氷川透 「見えない人影 各務原氏の逆説」
- 氷川 透
- 見えない人影―各務原氏の逆説
私は暮林晴美。
どちらかというと無気力な今時の女子高生。
私立秀青高校で何となく気になっていたサッカー部のマネージャーになったのは、インドア男の兄貴の生半可な知識が災いした。
二年になって同じクラスの島本梓に誘われて、参考意見を述べたら、まんまと担ぎ上げられて、マネージャーになってしまったのだ。
そして五月下旬のある日サッカー部のエースフォワードのリョーこと不破了介がインターハイを前にして失踪するという事件が起こったのだ。
リョーはサッカー部の練習グラウンドのごく近くで発見された。
あろうことか、リョーは血まみれになって死んでいた。
どうも自殺の線はなさそうということで、軽音楽部の桑折君があの人に相談しようという。
そうあの人とは用務員の各務原氏だった。
◆ ◆ ◆
先に読んだ「各務原氏の逆説 」の続編です。
前の舞台は軽音部でしたが、今度はサッカー部。僕はサッカーの知識をほとんど持ち合わせていないので、連発される用語に戸惑ったりもしたのですが、知らなくてもそこまで支障は無いでしょう。
これもまた、前回と似たような構成で・・・・・・。
事件のポイントとなるのは、
「誰かが左足でボールを蹴り、それをあてて被害者を気絶させた」
という目撃者の証言。
このことから、左足のキックを得意とするサッカー部員の一人が犯人として疑われるが、彼も失踪してしまい・・・・・・。
なんというか、事件そのものなどは前回と全く違いますが、話の展開の仕方などがどことなく似ているように感じます。
そして、前作同様、人影の謎などに関しては「何でこんな簡単なことを最初に考えないんだ!?」(今回は前回より少し強めの口調で)と叫びたくなったり。
・・・・・・でも、一番最後の一行、というか一言で、「やられた!」と。
あー・・・・・・。これは作者の計算のうちだったか・・・・・・。
こんなどんでん返しがまっているとは。まさか前作のあの疑問も、これのミスリードなのか? と考えはしたものの、それは流石に無いか。
こんなのってありえるのか? と思いはするものの、まあこの人なら・・・・・・と無理やり納得させられてしまうのが凄い。
ある意味、本書が割とキャラクター性を強めに出しているのも、こういったトリックのためかな、と思ったり。
やはり、このシリーズは、事件自体が解決した後明かされる事実のほうに意外性が大きいように思えます。
まだ二作だけなので、今後もこのような形が続くとは限りませんが。
各務原氏のキャラクターも面白いですし、是非三作目も書いてほしい。
また、ミステリ部分とは関係ありませんが、各章の最初に、前作はMr.Childrenの「HERO」、本書は倉木麻衣の「always」の歌詞の一部分が載っていて、こういうのはあまり見ない趣向だな、と感じたり。
しかも、その歌詞がとても作品の内容に合っていて、また丁度良いタイミングで挿入されるので、上手いな、と。
そして、さらにどうでもいいことではありますが、
カバー折り返しにあるあらすじ紹介(上にあるものと同じ。上は訂正済み)に誤字があります。
一行目の「私は暮林晴美。」の部分が、「私は栗林晴美。」になっているのですが、ほとんどの本のネット販売サイトでもこうなっているんですよね。
確かに間違えやすい名前ではありますけれど、おかげで途中までずっと「何らかの叙述トリックか?」と疑ってしまいました。これは直して欲しいなぁ・・・・・・。
もちろん、実際は本当にただの誤植にすぎないのですが。
全体として、一作目より良いと思います。なので7点。
軽く読める青春ミステリとして楽しむのが良いでしょう。
ちなみに、これから読み始めてもほとんど問題はありません。作中で前作の一つの事件の真相があっさりばらされますが、元々の作品でもすぐに途中で明かされるような真相でですし・・・・・・。
逆に、こちらを先に読んだほうがいいかもしれない、と思える部分もあるので、どちらを先に読むかは好み、ということで。
湯本香樹美 「春のオルガン」
- 湯本 香樹実
- 春のオルガン
小学校を卒業した春休み、「私」のただ一人の仲間は9歳の弟だった。
隣の家との争いのせいでぎくしゃくする家を離れて、姉弟は外の世界をさまよい始める。
広い空の下の河原、不思議なおばさんとの出会い、そしてもう家には帰らず壊れたバスの中で暮らそう、と二人が決めた日の夜に…?
