若竹七海 「クール・キャンデー」
- 若竹 七海
- クール・キャンデー
「兄貴は無実だ。あたしが証明してやる!」
誕生日と夏休みの初日を明日に控え、胸弾ませていた中学生の渚。
だが、愉しみは儚く消えた。
ストーカーに襲われ重態だった兄嫁が他界し、さらに、同時刻にそのストーカーも変死したのだ。
しかも、警察は動機充分の兄良輔を殺人犯として疑っている!
はたして兄のアリバイは?
渚は人生最悪のシーズンを乗り切れるか。
◆ ◆ ◆
わずか160ページで、1ページあたりの文字数も少ないため、1時間と掛からずに読み終えました。
明るく軽快なテンポで話が進みます。
・・・・・・でも、実際はものすごくダークな話。
ラスト一行は凄い。一気に明るい物語が反転してブラックへ。
結構驚かされたのですが、後味悪いなー、これは。
でも、嫌いではないです。
単純なストーリーだと思っていたら、あちらこちらに悪意が介入していて、
真相の意外性は十分。
丁度良い長さにまとまっていますし、結構よいかも。
後味が悪くても大丈夫、という方なら楽しめるでしょう。
僕は十分面白く読めたので、7点。
暇なときにさらっと読むのが良いかもしれません。
貴志祐介 「硝子のハンマー」
- 貴志 祐介
- 硝子のハンマー
見えない殺人者の、底知れぬ悪意。異能の防犯探偵が挑む、究極の密室トリック!
「青の炎」から4年半、著者初の本格ミステリ!
日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。
エレベーターには暗証番号。廊下には監視カメラ、有人のフロア。
厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。
すべてが不明のまま、逮捕されたのは、続き扉の向こうで仮眠をとっていた専務・久永だった。
青砥純子は、弁護を担当することになった久永の無実を信じ、密室の謎を解くべく、防犯コンサルタント榎本径の許を訪れるが―。
◆ ◆ ◆
久々に密室トリックをメインに置いたミステリを読みました。
正直、「自分には合わないかも」とそれほど期待はしていなかったのですが、
見事に予想を裏切られました。
コナン・ドイル「緋色の研究」を思い出すような二部構成で、
第一部では、密室トリックに関してあらゆる可能性が検討され、次々と新しい仮説が提登場しますが、ことごとく論理的に否定されていきます。
いかにして、厳重なセキュリティをかいくぐり、監視カメラの目からも逃れ、社長を殺害することが出来たのか。
その仮説の一つ一つと、それが破られていく過程。これが非常に面白く、思わずのめりこんで読んでしまいました。
もう解決法は存在しない、と読者も本気で思えてきた頃に、探偵役がトリックに気づき、そこで第一部は終了。
第二部では、今度は犯人の側にスポットを当てて話が展開します。
何が犯人に殺人を起こさせたのか。密室トリックを思いつかせたのか。
犯行に至るまでの数年間が描かれるのですが、これも物語として引き込まれました。
そして、いよいよ第二部の最後で、ここまで引っ張ってきた「密室」の構成法が明かされる。
このトリックは素晴らしい。斬新な解決法です。
全く思いつきませんでした。
このトリックが判ってみると、タイトルや表紙がものすごい重要なヒントになっていたことに気づかされます。お見事。良くこんなトリックを思いついたものです。
探偵役も魅力的で、どうやら同じ主人公の続編も予定されているとか。
「硝子のハンマー2」だったかな?
