大池田劇場(小説のブログです)
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時を買おう

                              時を買おう
                                     1
  「また遅刻かよ。」
もう約束の時間から2時間も経っている。
遅刻はいつものことだが今日は遅すぎる。忘れてしまっ

ているのではないか。
由紀の携帯に電話をかけたが、電源を切っているのか

出なかった。
「うむ、どうしたものか・・・。」
卓也はそう言って駅前の時計を睨んだまま考え込んだ。
どうするかと考えてみても、連絡が付かない以上ずっと

待つしかあるまい。
「何をしているのだ。」
  途方にくれている彼に、初老の男が声をかけてきた。
葬式の帰りだろうか?黒い礼服を着ている。
「彼女を待っているのですよ。忘れてしまったのか、も

う2時間も経っています。」
卓也はイライラした声でそう答えた。
「そうか、それは困ったな。」
黒服の男はそう言って笑った。
「このままではいつまで待たされるか分からない。」
予約していたフランス料理の時間も、映画の時間も間

に合いそうになかった。
何度も何度もこんなことを繰り返す彼女に、卓也は頭

に来ていた。
  今日会ったら別れ話を切り出すつもりである。
「ふふっ、ずいぶん無駄な時間を使っているな。どうだ、

よければこの時間を買おうじゃないか。」
  時間を買う?どういったことだろうか。
「実は、私の名前はベルゼバブと言う。悪魔の世界では

サタンに次ぐといわれる実力者だよ。」
悪魔だと、卓也はこの男が冗談を言っているのだと思っ

た。
よく似た話は漫画や小説で読んだことがあるような・・

・・?
「はははっ、良ければ買っていただきたい位のものですよ

。」
  卓也はついうっかりとそう答えてしまった。もちろんそん

なことができるとは信じていない。
「そうか、それは話が早い。今後はお前の無駄な時間は

私がもらうそ。」
そう言ってベルゼバブは、懐から分厚い札束を無造作に

取り出すと、卓也に渡した。
彼は落としては大変だと、反射的に彼が差し出した札束

を両手で受けた。
  「どうだ?良ければ嫌なことや、辛いこと、苦しいことも

一緒に買ってあげるぞ。」
そう言ってベルゼバブは持っていたトランクを放り出した。
地面に叩きつけられたトランクは勝手に扉が開き、一万

円札の束が零れ落ちた。
一億円はあるに違いない。
「これでお前はこれからの人生、辛いことや、苦しいこと、

悲しいことに巡り合うことはないのだ。」
後に残るのは嬉しいことと楽しいことばかりの人生である。
「私に感謝するがいい・・・。」
そう言うと、ベルゼバブはこつ然と姿を消した。
「ちょっと待ってください。こんな大金を・・・。」
卓也はあわてて札束を拾い集めてベルゼバブに返そうとし

たが、どこをどう探しても彼の姿を見つけることはできなか

 った・・・。
                                     2
  「ごめんなさい、仕事で遅くなってしまって・・・。」
  由紀はそう言ってペコリと頭を下げた。
「もう10時だし、帰ったと思っていたわ。」
10時?卓也は妙な顔をした。
「まだ8時前だろう。」
そう言って駅前の時計を見ると、確かに10時を指してい

た。
自分の腕時計も10時になっている。電波時計なので時刻

が狂うということはない。
「悪魔が買ったという時間とはこのことか・・・。」
2時間、この場所で無為に過ごす時間を持って行ってしま

ったのだ。
「さあ行きましょう。遅くなったけど・・・、今日はあなたのア

パートに泊まってもいいかな。」
由紀はそう言って私の右腕をしっかりと掴むと、頬にキス

をして、もたれかかってきた。
                                      3
それからというもの、自分の人生に苦労というものがなく

なった。
辛い仕事などいくら言い渡されても、瞬時に机の上にで

きているのだ。
後で目を通しても完璧な仕上がりである。
「誰がやったんだ。」
自分の目を疑ったが、資料は全て間違いなく自分の字で

ある。
「やったな、谷村君。」
課長は喜んで私の肩を叩いた。
辛いこと、苦しいことも苦にならないのでどんどん仕事を

こなす。
成果は常にできているのだ。やったことはなぜか頭の中

に残っている。
私はどんどん出世していった。
収入も上がっていく。
「また出世したのね。」
由紀も嬉しそうだった。
彼女とはいつの間にかベットの中で一緒にいることが多

かった。
気付くとそうなっているのだ。
「結婚しましょう。」
いつか彼女の口からその言葉が出て、気付くと私達は結

婚式場に居た。
面倒な式の用意や打ち合わせなど全くなかった。
すべてが頭の中に入っているし、勝手に用意されていた

のだ。
「きれいな砂浜ね。」
気付くとオーストラリアに居た。
知らないうちに飛行機に乗って降りていたのだろう。
「私、幸せだわ。」
由紀の幸せそうな笑顔が今でも目に浮かぶ。

                                   4
ところが、結婚してから私は、自分の日常に大きな変化

 が生じていることに気付いた。
結婚後の日数が進むにつれ、その変化が深刻なものに

なっていく・・・。
不思議なことに結婚した由紀、現在の妻と会っている時

間が段々と短くなっていったのだ。
  気付くと、いつも彼女は裸で同じベットに寝ていた。
だんだんと、加速度的に妻は太っていったように思う。
肌にも張りがなくなってきた。
  私の体もお腹が出てブヨブヨしたものになっていく。
  急速に二人とも老化していくのである。
「これは一体・・・。」
原因が分かった。
結婚後に楽しいこと、嬉しいことがなくなってきたのであ

る。
苦しいこと、厳しいことを、妻と長い間一緒に過ごすように

なり、会っている時間が減ってきているのだ。
「これはまずい。このまま私は死んでしまうのか・・・。」
  愕然となった。
これはわりに合わない。
お金をもらって自分の人生を縮めていたにすぎないので

ある。
妻とは一緒にいる時間が少なくなり、やがて彼女はいつ

の間にか姿を消していた。
代わりに若い女の子と一緒にベットに寝ていた。
「君はいったい誰だ。」
  私より20歳は若い、娘のような年齢だ。
「何言ってるの?自分の奥さんに向かって・・・。」
  景子と名乗る女性は私の妻だと主張した。
デートをした覚えも、結婚式をあげた覚えもないのだが

・・・。
  「由紀はどうした?」
  私は景子に妻のことを尋ねた。
「最初の奥さんのことね。寝ぼけているの。」
景子は怒って背中を向けて眠ってしまった。
  「離婚したんだ・・・。知らなうちに・・・。」
それでこの若い子と結婚したのだろう。
記憶がないのは、この子とデートしても、旅行しても、心

がときめかなかったからだ。
ただの・・・、体だけの関係だったのだ。
「畜生!悪魔め。返してくれ!俺の時間を・・・。」
私はベットを叩いて悔しがった。
「返してくれ!俺の由紀を・・・。」
私は布団に顔をうずめてむせび泣いた。
                                  5
  「ごめんなさい。待った?」
気付くと私は駅前のベンチで眠っていた。
時計を見ると午後8時、時間は戻っている。
自分の手を見ると、若さにみなぎり張りがあった。由紀

の顔も・・・。
「由紀、由紀って・・・、私の名前を呼んでいたわ。」
  ベルゼバブを目で探したが、居なくなっていた。
受け取っていた大金もなくなっている。
「うふ、どんな夢を見ていたの?私が出ていたの?」
彼女は笑って私の鼻をつまんだ。
「いや・・・、悪い夢を見たようだ。君に助けを求めてい

たのだろう。」
  私はベンチから立ち上がった。
彼女との人生を、もう一度最初から始めよう。
今度こそ失敗のないように。
「ずいぶんとつまらない時間を使わせてしまったわね

。」
  由紀はそう言って私の右腕によりかかると、約束に遅

れたことを済まなそうに謝った。
「いや、いいんだよ。人生に・・・、無駄な時間などなかっ

たんだから・・・。」
楽しいこと、嬉しいことだけの人生は、本当に味気ない、

つまらないものだった。

 

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過去作品へ簡単に行けるブログ「豆池田」

です。(目次のブログです)

よろしければご覧になってくださいね。

http://ameblo.jp/m8511030/

(実は一つの話を完結して他の話へ行くという手法

をとっておらず、いくつかのシリーズを並行して書い

ていますので、目次をご覧になった方がわかりやす

いかと思います。きまぐれで他のシリーズへ飛びま

す。)

 

増刊号の「山池田」です。

現在、なぞの物質・「福田樹脂」載せています
よろしくお願いしますね(。・ω・)ノ゙

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(山池田は登山日記と、自分では今一つと思っている

話を載せています。掲載は不定期です。)