12歳の気持ちを鮮やかに描きだし、忘れがたい印象を残す物語。
◆ ◆ ◆
今までに詠んだ湯本さんの作品と同じく、これも読み終わった後「ああ、よかったな」と思える作品。
かかれているのはなんでもないような場面ばかりなのに、十二歳の少女の視点を通すと、とても特別なことに見えてくるんですよね。
実際、「私」にとってはそれは特別なことで、その感覚が伝わってくる、というか。新鮮な感じです。
一見淡々としているように見えて、実際は生き生きとしている文章も素晴らしい。
また、この作品は児童文学なのですが、「現実」が割とはっきりかかれています。
これに、先にも書いたような十二歳の少女の視点が加わることで、決して軽い話に終らず、あらすじにあるような「忘れがたい印象を残す物語」になっているのかな、と。
ちなみに、本書では野良猫が話に結構関わってきますが、
僕は猫が好きなので、色々と思うことも・・・・・・。
猫に限らず、ペットを捨てる人なんていない世の中になればいい。
それは無理なのでしょうけど。
捨てられた動物をみると居たたまれない気持ちになります。
でも、彼らも一生懸命生きてるんだよなぁ・・・・・・としみじみ感じたり。
人によって受け取り方は様様だと思いますが、すぐ読める割に色々なものが詰まった作品です。
お薦め。8点。
児童文学なんてあまり読まない、という人も是非。
辻真先 「盗作・高校殺人事件」
- 辻 真先
- 盗作・高校殺人事件
新宿駅のホームで起きた大惨事。その直前、向かいのホームにいとこの幽霊を見たという三原恭助に誘われ、被害にあった三組の高校生カップルが鬼鍬温泉を訪れたとき、地元に伝わるむかしばなしを髣髴させる事件が勃発し、お馴染みスーパーとポテトの活躍が始まる。
推理作家・辻真先の出発点となった超犯人シリーズの第二弾。
◆ ◆ ◆
作者は被害者で、犯人で、そして探偵でもある――。
前作 の「読者が犯人」に引き続き、今度はさらにレベルアップした趣向。
もちろん、納得できる解決が待っています。
ジュブナイル・ミステリとしてはどうかと思いますが、
前回より格段に面白かったですね。
少し文章に慣れたからかも。
何故か、少し読みにくいと感じてしまうんですよね・・・・・・。このシリーズの文章。
元はジュブナイル小説なのに。
キャラクターもなんだかな、と感じてしまうのはやっぱり20年前の作品だから?
でも、ミステリ部分は十分現代でも通じます。だからこそ復刊されたわけで。
二つの密室殺人、爆発事件の真相、幽霊の正体、そして犯人・・・・・・。
「超犯人シリーズ」と称されているだけあって、犯人まわりの部分がよく出来ています。
先にあげた趣向もそうなのですが、それを無視してもこの犯人は予想外でした。
また、密室殺人の真相部分も、前回よりは面白みが増しているかな。
このほかにも色々な謎と解決があり、それが一本にまとまっていくのは上手いです。
ただ、後味が悪いのは前回共通ですね。
せめて、三部作最後の話は後味がいいことを願います・・・・・・。
7点。
石持浅海 「月の扉」
- 石持 浅海
- 月の扉
週明けに国際会議を控え、厳重な警戒下にあった那覇空港で、ハイジャック事件が発生した。
3人の犯行グループが、乳幼児を人質にとって乗客の自由を奪ったのだ。
彼らの要求はただ
ひとつ、那覇警察署に留置されている彼らの「師匠」石嶺孝志を、空港滑走路まで「連れてくること」だった。緊迫した状況の中、機内のトイレで、乗客の死体が発見された。
誰が、なぜ、どのようにして―。
スリリングな展開とロジカルな推理!デビュー作『アイルランドの薔薇』をしのぐ「閉鎖状況」ミステリーの荒業が、いま炸裂する!
