恩田陸 「麦の海に沈む果実」
- 恩田 陸
- 麦の海に沈む果実
三月以外の転入生は破滅をもたらすといわれる全寮制の学園に、二月最後の日に転校してきた理瀬。これは、彼女がトランクを取り戻すまでの物語。
ミステリだが、ファンタジー。そして、学園小説の中で僕が最も好きな作品。あらゆる「不思議」が詰め込まれている。閉ざされたコンサート会場から消失した生徒。校長が開く降霊会。消失した一冊の本・・・・・・。
恩田陸の作品の中でも、特に「恩田らしい」雰囲気が現れている作品であり、そういった意味でもおすすめ。これを読む前に「三月は深き紅の淵を」を読んでおくと、リンクしている部分がいくつかあるのでより楽しめると思う。
最高評価の10点。一言でこの作品の素晴らしさは伝わらない。ぜひ読んで欲しい大傑作。
(この書評は図書委員会の会誌に掲載予定のものです)
小野不由美 「屍鬼」
原稿用紙三千枚、登場人物二百人という超大作。ホラー、ミステリ、純文学。あらゆる側面を持つ。
この話は、一つの小さな村が崩壊に至るまでの道程を圧倒的な筆力で描いたものだ。
前半部は村の一夏を丁寧に描写しながら、そこに忍び寄る「何者か」の姿をほのめかす。
そして後半、その正体が明らかになるとともに物語は崩壊に向けて加速を始める・・・・・・。
面白いなんて一言で形容できないほどの大傑作。だから、あえて詳しい内容を説明せず、多くの人に読んで欲しいと思う。
相当に長いので手にとるのをためらわれるかもしれないが、読めばきっと、得るものは大きい。
伊坂幸太郎 「アヒルと鴨のコインロッカー」
- 伊坂 幸太郎
- アヒルと鴨のコインロッカー
「一緒に本屋を襲わないか」:引っ越してきた途端に強盗計画を持ちかけられた僕。標的は・・・・・・たった一冊の広辞苑?
二年前、そして現在。二つの物語が交差した果てに見えてくる驚くべき構造。ユーモアにあふれる文章、魅力的なキャラクターたち、そして彼ら一人一人の「想い」。
伊坂幸太郎は最近有名になってきた話題の作家だが、彼の作品の中で一番感動したのがこれ。終盤で二年前と現在がつながり、ラストに向けて一気に駆け抜けていく。明かされる真実は驚くべきもので、そして切ない。悲しい物語ではあるが、読み終わった後は爽快な気分にさせてくれる。
評価は8点。(この書評は図書委員会の会誌に掲載予定のものです)
評価について
一応、続くかどうかは判りませんが書評などを書いていくにあたって、点数評価をするかしないか? ということで迷っていたのですが・・・・・・。
元々、人それぞれ価値観は違うので点数評価にはあまり意味がないと思うのですが、それでも参考になることもあるかもしれない(少し回りくどい・・・)と考え、これから点数による評価も付け加えていきたいと思います。
あくまで、完全な主観によっての点数なので、あまり気にしないでいただければ良いかと思います。
最高評価は10点、小数点は四捨五入として、よっぽどのことがない限り10点や5点以下の点をつけることはない、といった感じになります。
ちなみに、今まで読んだ作品の中で10点をつけるとすると、
・・・・・・くらいでしょうか。これ以上の作品は望めない、というもののみですね。
(「夏と冬~」だけがかなり特殊なので、これについては近いうちに何か書きます)
そのため、8~9点が実質の最高評価になると思います。
6点が普通、7点は良い、という基準ですね。
また、この評価基準はいくつかの有名ミステリ系書評サイトを参考にさせていただいています。
何かの役に立てばよいのですが・・・・・・。
とりあえず、今後はこのような形でやっていきますのでよろしくお願いします。
東野圭吾 「超・殺人事件―推理作家の苦悩」
- 東野 圭吾
- 超・殺人事件―推理作家の苦悩
新刊小説の書評に悩む書評家のもとに届けられた、奇妙な機械「ショヒョックス」。
どんな小説に対してもたちどころに書評を作成するこの機械が、推理小説界を一変させる―。
発表時、現実の出版界を震撼させた「超読書機械殺人事件」をはじめ、推理小説誕生の舞台裏をブラックに描いた危ない小説8連発。
意表を衝くトリック、冴え渡るギャグ、そして怖すぎる結末。激辛クール作品集。
◆ ◆ ◆
先日に引き続き東野圭吾さんの本。本日読了。
今まで読んだ東野さんの作品とは全く作風が違いますが、たまにはこういうのも良いですね。
思い切り笑わせてもらいました。
一つ一つの話が短く、またテンポも良いのですぐ読めてしまいます。
どれもしっかりと落ちがついていますし。
個人的には、森博嗣に喧嘩を売っているのか? というような「超理系殺人事件」、
京極夏彦や二階堂黎人に喧嘩を売っている? 「超長編小説殺人事件」、
そしてあらすじにもある「超読書機械殺人事件」の三本が特に笑えました。
最近の(といっても発表は結構前ですが)ミステリ業界を思いっきり皮肉っています。
こんな小説を堂々と書いても良いのか・・・・・・? と思ってしまうような内容。
軽く何か読もう、という時にいいかもしれません。僕は結構気に入りました。
7点です。
東野圭吾 「天空の蜂」
- 東野 圭吾
- 天空の蜂
奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。- 無人操縦でホバリングしているのは、稼動中の原子力発電所の真上。
- 日本国民すべてをひとぢちにしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非常の決断とは。
- そしてヘリの燃料が尽きるとき・・・。
- 驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。
