永嶋恵美 「一週間のしごと」
- 永嶋 恵美
- 一週間のしごと
幼馴染の菜加には拾い癖があった。犬や猫、果てはアルマジロなど、処理に困るものばかり拾ってくるのだ。いつも後始末は恭平の役目。恭平はいつも、「猪突猛進」という言葉を地でゆくかのような菜加の言動に振り回されてばかりいる。
そんな菜加がまたしても拾ってきたのは――人間の子供。渋谷の雑踏で置き去りにされたのを見て連れてきたのだというが、この行為がのちに恭平の友人・忍や菜加の弟・克己を巻き込んだ上、あんな結末を迎えるなどとは、このときの恭平には予想すらできなかった!
『せん‐さく』『転落』の著者が新たに放つ、青春ミステリの快作!
◆ ◆ ◆
「ミステリ・フロンティア」には外れがない。
・・・・・・というのは僕が勝手につけた法則ですが、今まで読んだこの企画の作品はほとんど全て当たりだったので、最近出たこれも「全く知らない作者だけれど面白そう」と読んでみました。
本当にこの作者の名前も、作品も一つも知らなかったのですが、読んでみたらやっぱり当たり。
青春ミステリ、それもかなり青春小説よりの作品で、ミステリを期待する人にはあまり合わないかもしれませんが、
登場人物の書き分けはしっかりされていますし、スピード感に溢れた展開も上手く、物語性重視の人ならかなり楽しめるのではないかと。
また、サスペンスものとしても良いです。
子供を拾ってきて――という突然の展開から始まる一週間。
段段と予想外の方向に話が転がっていって、いつのまにか命の危険までさらされることに。
この転がし具合が上手いので、ついつい読むのを止められず「あともう一章」とページをめくってしまう。
最終的に出てくる事件の真相は結構酷いもので、このあたりはもっと穏やかにして欲しかった・・・・・・と思ってしまうのですが、それでもこの酷い真実のおかげで印象的になっているのかも、と考えるとこれはこれでよいのでしょう。
でも、やっぱり個人的には、こういう青春小説は最初から最後まで爽やかなほうが好みです・・・・・・。
尤も、後味はよいのですが。
ともかく、読んでいる間は非常に熱中できる作品なので、その点だけでもお薦め。
7点。