是非読みたいですね。
評価は8点。密室ものの傑作です。
索引について
このまま感想を書いていくのだとしたら、やはり索引が合ったほうが便利だろうと思い、
丁度時間も合ったので作ってみました。
やはり偏りが激しいですね・・・。このように一覧にしてみるとそれがよくわかります。
「こうしたほうが見やすい」などのご意見があれば、ぜひともご指摘いただければ幸いです。
よろしくお願いします。
歩行祭(もどき)
今日は僕の学校で毎年行われるイベント、「歩く大会」の日でした(なんてそのままのネーミングだ・・・)。
およそ25キロほどの道程をただひたすら歩き通すだけのイベントです。
しかも、かなり高低差がある道。小さな山(峠?)も超えたり。
これ自体は結構好きなイベントで、
特に今年は恩田陸さんの「夜のピクニック」に出てくる歩行祭を思い浮かべて少し楽しみにしていたのですが、
・・・・・・認識が甘かった。
やはり、辛いです。
序盤からハイテンションで通していたら体力をどんどん消耗していって、最後のほうは足の痛みや疲れが酷く、歩くだけでもきつかった。
しかし、これでも「夜ピク」の歩行祭のほんの3分の1程度の距離なんですよね・・・。
僕はこれだけでギブアップ。日ごろから鍛えていないとダメですね。
あと、「夜ピク」が頭に合った成果、恩田さんの話題がよく出てきていました。
最初のほうは、麻耶雄嵩さんの作品について議論しながら歩いていたりもしたのですが。
何だかんだいっても、こういったことを話しながら歩くのは楽しいです。
ちなみに、記録は4時間45分でした。去年に比べれば上がったかな・・・・・・。
で、明日、明後日は確実に筋肉痛で動けないので、一日中読書することになりそう。
これから三連休なのです。
カトリック系の学校なので、「諸聖人の休日」「死者の日」で火曜日、水曜日も休み。
僕は別にキリスト教でも何でもないのですが、こういうときは感謝したいですね。
本ミス読者投票
2006 本格ミステリベスト10 MY BEST RANKING
去年は投票しようとしたら、いつのまにか期限が過ぎていたので、
今年こそは投票しよう、と今から投票する予定の本など選んでいます。
ついでに、2005年度に出版されたミステリで読んだ作品のまとめとかもかねて。
今のところ、4位まではほぼ確定。
1位 東野圭吾「容疑者Xの献身」
2位 麻耶雄嵩「神様ゲーム」
3位 石持浅海「扉は閉ざされたまま」
4位 米澤穂信「クドリャフカの順番」
ほとんど差はないのですが、
「容疑者X」は、トリックは比較的早い段階で判ったものの、それでも完成度が高いので。
「神様ゲーム」は、麻耶雄嵩らしいダークで壊れた展開に。
「扉は閉ざされたまま」は読んだばかりですが、そのロジックの面白さが。
「クドリャフカ」はただ真相が好みだから、というだけです。
問題は5位なんですよねー。
我孫子武丸「弥勒の挙」や飛鳥部勝則「誰のための綾織」、藤岡真「ギブソン」などは、個人的に何か足りない気がしますし、
とても面白く読めた小路幸也「HEARTBEAT」、加納朋子「てるてるあした」、伊坂幸太郎「死神の精度」、桜庭一樹「少女には向かない職業」あたりは、「本格ミステリ」としてみるとどうかなぁと思ってしまいます。
ただ、この四冊は「このミス」には入ってほしいかな、と。
後は、北山猛邦「『ギロチン城』殺人事件」も悪くはないのですが、「アリス・ミラー」や「瑠璃」などに比べるとどうしても劣っている印象がありますし。
中町信「天啓の殺意」は良かったのですが、さすがにこれは投票できませんよね(発表は二十年も前ですし)。
そういえば、と思い出したのが田代裕彦「キリサキ」で、これは多分投票する方はほとんど居ないと思うのですが、ライトノベルではありますが意外とよく出来たSFミステリです。
これに投票してもいいかな、と。本ミスには合わないかもしれませんが。
ちなみに、北村薫「ニッポン硬貨の謎」、有栖川有栖「モロッコ水晶の謎」、東川篤哉「交換殺人には向かない夜」などは未読なんですよね。
どれも、期限までに読めそうにないので、やはり上にあげた中から選ぶことになりそう。
いっそのこと、好きだからという理由だけで「てるてるあした」に入れてしまおうかなー。
後一週間あるので、じっくり考えてみます。
日暮茶坊 「Ever17」
- 日暮 茶坊
- Ever17
少年が目覚めたとき、彼の記憶は失われていた。
わかっていることは、ここが大規模海中海洋テーマパークLeMUであり、自分が誰かを捜しに来たということだけ…
そして、突然の事故。少年は崩壊しつつあるLeMU内に取り残されてしまう。
LeMU内で彼が出会う友人たちの抱く秘密とは?
少年たちは無事にLeMUから脱出できるのか!?
