The Key of Midnight -38ページ目

永嶋恵美 「一週間のしごと」

永嶋 恵美
一週間のしごと

幼馴染の菜加には拾い癖があった。犬や猫、果てはアルマジロなど、処理に困るものばかり拾ってくるのだ。いつも後始末は恭平の役目。恭平はいつも、「猪突猛進」という言葉を地でゆくかのような菜加の言動に振り回されてばかりいる。
そんな菜加がまたしても拾ってきたのは――人間の子供。渋谷の雑踏で置き去りにされたのを見て連れてきたのだというが、この行為がのちに恭平の友人・忍や菜加の弟・克己を巻き込んだ上、あんな結末を迎えるなどとは、このときの恭平には予想すらできなかった!
『せん‐さく』『転落』の著者が新たに放つ、青春ミステリの快作!

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ミステリ・フロンティア」には外れがない。

・・・・・・というのは僕が勝手につけた法則ですが、今まで読んだこの企画の作品はほとんど全て当たりだったので、最近出たこれも「全く知らない作者だけれど面白そう」と読んでみました。

本当にこの作者の名前も、作品も一つも知らなかったのですが、読んでみたらやっぱり当たり。

青春ミステリ、それもかなり青春小説よりの作品で、ミステリを期待する人にはあまり合わないかもしれませんが、

登場人物の書き分けはしっかりされていますし、スピード感に溢れた展開も上手く、物語性重視の人ならかなり楽しめるのではないかと。

また、サスペンスものとしても良いです。
子供を拾ってきて――という突然の展開から始まる一週間。

段段と予想外の方向に話が転がっていって、いつのまにか命の危険までさらされることに。

この転がし具合が上手いので、ついつい読むのを止められず「あともう一章」とページをめくってしまう。

最終的に出てくる事件の真相は結構酷いもので、このあたりはもっと穏やかにして欲しかった・・・・・・と思ってしまうのですが、それでもこの酷い真実のおかげで印象的になっているのかも、と考えるとこれはこれでよいのでしょう。

でも、やっぱり個人的には、こういう青春小説は最初から最後まで爽やかなほうが好みです・・・・・・。

尤も、後味はよいのですが。

ともかく、読んでいる間は非常に熱中できる作品なので、その点だけでもお薦め。

7点


田代裕彦 「平井骸惚此中ニ有リ」

田代 裕彦, 睦月 ムンク
平井骸惚此中ニ有リ

帝大生・河上太一は今をときめく推理作家・平井骸惚の本に出会い、弟子入りを志願する。

認められずにいたところ、骸惚の知人、池谷是人が不可解な自殺を図る。

事件解決の折には弟子入りを認められる河上だったが……

 

 ◆ ◆ ◆

 

「キリサキ」「シナオシ」の作者のデビュー作。

大正時代を舞台にしたライトミステリです。

京極堂シリーズのライトノベル版のような感じ。

独特の文体が、なれると心地良いです。


一応密室ものですが、若干解決は弱い。

シリーズの一番最初なので、事件そのものよりキャラクターの設定などに枚数をかけています。

「キリサキ」のシリーズでは仕掛けが凝っている代わりにそれほどキャラクターには重点を置いていないように感じましたが、こちらはその点逆かな?

でも、探偵役の平井骸惚・・・・・・。どことなく京極堂っぽいです。先にも書きましたが。

尤も、パクリとかそういうのではありませんけど。

こちらのほうが若い人には受け入れられやすい・・・・・・か?


ミステリとライトノベルが上手く融合している作品。

ライトノベルよりの人には「キリサキ」より楽しめるかと。

とはいえ、決してミステリ部分が疎かにされているわけでもないので、ミステリ読みの人も読む価値はあると思います。

この作者のことですから、二作目以降一体どんなことをやってくるのか油断できませんし・・・・・・。

シリーズは五巻まであるようなので一通り読んでみるつもりです。

全体的にとても面白かったので、これでミステリ部分がもう少し凝っていたらよかったかな、と。

その点は次回に期待しましょう。6点




綾辻行人 「最後の記憶」

綾辻 行人
最後の記憶

若年性の痴呆症を患い、ほとんどすべての記憶を失いつつある母・千鶴。
彼女に残されたのは、幼い頃に経験したという「凄まじい恐怖」の記憶だけだった。
バッタの飛ぶ音、突然の白い閃光、血飛沫と悲鳴、惨殺された大勢の子供たち…

死に瀕した母を今もなお苦しめる「最後の記憶」の正体とは何なのか?