◆ ◆ ◆
最近気に入りつつある石持浅海さんの長編第二作。
思わず眺め入ってしまうような美しい表紙に惹かれ、この人の名前を知る前から「いつか読んでみよう」と思っていた作品です。
今度の閉鎖状況は飛行機の中。
ハイジャック犯の三人が中心となって書かれています。こういうのは少し珍しいのかも。
僕は「ハイジャック」と聞いて、ずっと飛んでいる飛行機を予想していたのですが、実際には空港を離陸する前の、止まったままの飛行機の中で話は展開します。
そして、占拠された飛行機の中で一人の女性が死亡し、
自殺か他殺かもわからぬまま、テロリストは発見者の一人を探偵役に指名する。
「すまないが、この事件の真相を調べて、わかったら教えてくれないか」
こんな探偵役の設定はあまり前例が無い・・・・・・というか、僕が思い当たる限りでは無いです。
ただでさえ、ハイジャックされた飛行機の中という状況が特殊なのに。
事件自体は、状況が状況なので犯人候補がかなり絞れてくるため、犯人はわかってしまう人もいるかも。
とはいえ、真相に至るまでのロジックのやり取りは非常に面白いので、それだけで十分。
そして、本書のもう一つの謎、
ハイジャック犯たちの目的。
そして、それに絡めたラスト。
僕は事件の真相よりもこちらのほうが面白かったですね。
犯人が明かされたあとに待ち受ける展開は、思わず呆然としてしまうくらい予想外。
タイトルの「月の扉」が示すもの。
表紙の写真にもつながる幻想的で美しい情景・・・・・・。
これもまた賛否両論分かれそうなラストですが、自分はとても好きです。
最後の一文も何ともいえない余韻が。
ところで、作中でほとんど神のごとく扱われているほどのカリスマ性を持つ「師匠」ですが、果たしてこのような人物は実際に存在するようなものなのか。
この人の凄さ、というのが、ハイジャックの動機にも意外なラストの展開にも関わってくるのですが、ここまでさせてしまうほどのカリスマ性って一体・・・・・・。興味深いです。
「水の迷宮」「扉は閉ざされたまま」に比べると、若干落ちるものの、それでも十分に楽しめる作品。
7点です。ロジック重視の人も、物語性重視の人も、どちらも楽しめるかと。
石持さんの作品を初めて読む人にも、これは良いかも。
「メメント」(映画)
- アミューズソフトエンタテインメント
- メメント
妻を何者かに殺されたショックから、10分しか記憶を保てなくなってしまったレナード。
彼は犯人を突き止める為、出会った人物や手がかりとなる物のポラロイド写真にメモを書き、自らの体にタトゥーを彫り、事件の真相を追っていくが…。
◆ ◆ ◆
映画自体が逆再生される、つまり、映画のオープニングが実際は話のラストに当たり、そのまま過去へ向けて――実際の「オープニング」に向けて、断片がいくつも再生されていくという奇妙な映画。
一本の映画を何分かおきに短いパートに区切り、それらの順番を逆に並び替えた、といえばいいのでしょうか。
その断片の合間には白黒のシーンが挟まれ、こちらは時系列順に進んでいきます。
とにかく、ややこしい映画。
冒頭で主人公が一人の男を殺すシーンから始まり(実際はこれがラストにあたる)、何故その男を主人公が殺すに至ったのかなどはその後で語られます。
主人公は、妻を殺した犯人に復讐をすることだけを考えている男。
果たして、事件の真相は何なのか?