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悪魔の裁判

           悪魔の裁判
              1
水上健二が夜に目覚めると、ベットの横に変な男が立

っていた。
 黒い背広を着た男だ。
 「誰だ!おまえは。」
 いつの間に忍び込んだのだろう。
 「私の名前はベルゼバブ。魔界ではサタンの次の実力

者と言われている者だよ。」
頭がおかしいのではないだろうか?
 健二が立ち上がって男を追い出そうとすると、急に後ろ

から両腕を掴まれた。
 羊の角をした半裸の男達が健二をしっかりと抱えている。

すごい力で動けない。
 「あまり知られていないが、実は悪魔の世界でも悪いこ

とをすると裁判が必要なのだ。」
ベルゼバブは健二の目の前に立つとそう説明した。
 「おまえは今日、悪いことをしただろう。だから悪魔の裁

判を受ける必要があるのだ。」
 そう言われると確かにその覚えはある。
 逃げようとしたが、両腕をがっちりと羊の角を持った悪

魔二人に抑えられていて、身動きができない。
 「たっ、助けてくれ。」
健二は殺されると思った。
 「どこへ連れて行くのだ。」
彼が不安げにそう尋ねるとベルゼバブは静かに答えた。
 「地獄の悪魔法廷だよ。」
そう言うと健二と悪魔達はゆっくりと水に沈むように地

面の中へとめり込んでいった。
             2
いつの間にか健二は被告人の席に立たされた。
 裁判長席にはあのベルゼバブが座っている。
 「大魔王サタン様の命により、ただ今より悪魔の裁判

を開廷する。」
 ベルゼバブは厳かにそう言い放った。
 傍聴席には鹿の頭をした悪魔、山羊の角をした悪魔、

牛の顔をした悪魔など、様々な姿の悪魔が座っていた。
 「検察側は論告を・・。」
 言われて検事らしき者が立ち上がった。
 女性の美しい悪魔である。グレモリーという名前らしい。
「被告、水上は本日午後10時、大阪市内のコンビニエ

ンスストアにおいて、店員がお握りを並べるのに夢中に

なっているすきを見て乾電池2個、サンドイッチ1個を窃

盗した罪に問われています。」
 誰も見ていなくて咎められもしなかったのだが、悪魔達

にはしっかりと知られていたらしい。
 「厳しいぞ!グレモリー。」
 傍聴席からヤジが飛ぶ。
 「万引きなんか窃盗のうちに入らないぞ!」
 悪魔達は健二の味方らしい。
 「傍聴席は静粛に!おまえ達の意見を聞いているので

はない。」
 ベルゼバブは一喝すると、弁護側の発言を促した。
 悪魔の弁護士が付いているらしい。アムドゥスキアスと

いう名前だ。
 「検察側の言うことは事実です。もう良いですか?私は

家に帰ってギターを弾きたいのです。」
 弁護人はあまりやる気がないみたいである。
 「まじめにやれ、アムドゥスキアス。」
 「下手なギターばっかりやるんじゃない。」
 またまた傍聴席からはヤジが飛ぶ。
 「被告は何か言いたいことはないか。」
 悪魔に嘘を言っても仕方がないだろう。
 「盗んだのは確かに認めます。但し、あの店にもたしか

に問題があった。あんなにやる気のない店員の態度では、

隙を見て盗もうとする心が目覚めるのもやむを得ないで

しょう。」
 検事のグレモリーは目を逆立てて怒った。
 「裁判長、見ましたか!今の態度と発言を・・・。こいつ

は物を盗んで捕まっても、何ら反省の色がありません。

厳重な処罰を!」
 グレモリーの発言に傍聴席からまたヤジが飛んだ。
 「うるさい、このブス!」
 グレモリーは傍聴席をじっと睨み付けた。
 「なんだと、マルバス!」
 彼女はその細くて美しい指を傍聴席に指し示した。
「静かにしろ!」
 途端に落雷が天井を突き破って傍聴席に落ち、マルバ

スを直撃した。
 「ぎゃああ、グレモリーが怒った。」
 「熱いじゃないか。」
 傍聴席からは散々なヤジが飛び、収拾がつかなくなる。
 「静粛に!いい加減にしろ、馬鹿者ども。」
 ベルゼバブが一喝すると、傍聴席はピタリと発言が止

んだ。
 「では判決を言い渡す。」
 ベルゼバブは判決文を読み渡した。
「被告人は窃盗という犯罪を犯し、何らの反省もない。

人間の官憲の追求は逃れても、悪魔の追求は逃れるこ

とはできない。本来なら人間の罪を受けない以上、悪魔

の法廷では一層厳しく追及されるべきではある。」
 健二はごくりと唾を飲んだ。素直に謝った方が良かった

のだろうか?
「但し・・・。」
 とベルゼバブは続けた。
 「盗っ人にも十分の理というのが悪魔の裁判である。」
 三分の理ではないらしい。
「この場合、店側の貧弱な防犯体制こそ問題とするべ

きである。」
 悪魔達はやんやの喝采を浴びせた。
 「よって被告人、水上健二を無罪とする。」
 傍聴席は大喜びである。
 「やった!さすがベルゼバブ様。」
 「名判決だ。」
 傍聴席は飛んだり踊ったりの大騒ぎである。
 「以上で裁判を閉廷する。」
 「裁判長!」
 怒り出すグレモリーを尻目に、早々と悪魔の裁判は終

結した。
             3
 水上健二は何度も悪魔の法廷に呼び出された。
「被告人水上が痴漢行為をしたのは明かです。」
 グレモリーの激しい追求が続く。
 地下鉄で女性のお尻を触ったというのだ。もちろん人

間の警察には捕まってなど居ない。
 悪魔達が知っているだけである。
 「痴漢行為を働いても女性はじっとしていた。気持ちよ

かったに違いないのだ。」
 水上はそう言い放った。
「女性は恐くて動けなかっただけです。」
 グレモリーは被害者の女性も連れてきていた。
 寝ているところを起こされたのだろう。夢の中の出来事

だと思っているに違いない。
「あんな短いスカートをはいているのがおかしい。最初

から誘惑していたのだ。」
 女性が誘惑していたから触っただけだと水上はうそぶ

いた。
「私が短いスカートをはくのは単なるファッションで、痴

漢を誘発させるためではありません。」
 女性はそう証言した。
 「嘘を付くな。」
 また傍聴席から悪魔のヤジが飛ぶ。
 「静粛に!」
 ベルゼバブは判決を言い渡す。
 「弁護側の言うことは確かに説得力があり、被告人は

本来厳罰に裁かれるべきであろう。」
そこまで述べて一呼吸おいた。
 「但し、人を憎んで、罪を憎まずというのが悪魔の裁判

だ。よって今回は無罪とする。」
 「裁判長は被告に甘すぎます!」
 悪魔グレモリーが裁判長席に駆け寄ってきたが、裁判

は無事に結審した。 
              4
 「被告人、水上が婦女暴行を行ったのは明らかです。」
 今度は婦女暴行で水上は悪魔達に捕まっていた。
 人間の警察は無力で、彼は今度も逃げ切っている。
「俺は悪くない。彼女が誘ってきたのだ。」
検察官のグレモリーは一層厳しく詰問した。
 「小学校六年生の子がですか?」
誰が見てもそんなことはありえないだろう。
 水上の瞳にはそう映ったのであろうか。
 「自分に甘く、人には厳しいのが悪魔の裁判なのだ。」
 ベルゼバブはそう言って水上に今度も無罪の判決を下

した。
彼は何度も悪魔達に捕まるが、そのつど言い逃れをし

て罪を免れた。
             5
 遂に彼は人間の警察に捕まる罪を犯し、法廷に立た

されることとなった。
 今度は殺人を犯したようである。
「では被告人に判決を言い渡す。」
裁判長は厳粛に判決文を読み聞かせた。
 「・・・以上のように、非常に冷酷かつ計画的な犯行で、