タイムリミットは残り一一九時間…。
緻密に練り込まれたストーリーラインで大人気の『Ever17』をノベライズ!
やがて明らかになる驚愕の真実とは。
◆ ◆ ◆
別の意味で驚愕です。
無理ありすぎ。読んでいて思わず笑ってしまいました。
ちなみに、この小説に手を出したのは、元となったゲームをプレイしたことがあるからでして。
その元となったゲーム「Ever17」は、今までで唯一自分で購入したゲームです。
元々、ゲームは苦手なので生まれてこの方ほとんど手を出したことはないのですが、
この作品は色々なところで「どんでん返しが凄い」との評判を受けていたので、買ってみました。
よく、「映像化できない小説」というのはありますが(要は叙述トリックのことですけど)、
このゲームは映像化はもちろん「ノベライズも出来ないゲーム」で、
年代設定や登場人物の年齢、デモムービー、主題歌、タイトル、そしてこれが「ゲームである」という事実でさえ、全てトリックのための伏線・ミスリードに奉仕しています。
メイントリックのうち二つは、新本格などでよく見るものなのでかなり早い段階で判ってしまったのですが、
もう一つのトリックは何が何でも「ゲーム」でなければ仕掛けられないものであり、これに非常に強い感銘を受けました。
また、そのメイントリック3つのために張られた伏線や、細かい仕掛けの数々にも意外性があり、
さらに、トリックと物語が綺麗に結びついている、という点などもあって、このゲーム自体は普段まずつけない10点評価をつけた大傑作なのです。
ちなみに、ジャンルが「恋愛アドベンチャー」となっていますが、これは全くの嘘ですね。
SFサスペンス、というのが一番正しいでしょう。ただし、わざわざそのようにジャンルを偽っていることにも、仕掛け上の意味があります。
これも、気づいたときは「そんなところまで考えていたのか」と驚かされました。
・・・・・・さて、ゲームのほうの感想が長くなってしまいましたが、その「ノベライズ不可」をやってしまったこの小説はというと。
一言で言えば駄作です。
こういう表現はあまり使いたくないのですが、これは絶対にお薦めしません。
あとがきでも書かれているように、3000~4000枚のテキスト量のゲームを、わずか200ページにまとめるということ自体が無理な試みです。
そもそも、ゲームでしか出来ないトリックを小説にする、というありえないことをやっているため、ラストはただただ意味不明です。
というより、既に矛盾ありすぎですし、SFとしてもミステリとしても、理解不能の域を越しています。
ゲームは10点ですが、この小説を単体で読むなら3点が限度かな、と。
ゲームのほうはとにかくお薦めです。××トリックを使ったミステリが好き、という方は一見の価値があると思います。
公式サイトはこちら 。ちなみに、PC版も出ています。自分はこちらを購入しました。
なんとなく、森博嗣さんの「そして二人だけになった」や、麻耶雄嵩さんの「夏と冬の奏鳴曲」に似ている部分もあるので、この二冊がお好きな方は、特に。
選択肢を選ぶだけのノベルゲームなので、ほとんど小説と変わらずゲームが苦手という人でも大丈夫でしょう。
・・・・・・問題は、一部寒すぎるギャグと、一部アレなキャラクターですが、これも慣れれば・・・・・・・多分問題ないです。
借りてきた本とか
図書館に行ってきたので、一応借りてきた本のメモ。
石持浅海「扉は閉ざされたまま」
貴志祐介「硝子のハンマー」
日暮茶坊「Ever17」
若竹七海「クール・キャンデー」
以上、四冊。
うち、一冊は既に読み終えたので書評上げてあります。
・・・・・・ところで、昨日、「夏と冬の奏鳴曲」も買いにいってくる、と書きましたが、
かなり大きな書店に行ったのに置いてませんでした。
さて、どうしよう?
しかも、書店くじやってませんでしたし。あんなに大きいのに何故?