「ラスト」から見ていても、全くそれが見えてこない上に、「逆再生」効果のおかげで全然話の展開の予測がつかないので、ついつい映像に集中してしまう。
というより、集中しないとすぐに何がなんだかわからなくなる。
一つの断片が再生され、白黒シーンが始まり、次の断片が再生され、そしてそのラストが一つ前の断片の冒頭へとつながる。おかげで、展開をしっかり覚えておかないと、途中で話がつながらなくなります。
これは主人公の「10分しか記憶を保てない」という障害を表すような構成ですが、本当に記憶なんて不確実なものだと思い知らされました・・・・・・。
きっと誰もがそう思うでしょう。
それがこの映画のテーマでもあるので、テーマが伝わるかいう点から見れば十分すぎるくらい成功しています。
そして、この映画のもう一つの見所は、独自の構成を生かしたどんでん返し。
最後のパート、すなわち「冒頭」で明かされる事実・・・・・・。
もちろん僕もそれなりに推理しながら見てはいたのですが、これは気づかなかった。というか、気づけるようなものなのか? 十分に驚かされました。でも、これがまた難解でもある。
結局、事件の真相は完全にわかるわけではないのですよ。
ただし、解決するための手がかりは与えられているので、考えればある程度妻殺しの真相は見えてきます。
しかし、やっぱり難しいことに変わりはないなぁ・・・・・・。
ただ、考えるのが好きな人にはとてもいいですね。
DVDには逆再生版(元の時系列順に戻してあるもの)も収録されているので、本編を見終わったあとそちらを見ると判らなかった人も理解できるかも。自信が無い人はDVDで見ることをお薦めします。
観ている間も観た後も、とにかく頭を使う映画なので、そういうのが嫌いな人には合わないと思いますが、
難解で斬新なサスペンスを求める人には丁度いいかと。
僕は結構楽しめたので、8点にします。
ただ、疲れるのは確かなので注意が必要です。
氷川透 「各務原氏の逆説」
- 氷川 透
- 各務原氏の逆説
私立秀青高校の軽音楽部の部室を覗いたのは、用務員の各務原氏だった。
染めているわけじゃないんだろうけど、赤みがかった髪。
眉毛が極端にうすく、眼はぎょろっとしている。
ピアノを練習していたぼくの前に現れた。
各務原氏は普通の用務員とはちょっと違う。
「そう用務員という職業の一般的イメージを問題にするなら、わたしはそこから外れた存在ではあるだろう」「しかし逆にそのイメージにぴったり合致する用務員さんをどこかから見つけてくるのも、至難の業だと思うけどね」という各務原氏。
翌日の火曜日。
学校の敷地内にパトカーが入ってきていた。
校内で女性の死体が発見されたのだ。
本格ロジックの第一人者がチェスタトンばりの逆説で迫る学園推理。
◆ ◆ ◆
どこかライトノベル調の表紙ですが、中身は結構しっかりしたロジック重視のミステリ。
・・・・・・というのは、タイトル見れば判ると思いますが。
ちなみに読みは「かがみはらしのぎゃくせつ」。
しかし、気のせいか、逆説の扱いはそれほど大きくないような・・・・・・。
各所に逆説めいたものはちりばめてありますが、タイトルに逆説と入れるほどのものか、と問われると、そこまで重要でもないだろうと思ってしまうレベル。
事件自体もいたってシンプルで、二番目の事件については、読みながら「何故この可能性を真っ先に考えないんだろう?」と突っ込みたくなったり。もちろん、途中で登場人物たちも気づきますし、何故それに思い当たらなかったか、その理由も説明されますが・・・・・・・。
でもやっぱり、通常なら一番最初に検討するようなことだと思うけどなぁ。
また、この作品の意図しているもう一つの趣向ですが、これもまた親切すぎるヒントのおかげである程度はわかってしまうかと。
そもそも、これは必要だったのかどうか。何のために存在するのかがわからないトリックなのですが。