本人の反省の色もない。よって、被告人を死刑に処す

。」
初めて下された厳しい判決に、水上は青ざめて激しく

抗議した。
 「なぜだ、俺はなにもわるいことをしてないぞ!悪魔の

裁判ではいつも無罪だった。」
 悪魔の裁判?
 傍聴している者は耳を疑った。何を言っているのだろ

うか。
 判決に混乱してわけのわからないことを口走っている

のだろう。
 「助けてくれ、ベブゼバブ!」
 警察官達に引きずられながら、水上は激しく抵抗し悪

魔の名前を呼び続けた。
             6
 傍聴席には黒背広を着たベルゼバブの姿があった。
「愚かな奴だ、悪魔の裁判を鵜呑みにしてはいけない

。」
 ベルゼバブはニヤリと笑った。
 「なぜなら私の判決は、おまえが望んだことを述べた

に過ぎないのだから・・・。」
判決が決まっているのなら、なぜ悪魔は同じことを繰

り返したのだろう。
「ふふっ、悪魔の裁判が開いている間に素直に罪を認

め、法廷で負けてさえいれば、こんな事態にはならか

ったものを・・・。」
 そうつぶやくと、ベルゼバブは傍聴席から忽然と姿を

消した。
きっと、悪魔の裁判は、この男の良心が開かせていた

ものなのだろう。



良いこの皆様へ
 悪魔に言い訳をしていたのではなく、自分に言い訳し

ていたみたいですね(。・ω・)ノ゙


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至福の時

仕事で表示を頼まれた動画です。見てくださいね(。・ω・)ノ゙。
  ↓



         至福の時
           1
私の名はエリザベス。
 港の見える洋館に住んでいる。
 大きなお屋敷でたくさんの召使い達と一緒に生
活している。
 お嬢様の私は働いていない。
 そんな必要はないからだ。
 食事はきちっと召使い達が用意してくれるし、
身の回りの世話も彼らがやってくれる。
 お風呂でさえ自分で体を洗ったことなどない。
 メイドが丁寧に背中を流してくれるのだ。
 だから毎日遊んで暮らしている。
 お屋敷にある大きな花畑。
 そこが私の好きな場所だった。
 天気の良い日はその花壇に座って一日を過ごす
ことも多い。
 今はヒマワリの花が一面に咲いている。
 ヒマワリの木陰はとても涼しくて過ごしやすか
った。
 その日はとても気持ちが良かったのでお屋敷の
中を散歩することにした。
 広いお屋敷は今の時間は誰もいない。
 私は広大な屋敷の中を隅々まで歩くのを日課に
していた。
 これが結構運動になって良いのだ。
 小鳥達の囁きが耳を潤す。
 成ったばかりのブドウの房が棚から覗いている。
 昨年は青い内に鳥に食べられたらしいが今年は
大丈夫だろうか。
 風で柳の木の枝が優しく揺れていた。
「あれ、こんなところに畑が・・・。」
新しい畑があった。
召使い達が耕したようだ。
柔らかい土が心地よい。
土の臭いが新しい生命の息吹を感じさせる。
私は急に催して来たのでここに腰を落とした。
 大丈夫、誰も見ていない。
そのはずだった。
 「○○××○!」
 急にけたたましい物音と罵声がした。
 「何よ、何が起こったの。痴漢、痴漢よ。」
 驚いて悲鳴をあげたけど、この状況では小さくう
ずくまるしか方法がなかった。
           2
 「このアホ猫。また花壇掘り返して・・。」
 ちょうどほうれん草を植えたところへウンチをし
ている。
 「みゃああ。」
 エリザベスは抗議の声をあげた。
 ほうれん草にあげた肥料の牛糞が、足にいっぱい
くっついて、真っ黒になっていた。

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恵子と弥生

          恵子と弥生

                 1

高校のとき、私には恵子という親友がいた

そのころ私は、学年で1、2を争う美人で、男の子の目


線を一身に集めていた。

 恵子はというと・・・、お世辞にもきれいとは言い難い容


姿で、おとなしくてとても目立たない子だった。

いつも一緒にいる恵子は、私の引き立て役だった。

「恵子ってゴキブリみたいだな。」

小学校からずっと一緒のクラスの男の子がそう言って


笑った。

 一緒に高校まで来たほかの女子は、化粧がうまくなっ


たのかみんなそれなりに綺麗になっている。

 芋虫から蝶々に羽化しているのだ。

「そう、そう・・・、変態しない。小さい時からゴキブリの


格好している。」

クラスの男子はそう陰口を言って笑った。

 この年代の男の子はまだ優しさがない。

 「やめなさいよ、そんなこと言うの・・。」

 そう言いながら、私も言っていることが当たっているよ


うに思えて、心の中では少し笑っていた。

 そんな恵子だったが、やがて彼女の身に驚くべきこと


が起こった。

私の知らないうちに、彼女はこっそりと彼氏を作ってい


たのだ。

 そういえば、持っているものに高価なものが増えてい


たのだが、彼氏のプレゼントだったのだろう。

「見た、見た?恵子の彼氏って・・・。」

クラスメートの綾が、ある日そう言って近づいてきた。

 どこかで恵子の彼を見かけたらしい。

 きっと一緒にいるところを偶然見られたのだ。

 「どんな人かと思ったらおっさんじゃない。」

実は私もそう思っていた。

 三十を過ぎた男性に見える。

 「嫌だわ、あんなかっこ悪い人。」

遠目で見ただけでよくわからないのだが、頭が少し薄


いように見えた。

一緒にいると恵子も同年代のように見えて、何かお


かしかった。

 お似合いのカップルなのだ。

 それだけ恵子が実際の年齢より老けて見えるのだろ


う。

 二人はそのまま交際を続けたようで、高校卒業と同


時に恵子は結婚した。

 一番地味で目立たないと思った子が、学年で一番最


初にゴールインしたので、みんなが驚いてちょっとした


噂になったりしたものである。

                 2

それからしばらくして、私も子供ができたので結婚し


た。

 相手は高校の時からずっと付き合っていた子だった。

まだ幼かった私は、見た目の格好良さだけを見てい


たのかもしれない。

 夫は野球部のピッチャーをしていて、高校のときはか


っこよく見えた。みんなのあこがれの的だったのだ。

 長身で俳優のような顔立ちをしていた。

 私も男子に人気があり、結構もてたので、お似合い


のカップルと言われたものである。

 残念ながら彼は、県大会の三回戦で負けてしまった


ので、プロも大学もお呼びがなかった。

 そのまま専門学校を中退して私と一緒になったのだ


けど、これが間違いの元だった。

 彼は仕事に熱意のない人だったのだ。

 勉強もできないので良い就職先もなかった。

 もちろん野球が少しぐらいうまいからって、社会を生き


ていく上では何の役にも立たない。

 何度も転職を繰り返すので、そのたびに私と喧嘩にな


った。

 彼はまだ、遊びたい年齢だったのだ。

 夫とはそのうちうまくいかなくなり、結局は別れてしま


った。

 仕方なく、私たち親子は実家に身を寄せることになっ


た。

 まだ若かった両親は、歓迎していたようではあるが


・・・。

 そんな時、同窓会の招待があって私もたまに外へ出


て羽目を外したくなり、参加した。

 席上、恵子が居た。彼女も出産したようだが、私と違


ってずいぶんと太ってしまっている。

「なんか恵子って、だんだんオバサン化していってい


ない?」

クラスの女の子はそう言って笑った。

 まだ出産とか経験している子は一握りだった。

「着るものだけでも派手なものにしたら・・・。」

そうみんなが助言をした。

 どう見ても着ているものが変なのだ。学生のときはここ


までセンスが悪くなかったはずだけど・・・。

「旦那がオジサンだから、私の着る服も合わせないと


・・・。」

つり合いがとれないらしい。

奥さんだけ若い格好をしていると浮いてしまうのだろう。

恵子の夫はエリートサラリーマンだったので順調に出


世しているらしく、彼女は何不自由ない生活を送ってい


るようであった。

 「仕事一途な、つまんない人なんだけどね。」

 そう言って恵子は笑った。真面目さだけが取り柄の人


で、特に趣味もないらしい。

でも彼女の満面の笑顔は、私にはとてもまぶしいものの


ように見えた。

                3 

私の家には小さな庭があり、父母が死んでからはずっ


と私が管理していた。

 庭にはチューリップの花とか派手なものを植えた。

 私はそういったものが好きだったのだ。

 華麗な花は枯れるのも早いのが少し不満だったが・・・。

あれから、何人もの男が私の前を通り過ぎていき、い


つか私の元には父親の違う子が二人のこされた。

 振り返ってみると、私の顔やスタイルを目当てで近寄


ってきた男たちは、ある程度満足すると気持ちが離れて


しまうようだった。


私の勝気な性格が原因だったのかもしれない。

 浮気をされたり・・・、散々な目にあった。

 別れた男達は勝手な奴らで、少しの養育費さえ出そう


としなかった。

私は、それから子供たちのため、一生懸命働いた。

「弥生、老けたね。」

四十を過ぎてからの同窓会、クラスメートの女の子に


そういわれて愕然とした。

母子家庭で、ずっと一人で子供を育てていたから、知


らず知らずに体に負担をかけていたのだ。

 生活も不規則だった。

 昼の務めだけでは足りなくて、夜も水商売のアルバイ


トとかしていたのである。

 教育に時間が割けないから子供も少し荒んでいた。

その生活の疲れが、残酷にも顔に深いしわを作って


いったのである。

 「恵子っていつまでも若いよね。」

そう言ってクラスの女子は羨ましがっていた。

 恵子は相変わらずオバサン顔をしていたのだが、知


らないうちにみんなが恵子を追い越してしまっていた


ようである。

 恵子は生き生きとしていた。

 彼女は若い時と同じような美しさを、まだ保っている


・・・。

                 4

 庭にケイトウの花が咲いていた。きっと娘が植えたの


だろう。

 娘のことだから種だけ蒔いて、そのまま忘れてしまっ


たに違いない。

 もう冬が来そうだというのに、ケイトウは赤い花を生き


生きと咲かせていた。

 まるで枯れることなどないようにしている。

 「きっと恵子はケイトウの花だったんだ。」

 この花のように、地味だけど、ずっと咲き続ける花だ


ったのに違いない。

 恵子と私、本当に幸せなのはどっちだったのだろうか


・・・?