- ◆ ◆ ◆
先ほど読み終わったので、感想でも。
これもまた、文句のつけようがない傑作です。
真保さんの「ホワイトアウト」や、福井さんの「亡国のイージス」を思い浮かべました。
特に主人公というものが決められていないのが、その二作品との違いでしょうか。
また、どちらが悪だ、と決め付けることはできない、絶対的な悪役が存在しないという点も。
「天空の蜂」と名乗るテロリスト。
それが誰かは比較的早い段階で読者にはわかるのですが、何のためにそのような行動を起こしたのかは判らない。
ラストで明らかにされる犯人の真意には、色々と考えさせられるものがありました。
原子力発電所について考えたことなど、今までにほとんどありませんでしたが、これを読めば嫌でも考えずにはいられません。
もしなくなったら、なにか事故がおきたら、地震のときは・・・・・・などなど。
普段は全く意識していないのですが、原子力発電所が我々に与える影響はとても大きい。
最後の最後、犯人からの最後の「文書」は、読者(もっと大げさに言えば国民)に対する問いかけなのでしょう。
蜂に刺されなければ、その本当の恐ろしさを知ることは出来ない。
確かにそのとおりなのでしょうが・・・・・・。何か、少し怖いものを感じました。
また、多くの方が言われていることだと思いますが、この作品が書かれたのは「もんじゅ」以前なんですよね。
東野さんは時代を先読みする能力に長けていらっしゃる、というのがこの作品からもわかります。
すごい方だと改めて実感。
ただ、どうしてもこの手の作品でいくと「亡国のイージス」という大傑作があるので、若干評価は厳しくなってしまいますね・・・。一応、8点に近い7点ということにしておきます。
小路幸也 「HEARTBEAT」
- 小路 幸也
- HEARTBEAT
優等生の委員長と不良少女の淡い恋。できすぎたシチュエーションかもしれないけれど、すべてはそこから始まった。
彼女が自力で自分の人生を立て直すことができたなら、10年後、あるものを渡そう??
そして10年が過ぎ、約束の日がやってきた。しかし彼女は姿を見せず、代わりに彼女の夫と名乗る人物が現われる。
彼女は3年前から行方がわからなくなっていた。
居場所を捜し出そうと考えたとき、協力者として僕の脳裏にひとりの同級生が思い浮かぶ。
かつて僕に、ブックマッチの格好良い火の点け方を教えてくれた男が??。
約束を果たすため、ニューヨークの〈暗闇〉から帰ってきた青年が巡り合う少年少女たち、
そして最高の「相棒」。
期待の俊英が放つ、約束と再会の物語。
◆ ◆ ◆
昨日読了しました。
元々小路さんの作品は好きなので、これも期待して読み薦めたのですが、期待以上の出来。
個人的に、この作品は今までの小路さんの作品の中で一番良く出来ている物語だと思います。
二つの物語が同時に展開していき、最後のパートで一つの話にまとまります。そして、互いに欠けていたピースを埋め合わさり全体像が見えてくる・・・・・・という構成。
基本的には青春小説ですが、「ミステリ・フロンティア」の一冊というだけあってミステリ的な仕掛けもあり、またそれが驚いて終わり、ではなく感動につながるという点が素晴らしい。
仕掛けに関しては、もちろん深くは書けないのですが、この独特の構成がミスディレクションになっているように感じました。
最後まで読んでからもう一度最初から読むと、軽く読み流してしまった台詞や登場人物の行為などに隠されていた「別の意味」が明らかになります。
というわけで、この作品は二度読み・・・・・・とまではいかなくても、読後にいくつかの場面を読み返してみるとより楽しめるかと思います。
タイトルの「HEARTBEAT」という言葉は、中盤で説明が入るのですが、それがラストに深く関わってきます。
上手いタイトルだな、と。
とても切ない話なのですが、読後感は非常に爽やかで心地よく感じられます。
小路さんの作品がお好きな方はもちろん、初めて小路さんの作品を読まれる方にもお薦めの一冊です。
ちなみに、評価は7点。
「魔法飛行」ものがたりオフレポ
昨日、「魔法飛行」ものがたりオフに参加してきました。
二週連続のオフで、僕はこれが二度目の参加になります。
少し早めに茅ヶ崎に到着し、BOOK OFFなどで時間をつぶしてから駅に戻ると、既にみっくんさんがいらしていました。
幹事なだけあって、集合予定時間の20分も前からいらしていたとか。やっぱり、さすがみっくんさんです。
下田さん、なるみやさんも続けて登場し、バスの待ち時間(20分も!)をまたもやBOOK OFFですごしてから、いよいよ文教大学へ。
向こうでみつるさんと合流し、どこを回るか決めよう、ということでいったん学生食堂へ。
そこでいくつか「これは見よう」という場所は決めたのですが、いざ行ってみるとどれも終っていたりそもそも開いていなかったり・・・・・・。
仕方ないのでまた学生食堂に戻って昼食をとり、再度これからどこに行くか話し合う。
結局、初心者のためのブログ作成教室のような催し物に参加しました。
ここで1~2時間過ごしましたが・・・。皆さんタイピングが早い! 下田さんに至っては、CSS編集か何かで色々やっていました。僕には何をやっているのか全くわかりませんでしたが、どうやらプログラム関係のことを日常からされているようで。素直に凄いと思いました。
まあ、そんなわけで、そこで作ったブログがここなのですが。
そして・・・・・・。
「聳塔に登れないか?」という、おそらくその場にいた全員が抱いていた疑問というか願いですが(ここに書いていいのかどうかわかりませんが)、半分ほど(?)実現しました!