本書で一番面白かったのは、犯人が明かされ、事件が解決した後の一場面。
青春ミステリらしく、ほろ苦い終り方で(結構容赦がない)、割と好みかも。
ここでの会話が本書中最も驚きでした。
また、各務原氏のキャラクターも好きなので、続編も読もうかと。
既に借りてきていますし。
中途半端な気はするものの、何だかんだでそれなりに面白かったような。
6点、としておきますが、逆説にそこまで期待しなければ楽しめる作品だと思います。
期末試験終了・・・・・・および、購入した本
試験終りました。
かなり悲惨なケアレスミスの連続で、精神的にもダメージを受けていますが、
ようやく終ったんだし、明るくいこう! と。もう試験のことは忘れました。というか思い出させないで・・・・・・。
とりあえず、たまっていた感想などは今日中、遅くても明日までにはアップします。
今日は、学校帰りに古本屋でも回っていろいろ買おうかなーと思っていたのですが、
予想以上に寒かったのと、所持金の問題と、積読がたまっているのと・・・・・・その他諸々に理由からあきらめて帰宅。
寒いのは一番苦手です。
そもそも、今僕が通っている学校に入学を希望した理由も、「プールが無いから」というあまりにもいいかげんなものなので。プールですら寒くて入れないのです。
そんなわけで、最近は常に五枚重ね着状態だったり。それはともかく。
帰宅した後、「そういえばキリサキの続編が出るって言ってたな・・・・・・」と学校で聞いた友人の言葉を思い出し、検索をかけてみたら、
・・・・・・もう出てたー!
そういうことは先に言って欲しい(いや、言っていたような気もするのですが)。
寒いから外出るの嫌だなー、でも読みたいなー、と小一時間ばかり悩んだ結果、
自転車に乗って買いに行くことに決定。
寒い寒いといいながらあちらこちらの書店を回ってみたのですが・・・・・・。
どこにも置いてない。何故?
仕方が無いから、同じく新刊で出ていた「食卓にビールを 5」と、「キリサキ」の作者の作品「平井骸惚此中ニ有リ」の1巻、2巻を購入。
そのまま、目的の本はあきらめて帰る・・・・・・予定だったのですが、
最後に、ほとんどあきらめていながらも一応確認しておくか、と寄った小さな本屋で発見。
- 田代 裕彦
- シナオシ
・・・・・・これです。
あらすじ読むだけでもとても面白そう。
(ちょっとネタバレかも)時間ものSF+叙述トリックというのは、僕が最も好きなジャンルの一つなので。
もちろん、そのような作品と決まったわけではないけれど、
前作がそういう方向性のものであっただけに、今回も期待できるかな。
「平井骸惚此中ニ有リ」のほうは多分また違った方向性だと思うのですが、そちらも面白そう。
ついでに、今日買ったもう一冊、
- 小林 めぐみ
- 食卓にビールを(5)
このシリーズは、なんだかよくわからないけれど好きです。
富士見ミステリ―文庫ですが、一巻以外はほぼミステリではなくて、
一応SF。でも、SFとして面白いというよりは・・・・・・。表現不能だ、やはり。
そんなこんなで、今日はライトノベルを四冊購入。
「シナオシ」が入手できたので、それだけで満足です。
これは明日、明後日の間に読みます。丁度試験休みですし。
ちなみに、図書館で借りている本は以下の六冊。
石持浅海 「月の扉」
「BG、あるいは死せるカイニス」
辻真先 「合本・青春殺人事件」
氷川透 「見えない人影 各務原氏の逆説」
湯本香樹美 「春のオルガン」
新世紀「謎」倶楽部 「EDS 緊急推理解決院」
これも二日間のうちに読めればいいのですが・・・・・・難しいかな。
まあ、まずは感想書かないと、ですね。
森博嗣 「数奇にして模型」
- 森 博嗣
- 数奇にして模型
多彩にして純粋な森ミステリィの冴え
「密室」の中には「死体」も「容疑者」も入っていた。孤独な模型マニアに降りかかった人生最大級の危機!