よい子の皆様へ

あまりに綺麗であったため、かえって不幸になった女性


をときどき見かけることがあります (。・ω・)ノ゙




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流浪の神々

           流浪の神々
                1
街が見える荒れ果てた丘の上、野イチゴを採取しに

来た女性がかがみこんだ。
「なんだコイツ、何をしようとしている。
 この光景を見ていたオリンポスの主神、ゼウスは怒

り狂った。
「私の神殿の跡で用を足すとは・・・。」
女性はおしっこがしたくなったようである。
 「なんと無礼な!天罰をくらえ。」
ゼウスはその武器である雷を召還した。
 あたり一面が急に真っ暗になり、ゴロゴロと空が不気

味に鳴り始める。
 次の瞬間、女性の頭頂部に稲妻が直撃した。
 普通ならば即死は免れないであろう。
 しかし何事もないかのように彼女は用を足し、一片の

紙を残して立ち去ってしまった。
 「なぜだ、なぜ私の稲妻が効かない。」
空は晴れ渡っており、現実世界では雲など最初から

生じなかったようである。
 「人に信仰心がなくなったからよ。」
兜を頭にかぶった女神アテナはそう分析した。
神は人間に信仰されないと力が無くなるようである。
 最悪の場合は死に至る。
神々がなぜ神殿に誰も来なくなったのかと訝ってい

たら、町のはずれに一人の聖人が説法してるのが見

えた。
「いや~ん、悪の手先、パウロだわ。」
 その姿を見て愛の女神アフロディテが美しい眉をひ

そめた。
最近、この地方ではキリスト教とかいう邪教が流行っ

てきたようである。
「神が一人だけなんて邪道だ。ここにたくさんいるの

に・・・。」
行き場のなくなったギリシアの神々がこの丘に集ま

ってきている。
 壮観な眺めだが人間には見えないようだった。
「独占禁止法というものを知らないの!」
アテナはそう言って憤りの声を上げた。
 「ひどい・・・、あたしたちのこと、悪魔だとか言い始め

ている・・・。」
耳を澄ましたアフロディテがそう言って悲鳴をあげた。
「人間が私たちのことを書いている書物を手に入れた

ぞ。」
ポセイドンがそう言って羊皮紙にかかれた本を持って

きた。
 悪魔のことが書かれているという。 
「私なんで男に・・・?愛の女神アフロディテなのに。」
 いつの間にかアフロディテは悪魔アスタロトにされて

いる。
キリスト教では、悪魔アスタロトは口から耐え難い悪

臭を放つという。
 近づくと病気になるそうだ。
「失礼ね!いつあたしがそんなことしたのよ。毎日歯

を磨いているのに!」
記述を見た、彼女の本を持つ手が怒りでワナワナと

震える。
 「ううっ、こんなこと初めて言われた。」
アフロディテは神々の中でも最も美しいと言われてい

る女神である。
 「ああっ、ショックだわ。もう立ち直れない。」
その場にうずくまって泣き崩れた。
 「さあ、泣いてないでいきましょう。アフロディテ・・・

。」
 ゼウスの妻のヘラがそう言って彼女の右手を取って

優しく慰めた。
 「行くって、いったいどこへ・・・。」
このままでは神々は死を迎えるのを待つだけである。
「とりあえず東へ行きましょう。」
 アテナはそう言って東を指さした。
 そこはまだ人間どもが、キリスト教に汚染されていな

い地域である。
                 2
「大きな街に出たぞ。」
 神の一行は様々なところで人間どもに布教したが、なか

なか定着することは難しかったようである。
 やがて彼らは大陸の東の端、大きな都市へと行き当っ

た。
 「ここなら我々を信仰する人々がたくさんいそうだ。」
 オリンポスの神々はそう言ってそこに住むことを望んだ

のだが・・・。
「温故知新、孟母三遷。」
いきなり髭を生やした細面の一団が神々の前に立ち上

がった。
 よく解らない呪文を唱えている。
(注:温故知新→古いことにこだわりなさい。

    孟母三遷→よくないことは人のせいにしなさい。

    ・大池田訳)
オリンポスの神々は首を傾げた。
 「何を言っているのかさっぱりわからないわ。」
アフロディテはそういって悲鳴を上げた。コミュニケーシ

ョンはとりにくそうである。 
 髭の一団はその目つきから、オリンポスの神には悪意

を持っているようである。
「ゼウス・サンダー!」
そう言うと機先を制してゼウスは稲妻を落とした。
 喧嘩は、先に手を出したものの勝ちである。
 しかし髭の一団は何もなかったかのように泰然としてい

る。
「コーイー、ヨン、シンヨンカー、マ・五十歩百歩。」
異国の神はわけのわからない呪文を唱えた。
 次の瞬間、オリンポスの神々は七色の光線に包まれる

・・・。
(注:コーイー、ヨン、シンヨンカー、マ → クレジットカ

    ードは使えますか?
    五十歩百歩 → 五十歩、百歩、二百歩と倍々に

    増えていく様子。どらえもんのバイバインとか。)
「ダメだ、ここにも強力な神が・・・。」
ゼウスたちは悲鳴をあげた。体が痺れて動けない。
 「私たちが入り込む余地はないわ。」
アフロディテはそう言って助けてくれるよう許しを乞うた。
 「でていきます、だから命だけは助けて・・・。」
 髭の集団は美しい女神の頼みごとを了解した。
 「ウォージァオ リンムー・鶏口牛後」
(ウォージァオ リンムー → 私は佐藤と言います。
  鶏口牛後 → 鳥の頭の方が牛丼よりマシだよ。)
神たちは船を作り、どこまで続くかわかならい大海へと

漕ぎ出した。
                3
 神々を乗せた船は途中で嵐に会い、散り散りになって

しまったようだ。
 そのうちの何人かは極東の大きな島に流れ着いた。
「ふう、ここは悪い神も居ないし、極楽極楽。」
ポセイドンはそう言って胸をなでおろした。
 もう苛められることはない。
この島の住人は、自然の岩とか山とか滝、大きな樹木

を崇拝しているようである。
「うふふっ、そんな石とか岩とかの無機物、何の力もな

いわよ。」
アフロディテはそう言って素朴な人たちにウインクした。
「この地の風俗に合わせて変装して・・・。」
ゼウスはそう言って土地の人の服装に化けた。
 「くすくす、この国の人、鼻が低くて平べったい顔をして

いるのね。」
アフロディテも村の人に合わせて彫の深い顔を修正し

た。
 「背も低くて足が短いのね。」
ヘラは残念そうに自分の足を短くした・・・。
                4
それから長い年月が立ち、人間たちは神々を信じて繁

栄し始めた。 
 しかし、人口が増えていき、国らしきものができ始めた

時に事件が起こる。
「ちょっと何を・・・、新しい神なんて聞いてないわよ。」
人間どもが新しい神々を招こうとしているようだ。
「私たちにも生存権がある。」
 ポセイドンは悲痛な叫びをあげた。
 「あとからノコノコ出てこないで!私達、もう行くとこない

んだから・・・!」
アフロディテの抗議の声もむなしく、新しい神は首都の

近くに居座り始めた。
 「人間に憑依して戦いましょう!」
 戦いの神、アテナがみんなにそう呼びかけた。 
「ほら、あたしたちを崇拝したら金持ちになれるし、立派

なお婿さんももらえるわよ。」
アフロディテは人間の姿になると、人間たちにそう言っ

て回った。
「こいつらに頼ってそんなこと起きるか!自分で精進

せよ。色即是空、空即是色(しきそくぜくう・くうそくぜしき)

。」
新しく来た神々はそう言って説教くさいことを言って回

った。
 口がうまいらしく説得力がある。
「もう怒ったぞ!食らえ、ゼウス・サンダー!」
ゼウスは堪忍袋の緒が切れて遂に先端を開いた。
 「その程度か?お前達の力は。」
新しい神々は坊主刈りした頭に稲妻を受けながら、ポ

リポリと頭を掻いた。
「見よ!私の力を・・・!摩訶般若、波羅蜜多(まかは

んにゃ・はらみった)!」
 (摩訶般若、波羅蜜多 → 意味のない言葉。ヤーレ

ン・ソーランみたいなもの。)
神の右手からは五色の光が飛び出した。
 オリンポスの神々はその場で目がくらんでひれ伏した。
「すごく強いわ。」
アフロディテ達はそう言って降参した。
 「ふん、家来になるなら許してあげよう。」
新しい神々は寛大だったので、オリンポスの神々を許