ただし、代わりに、予想外の出来事でしたが恩田さんの「ネクロポリス」を半額で入手。
それも、古本でなく新刊で。
祖母から、ポイントカードがたまったので・・・・・・ということで、2000円分の商品券をもらったのです。
感謝です。おかげで、古本屋に出回るのを待たないですみました。
なので、これも数日中に読みます。
ちなみに、今予約している本は以下の四冊。
石持浅海「水の迷宮」
倉坂鬼一郎「泪坂」
東川篤哉「交換殺人には向かない夜」
米澤穂信「犬はどこだ」
東川さん、米澤さんは届くのが当分後になりそうですが、残りの二冊はすぐ届くと思います。
石持さん、特に楽しみですね。
石持浅海 「扉は閉ざされたまま」
- 石持 浅海
- 扉は閉ざされたまま
久しぶりに開かれる大学の同窓会。
成城(せいじょう)の高級ペンションに七人の旧友が集まった。
〈あそこなら完璧な密室をつくることができる〉
当日、伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、
外部からは入室できないよう現場を閉ざした。
何かの事故か? 部屋の外で安否を気遣う友人たち。
自殺説さえ浮上し、犯行は計画通り成功したかにみえた。
しかし、参加者のひとり碓氷優佳だけは疑問を抱く。
緻密な偽装工作の齟齬をひとつひとつ解いていく優佳。
開かない扉を前に、ふたりの息詰まる頭脳戦が始まった……。
◆ ◆ ◆
今年の本格ミステリの中でも、特に話題の一冊。幻影の書庫 の月田さんのお薦めもあって、もう少し後に読もうと思っていたのですがすぐに借りてきて読了。
大変面白かったです。
倒述ものであり、犯人と探偵役のロジックによる頭脳戦が素晴らしい。
一見完璧に見える密室殺人。
しかし、それにはいくつもの論理的な矛盾がある。
僕も、一体どこに間違いがあるのか、色々と推理しながら読んだのですが、
ほとんど気づきませんでしたね。
探偵役が指摘するたびに、「ああ、そんなところか!」と驚いてばかり。
これだけロジックだけで楽しめる作品はそうそうないと思います。
また、この作品は密室ものですが、タイトルにあるとおり終始「扉は閉ざされたまま」です。
このような趣向は、今まで読んだ中では前例がありませんね。
というより、そのような趣向が成立するというのは・・・・・・。すごいの一言に尽きます。
それでいて、これだけのロジックの面白さを味わえるのだから、間違いなく傑作でしょう。
9点に近い8点、ということで。
石持さんの作品は初めてだったのですが、こんなに面白いとは知りませんでした。
今、これもまたお薦めいただいた「水の迷宮」を図書館に予約中。その次は、「月の扉」も。
読むのが楽しみです。
この作品、今のところ今年発売されたミステリの中では、
「容疑者Xの献身」、「神様ゲーム」に並ぶほど「本格」として面白いと思います。
これは確かに今年の本ミス・このミスで1位2位をとりそうですね。お薦めです。
米澤穂信 「さよなら妖精」
- 米澤 穂信
- さよなら妖精
一九九一年四月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』、そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶のなかに――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。気鋭の新人が贈る清新な力作。
◆ ◆ ◆
社会派青春ミステリ、なんてジャンルが存在するのかどうかは知りませんが、もしあるならこれは間違いなくその中に入るであろう作品です。
基本は青春小説で、たまに「氷菓」のような小さな謎が出てきて、解かれて行く。
そして、異国から来た少女・マーヤが自分の国に帰った後に、最大の謎解きが始まります。
この部分は、あまり類を見ない「謎解き」で、使われる手がかりなどは前半部分で提示されているのですが、まさかそれがこういう推理のための伏線になるとは思いませんでした。
再読すると、「この台詞、最初は気にもかけなかったな」という所も多かったです。
タイトル、章題、登場人物たちの台詞など、ラストは色々な個所で暗示されているのですが、
実際、最後で書かれた「事実」には、どうしてもやり切れないものがあります。
結末を知ってからもう一度読むと、より切ない。
何気ないやり取りの数々がただ切なく、やはり「社会派」部分を深く考えさせられてしまいます。
米澤さんの作品の中でも、切なさという意味では一番だと思います。
米澤さんの作品がお好きで、まだ未読の方がいたら読んでみてください。
また、既に読んだことがある方でも、再読してみるとより深く味わえると思います。
評価は8点。「クドリャフカの順番」の次くらいに好きですね。