2021年の台湾映画『複身犯』を台湾盤DVDにて鑑賞。
予告編はこちら↓
『複身犯』(2021年/台湾/107分)
バスが横転爆発し、乗員乗客合わせて5名が死亡する事故が発生。車内から見つかったのは、連続児童失踪事件の被害者の持ち物だった。児童失踪事件の真相を追究するために、警察は極秘で実験を進めていた「人格を他人に移植する」技術を用いることに。その技術の第一人者である脳神経博士の沈宜玲に、植物状態の死刑囚・陳光軒の脳に事故の被害者5人の人格を移植させ、193號と名付け捜査を開始するが・・・。
『おばあちゃんの夢中恋人』の蕭力修監督による、ハードSF・サスペンス。5人の人格を植え付けられ、植物状態から目覚めた極悪犯・陳光軒を演じるのは楊祐寧(トニー・ヤン)。彼に人格移植を行う脳神経博士・沈宜玲を演じたのは張榕容(チャン・ロンロン)。バスに乗っていた被害者で被疑者を演じるのは林哲熹(リン・ジェーシー)、陳以文(チェン・イーウェン)、王淨(ワン・ジン)ら。豪華である。(ちなみにヤクザな高利貸しを龍劭華(ロン・シャオホア)が演じている。公開順でいくと、本作が最後の長編映画出演作だったみたい。R.I.P.)
警察の都合で多重人格者にされる193號の内面世界の描写が秀逸で、物語の世界観にすーっと入っていくことができた。予算をつぎ込みCGをバリバリ用いて世界を力技で作り込むというよりは、見せ方の妙技+視覚効果で見事に演出する、という感じ。ある意味、漫画的な画(あるいは表現)と言えるかもしれないが、スクリーンに映り込む現実の世界(ロケ地)や舞台設計(時代背景はおそらくかなり近いであろう近未来)などとのバランスが絶妙で、素晴らしい!のひと言に尽きるかも。こんな作品も撮れるようになったのね、と、ある意味感慨深くもある。
植物状態の死刑囚に他人に人格を移植するという設定から、目覚めた後に彼が「多重人格者にされてしまった」ことに気付く過程、さらに彼のもつ「人間らしい」部分、脳神経博士の葛藤なども丁寧に描いているので、「凶悪犯/死刑囚の人権とは」「正義とは」を考えさせられる物語でもあった。日本語字幕できちんと見たいのぅ。。
・・・先日『スリングショット』が上映された「未体験ゾーンの映画たち」なんかに向いてそうな作品でした!(映画祭事務局さま、来年ぜひ!!)
こちらのメイキングも面白かった。ロケ地は台南。だけど物語の舞台は「どこでもない場所」というのも興味深い。