してくれたようである。
「えへへっ、生き残るためならなんでもしますだ。お代

官様。」
こうしてゼウスたちは新しい神々の体制(パシリ)に組

み込まれてしまったようだ。
               5
・・・それから、千年を超える時が流れた。
「明治維新とかいうのが始まったらしいぞ。」
ポセイドンはそういって瓦版を持ってきた。
 巷では「宮さん、宮さん・・・。」とかいう流行歌がはやっ

ているようである。
 「我々の神主(天皇)が勝っているようだ。」
情勢は神々の側に有利になってきたようである。
 「この機会に我々も支配者を追い出しましょう。」
アテナはそう言って神々に立ち上がるよう呼びかけた。
 「また、来たか。五陰盛苦、愛別離苦。」
(五陰盛苦 → ウジは汚い所から自然発生する。 

  愛別離苦 → ストーカーすんなよ。)
 髪の短い神はそう言って笑った。
 「今度は負けるか!ゼウスサンダー!」
 ゼウスの稲妻が走ると、侵略者たちはいっせいに黒こ

げになってその場に倒れた。
 「なんだこいつら、すごく弱くなっているぞ。」
ポセイドンは呆れ顔で仏(如来や菩薩)達を見た。
 「権力にすり寄ってきたので堕落したのね。」
江戸時代の僧侶は自分の利得を稼ぐのに一生懸命だ

ったので、かなり民衆に嫌われていたようである。
「はじめて神主(天皇)の側が勝ったわ。」
アフロディテは喜びの声を上げた。
「これからは私たちの天下!」
美しい彼女はそう言って踊り狂った。
 「ふふっ、日本には昔からオリエントの神々が居るのだ

から当然の勝利だよ。」
ゼウスはそう言って勝ち誇る。
 「しぃ~、高天原と言っておかないとまずいわよ。」
妻のヘラがそう言って夫をたしなめた。
               6
実は日本神話のほとんどは、外国から輸入されたもの

なのである。
 (古事記を編纂した作者が、オリジナルの話を考えな

かったようだ。)
読み比べれば、ギリシア神話などにかなりの共通点を

見出すことができるであろう。
              *
 神々が勝利してしばらくのちの話・・・。
 「なんだ?また戦争が始まったようだぞ。」
ゼウスが人間たちの動きを見てそうつぶやいた。
 「我々を信じて戦うのだ。吹けよ、神風!」
 ポセイドンがそう人間共をあおりたてた。
「たくさんお布施してよね。きっと戦争に勝てるわよ。」
アフロディテが寄付を募る。
 「神主(天皇)を敬うのよ!」
アテナがそういって服従を説いた。

 ・・・結果についてはみなさん御承知のとおりでし

た。
 人が信じなくなった神々を信仰しても、あまり良いこと

はなかったようである。



このことを詳しく書いている人のホームページです

      ↓

http://kojiki.imawamukashi.com/06siryo/06greek.html


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(実は一つの話を完結して他の話へ行くという手法

をとっておらず、いくつかのシリーズを並行して書い

ていますので、目次をご覧になった方がわかりやす

いかと思います。きまぐれで他のシリーズへ飛びま

す。)


増刊号の「山池田」です。

現在、なぞの物質・「福田樹脂」載せています
よろしくお願いしますね(。・ω・)ノ゙

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(山池田は登山日記と、自分では今一つと思っている

話を載せています。掲載は不定期です。)

呪いの館

           呪いの館
              1
「私はこの家を出ることになったけど、お前達には言っ

ておかねばならないことがある。」
 洋子は二人の娘達をキッチンに呼ぶとそう切り出した。
娘達二人はショートケーキにコンデンスミルクをかけて

食べていた。
 「ちょっと、お前達。食べるのを止めなさい。どうしてケー

キに甘いミルクかけるの。」
 娘達の父親はこの癖があった。
 父親の真似をしているのだ。
 「大丈夫よ、お母さん。そんなに食べないから・・。バスケ

しているとお腹が減って・・。」
 二人とも運動は得意でスラリとした美人である。
 ミドルスクールやハイスクールでも、人気の子達である。
 半分日本人の血が入っているので、男の子達は東洋の

神秘を感じるのだろう。
 「そんなことより、言っておきたいことって何?」
 姉のメアリ-が尋ねた。
 大きな瞳が美しい、黒髪の少女である。
 両親の良いところばかり受け継いでいる。
「この家には呪いがかかっているの。この家の血を引い

た娘は20才を過ぎると恐ろしい化け物になってしまうかも

知れないのよ。」
母の顔は深刻そうであった。
 「私はそれに対抗する手段を知っているけど、お前達は

くれぐれもそのことを忘れないようにしないと・・。」
 母親は離婚で日本へ帰ることになっていた。
 夫のジョージの浮気に耐えられなかったのだ。
 本当は娘達を連れて帰りたかったけれど、米国で生ま

れ育ち、日本語も全然話せない年頃の娘達を連れて行く

わけにはいかなかった。苦労することは目に見えている。
 もっと早いうちだったら日本にもなじんだだろうけど、もう

二人とも大きくなっていた。
 「呪い?何を言っているの。」
 妹のローラーは笑った。
 そんな話は父親からもお祖母さんからも聞いたことがな

い。
 たしかに居間には不気味な肖像画が何枚も掛かってい

る。
 お祖母さんの話ではこの家は由緒あるルーマニアの貴

族の末裔だという。
 オスマントルコがルーマニアに侵攻したときに勇敢に戦

った人達らしい。
 ウラド三世とかいう名前だった。
 別名に串刺し公とかいうあだ名がある。
 「お母さん、心配しないで・・。お父さんの話ではそれは

根拠が曖昧みたいだよ。」
 大陸に移住したときに、自分の祖先を誇るために、出

身地の英雄を騙ったのだろうと父親のジョージは娘達に

話して聞かせていた 
ドラキュラ公とは関係がないという。
 「お前達には呪われた血が半分流れているのよ。」
 母の目は真剣である。
 「お母さんはホラー映画の見過ぎよ。」
二人の娘はそう言って笑った。
 「それより、なぜ日本に帰ってしまうの?」
娘達は洋子に抱きついてきた。
 「ずっと米国で暮らしてよ。淋しいわ。」
母親は淋しそうに笑った。
 「ここで暮らすには私の力では厳しいの・・。」
 母親はデザイン画の画家だった。
 「今はお父さんには全然かなわないけど、きっと日本で

修行して一人前になるように頑張るわ。」
 そのときが来たら米国に戻って来るという。
 「きっと戻ってきてね、ママ。」
 二人の子達は代わる代わるキスをした。
 いつか母子で一緒に暮らす日を夢に描きながら・・。
             2
それから数年が過ぎ、洋子のデザイン画もやっと世間

に認められるようになった。
 日本では、業界で知らない人はいない位に有名である。
 米国に居たときの知人に連絡して、そちらへ移住しよう

かと相談すると先方は大乗気だった。
 実力者の洋子が来れば事務所の収益は一気に跳ね上

がるであろう。
 「あの子達に会える。」
 空港に着いた彼女は取るものもとりあえず、タクシーを

飛ばしてかっての自分のマイホームに急行した。
 娘達は二人とも成人して立派になっているだろう。
 ドアを開けて二人の娘を見たとき、彼女の背中に戦慄

が走った。
「あっ、あれほど言ったのに・・。」
 娘達の姿を見て彼女は絶句した。
 涙がポロポロと頬を伝う。
「おかえりなさい、ママ。」
娘達はキッチンでショートケーキにコンデンスミルクをか

けて食べていた。
              3
 米国に留学した女の子達の話を聞くと、米国の女の子

達は二十歳を過ぎたくらいから体形が変わってくるとい

う。
 米国は飽食文化の国であり、カロリーの高いものを摂

取する量は日本人とは桁が違うようだ。
 ハイスクール時代位の時はまだ良いのだが、成人して

運動しなくなるとその効果がてきめんに出てしまう。
キッチンにはかっての美人の面影がない、二人の相撲

取りがテーブルに座っていた。
 「だから言ったじゃないの。恐ろしい呪いがあるって・・・

。 」


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良心

           良  心
              1
 「華僑をすべて抹殺せよだと?ほんとに司令部はそ

んなことを言っているのか?」
山本少佐は自分の耳を疑った。
「間違いありません、参謀本部の辻中佐が直々に本

隊を訪れてそう告げました。」
命令を口頭で言って回った辻正信中佐。
 「世の中に絶対悪というものが存在するというものを、

初めて知った。」
戦後、この男と面談したジャーナリストがそう感想を語

ったことがある。
 毀誉褒貶がきわめて大きな人物で、現代ではその歴

史的評価は正負真っ向に分かれている。
 シンガポールでの華僑虐殺事件はこの男が原因であ

ると言われていた。
 (フィリピンでも米兵に同じことをしようとしたらしいが、

一部を除き、現地の士官が従わなかったらしい。)
 実はこの男、一般の兵士には結構人気があったようだ。
士官学校時代、川の水深を図るのに自ら裸になって飛

び込んだという。
 前線で負傷した兵も進んで負ぶさって帰営した。
海軍と面談する際、山本五十六長官が戦艦大和で山

海の珍味を並べて自分を接待しようとしたとき、 「国民
が物資統制で苦しんでいるのに、この贅沢は何か!」と

一喝したという。
 こういった、見え透いたような手を使う。
 上官にも、平気で自分の意見を言う人だったらしい。
実は配属されたところではまず経理部へ行き、上官の

料亭での請求書の数等を徹底的に調べたという。
 戦前の役所の経理など、今と違って杜撰なものであっ

ただろう。
 下心がないなら立派な行動だが、彼はそれを別のこと

に使ったようだ。
 弱みを握ってそれをちらつかせていたようである。
越権行為は日常茶飯事だったらしい。
 太平洋戦争前のノモンハン事件(モンゴルでの日本軍

とソ連軍の武力衝突)のとき、関東軍に居た彼は、大本

営の不拡大方針を伝える電報を握りつぶしたという。
 その結果が日本軍の大敗につながった。
 太平洋戦争になるとマレー侵攻作戦に携わった。
 マスコミは彼の類まれない弁説に感激し、絶賛した。
当時辻政信は別名を「戦の神様」と言われるほどだっ

