有川浩 「海の底」
- 有川 浩
- 海の底
春、寧日。
天気晴朗なれど、波の下には不穏があった。
横須賀に巨大甲殻類襲来。
食われる市民を救助するため機動隊が横須賀を駆ける。
孤立した潜水艦「きりしお」に逃げ込んだ少年少女の運命は!?
海の底から着た「奴ら」から、横須賀を守れるか――!?
◆ ◆ ◆
有川浩の作品は初めて読みます。
結構書店などでも大きく宣伝してたので、この作者のことは以前から気になっていたのですが、なかなか読む機会が見つからず・・・。
今回、偶然入手したので早速読んでみました。
内容を簡単に言えば、巨大エビと戦う話です。
といっても、一言で集約できないくらい(当たり前ですが)多くのストーリーが一冊に詰まっています。
あらすじだけ見ると「ありえない」のですが、圧倒的なリアリティのおかげで、まるで実際にあった話を書いているような、そんな気もしてきます。
また、相当多くの登場人物が出てくるのですが、途中混乱することもほとんどありませんでした。
元がライトノベル系の作家だからか、とても読みやすく、結構分厚い本なのに一気に読めます。
尤も、軽いというわけではなく、どちらかといえば重いテーマが詰まっているのですが。
潜水艦内での、二人の大人と十三人の子供のやり取り。
そして、陸上で巨大エビと戦う機動隊の人々。
主にこの二つから話は成っているのですが、メインパートはどちらかといえば潜水艦内のほうでしょう。
いじめ、自立、恋愛など、色々なテーマがこの潜水艦パートの中にあります。
また、陸上の機動隊のほうも、自衛官などに絡めた様様な問題が描写されています。
これだけ詰まっていながら、やたらと面白い。
お薦めです。装丁もとても綺麗なので書店で見かけたらぜひ手にとって見てください。もちろん8点です。
中間試験
中間試験のため、木曜まで更新は出来ない・・・・・・と思います。
一応、試験が終ったら、最近読んだ
有川浩「海の底」
乾くるみ「リピート」
桜庭一樹「推定少女」
あたりの書評をアップする予定です。
とりあえず今は勉強・・・。
米澤穂信 「クドリャフカの順番」
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米澤 穂信
待望の文化祭が始まった。何事にも積極的に関わらず<省エネ>をモットーとする折木奉太郎はのんきに参加する予定だったが、彼が所属する古典部で大問題が発生。手違いで文集を作りすぎたのだ。
部員が頭を抱えているそのとき、学内では奇妙な連続盗難事件が起きていた。十文字と名乗る犯人が盗んだものは、碁石、タロットカード、水鉄砲――― この事件を解決して古典部の知名度を上げよう! 目指すは文集の完売だ!
千載一遇のチャンスを前に盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は「十文字」事件の謎に挑むはめに!