本格ホラーの恐怖と本格ミステリの驚き―両者の妙なる融合を果たした、綾辻行人・七年ぶりの長編小説。

 

 ◆ ◆ ◆

 

綾辻行人の未読作品は早めに抑えておこう、ということで読んでみたのですが、

・・・・・・うーん、どう感想かけば良いのか迷うな。

綾辻行人初の「本格ホラー小説」らしいのですが、

そもそも本格ホラーって何なのか、ということ自体から判りませんけれど、ホラーにしては全く怖くなかった・・・・・・。

ミステリ部分もそれほどの驚きはなくて、なんとも中途半端な印象。

前半部は面白かったのですが、最後のほうは幻想小説めいていてよくわかりませんでした。

それでも、この文章は好きなんですけれどね。

いつもながら、読みやすく綺麗な文章です。

また、装丁も美しいです。これだけで買う価値はあった・・・・・・かな。

まあ、来年の初めににノベルス化されるようなので、これから読もうという人で特に装丁など気にしない場合は、そちらを待ったほうが良いかと。

ミステリやホラーを期待しなければ楽しめる作品だと思います。

・・・・・・って、なら何を期待すればいいんだって話ですが。

綾辻行人の作品が持つ雰囲気が好き、という人なら・・・・・・。6点です。

これで、未読の綾辻行人の長編作品は、あと「殺人方程式」シリーズ二冊を残すだけ・・・・・・。

館シリーズ8作目が出る前には読み終えたいです。



「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」(映画)

「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」公式サイト

 

本当はDVDを待つつもりだったのですが、ただで観られる機会があったので鑑賞してきました。

このシリーズ、四巻までは読んだのですが、五巻は購入したはいいけれど積読状態・・・・・・・。

はっきり言ってしまえば、ハリポタはもう良いや・・・・・・・という感じだったのですが、

実際映画を鑑賞してみると、案外面白くて、熱中して観てしまいました。


この映画の原作を読んだのは、僕がまだ小学校の頃だったと思うのですが、それでも割と筋は覚えていたのが驚き。

かなり長い話だったのに、どうやって3時間に満たない時間でまとめるのだろうか、と結構前から疑問に思っていたのですが、全然心配に思う必要は無かったですね。

確かにかなりのストーリーが削られているのでしょうが、非常に上手くまとめてあると思います。

そのために無駄なシーンが無く、全く退屈しません。

エンターテイメントとして、「観ている間中ずっと楽しめる」というのは大変良いです。

映像も、さすがに金額をかけているだけあって並みのレベルではありません。というのは、普段ミステリ映画しか観ないからそう思うだけのことかもしれませんが。

ストーリー、映像ともにほとんど不満はないです。

今までも十分面白かったと思うのですが、今回はいつもよりダークさが増しているだけあってより好み。

何しろ、PG-13(13歳未満は保護者同伴を推奨)かかってますからね。

・・・・・・それにしては、明らかに13歳未満の子供が大半を占めていた気がしますが。

それも保護者付き添いではない・・・・・・。禁止じゃないからいいのでしょうけど・・・・・・。

でも、このシリーズにPG-13がかかるというのは驚きましたね。大人向けを意識しているのか?

多少後味は悪くても、やっぱりこちらのほうが好きなので(性格悪い?)、これからもこのくらいダークにしてくれるといいな、と思ったりも。

これで、ハリー・ポッターにR15指定がかかったりしたら、「それはどうなんだろう」と思ってしまうのでしょうけど。それは無いか。

年齢といえば、主要人物の設定上の年齢が、どう見ても役者の外見に合わない・・・・・・・というのは野暮な突っ込みですね。

しかし、今回はまだ誤魔化せてもこれからどうするのだろう。一年に一作ペースはきついでしょうし。

きっと、作目が映画になったときにまた各所でネタにされるんだろうなぁ。


最初は軽く見ていたけれど、意外とあたりだった映画。

できれば原作を知っておいたほうが良いと思いますが、最低前作までを映画か原作で見たことがあれば大丈夫かと。

大人でも十分楽しめる作品だと思います。逆に、小さい子供には辛いかも。

単純に娯楽映画としてお薦め。8点

積読にしている「不死鳥の騎士団」も早く読まねば・・・・・・・。



新世紀「謎」倶楽部 「EDS 緊急推理解決院」

新世紀「謎」倶楽部
EDS緊急推理解決院

新宿副都心に開設された「EDS 緊急推理解決院」。

警察では対応しきれない難事件や不可解な謎を、市井の名探偵の知力と名推理によって、早期に解決しようという施設だ。

専門分野ごとの探偵師と助師が披露する鮮やかな推理!