た。
 実際には戦意に乏しく、主力部隊をヨーロッパ戦線に

割かれているイギリスの部隊など、誰が攻略しても成功

したであろうが・・・。
上っ面だけの関係では、この男の邪悪さは見抜くこと

ができなかったのではなかろうか?
 当時のマスコミは情報提供が巧みで、パフォーマンス

が得意な彼をもてはやしたのだろう。
 巧言令色少なし仁とは、この男のためにあったような

言葉である。
             2
イギリスに勝利し、シンガポールを占領した日本軍は、

そこに住む華僑(外国に居住する中国人)達が今までに

激しい抗日運動を展開していたと見ていた。
日本と中華民国は血みどろの戦いを十年以上も続け

ていた。
 これは紛れもなく日本の侵略戦争であり、同じ中華民

族である華僑の人たちが、愛国心から本国へ協力する
のもやむを得ないものがあったであろう。
 ただ、彼らの協力のためにずっと苦しめられてきた日

本軍にとって、これは千載一遇のチャンスであった。
 今まではイギリス軍が居たために手が出せなかったの

だ。
日本軍は華僑を一か所に集めて尋問し、中華民国の

蒋介石に財政援助をしていないか、日本人、日系人に

ゲリラ活動をしていないか、厳しく問い質した。
            3 
その日、日本軍が占領するビルの一室、そこには劉と

名乗る中華料理店の店主が取り調べを受けていた。
 「違う、私はイギリス軍なんかに協力していない。彼ら

はお客として私の店にきていただけだ。」
イギリスの士官は、劉の中華料理店では気前よくお金

を使ってくれる上客だった。
 彼は腕のいい料理人だったのだ。
 「嘘をつけ、お前の近所の崔が日本軍の動きを逐一報

告していたと言っていたぞ。」
劉は単なる世間話だと言い張った。
 他の国に住む華僑から情報の提供など受けていない

という。
 「崔とは個人的ないさかいがあるから、そんなことを言

っているだけだ。他の者に聞いてちゃんと調べたのか。」
劉は半分泣きそうになりながらそう訴えた。
 「本当だ、信じてくれ。あいつは、前から土地の境界の

ことで私に因縁をつけてきていて、私にこっぴどく懲らし

められたから・・・。私は悪くないんだ!」
彼は激しくそう言い張った。見た目は嘘を言っているよ

うにも見えなかったが。
「あんただって、もし店を持っていて、お得意さんがき

たら世間話位するだろう・・・。ただそれだけのこ

となんだ。」
山本少佐は部下の木下中尉に尋ねた。
「どう思う?」
どうとも判断しがたいような華僑の答弁である。
 「彼は海南省出身(共産党員が多かった)ですし、星

州華僑抗敵動員総会(イギリス主導の抗日組織)にも

名を連ねていたという噂があります。」
中尉は調べてきたメモ帳を見ながらそう答えた。それ

以外の情報はない。
 「じゃあ、黒だな。」
少佐はそう即決した。
 「間違いないと思いますよ。」
 木下中尉も上司の意見に同意した。早くしないと次の

被告が待っている。
 「では次の男に行くか・・・。」
劉の銃殺刑が決定し、裁きを受ける次の男が取調室

に放り込まれた。
            4
「この駅前に集まっている人だかりは何かね?」
たまたまシンガポール駅前を通りかかった城少佐が、

車を止めて警備している久松中尉に尋ねた。
 「シンガポールの華僑どもですよ。辻中佐殿から処刑

せよという命令を受けております。」
華僑たちは日本兵に取り囲まれ、三八式小銃を突き

付けられている。
 「ロクに調べもせずに処刑せよと・・・?」
城少佐は辻の残虐性をよく知っていた。
 「ええ・・・、抗日ゲリラを掃討するためだとか。」
抗日ゲリラは確かに少なからず居たのであるが、一

般人に紛れ込んでいるために外見からは判断はできな

いのである。
 当然のことながら、華僑のほとんどは一般市民である。
「どうだろう?辻が口頭で言っているのが気になる。そ

んな重要な命令なら書類があるはずだ。処刑はそれを

みてからでも遅くはない。」
城少佐はそう言って首を傾げた。
「どうしましょうか?」
上官にそう言われて久松中尉は困った顔をした。
「山下奉文中将が『あいつは我意強く、小才に長じ、

所謂こすき男で信用できない』と言っていたのを聞い

たことがある。俺は自分の思うところに従うよ。そのこと

で司令部に睨まれるのはかまわない。」
辻中佐は単なる軍の幕僚である。
 指揮系統からも城少佐に命令することはできないは

ずである。
 少佐は集まったシンガポールの華僑を解散させるよ

う指示した。
「本当に良いのですか?」
久松中尉は再度確認した。
 彼は陸軍の中枢にいる辻が恐ろしかったのである。
「いいから、ここに居る無辜(むこ)の住民を即刻退散

させたまえ。」
ひどい目に遭わされると思っていた華僑たちは、喜

んで自分の自宅へと帰って行った。
            5
 戦争に勝利した連合軍が開いたシンガポールでの戦

犯の裁判。
 終戦まで生き延びた山本少佐が、被告として証言台

に立たされていた。
「ですから・・・、我々が処刑したのは戦争の遂行を妨

げる抗日ゲリラ達でした。」
彼はシンガポールでの華僑虐殺事件に関与した罪を

問われていた。
「戦争中のことで十分な取り調べができなかったこと

は認めます。しかしそれは参謀本部からの命令であっ
って、私は言われたことを執行したにすぎないのです。」
山本少佐は裁判官に公正な裁判をするよう要求した。
 武装ゲリラを掃討することで罪を問えない。
 「おまえは、人には十把一絡げ(じっぱひとからげ)

のような裁きをしておいて、自分の時には公正な裁判
を求めるのか?」
アメリカ人裁判官の質問を、日系人通訳はそう山本

少佐に伝えた。
 「いや、しかし、あれは辻が命令して・・・。私はやりた

くなかったのだが・・・。」
 少佐はしどろもどろになってそう答えた。
辻が独断でそのような偽(にせ)命令を出したのはほ

ぼ間違いないであろう。
 前線では情報が混乱していて、当時は本国の司令部

にも確認できなかった。
 辻は口頭で命令していたので責任を追及できず、彼

自身の罪は問われていない。
 おまけに戦犯の裁判が行われていた時、彼は中国に

潜んでいて、行方をくらましていたのだ。
 辻が逃げ回らず本当のことを証言すれば、助かった

人々はたくさん居たであろう。
(・・・実はこの男、終戦まで生き延びて国会議員にま

でなっている。)
 山本少佐の言い分を聞いたアメリカ人の裁判官は眉

一つ動かさず、氷のように無表情な顔でこう言い放った。
 「もし、そのような命令があったとしても、おまえは自

らの良心に従って判断すべきではなかったのかね?」
           6
 日本人の裁判は粛々と迅速に続けられ、刑が確定し

た者はきわめて速やかに処刑されていった。
 なぜなら現地の裁判官は、日本軍がこの地を占領し

たときのように忙しかったからだ。
 被告になった山本少佐が、日本の土を踏むことは二

度となかった・・・。


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わが社の衛生管理

           わが社の衛生管理
              1
「そんなバカな!なぜうちの製品から・・・。」
服部専務は耳を疑った。
 百地製菓が製造している食品を食べた消費者が、大量の食

中毒を起こしたというのだ。
「何かの間違いでは・・?」
 百地製菓は品質には万全の自信を持っていた。
 業界屈指の衛生設備を備えた工場を持っているのである。

中小企業では珍しい程、徹底した衛生管理を行っている。
 「しかし、当局の報告では間違いないらしいです。」
 営業の丸田部長は頭を抱えてそう報告した。
百地製菓製のクリームパンを食べたものは、数時間後に激

