2005-12-14 23:00:07

田代裕彦 「シナオシ」

テーマ:読書感想 た行
田代 裕彦
シナオシ

"<シナオン> それは全てを為直す者の名"

私はかつて「僕」だった。

犯すべきでない罪を犯した。

そうして、その短い人生を終えたのだ。

生前に犯した罪を後悔していた「僕」は、別人として生き返り、再びこの世界に舞い戻る。

けれど、私は私として生活するうちに、「僕」だった頃の記憶のほとんどを失っていた。

<案内人(ナヴィゲーター>と名乗るそいつが、私の目の前に現れるまで。

「やあ。久しぶりだね」

かつて犯した犯罪を阻止すること。

その為に時を遡り為直す者―<ナシオン>となったこと。

私は、私の真の目的を思い出す。

こうして再び<シナオン>となった私は「僕」がこれから犯すであろう罪を阻止する為に動き出す。

過去、現在、未来。交錯する時間の流れの中で、私は真実の自分を追う。

全てをもう一度、為直しするために。

残された時間は、あと僅か―。

衝撃のタイムパラドクス・サスペンス!
 

 ◆ ◆ ◆

 

ああ・・・・・・。

寒い中わざわざ買いにいった価値がありましたよ。

これは、最近読んだ中でもベストといっていいくらい面白い!

なんと言っても、あの「キリサキ」の続編ですから、つまらないわけがないのですよ。

まず、設定からして凄い。

相当複雑です。かなり端折ってしまえば、かつて殺人を犯した人間が、過去に別人の姿で戻って自分の犯す犯罪を阻止しようとする話。

 

かつての自分――殺人を計画していた<僕>と、今の自分――それを阻止するために”シナオシ”になった<私>。

この二人(実際は一人ですが)の視点から交互に話が語られるのですが、まず途中で<僕>が誰なのかがわかった時に小さな驚きがあります。

でも、こんなのは序の口。

<僕>が誰を殺そうとしているのかを追求する<私>、そして計画を着実に進めていく<僕>。

<私>を斜め上から見物しているナヴィ・・・・・・。

<私>には<僕>の頃の記憶がほとんど無く、<僕>が誰か、<僕>が誰を殺そうとしているのかもわからないのですが、何とかそれを止めなければならない、という状況。

読者はもちろん<僕>の正体も、誰を殺そうとしているのかも判っているので、一体どうなるのだろう? という興味が尽きず、展開も予測不能。

そして終盤、<私>が<僕>の正体を突き詰めてからは、まさに怒涛の展開としか言うほか無く、

解決では、あまりに驚いて声を上げてしまいました。

まさに大どんでん返し。お見事です。

これだけ驚いたのは何ヶ月ぶりか・・・・・・。

瞬間の衝撃という点からすれば「キリサキ」以上でしょう。

その後もタイム・パラドックスに関係したトリックの説明が為されるのですが、非常に複雑ではあるけれど僕はこういうのはかなり好きなので・・・・・・。興奮しきりでした。

また、途中に麻耶雄嵩氏の「鴉」のような、あまりにも大胆な伏線があるのですが、この「?」が解ける瞬間の爽快感は凄いです。

この、違和感が解ける時の独特の感覚も、ミステリの醍醐味の一つですね。

しかし、「キリサキ」の続編とはいえ、流石に前作並みの出来を期待してはいけないだろう・・・・・・と思っていたら、見事に覆されてしまって、そのことにも驚きというか。

改めて、自分はタイム・パラドックスが関わってくるようなミステリに弱いんだなぁと実感。

 

これだけ褒めても褒めたりないくらいに、本当に良く出来た仕掛け、そして伏線

騙されて良かった・・・・・・。

こんなにすっきりと騙されて衝撃を受けたのは、夏に読んだ西澤保彦の「実況中死」以来かもしれない。

それだけでも、この本を読んだ価値があるというものです。

また、考える楽しみもあるからいいのですよね、これは。

 

とにかく、ライトノベルだからって甘く見ていてはいけません。

もし表紙イラストがちょっと・・・・・・、なんて理由で読んでいないなら絶対損をしているので。

本格とか、フェア・アンフェアとか考えていくとどうなるのか判りませんが、素直に騙されたい、という人には丁度いいかと。

特に、西澤保彦のSFミステリや、ゲームのInfinityシリーズや、谷川流の学校を出よう! の一連の作品、そしてもちろん「キリサキ」などが好きな人は、是非騙されたと思って読んでください。

ある程度、このジャンルになれているほうが衝撃は大きいかもしれない・・・・・・。

その分、仕掛けの想像がつく可能性が高くなる、というリスクはありますが。

ちなみに、「キリサキ」を読んで無くても大丈夫です。読んでおいたほうが楽しめるとは思いますが。

若干、真相が一瞬では把握しづらいので9点にしておきますが、これだけ面白いSFミステリはそうありません。是非田代裕彦さんにはこのシリーズを続けて欲しいものです。

「キリサキ」も素晴らしいタイムパラドックス・サスペンスなので、あわせてどうぞ。

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コメント

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2 ■キリサキも

ユキノさん、はじめまして。
TB&コメントありがとうございます。
「シナオシ」は、タイムスリップが関わるミステリの中でもかなり優れたものだと思います。
「キリサキ」も、同じくタイムパラドックスが絡んでくるミステリで、「シナオシ」がお好きでしたらきっと楽しんでいただけるかと思いますよー。

サイトのほう拝見させて頂きましたが、こんなに沢山タイムトラベルものを読まれているのですね!
自分もタイムトラベルもの大好きなので、是非参考にさせて頂きますね。

1 ■「シナオシ」

はじめまして。「シナオシ」読みました。
いろいろな謎が面白くてサクサク読んでしまいました。

ミステリ要素もあり良かったです~
「キリサキ」の方のよんでみたいです。

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