画期的合作長編、遂に完成。

 

 ◆ ◆ ◆

 

石持浅海、加賀美雅之、黒田研二、小森健太郎、高田崇史、柄刀一、鳥飼否宇、二階堂黎人、松尾由美の九人の豪華メンバーによる合作長編。

好きな作家が多かったので、読んでみました。

それぞれが独立した短編を書いて、それを分断して時系列順に並び替えたような構成で、

確かに面白いといえば面白いのですが、あまりに一編一編の関連が薄すぎる(むしろほとんど無いといってもいい)ので合作してはどうなのかな、と思ったりも。

また、一編一編としてみたときに、そこまで飛びぬけて面白い作品があるわけでもないですし・・・・・・・。


ただ、それぞれの作家の特徴が良く表れているような作品ばかりなのは良かったです。

石持浅海さんの作品は、今年の「このミス」の「私の隠し玉」を読むと・・・・・・・。何か関連あるのかな?

高田崇文さんの作品も、QEDシリーズのショートバージョンといった感じで、相当特徴がしっかり出ています。

その他、くろけんさんの作品などは、いかにも黒田研二らしい、と少し笑ってしまいました。

柄刀一が「不可能推理科」、加賀美雅之が「怪奇推理科」、松尾由美が「女性推理科」・・・・・・・・と、かなり的確に作者の特徴を表しています。

こういう部分はある程度予備知識があると楽しめるかも・・・・・・?

あるいは、あまりミステリを読んだことが無い人が本書を手にとった場合は、これから読む作家選びにもいいかもしれません。


分断された章のおかげで読みにくくなってはいるのだけれど、もし一つ一つをまとめて順番に並べていたなら、それはそれでほとんど面白くなかっただろう、という合作。

何か中途半端な気もしますが、そんなに期待しないで読めば・・・・・・・。

6点

ま、無理して読むほどのものではないと思います。

日記、なのか?

昨日、今日とテスト返却の授業でして。

結果は・・・・・・まあ、ノーコメントにしておきますが、

ともあれ、これで実質、今学期の授業と呼べるものは全て終了。


授業はありませんが、代わりに今はマジックサークルの演技の練習やら、図書館で借りている本を読まなきゃいけないやら、小説の構想まとめなければならないやらで、忙しい・・・・・・。

でも、こういう忙しさなら嬉しいですね。

今度のマジックの演技はクリスマス&子供向けなので、実際は練習より演出面のほうが大変だったり。

何か良い演出はないかなぁ、と色々試行錯誤しているのですが、あまり思い浮かばず。

他の人の演技などを見て参考にしているのですが、なかなか自分にあった演技が見つけられないで困っています。

どうするべきかな。


そういえば、昨日、美術教室でマジックの練習を行っていたら、

美術部の先輩になにやら怪しげな(?)CDを渡されて、ラベルを見てみると

「進呈」「AIR ORIGINAL SOUNDTRACK」

・・・・・・・・・・・・お米券進呈!? と反応した人間がその場に三名。

何故僕にこんなものを・・・・・・と先輩に聞いたら、

「この前AIRの音楽が物凄く良いって言ってたでしょ、そのことを同級生に話したらこれを進呈するってCD渡されて」

何か変な風に誤解されていないことを祈るばかりです。・・・・・・というか、そういうことをあまり他の人に漏らさないで下さいよ先輩・・・・・・・と言ったところで意味がないのは判っていますが。

僕が普通のミステリのことを話題に上げてもほとんど反応が無いのに、何故ライトノベルとかアニメとかのことを誰かに話すと噂が広まるのか。謎です。

・・・・・・それはともかくとしても、AIRの音楽は本当に素晴らしいですね。これだけは確か。

そんなわけで、色々曲をMP3に落としてこのブログを書いているときも聴いていたり。

「鳥の詩」「夏影」「縁」「青空」あたりは、感動的なほど綺麗。音楽だけでも、興味がある人は聴いてみてほしいです・・・・・・。


とまあ、そんなことがあったのが昨日で。

今日は授業が早めに終ったので、帰りに学校の近くの古本屋によって四冊購入。


愛川晶 「網にかかった悪夢  影の探偵と根津愛 四月」

スタンリイ・エリン 「九時から五時までの男」

小川一水 「老ヴォールの惑星」

久住四季 「トリックスターズ」

 

