リボン・お花・レースという女子の憧れアイテムが3拍子揃った18世紀のフランスで流行したロココ時代のドレス。
250年以上前の名画から女性のドレスの着こなしとその魅力について分析していきたいと思います。
一般的に日本では、リボンやレース、フリルなどは「可愛いく幼い」イメージに受け取られることが多いアイテム。
一方、18世紀のフランスでは宮廷の女性のための衣装は「エレガントの極み」として表現されることがほとんどで、決して子供っぽい印象にはなっていません。
その差はどこから出てくるのでしょうか。
モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール「ポンパドゥール侯爵夫人」1755年
それは気がつかないくらいに小さな配慮の積み重ねに他なりません。
1・・・ロココを代表する典型のような胸のリボン。
よく観察すると上のリボンから下のリボンは、少しずつ大きさを変えて小さくなっています。
2・・・袖のフリルとレース
単純なギャザーのフリルではなくフレアで布幅をたっぷりとること、そしてリボンとは逆に下に向かっていくほどフリルの長さを少しずつ長くすることで見る人に安心感を与えています。
単純にコピーをしたドレスは上から下まで同じ大きさのリボン、均等に割り当てたギャザーの袖フリルなど、平面的な印象が強く出てしまった場合などエレガントな表現ができず、ただ可愛いだけの子供服のイメージになってしまうことが避けられません。
上の絵画、下の絵画のポンパドール夫人のドレスの最大の魅力は
1・・・ダイナミックな布使い&じっくりと眺めたくなる立体感
2・・・布の厚み、布の柄&レースとリボンの素材感の調和
古典的な絵画の世界では、どれだけ奥行き感や立体感が出せるかが絵の完成度に関わることも多いのですが、ドレスの世界も同じく立体感がエレガントな表情の大きなポイントになることもこの時代の絵画の作品から伝わってきました。
ローズ色とグリーンの一見難しい組み合わせのドレスですが、圧倒的なローズの美しさとガーデンのグリーンの組み合わせは、まるで自然界の美しさそのもののナチュラルさと高貴さを感じてしまいます。
普通にお花やリボンを並べただけでは、ここまでエレガントな表情にはなりません。
ローズのドレスがエレガントで美しい理由
1・・・リボンをいくつも重ね立体的にしている
2・・・同じ大きさのお花も、向きを変えることや流れをつけている
3・・・えりのお花は、より均一にならないよう表情を変えている
とにかく目を飽きさせず、細部にこだわり見応えのあるようにデザインされ、かつ奥行き感を感じさせる立体感が決め手となっています。
フランソワ・ブーシェ「ポンパドール夫人」1758年
上記2点の宮廷衣装とは違い、下記の「ベルジュレ夫人」のドレスは自然の中に溶け込むように華美な装飾を減らしたシンプルなデザイン。
胸元と袖口のブルーのリボンがポンパドール夫人のものと比べると簡素になっている分だけ、肩先につけたお花の存在感が高まっています。
圧倒的な存在感がある宮廷ドレスに対して、自然の中で着ているドレスは威圧感がない分、その人の持つ内面的な魅力までを表しているようにも思えます。
まるで、自然界のお花が生命の喜びを発しているような嬉しさと同じような気品や優しさ純粋さを感じます。
フランソワ・ブーシェ「ベルジュレ夫人」1766年
名画の中のドレスの魅力を分析していたら、私たちのアトリエのドレスが、なぜシンプルを追求しているのか、ナチュラルな魅力にこだわる理由が自然と浮かび上がってきました。
「表面的な美しさで着飾るだけでなく、身にまとう人の魂の喜びが表れるようなドレスが作りたい」というのが私の中の一番の願いだったことに気づいたのです。
改めてシンプルでナチュラルであることの美しさや良さに改めて気づかせてくれた名画に感謝して、これからも精進していきます。
今日も読んでくださってありがとうございました。
ルーチェ クラッシカ・光田 みどり
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