しい嘔吐を繰り返し、ひどい人は入院するに至っている。
 所管する保健所の検査の結果、黄色ブドウ球菌による食中

毒が疑われた。
 この菌はサルモネラ菌などと違って、菌が作り出した毒素

で中毒を起こすので、加熱させて菌を消滅させても効果がな

い厄介な細菌である。
 はたして調理前の、半製品の一部から菌が発見されたの

で、工場は全面的な操業中止を余儀なくされた。
企業としては致命的な損失である。
 「なぜだろう、原因が解らない。」
服部専務は原因の徹底した究明を指示した。
 「品質の管理には万全を期っしていたはずなのだが・・・

?」
保健所は、「製造過程に問題があるのでは?」と指摘した。
 「そんなばかな、どこにも雑菌など入る余地はないはずだ。」
藤枝工場長はそう主張した。
 まじめな人で、社内の管理規定には忠実に従っていた。特

に食品に携わる企業として、衛生面には格段に気を使ってい

たのである。
 「ネズミはおろか、ゴキブリだって一匹も入れないのだぞ

・・・。」
工場の入口は密封式の二重の扉になっており、作業員は

備え付けの消毒液で靴を消毒してから入るようになっている。
 職員は耐菌製の防護服を着て作業しているのだ。
 消毒された手袋を使用し、材料には直接手で触れないよ

うにしている。
「使用した材料、卵とかに原因があったのではないのか

?」
 服部専務はそう疑問を持ち、徹底的に原料が検査された。
 悪い品質のものを入れた納入業者には損害賠償を請求

するつもりである。
 「駄目だ、原料にも原因が見つからない。」
自社の検査員が眠らずに小麦粉、卵、油、イースト菌酵母、

徹底的に調べたが菌は発見できなかった。
 だいたい、製造前に抜き取り検査して調査しているのであ

る。
 このルートからの感染は考えにくい。
「これは某国の陰謀ではないか?」
 そんなことを言い出す者もいた。
 しかし、市場に出たものに毒を注入するのならそれも考え

られるが、工場内で菌が見つかったので言い訳ができない。
 だいたい、テロならわざわざ黄色ブドウ球菌を培養して製

品に混入するという、手間のかかる方法をとる必要はあるま

い。薬品を混入させた方が手っ取り早いはずである。
会社は謝罪の記者会見を開いたが、容赦のないマスコミ

の攻撃に、存亡の危機を迎えつつあった・・・。
              2
百地製菓の食堂、工場が操業中止になって暇を持て余し

た従業員がたむろしていた。
「工場、しばらく休みになっちゃうらしいわね。」
京子はそういって缶コーヒーをすすった。
 「なんだろう?給料出るのかな。」
恵子は心配そうにそうつぶやいた。
 給料がでないと車のローンが払えない。
 「会社の都合で休むのだから、出ると思うよ。」
みんな正社員なのでその点は大丈夫かもしれない。
「それはそうと、京子。あなた少し臭くない?」
留美は京子の頭をクンクンと鼻を鳴らして嗅いでいる。
 「そういえば、私1ケ月位お風呂に入ってないかな。」
京子はそう言いながら、指を折って期間を数えている。
 どうも正確な日を忘れてしまったようだ。
 「汚いわね、私は半月位よ。」
留美はそう言って笑った。
 目くそ鼻くそ・・・、である
「疲れて寝ちゃうから、お風呂入っている暇ないのよね。」
恵子もあまり風呂に入ってないようである。
「そうそう、会社の寮で寝泊まりしているし・・・。」
外へあまり出ないからおめかしする必要がないのである。
「私、寮に帰るとイラスト描いているから時間がなくて・・・。

吹き出物が増えちゃったわ。」
職場は女性ばかりで男性はほとんど居なかった。
 男性の視線に、気を使う必要がないのだ。
 「すっぽり顔を覆う服を着て、目だけしか見えないから解ら

ないわよね。」
頭をすっぽり覆う衛生帽子とマスクのおかげで、勤務中に

露出しているのは目の部分だけである。
 「そうね、服も密封式だから他人の匂いも気にならないし

・・・。」
もともと食品の匂いが工場内に充満しているから、それが

自然の香水にもなっているのである。
 「化粧なんかしなくなっちゃうわよね・・・。」
 京子はそう言いながら、みんなに同意を求める。。
 「そうそう、そうだよね。」
 「それは言えてるよね・・・。」
「慣れちゃうと、まっ、いいかだよね。」


 どうやら百地製菓では、製品の品質管理ばかりに気を取

られて、人間の品質管理をすることを忘れていたようである。


ペタしてね



過去作品へ簡単に行けるブログ「豆池田」

です。(目次のブログです)

よろしければご覧になってくださいね。

http://ameblo.jp/m8511030/

(実は一つの話を完結して他の話へ行くという手法

をとっておらず、いくつかのシリーズを並行して書い

ていますので、目次をご覧になった方がわかりやす

いかと思います。きまぐれで他のシリーズへ飛びま

す。)


増刊号の「山池田」です。

現在、なぞの物質・「福田樹脂」載せています
よろしくお願いしますね(。・ω・)ノ゙

 http://ameblo.jp/m8511033/

(山池田は登山日記と、自分では今一つと思っている

話を載せています。掲載は不定期です。)





自由への扉

          自由への扉
              1
 「今だわ!」
 カエル夫人が戸を閉め忘れている。
 玄関の戸は私の力ではとても開けらない重いものだっ

た。
 だいたい取っ手まで、全然背が届かない。
 「ちょっと、どこ行くの!ミーちゃん。」
 カエル夫人が何か叫んでいたが、もちろん何を言ってい

るかわからない。
 このままでは私はずっと囚われの身のままだ。
「わーい、自由だ。」
 カエルたちに捕まらないよう、道路の隅とか、排水溝とか

を歩いた。
 案外カエルたちは私に無関心で、目に留まっても無視

している。
 結構ノラの地球人が多いからかもしれない。
「おい、君。何をしている。」
 私は英語で話しかけられた。
 懐かしい地球の言葉だ。
 「今、カエルたちの家から逃げてきたところなの。」
 「そうみたいだね、首輪をしているし・・・。」
 この首輪は簡単には取れない代物である。
 「よければ私たちのキャンプに来ないか?僕の名前は

ジョン。一人で町を歩くのは危険だ。」
逃げ出しても、どうやって生活していけばよいかは解ら

なかった。
 誰かに頼りたかった私は、喜んで承諾した。
 ジョンはとてもハンサムで、筋骨隆々としていた。野生で

はそうでなければ生きていけないのだろう。
 地球人の集落は、公園横の森の中にあった。
 この星の植物はみな背が高く、ちょとした雑草でも、私

たちの体を隠すのには十分だった。
 アイヌの伝説にあるコロボックルのような集落である。
 私が行くと、いろんな人が歓迎してくれた。
 地球にいた時の話で盛り上がって楽しかった。みんな早

くこの星、巨大なカエルの惑星から逃げ出したがっていた。
 私はジョンと知り合って一目で好きになり、行くところも

なかったので、彼が草を編んで作った小屋にしばらく厄介

になることにした。
「12月25日のクリスマスに仲間が集まって反乱を起こ

そうと思っている。この屈辱的な待遇を改善するのだ。」
彼はベットの中でそう私に語って見せた。
 もしそんなことが実現したらもう死んでも構わない。
 その時はたしかにそう思って、期待に胸を膨らませたも

のである。
              2
 ところが3日間ほどすぎると、私はこの集落を出たくなっ

てしまった。
 「お腹すいたな・・・。」
 すぐに食料に困ったのである。
 食料は男性が調達してきて、量だけは十分にあった。
でも、彼達の食べている食料は、見た目がぞっとするも

ので、とても口にすることなどできない。
 何かの変な虫のようなものだ。
 火は使えないから生食するしかない。
 火を使うとカエル人に見つかってしまうである。
こんなもの生で食べたら何かの病気にかかりそうだった。

 事実、かなりの人が体調を壊していた。
 夫人たちの援助なしに、この星で生きていくのは厳しい

のだろう。
「ごめんなさい、私ここを出ます。」
 飢えのためにここで生きていく自信がなくなってしまっ


ジョンは止めたけど、日に日に弱っていく私を見て、無

理を言うことはできなかった。
             3
 集落を出ても私には行くところがない。
 仕方なく、もとの家へと戻ってきた。
 「どうしよう?中へ入れてくれるかな。」
 怖くて家の周りの物陰に隠れる。
入口近くで夫人が立っているのが見えた。
 この寒い中、ずっと待っていてくれたのだろう。
「どこ行ってたのよ。心配してずっと探していたのよ。」
夫人は私を見つけると、あわててそばへ寄ってきた。
怒られるのかと思ったら、夫人は私を抱きしめて頬ずり