エリンの短編集は評判が良いようなので一度読んでみたかったんですよね。

「老ヴォールの惑星」も同じく。こちらはSFですが。

どちらも一度にまとめて読むタイプの短編集ではなさそうなので、一日一話を目安にゆっくり読んでいく予定。でも、エリンはその前に図書館に届いている「最後の一壜」を読まないと。


今日は、本来なら桜庭一樹の「GOSICK」を買う予定だったのですが、こちらはどこにも置いてありませんでした。

桜庭一樹といえば、本日初めて彼女のお姿を写真で拝見したのですが、割とイメージにぴったり当てはまるような方でした。少し安心(笑)。

その写真が掲載されている記事で、桜庭さんがディクスン・カーは私にとって萌えキャラだ、ということを書いていたのには衝撃を受けましたが。

先日発売された加納朋子「虹の家のアリス」文庫版の倉知淳の解説も衝撃だったけれどなぁ・・・・・・・。

こちらの解説、まだ読んだことが無い人がいれば、立ち読みでも良いので是非。面白いですよ。

倉知さんってこんな人なのか・・・・・・・と思わず呆然としてしまいましたが、実際とても良いことを書かれているので。


・・・・・・・っと、なんにも整理せず書いていたら、かなり長くなってしまった・・・・・・・・。

明日からスポーツ大会なので、早めに寝ないと。

ちなみに今は「EDS 緊急推理解決院」を読んでいます。こちらの感想は明日か明後日になる予定。

では。


石持浅海 「BG、あるいは死せるカイニス」

石持 浅海
BG、あるいは死せるカイニス

天文部の合宿の夜、学校で殺害されたわたしの姉。

男性化候補の筆頭で、誰からも慕われていた優等生の姉が、どうして? 

捜査の過程で次第に浮かび上がってきた《BG》とは果たして何を指す言葉なのか? 

全人類生まれた時はすべて女性、のちに一部が男性に転換するという特異な世界を舞台に繰り広げられる奇想の推理。

話題作『月の扉』『水の迷宮』の著者が放つ、破天荒な舞台と端正なロジックを堪能できる学園ミステリの意欲作!

 

 ◆ ◆ ◆

 

何なんだこの設定は、と読み始めてまず驚き。

全ての人間は生まれたときは女性であり、一部の人間(全体の4分の1ほど)が大人になる過程で性転換し男性になる、という世界。

ある程度あらすじなどの事前情報は合ったのですが、実際読んでみるとどれだけ特異なものかよくわかります。

でも、何より驚くべきなのは、読んでいてほとんど違和感が沸かないということ・・・・・・。

かつて一度も見たことが無いような設定でありながら、あくまで自然に読者を語の中に引き込んでいきます。

しかも、ただ変わった世界である、というだけではもちろん無くて、この設定が事件をとくロジックや手がかりなどに大きく関わってきます。

この世界だからこそ成立しえる物語。

まず、前提となる<謎>からして、我々が住んでいる世界ではありえないものですから・・・・・・。

事件自体の謎に加えてもう一つ、作中で出てくる<BG>とは何のことなのかという謎があり、これの真相がまた奇妙で興味深いです。

しかも、それが殺人事件の真相の、最も重要な部分につながってくる。

この世界観ならではのロジックから導き出される真相は、やはりいつものように意外性に溢れていて、

本書はSFミステリとして良作である、と思います。

今までに読んだ作品と比べれば、ミステリ部分の出来はやはり落ち気味ですが、

その分、読みやすくなっていますし、引き込まれるような展開なので、7点

本音を言えば少しこの設定は苦手だったのですが・・・・・・。

それでも、読んでいるうちに引き込まれ、思わず一気読みしてしまいました。

やっぱり石持浅海はこれからも注目ですね。

読み逃している二冊も、そのうち手にとりたいと思います。



大場つぐみ 「DEATH NOTE 9巻」(漫画)

大場 つぐみ, 小畑 健
DEATH NOTE (9)
 
あまりに有名な作品ですが、一応僕も読んでいます。
案外ミステリが好きな人は読んでいる率が高いのかな、この漫画。
第一部は、ラストを除けば非常に満足だったんですが、
第二部は、確かに面白いものの流石に無理がある気がします。
というより、「HOW TO USE」がもうネタ切れになっている気が。
毎回、苦し紛れに考えているんだろうなぁ・・・・・・。
単純に何も突っ込まずに読めば、相当面白い漫画であることは間違いないので、やっぱり新刊出ると手にとってしまうのですが。

しっかし、今回はまた滅茶苦茶な話になってきたなー、という印象。

これ収集つくのか・・・・・・?