◆ ◆ ◆
- ずっと本棚に立てかけてあったのですが、昨日ようやく読み終えました。
- 「氷菓」「愚者のエンドロール」に続く古典部シリーズ三作目で、今まで引っ張ってきた文化祭――カンヤ祭が舞台になります。
- 今までの二作は主人公である奉太郎の視点のみだったのですが、この作品ではメインの登場人物四人の視点がそれぞれあり、おかげでどことなく豪華? な感じです。シリーズの読者としてとても楽しめました。
- 文化祭。
- それだけでも、どこか特別で、「青春」な響があります。元々学園小説や青春小説としてよく出来ているシリーズでしたが、今回はそれ――学園小説としての側面が、特に強く出ています。
- もちろんミステリ部分も、これまでの中で一番といってよいくらいのネタを持ってきているのですが、何よりカンヤ祭の数々のイベント。
- クイズ対決やお料理対決。わらしべプロトコルも面白いです。
- あちらこちらにユーモアがあふれていて、読んでいる間、ずっと「こんな文化祭に参加してみたい」と思っていました。
- これだけ部活や研究会が多いと、どれだけ楽しいか。こういった学園生活もしてみたかった気がします。
- そして、青春には楽しいことばかりじゃないのですよね。
- 帯にある、
- 「青春はやさしいだけじゃない。そして、痛いだけでもない」
この一行が、上手くこの作品の本質を突いているように思えます。
そのとおりの少しほろ苦いラストで、それでも後味は非常によく爽やかです。
文句無しの9点で、間違いなく今まで読んだ米澤さんの作品の中ではベスト。
まだこのシリーズを読んだことがない方は、「氷菓」から、ぜひ。
締め切りって・・・・・・
昨日のこと。
いきなり学校で「アレ、持ってきた?」と聞かれ、何のことだろうかと必至に思い出そうとしていると、
「図書委員会の原稿。締め切り今日までだけど」
・・・・・・図書委員会で年に一回(だったはず)発行している会誌。僕自身は図書委員会には入っていないのですが、いろいろあってその会誌に書評を書かせてもらうことになっていたのです。完全に締め切りのことなど忘れていました。
締め切りなんて聞かされてない! なんて言い訳も通じるわけなく、仕方がないので頼んで一日締め切りをのばしてもらう。
・・・・・・ま、そのようなことがあったおかげで、昨日は夜遅くまでずっと書評を書いていました。
来週からテストなのに・・・・・・(そんなことを言っておきながらブログ更新しているような人間ですが)。
一応完成し、今日提出することが出来たのですが、それだけだと何かもったいないのでこちらのブログにも掲載することにします。許可はとってませんが、多分大丈夫でしょう。
・・・・・・ということで、一挙掲載。いくつかは後から付け加えましたが(点数など)、基本的には図書委員のほうに出したのと変わらないものです。
米澤穂信 「氷菓」
- 米澤 穂信
- 氷菓
いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして「氷菓」という題名の文集に秘められた三十三年前の真実――。
学園青春ミステリである。薄く、五百円で買えるというお手ごろな値段。その割に、中身は結構詰まっている。青春小説としても、「日常の謎」もののミステリとしても良く出来ているが、まず読物として楽しめる点が良い。
いわゆる連作短編のような形に見えるが、中心となる謎は文集「氷菓」に関するものである。これに隠された真実はとても切ない。このタイトルの本当の意味を知ったとき、どこかやり切れないものを感じた。
爽やかだが、少しほろ苦い。このシリーズは現在三作出ているが、最初の話であるこの小説が気に入った人は、後の二冊も読んでみると良いと思う。
評価は8点に限りなく近い7点。
麻耶雄嵩 「神様ゲーム」
- 麻耶 雄嵩
- 神様ゲーム
講談社から刊行されている、子供向けの推理小説「ミステリーランド」の中の一冊。
児童書なので、文字も大きく、1時間程度あれば読める。だが・・・・・・この内容は強烈。神業としか言いようがない。おそらく、今年出版された本の中で一位二位を争うくらいの問題作。実に密度が濃い。そしてダークだ。
「神様」の告げる真実は残酷でありながら絶対である。そして、次々と下される「天誅」、明かされる意外な真相、衝撃のラスト・・・・・・。小学校高学年くらいを対象年齢にしているのだろうか。だとしたら、この本は確実にトラウマを植え付けるために存在すると言ってもいいだろう。読みやすい&短いために、少しでも興味がある人はぜひ読んで欲しい。「ミステリーランド」一番の問題作でありながら、一番の傑作でもある、と思う。