那古野市内で開催された模型交換会で、モデルの首無し死体が発見された。
死体と共に密室の中で昏倒していたのは、大学院生、寺林高司。
彼には同じ頃に起きた女子大学院生の絞殺事件の容疑もかけられていた。
もう1つの事件も、死体が見つかったのは「密室」の中。
犀川創平、西之園萌絵の師弟が事件の謎に挑む!
◆ ◆ ◆
以前、一気に八巻までまとめ読みしたのですが、色々と忙しく続きを読まないでいたら、随分と時間が空いてしまいました。
S&Mシリーズ第九弾です。
今までで一番分厚い。最後の巻はこれ以上ですが。
またまた密室殺人もので、今回の密室は二つ。
そして、両方の部屋の鍵を持った人間が、死体と一緒に一つの密室の中で気絶していた・・・・・・。
という状況。
また、続けて第二の事件も。この情景を想像すると、恐ろしいけれど綺麗。
見てみたい、と感じたのは僕だけではないはず。
本書の犯人はプロローグから検討をつけていたので、真相が明かされたときの意外性などはありませんでしたが、それでも十分に読ませてくれます。
森博嗣の「言葉」についつい引き込まれてしまうので。
やっぱり格好いい文章です。
タイトルにもあるように、「模型」についての話が色々なところに出てきて、「フィギュア」だとか「プラモデル」だとか、あまり僕には縁のないものですが、そういったものに関わる人たちの考え、心理などとても面白く読めました。
そして、タイトルは見れば判るように「好きにしてもOK」のもじりなんですが、最後まで読んでもこの点は「何のことだ?」という感じでした。
エピローグも?は残ったものの、何を示しているのかわからず・・・・・・。
しばらく考えていたのですが、まあ森博嗣だし・・・・・・(?)と途中で考えることを放棄して、それで納得していたのですが
三軒茶屋 さんの「 『数奇にして模型』考察 」(ネタバレ注意)を読んで驚き。
そういう考え方があったのか! と、ただただ感心するばかりです。
目からうろこ、とでも表現すればいいか。
先に「犯人は見当をつけていたので」とか書きましたが、これは僕が作者の計算どおりミスリードされてしまった、ということかもしれない、と考えると。
もちろんこれが真実なのかどうかはわかりませんが、相当可能性は高いと思います。
僕もこの考察を読んだ後色々考え、一応一つの結論に達しました。
深読みのし過ぎかもしれないけれども、もしそれが真相だったなら、相当よく出来た構成かと。
前にもどこかで書きましたが、「考察の余地のある」物語は大好きなので、たとえそれが真相であってもなくても、十分に楽しませてもらったことにはありません。
これだけ面白い考察をして下さった、三軒茶屋のフジモリさん、アイヨシさん、そしてスレイブさんの御三方に大感謝です。
もし、この考察を読んでいなかったら、きっとほとんど印象に残らなかったと思う・・・・・・。
「数奇にして模型」を読まれた方は、是非上にあげた考察をご覧になると良いと思います。
本来なら6点だったけれど、これだけ面白い考え方を見せられては8点をつけざるを得ないでしょう。
しかし、萌絵の従兄のキャラクターが強烈だ・・・・・・。これは本作のみの登場なのか? 気になります。
加納朋子さんの・・・・・・
一旦試験も休みに入ったので、少し休憩・・・・・・と、学校帰りに書店に立ち寄って「本ミス」「このミス」を一通り読んできました。
それについての感想はまた後で書きますが、
まず先に、加納さんの今後のご予定に関してちょとした情報が載っていたのでメモしておきます。
「このミス」の「私の隠しだま」や「本ミス」の今後の予定などを見て、「おお!」と思わず声をあげてしまったことが二つ。
・来年文藝春秋から短編集「モノレールねこ」出版予定
・とある作品のドラマ化が進行中。来年の四月くらいまでに放送されるかも
「モノレールねこ」は読み逃していた作品なのでとても嬉しいですね。
どうやら、ノンシリーズ短編集のようで。
他にも、あれとかこれとか、色々雑誌に掲載されていた作品で読み逃しているものがいくつもあるので、それらも収録してあったらいいなー、と思ったり。
先日のサイン会の時に、「今まで雑誌に掲載されていた短編、一冊にまとめて出版して頂けたら嬉しいです」というような内容のことを手紙に書いてお渡ししたのですが、まさかこんなに早く実現するとは・・・・・・。
まあ、サイン会の前から出版の予定はあったのでしょうが、でもやっぱり、ありがたいです。
今から楽しみ。
それと、もう一つ。
加納さんの某作品が、ドラマ化されるとか。
四月までに放映されなかったら企画が倒れたと思ってください・・・・・・とか、そのようなことを書かれていましたが、そうならないように願うばかりです。
そういえば、光原百合さんの「十八の夏」もドラマ化される、との話でしたがまだ放映されていないような・・・・・・。
でも、一体何がドラマ化されるのだろう?