をした。
「きっと、野良たちと遊んでいたのね。」
夫人は優しいお母さんのような人だった。
 何を言っているのかわからないけれど、態度で理解で

きた。
 「あなたも淋しかったのね。自分のことばかり考えてて

・・・、ごめんなさい。」
 夫人は私を抱きしめて何か言うと、目から一粒の涙を

こぼした。
             4 
12月の25日になると、彼はひっそりと私の家に忍び

込んできた。
 排水管から入ったのだろう。
「さあ行こう。同志が待っている。」
彼は私の手を引いた。
 革命に参加しろという誘いである。
 「ごめんなさい、私はやっぱりここに残るわ。私がいな

くなったら夫人が淋しい思いをするから・・・。」
あの日以来、私は考えが変わってしまっていた。
 「なぜ?カエルなんかに同情してどうする?自分の幸

せをつかむのだ。」
ジョンはやや怒ったようにそう言った。
 正論だと思う。
「もう決めたんだ。ごめんなさい。それに・・・、私は結構

幸せだよ。」
 私が拒否するので彼はさびしそうに出て行ってしまった。
 それっきり、彼とは二度と会うことはなかった・・・。
しばらくして、反乱を起こした人たちが全員鎮圧された

ことを知った。
 もともと科学力が違うのだから成功するはずがない。
 いくら温厚な人たちでも今回は許してはくれないだろう。
 かなりの人が罰を受けたようだ。
             5
ある朝、私はベットの上で目覚めた。
 下半身に少し痛みを覚える。
 懐かしい生理が来ていた。
 食物に眠り薬を入れられ、その間に手術をされたらし

い。
どうやら夫人は私の生殖器を保存していて、元に戻し

てくれたようだ。
 彼女たちの科学力なら簡単なことなのだろう。
 きっとかなりの費用がかかっただろうけど、私のために

それも負担してくれたのだ。
傷が癒えて一ケ月位してから、夫人は大きなバスケッ

トのようなものを持ってきて、何か楽しそうに語った。
「さあ、あなたにプレゼントがあるのよ。」
バスケットのふたをおもむろに開ける・・・。
「うふふ、きっと気に入ると思うわ。可愛い男の子よ。」
 可愛い顔をした地球人の男性が、おずおずとバスケッ

トの中から現れた。
 性格がおとなしそうな子である。
「ちょっと・・・、この子、中学生くらいじゃないの。」
夫人には人間の年齢がよく理解できていない。
 「あたしに母親になれっていうの?」
私は男の子の股間を見て驚いた。
「いやだ、こいつ勃起しているじゃない。」
やる気満々のようだ。
 「ううっ、頼むから少しは選ぶ権利を・・・。」
 私はこの子をどう扱ったらいいのか・・・、しばらく思い

悩むことになる。

その後、ミーちゃんはたくさんの子供に恵まれて、幸せ

に暮らしたようです。
             6
(今から10年程前・カエル星人達の記録より・・・。)
無人の宇宙ステーションにおかしなものが引っかかって

いるという通報を受け、カエル人達の修理船は調査
に向かった。
 未知の物体は長い間航海していた宇宙船のようだった。
「なんだ、こんな宇宙船でこんなところまで来たのか?」
宇宙船の乗組員は冷凍カプセルで眠っているようであっ


彼らから見て、地球の宇宙船は非常に粗末なものに見

えた。
「自殺行為だ。正気の沙汰とは思えん。我々が見つけ

なければ死んでいたぞ。」
幸い、ほとんどの乗組員は生きているようである。
 ただ、計器が故障して止まったものはミイラ化して死ん

でいた。
 「私たちの社会で暮らすことはできないのか?」
 船長はお客さんとして遇しようとしていた。
地球人の体を調べている技師が首を横に振った。
 「ダメだ、脳の容量が小さすぎる。寿命も短くてとても適

応できないだろう。それに攻撃性を持っている。」
高度な社会に適応できるほどの能力はなさそうだ。
 生物学的に不可能であり、改善できる余地はない。
 犬に算数を教えるようなものなのである。
 「送り返しては?」
 地球に送り届けることも彼らの科学なら可能である。 
 「いや、母星はすでにこの生物が棲める環境ではない

ようだ。」
 宇宙船のデーターを分析していた研究員はそう答えた。
 どうも核戦争が起こって住めなくなったようである。
 移住の地を未知の天体に求めたのだ。
 もちろん、確たるあてがあったわけの船出ではなく、出

たとこ勝負だった。
 おそらくほとんどの人が死んだが、永遠に宇宙の旅を

続けることになるだろう。
「厄介なものを拾ってしまったな。」
船長は頭を抱えた。
 「どうする?」
 まさか知らん顔をするわけにもいくまい。
 見てしまった以上、助けなければ・・・。
 「ペットとして扱うしかないな。それでも監視は必要だ

。」
見張っていなければ暴走する恐れがある。
 カエル人たちは地球人の攻撃性を問題視した。
 「そうか、やむを得ないな。考えようによってはその方

が幸せかもしれん。うちの星で自立させれば、きっ
とまた仲間割れを起こして自滅するだろうしな・・・。」
 手の中で遊ばせておくのが一番よかったのだろう。
もしかしてこの宇宙人達は・・・、カエルの格好をした神

だったのかもしれない。


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おでぶなミーちゃん

  おでぶなミーちゃん





              1
「なに?この動物・・・。」
居間に寝そべっている動物を見て姪が驚きの声を

上げた。
 「何って?あたしのペットのミーちゃんよ。」
叔母は笑ってそう答えた
 「なんでこんなに太っているのよ。」
居間に寝そべっているペットは肉のかたまりにしか見

えない。
 体を動かすのもしんどいのか横になって動かないよ

うだ。
 「うふふ、避妊手術をしたら子供に戻ってしまうらしい

のね。食べ物ばかりに関心がいって・・・。」
叔母さんは可愛くて仕方ないような口調である。
 「でもおばさん、こんなに太らせたら・・・。」
 「そうね、健康に悪いわね。でも太っている方が可愛

いから・・・。」
叔母さんは小さなペットのお腹を撫でた。
 柔らかくて気持ちがいいようだ。
「この子達は私達に比べてずっと寿命が短いのよ。

好きにさせてあげましょう。」
姪は呆れた顔をした。
 「運動する気も痩せる気もないのね。」
食べて寝る生活をずっと続けているようである。
 「外へは出さないし・・・、捕まったり、帰ってこなかっ

たら悲しいでしょう。」
外へ出すより家の中で飼った方がずっと長生きが出

来るのだ。
 「本当は子供を産ませてペットなりの幸せを与えたか

ったのだけれど・・・。」
叔母さんはすこし残念そうだった。
 「駄目よ、増えすぎたら困るわ。捨てたりしたら今はう

るさい時代だし・・・。」
 姪の近所では公園とかで増えすぎて問題になってい

るらしい。
 「手のかからない子達なんだけどね。」
 叔母は残念そうであった。
 避妊したことに少し気が咎めているようである。
「おまえ太りすぎだよ。いくら恋人が居ないからって

・・・。」
 姪が右手でミーの頭を軽く叩く。
ミーは半目を開けて寝ぼけていたのか、姪の腕を軽

く前足ではらった。
「あっ、痛い。」
鋭い爪で引っかかれて姪が悲鳴をあげる。
 「知らない人が手を出すと引っ掻くのよ。」
 叔母さんはニコニコ笑っていた。
 目の中に入れても痛くない程の可愛がりようである。
 ミーが起き出したので、叔母さんはソファから立ち上

がると、キッチンの棚から何かを取り出した。
 「さあ、ミーちゃん。おやつをあげるわよ。」
袋を開けると、まどろんでいたミーちゃんはしっかりと

目を見開いた。
「おまえ、寝てたんじゃなかったの?」
 姪の声を無視してミーちゃんはすごい勢いで叔母さん

の目の前に座る。
 お菓子をおねだりしているようだった。
 「叔母さん、それが駄目なんだって・・・。この子早死に

するわよ。」
姪は足の先でミーのお腹を突いたが、知らん顔をして

いる。
 食べ物にしか関心がないようである。
 「もうミーちゃんもおばさんなんだから、良いわよね。」
婦人はそうつぶやくと、器にお菓子を山盛りに盛って

あげていた。
              2
 「ふー、駄目よ、駄目。食べたら太るわ。」
 ミーちゃんは自分に言い聞かせた。
 「ああっ、でも駄目。我慢出来ない。」
婦人が取り出したお菓子を口一杯に頬張った。
 「どうしてこの星の食べ物はこんなに美味しいの。」
むしゃむしゃとむさぼり食ってしまう。
 「こんなに太ってしまっては地球へは戻れないわ・・・

。」
ミーちゃんは自分のお腹を見て嘆いた。
 「ああっ、でも我慢出来ない。」
 一度口にしたら止めることのないおいしさなのだ。
 結局、今日もお腹一杯食べてしまった。

 今、カエル人の間では、日本人女性のペットが依然と

して大人気のようである。




次回、いよいよ最終話です(。・ω・)ノ゙。


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