなく人とトリックで”事件を解決できるか、というのが一つの焦点であって、

そう考えると、別にファンタジー要素は否定しなくても良いと思うのですよね。

とりあえず、魔女はいない。魔法なんかもない。しかし、それとは別の、ファンタジー的な”何か”が、作品全体を構成する要素の一部に存在している。


・・・・・・微妙にアンフェアな気もしますが、「ひぐらし~」を考えればこれくらいあって当然だな、と。

ではそのファンタジー要素とは何か? といえば、それこそが、いないはずの魔女の正体につながるのではないかと思います。極端な話、幻覚だろうがなんだろうがいいわけですし・・・・・・。


まあ、これについては、今後何らかの形であらわれてくるかと思います。


とりあえず今は、第二話を楽しみに待つことにしましょう。


(追記)

hopeが浮いているように感じるもう一つの理由。

・・・・・・BGMだからとはいえ、うみねこの声が入っているのは流石に・・・・・・。

何か引っかかるな、と思っていたら、そこでした。

まさかこれも何かの伏線か? と疑ってしまいましたが、そんなことはないですね。