易智言監督『廢棄之城』@東京アニメアワードフェスティバル | 今天有空嗎?

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『藍色夏恋』『コードネームは孫中山』のイー・ツーイェン(易智言)監督による最新作『廢棄之城』を東京アニメアワードフェスティバルで鑑賞。

邦題は『捨てられたもののの街』。映画祭詳細はこちら→

 

 

『捨てられたものの街(原題:廢棄之城)』(2020年/台湾/90分)

声の演出:主人公・小樹:黄河、阿袋:張孝全、阿鐵(スプレー缶):李烈、GPS:桂綸鎂、城隍爺:高捷

 

家出少年・小樹(リーフ)がたどり着いたのは「廢棄之城」とよばれる”捨てられたもののの街”。そこでひょんなことから使い古されたビニル袋の阿袋(バギー)を助ける。阿袋は自分を「ゴミ」だとは思っておらず、いつか仲間たちとこの街を脱出し、伝説の聖地「リサイクル場」に行くことを夢見ていた。阿袋は聖地に行くために、小樹に力を貸して欲しいいう。体の軽いビニル袋たちは、街を一歩出ると、お化けのような巨大なバキュームカーに吸われてしまい、焼却施設で燃やされてしまうからだ。一方、家にも学校にも居場所を見つけられないでいる小樹にとって廢棄之城は居心地がよかった。この地を離れたくない小樹は、街を支配する城隍爺たちに阿袋たちの逃避計画を密告するも、やがて罪悪感にさいなまれ・・・。

 

易智言監督作品らしく、16歳の少年小樹(字幕ではリーフ)が主人公。ピクサー作品を彷彿とさせるような、洗練された3Dアニメーションながら、台湾らしい要素も散見され、全体的にとても興味深い。赤白縞々袋ほか、ビニル袋たちの動きがすごい!設定も展開も面白く、見る人によっていろんな解釈が出来そう。ゴミで形成された廃墟のような街は、物であふれ、人間すらもモノであるかのように扱われる(あるいは自分自身をモノのようにしか感じられない)、荒廃した物質社会のように感じられた。街を恐怖で支配する城隍爺の存在がいい味を出していたが、この世界の弱者である阿袋たちに、ある種の恐怖を与える役割を、台湾人にとって身近な信仰の対象である城隍爺に担わせたのかが気になった。なぜ城隍爺はこの街を逃げ出すことを良しとせず、阿袋たち(ある意味新興勢力なのだろう)を押さえつけようとするのだろう。

 

現地インタビューで易監督は本作のターゲットを30~40代と言っていたが、私は小樹と阿袋の心の交流に入り込むことができず…が個人的に心残り。

 

豪華俳優陣による声の出演が功を奏したかどうかはよくわからないのだけど、本作に登場するいろんな物に俳優たちが成りきってアテレコしている様子を想像すると、それはそれでかなり面白い状況かもしれない(グイ・ルンメイのGPSとか)。