七階建て(多分)の塔のうち、四階まで登れました。そこから先は完全に封鎖されていてさすがにいけませんでしたが、一応聳塔に登ったことには変わりないです。
ただ、一つ気になったのが、窓の位置やつくりからして、「魔法飛行」のアレは実行不可能ではないのか? ということ。実際実験してみないことには判らないのですが、見たところ結構厳しそう・・・。
それはともかく、途中まででも登れただけで大満足でした。
聳塔から降り、またまた学生食堂で休憩。
そのまま帰ることになったのですが、「夕食をどこかで食べないと・・・」というようなことを僕がぽつりと漏らしたら、皆さんが付き合って下さることになり、全員で茅ヶ崎へ。わざわざ付き合って頂いてとても感謝です。
でも、その帰りのバスの待ち時間が今度はなんと30分・・・・・・。しかも寒い。
その待ち時間、流れで拙いながらもいくつかマジックを披露させていただきました。
実のところ、結構失敗していたのですが・・・。暇潰し程度にでもなっていれば幸いなのですが、どうだったでしょう?(不安)
余談ですが、みつるさんが携帯で流した「オリーブの首飾りは意表を突かれました。
もしかして、わざわざ用意してらしたのでしょうか・・・・・・?
そんなこんなで30分間。それから、バスに乗って更に約30分。茅ヶ崎に到着し、中華料理店で食事。
色々と本の話題で盛り上がる。
「ななつのこものがたり」の話題もあって、とても興味深かったです。
その後は、特に何もなく帰宅。
とにかく、一日楽しい時間を過ごさせてもらいました。
昨日は本当にありがとうございました。>参加者の皆様
なるみやさん、みつるさんのお土産も堪能させていただきました。
次回のオフはデザインフェスタでしょうか。できれば参加したいと考えています。
楽しみです(気が早すぎますね)。
(それにしても、「ななつのこものがたり」オフレポより先にこちらを書いてしまいましたが、
「ななつのこ」のほうのオフレポはどうしよう・・・・・・。)
どうでもいいこと・・・?
今のところ、二つのサイトでそれぞれ毎日日記を書いているわけですが、それにこのブログをこれから書いていくことにすると・・・・・・。
一日に三箇所で日記(のようなもの)? を書くことになるわけで。
結構大変かもしれません。
それでも、書評系のサイトは一度作ってみたかったので、続けられれば気がついたときにでも適当に書評などを書いてみたいと思います。
以上、本当は最初に書くべきだったのかもしれませんが、「ブログを始めるにあたって」のようなことでした。
『魔法飛行』の舞台から
- 加納 朋子
- 魔法飛行
- 小説『魔法飛行』の舞台のモデルとなった大学から、この作品の書評(?)を書いてみるのは少し面白いかな、などと思ったり。
加納朋子さんの作品の中でも、特に評価が高く、多くの方に支持されているこの作品。
通称・駒子シリーズの第二作目で、前作を読んでおくとより楽しめます。というより、前作『ななつのこ』の前にこれを読んでしまうと、『ななつのこ』を読んだときの驚きが減ってしまうので、やはりこれを先に読むのはあまりお勧めできません・・・・・・。
論理性の美しさが際立った作品でありながらも、ミステリというよりはファンタジーに近い味わいがあります。
一話目から張られた伏線が綺麗に回収される最終話は、ただ感動するばかり。
今までに何度も読み返していますが、そのたびに感動してしまうのは、それだけこの作品が素晴らしいということです・・・・・・よね。
表紙の菊池健さんの絵もため息が出るほど美しく、そういった意味でもぜひ手元においておきたい小説です。
そして今、窓から外をのぞけば、表題作の舞台である聳塔が文字通り聳えています。
なかなか感慨深いものがあります。雨降りで、天気が良くないのは残念ですが・・・・・・・。
一度、この聳塔に登ってみたいものです。そして、もっと言えば、『例の実験』をやってみたいかな、なんて・・・・・・。贅沢言い過ぎでしょうか。相当無理な願いですが、いつか叶えば・・・・・・。
とりあえず今は、目の前の聳塔祭をもう少し楽しみたいと思います。