評価は8点。(この書評は図書委員会の会誌に掲載予定のものです)
東野圭吾 「容疑者Xの献身」
- 東野 圭吾
- 容疑者Xの献身
この作品の内容を簡単に説明すると、一人の女性を愛した数学者が、彼女が犯した殺人を隠蔽するためにあれこれ偽装工作する話・・・・・・である。こう書くとあまり面白そうに見えないかもしれない。だが、予想するに、この作品は今年発売されたミステリの中からベストを決める「このミス」や「本ミス」などで、確実にベスト5、いや3位入りすると思う。1位でも全然おかしくない。むしろありえて当然の結果。それだけ、これは評価されるべき作品だ。
天才数学者が、愛した女性を守るために考え出した「究極のトリック」。それが明かされた瞬間、大きな感動と切なさを覚える。ミステリとしての仕掛けと、登場人物たちのドラマが密接に結びつき構成された物語。
今年刊行の新作の中で、絶対に見逃してはならない作品である。
採点はかなり高めの9点。何度も繰り返すようだが、間違いなく傑作。今でも、色々な場所で話題になっている。ミステリがそれほど好きではない、という方もこれなら良いと思っていただけると思う。
(この書評は図書委員会の会誌に掲載予定のものです)
西澤保彦 「実況中死」
- 西澤 保彦
- 実況中死―神麻嗣子の超能力事件簿
これだけはミステリが好きな人にしか受け入れられないかもしれない。それでもあえて書いたのは、ある一点においてものすごいことをやっている作品だからである。
一応、表紙などからもわかるとおり、ライトノベル調ではあるのだが、中身は紛うことなき本格ミステリ。一応、前作「幻惑密室」を読んでおくとより良い。どちらも、超能力を前提とした論理思考型の緻密なパズラーだ。
この作品の見所は、一言で言えば「意外な犯人」。おそらく、かなりのマニアでもこの作品の犯人は当てられない。はっきりと、堂々と登場している人物であるにも関わらず、である。そういう意味ではフェアだが、犯人に関して使われているトリックは少々アンフェア気味かもしれない。とはいえ、決して反則技が使われているわけではなく、自信がある人はこの作品の犯人当てに挑戦してもらいたい。本当にすごいので。
ミステリとしての評価は高めの8点。きっと驚くはず、と断言しておく(していいのか・・・?)。
(この書評は図書委員会の会誌に掲載予定のものです)
竹内真 「自転車少年記」
- 竹内 真
- 自転車少年記
自転車を通じて出あった、当時四歳の二人の少年。彼らは、自転車とともに青春時代をすごし、大人へと成長する。彼らが出会ってからの二十五年間を描いた、傑作青春小説。
正直なところを言えば、自転車にそれほど興味があったわけでもないし、そもそも自転車の知識なんて欠片も持ち合わせていなかった。だが、それでもこれは面白かった。自転車のことなど、何も知らなくても楽しめる。
出会い、挫折、別れ、恋、進学・・・・・・。色々な人生の「通過点」が各所で描かれる。それに対する、登場人物たちの思いや考えが読んでいて心に響く。展開も早く、一気読みは間違いない。読後感も最高。爽やかな小説だ。
評価は8点。(この書評は図書委員会の会誌に掲載予定のものです)
(ちなみにこの作品はとある方にお薦めいただいて読んだ作品です。薦めてくださった方に、ここで感謝の意を捧げたいと思います。どうもありがとうございました)
桜庭一樹 「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」
- 桜庭 一樹
- 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
一応ライトノベルということで、ページ数も少なく、イラストも入っていたりするのだが、内容は全然ライトではない。
冒頭で、一人の少女がバラバラ死体で発見された、という新聞記事が提示される。この小説は、それからほんの少し時間をさかのぼり、その少女が転校してきてから殺されるまでの間を書いたものだ。その数日というのがまた暗く、そして痛い。決定付けられた悲劇的な結末を読者は知っているだけにより一層・・・・・・。何らかの仕掛けを使ってハッピーエンドに持っていくことも出来たのだろうが、あえてそのようなことはせずに、最初に書かれたとおりの救いようのないラストを迎える。
あらゆる意味で衝撃的な作品である。このような作品が、このようなレーベルで出版されたことは、何かを暗示しているかのようにも思える。ひたすら重いが、色々考えさせられた。そういった意味で8点。尤も、この作品に対しての評価なんて無意味に思えるが・・・・・・。
(この書評は図書委員会の会誌に掲載予定のものです)