「ななつのこ」か「ガラスの麒麟」あたりかな、と思いましたが、意外と「アリスシリーズ」もドラマ化には向いているので、今のところこれが本命か?
ただ、ドラマ化は結構イメージが合わないことがあるから・・・・・・。正直、不安もあったり。
またまた関係ない話で申し訳ないですが、東野圭吾さんの「白夜行」が来年ドラマで放映されるようですが、明らかに紹介がおかしかったですし。見ないと何ともいえませんが。というより、そもそも読んでませんが。
ま、そんなわけで、「企画が倒れないか?」という点も含めていろいろ心配ではあるのですが、その分こちらも楽しみでもあったり。
どちらも来年に入ればもう少し詳しい情報が入ると思いますので、それを待ちましょう。
以上、ちょっとした情報でした。
追記:
折角なので、他に気になった「今後の予定」を挙げてみます。
麻耶雄嵩の2006年の予定。本格ミステリ・マスターズから「疾風アレキサンダー(仮)」刊行。
これは本ミスの情報で、このミスでは「北国育ち(仮)」になっています(笑)。
講演会でも言っていたけれど、明らかに遊んでますね・・・・・・。
あと、綾辻行人の館シリーズ八作目が、2006年初めに出版予定。
米澤穂信の「夏季限定トロピカルパフェ事件」は春頃出版。
特に気になったのはこの三つくらいかな。どれも出版されたら購入する予定のもの。
今のところ、一番気になるのはこの中では麻耶雄嵩だったり。一体どんな作品になるのか、全く想像すらつきません。
「容疑者Xの献身」は本格か否か
本当なら試験中は更新しない予定だったのですが、カラクリリリカル のBさんや、Pの食卓 のPさんのブログでこの問題を知り、色々と考えてしまったので、書き留めておきます。
(要は試験の現実逃避だろ、という意見は置いておいて)
ちなみに可能な限りネタバレに触れる表現は避けていますが、未読の人は読まないほうが、これから読むときに素直に楽しめると思います。
この問題について知らない方は、二階堂黎人の黒犬黒猫館 の掲示板・日記を読んでいただければ判るかと思いますが(当然ネタバレなので注意)、議論の中心となっているのは、
東野圭吾 「容疑者Xの献身」が、はたして本格なのかどうか
ということです。
二階堂さんが「容疑者X」はきわめて本格には近いが本格ミステリではない、という内容のことを日記に書かれたことが元となり、この議論が持ち上がりました。
僕自身も以前に書評 を書いていますが、この本を読んだときから今まで、僕はずっとこの作品は本格である、と思っています。
まあ、大した冊数読んでいない人間が言うのも何なんですけど・・・・・・。
本格の定義が人それぞれ、というのは当たり前なので、別にここで意見を語ってもしょうもない気はします。
ちなみに、容疑者Xのネタは、5ページ目で石神が使うであろうトリックの方法に対しては検討がつき、死体が発見された時点で作者から読者へのトリックに関しても検討がつきました。
これはあくまで推測に過ぎません。
ただし、結果的にこの推測は湯川の考えと一致していました。
まあ、どこで気づいたかということはおいておいても、湯川が自分の考えを語る前に、ほぼ同じ「推測」に辿り着いた方は割と多いのではないか、と思っています。
全く違う推測に辿り着き、同時に、その考え方であっても十分事件の真相としてほとんどの人が納得しうるであろう、と呼べるものを思いついた人はいるでしょうか。
おそらく、まずいないと思います。
なぜなら、これはミステリとして、一つの真実が存在することを前提として書かれた物語であるから。
・・・・・・つまり、「伏線が存在する」