ニアと月のやり取りとか、かなり面白いのですけど。

ついにここまで話を大きくしたか。

ほんと、そろそろ終らしたほうがいいと思います・・・・・・。

これで第三部とか始まったら、もうそれは笑うしか。

いや、大好きなんですけどね、この漫画は。

だからこそ、綺麗な形で終らしてほしいと思うわけで。

これだけの話を考えられる人なのだから、もしかしたらラストまで計算してあるのかもしれませんが。

とにかく、これからの展開に期待です。

第一部のラストのようなどんでん返しが待ち構えているかもしえrないので、油断は禁物ですね。

辻真先 「改訂・受験殺人事件」

辻 真先
改訂・受験殺人事件

お馴染みポテトとスーパーの通う西郊高校きっての秀才が、校舎の三階から飛び降りる。
が、その死体が発見されたのはそれから四時間も経ってからだった!

彼の死を殺人と信じるポテトとスーパーは、出版社の依頼を受けて事件の詳細を交互に綴っていくのだが…?!

常に読者の予想を上回る意外性を追求してきた著者が、さらに上をいくトリックを仕掛けてあなたに挑戦する。
 

 ◆ ◆ ◆

 

ポテトとスーパーの初期三部作の最後の話。

「読者が犯人」「作者が犯人」などの趣向に続いて、今度はどんな犯人の設定なのか。

・・・・・・まあ、これは、読んでからのお楽しみ、ということで。

前の二作に比べると地味ではあるのですが、意外性では上回っている、といえなくもないかも。

犯人の設定だけでなく、事件自体もかなり面白くなっています。

トリック自体はそんなに新しくもないのですが、それでも十分通用するレベルかと。

でも、一番のトリックはやはり犯人に関する部分。

まず、探偵役が指摘する犯人の意外性。

そして、その人物ではなく、自らが真犯人だと名乗る――そして実際にそのとおりである、本当の犯人の意外性。

後者に関しては、現代でも良く使われるような手法が見られるのですが、

こういうメタ的な趣向は好きです。

なんとなく、綾辻さんの某作品を思い出したり。

最後の1ページのせいかもしれませんが。

これが20年前に出版されていた、というのは相当驚きだったり・・・・・・。

当時にこのシリーズを読んだ人はかなりの衝撃を受けたはず。

少し、うらやましいかも。


ちなみに、「仮題・中学殺人事件」「盗作・高校殺人事件」と本書を一冊にまとめて発行された「合本・青春殺人事件」という本があり、僕自身はこれで三作品を読んだのですが、合本のほうには全体のプロローグ・エピローグと短編「一件落着!」が一本つきます。

なので、もし手に入るならば合本で読んだほうが少し得かも。

無理して読むほどの内容でもないとは感じましたが・・・・・・。


ちなみに、シリーズは別につながってはいないので、順番どおりに読む必要はありませんが、もし三冊とも読む予定なら発表順のほうが良いかと。わざわざ最後から読む人なんていないと思いますが。

本書の評価は7点

ですが、発表された時期を考えると、やはりとてつもない作品のように思えてきます。

読む価値はあるシリーズでしょう。


田代裕彦 「シナオシ」

田代 裕彦
シナオシ

"<シナオン> それは全てを為直す者の名"

私はかつて「僕」だった。

犯すべきでない罪を犯した。

そうして、その短い人生を終えたのだ。

生前に犯した罪を後悔していた「僕」は、別人として生き返り、再びこの世界に舞い戻る。

けれど、私は私として生活するうちに、「僕」だった頃の記憶のほとんどを失っていた。

<案内人(ナヴィゲーター>と名乗るそいつが、私の目の前に現れるまで。

「やあ。久しぶりだね」

かつて犯した犯罪を阻止すること。

その為に時を遡り為直す者―<ナシオン>となったこと。

私は、私の真の目的を思い出す。

こうして再び<シナオン>となった私は「僕」がこれから犯すであろう罪を阻止する為に動き出す。

過去、現在、未来。交錯する時間の流れの中で、私は真実の自分を追う。

全てをもう一度、為直しするために。

残された時間は、あと僅か―。

衝撃のタイムパラドクス・サスペンス!
 

