氷川透 「各務原氏の逆説」
- 氷川 透
- 各務原氏の逆説
私立秀青高校の軽音楽部の部室を覗いたのは、用務員の各務原氏だった。
染めているわけじゃないんだろうけど、赤みがかった髪。
眉毛が極端にうすく、眼はぎょろっとしている。
ピアノを練習していたぼくの前に現れた。
各務原氏は普通の用務員とはちょっと違う。
「そう用務員という職業の一般的イメージを問題にするなら、わたしはそこから外れた存在ではあるだろう」「しかし逆にそのイメージにぴったり合致する用務員さんをどこかから見つけてくるのも、至難の業だと思うけどね」という各務原氏。
翌日の火曜日。
学校の敷地内にパトカーが入ってきていた。
校内で女性の死体が発見されたのだ。
本格ロジックの第一人者がチェスタトンばりの逆説で迫る学園推理。
◆ ◆ ◆
どこかライトノベル調の表紙ですが、中身は結構しっかりしたロジック重視のミステリ。
・・・・・・というのは、タイトル見れば判ると思いますが。
ちなみに読みは「かがみはらしのぎゃくせつ」。
しかし、気のせいか、逆説の扱いはそれほど大きくないような・・・・・・。
各所に逆説めいたものはちりばめてありますが、タイトルに逆説と入れるほどのものか、と問われると、そこまで重要でもないだろうと思ってしまうレベル。
事件自体もいたってシンプルで、二番目の事件については、読みながら「何故この可能性を真っ先に考えないんだろう?」と突っ込みたくなったり。もちろん、途中で登場人物たちも気づきますし、何故それに思い当たらなかったか、その理由も説明されますが・・・・・・・。
でもやっぱり、通常なら一番最初に検討するようなことだと思うけどなぁ。
また、この作品の意図しているもう一つの趣向ですが、これもまた親切すぎるヒントのおかげである程度はわかってしまうかと。
そもそも、これは必要だったのかどうか。何のために存在するのかがわからないトリックなのですが。
本書で一番面白かったのは、犯人が明かされ、事件が解決した後の一場面。
青春ミステリらしく、ほろ苦い終り方で(結構容赦がない)、割と好みかも。
ここでの会話が本書中最も驚きでした。
また、各務原氏のキャラクターも好きなので、続編も読もうかと。
既に借りてきていますし。
中途半端な気はするものの、何だかんだでそれなりに面白かったような。
6点、としておきますが、逆説にそこまで期待しなければ楽しめる作品だと思います。