投げ出したままの伏線が大量に残るような作品は、まあ、あまり好かれないでしょうね。
ただ、本書において提示される「推測」は、三人称視点から与えられた「手がかり」を全て回収できる。
同様に、「神の視点」であることから、我々はその「手がかり」を見つけ、つなげることによって、真相の形をある程度見通すことができる。
更に言えば、本書では明らかに、母娘や刑事とのやり取りから「何か隠された事実がある」ことを読者は知ることができる。
また、何が隠されているのか、ということに関しても、それに対して仮説を立てることが可能――更に言えば、作中人物の心理的な問題、感情などから、その仮説が正しいであろうことも読み取ることができる。
これら全てから導き出される答えは、おそらく作者が予定していた真相の形に極めて近いものとなります。それが、基本的にはとある一つの形であることも、間違いないでしょう。
さて、それではまた、別の観点から。
この「本格か否か」という問題は小説にゲシュタルト理論を用いてやれば判りやすいと思います(厳密には少々違いますが)。
有名な図ですが、カニッツァの三角形 を見てください。
これを見て三角形が存在する、と認識しない人がいるでしょうか。
おそらく、まずいないでしょう。
本格、というのは、これの「隙間」にも線が引かれた完璧な三角形である、とするならば、
この図で見えているのが「容疑者X」。
これが三角形に見えない人がいないと思われる以上、
これは、我々の意識としてはあくまで三角形に等しい
・・・・・・要は、
読者の目に「本格」として映る以上、それを「本格」と受け止めることは正しい
という意見。
・・・・・・なんかもう、破綻しまくってる気がしないでもないですが(苦笑)、
もし、三角形なんて見えないよ、見えるけれどこれは三角形じゃないよ、という意見があれば、それはそれで正しい。
でも、ほとんどの人がこの図形を三角形と認知したというのも事実。
その証拠が、容疑者Xが本ミスベスト1を獲得したということである。
また、僕も、そう認める一人。
だから、僕にとって「容疑者Xの献身」は本格だ――
以上。
論理的におかしな点があるかもしれませんが、とりあえず最後の三角形の例だけ、見ていただければよいと思います。
別に、この考え方が100%正しいと僕も思っているわけでもないので。
賛否両論あると思いますが、ご意見がある方お待ちしています。
あ、そうそう。
二階堂さんが提示されていた、容疑者Xの「真相」については、それはないでしょ、と。
まあこれが真相だ、っていうならそれは本格ではないと思うけど・・・・・・。
これこそ伏線も何も無い、ただ一人の読者としての「受け止め方」なのでは?
これを真相と言い切ってしまうのはどうよ、と思わざるを得ません。
ま、結局、本格であるか否かは、読者の目にどう映るかによる、ということが言いたかっただけでして。
問題なのは、自分の意見を人に押し付けようとすることであり、同時に、誰かの意見を見て、それが正しいのだと錯覚してしまうことだ、と。
人の意見に影響されるのも悪くは無いけれど、結局のところ一番重要なのって、自分がどう考えるのかじゃないの?
・・・・・・なんか、この年でこんなこと言ってるのも生意気だな、と自分でも思ったりしますが、
これだけ当たり前のことを、多分、完全にわかっている人はそんなにいないと思う。
僕もまだ、中途半端にしかわかってません。だから、自分に言い聞かせる意味もこめて・・・・・・。
って、
こんなこと書いている暇があるなら、試験勉強しないと・・・・・・! なにやってんだろ自分・・・・・・。