 ◆ ◆ ◆

 

ああ・・・・・・。

寒い中わざわざ買いにいった価値がありましたよ。

これは、最近読んだ中でもベストといっていいくらい面白い!

なんと言っても、あの「キリサキ」の続編ですから、つまらないわけがないのですよ。

まず、設定からして凄い。

相当複雑です。かなり端折ってしまえば、かつて殺人を犯した人間が、過去に別人の姿で戻って自分の犯す犯罪を阻止しようとする話。

 

かつての自分――殺人を計画していた<僕>と、今の自分――それを阻止するために”シナオシ”になった<私>。

この二人(実際は一人ですが)の視点から交互に話が語られるのですが、まず途中で<僕>が誰なのかがわかった時に小さな驚きがあります。

でも、こんなのは序の口。

<僕>が誰を殺そうとしているのかを追求する<私>、そして計画を着実に進めていく<僕>。

<私>を斜め上から見物しているナヴィ・・・・・・。

<私>には<僕>の頃の記憶がほとんど無く、<僕>が誰か、<僕>が誰を殺そうとしているのかもわからないのですが、何とかそれを止めなければならない、という状況。

読者はもちろん<僕>の正体も、誰を殺そうとしているのかも判っているので、一体どうなるのだろう? という興味が尽きず、展開も予測不能。

そして終盤、<私>が<僕>の正体を突き詰めてからは、まさに怒涛の展開としか言うほか無く、

解決では、あまりに驚いて声を上げてしまいました。

まさに大どんでん返し。お見事です。

これだけ驚いたのは何ヶ月ぶりか・・・・・・。

瞬間の衝撃という点からすれば「キリサキ」以上でしょう。

その後もタイム・パラドックスに関係したトリックの説明が為されるのですが、非常に複雑ではあるけれど僕はこういうのはかなり好きなので・・・・・・。興奮しきりでした。

また、途中に麻耶雄嵩氏の「鴉」のような、あまりにも大胆な伏線があるのですが、この「?」が解ける瞬間の爽快感は凄いです。

この、違和感が解ける時の独特の感覚も、ミステリの醍醐味の一つですね。

しかし、「キリサキ」の続編とはいえ、流石に前作並みの出来を期待してはいけないだろう・・・・・・と思っていたら、見事に覆されてしまって、そのことにも驚きというか。

改めて、自分はタイム・パラドックスが関わってくるようなミステリに弱いんだなぁと実感。

 

これだけ褒めても褒めたりないくらいに、本当に良く出来た仕掛け、そして伏線

騙されて良かった・・・・・・。

こんなにすっきりと騙されて衝撃を受けたのは、夏に読んだ西澤保彦の「実況中死」以来かもしれない。

それだけでも、この本を読んだ価値があるというものです。

また、考える楽しみもあるからいいのですよね、これは。

 

とにかく、ライトノベルだからって甘く見ていてはいけません。

もし表紙イラストがちょっと・・・・・・、なんて理由で読んでいないなら絶対損をしているので。

本格とか、フェア・アンフェアとか考えていくとどうなるのか判りませんが、素直に騙されたい、という人には丁度いいかと。

特に、西澤保彦のSFミステリや、ゲームのInfinityシリーズや、谷川流の学校を出よう! の一連の作品、そしてもちろん「キリサキ」などが好きな人は、是非騙されたと思って読んでください。

ある程度、このジャンルになれているほうが衝撃は大きいかもしれない・・・・・・。

その分、仕掛けの想像がつく可能性が高くなる、というリスクはありますが。

ちなみに、「キリサキ」を読んで無くても大丈夫です。読んでおいたほうが楽しめるとは思いますが。

若干、真相が一瞬では把握しづらいので9点にしておきますが、これだけ面白いSFミステリはそうありません。是非田代裕彦さんにはこのシリーズを続けて欲しいものです。

「キリサキ」も素晴らしいタイムパラドックス・サスペンスなので、あわせてどうぞ。