宮本浩次 五周年記念 birthday concert GO!
2024年6月12日(水) ぴあアリーナMM
“おかみさん 布団干す 南向きに”
何年ぶりだろう。聴けた。
宮本浩次のソロ 5周年記念バースデーコンサート。そっか、ソロ始動してから 5年なのか。それが長いのか短いのか。
前年(2018年)に椎名林檎との「獣ゆく細道」、東京スカパラダイスオーケストラとの「明日以外すべて燃やせ」があったから、どこがはじまりかわからなくなってしまいそうだけど、2019年の「冬の花」でソロデビューしてから 5年。
その 2019年から自身の誕生日(6/12)にライブしていて、弾き語り、作業場での無観客ライブ、バンドでのライブといろいろな形で魅せてくれたが、今年はどんなライブだろう。私は特に調べず行ったが、「仲間とやります」みたいなことがどこかに書いてあったかも知れない(なかったかも知れない)。
星空が映し出され、プラネタリウムみたいと思っていたら、花道の先端(会場の中央)に宮本浩次が現われ、「Woman “Wの悲劇”より」を歌い出した。そうだ、去年の「ロマンスの夜」ぶりの宮本浩次のライブだ。見惚れ、聴き惚れていたら、ステージの方を見ると、あ!バンドがいる! メンバーは、縦横無尽ツアーと同じメンバー。
2曲目「rain -愛だけを信じて-」。途中、堂々と口パクしていて清々しかった。や、あれを口パクとは言わないかも知れないが、コーラスをかぶせていて、その部分を堂々と歌っていなかったのだ。昔、マドンナのライブで「堂々と口パク」って誉めてた(?)人がいて、物理的というか演出的というか、ボーカルをかぶせるところで、歌うフリもせず堂々と歌ってないのが清々しくもあると。歌ってなかったのは一部分だけだけど、宮本浩次もこういうことするんだ!?という新鮮な驚きがあって、これも演出に思えたくらいだった。
「going my way」はじめて聴いた気がすると思ったら、2019年のロックインジャパンフェスで聴いてた? あのときは横山健と MYJJ での出演だった。いつ聴いても新鮮に聞こえるのかも。この曲好きだなぁと思った。
そして、「はじめての僕デス」!
一旦下がり、「僕はみんなのうたで歌ってたんです」というような宮本浩次によるナレーションが入り、『みんなのうた』の映像が映し出される。10歳の宮本浩次の歌声がかかる中、今日で 58歳の宮本浩次が登場、「はじめての僕デス」を歌った! 一部分だけだったけれど、10歳の宮本浩次と 58歳の宮本浩次の歌声が重なる。凄い…。
そこから「passion」「風と共に」。
観てたときは集中してて気づかなかったと思うけど、これ『みんなのうた』3連発だったんだね。凄い…。
「今宵の月のように」で全員下がり、ここで第1部終了か。
第2部その冒頭、しばしの静寂の後、
“し・ば・ら・れ・る・な!”
その 6文字(6発声)だけで、いや、頭の “し” 1文字(1発声)だけでも空気が引き締まったのを感じた。静寂を突き抜け、強烈だった。この曲「解き放て、我らが新時代」の “身ひとつ” 感は凄い。自分の声だけで、メロディもなくても、言葉と発声だけで、会場を震わせた。宮本浩次の身体的な凄さを感じた。
そこで、この記事の最初だ。
“おかみさん 布団干す 南向きに”
まさか「おかみさん」が聴けるとは思ってなかった。エレファントカシマシの 2009年の曲だ。ライブでやるのいつぶりなんだろう、ずっと聴きたかった。
レッド・ツェッペリンみたいな音に “おかみさん 布団干す”。衝撃だった。ブルース! 確かに干すよ、南向きに!
“廃墟とも見まごう 静寂の青山通り”。「廃墟」と「青山」の組み合わせがかっこ良くて、宮本浩次なら青山も廃墟と歌えてしまうんだ!って興奮した。
「おかみさん」については、以前こんなブログも書いてた。エレファントカシマシは進化してるのか? 宮本浩次は残念ながら天才! → おかみさんは南向きに布団干す
そんな「おかみさん」を聴けたことがこの日一番の衝撃だったかも知れない。
しかしこれはエレファントカシマシの曲で、そりゃ私だってエレカシで聴きたいし、というかソロで聴くことを想像もしてなかったわけだけど、うわあー!おかみさんだー!で胸一杯で。
でも例えば、浅井健一がブランキーの曲をやるのとはちょっと違ってた気がした。といっても、浅井健一(SHERBETS か JUDE)のライブ行ったの大分前だから、その記憶での話になってしまうのだけど。
この日の「おかみさん」は、エレカシの「おかみさん」より未来っていうか、時が進んでるように聞こえた(エレカシの方がもっとこう「南向きに干す」感じがあるというか)。エレカシも宮本浩次(ソロ)と共に時を進めてるということか? まさに同時進行…。今エレカシが「おかみさん」をやったらどうなるんだろう。
そうしてライブは終わったのだけど(大分端折った!)、衝撃度でいえば、去年の「my room」の方があっただろう。でも今は、形式の新鮮さで勝負する段階ではなくなったということか。ずっとエレカシだった人がソロをやるというだけでも新鮮だし、カバーしかも女性の曲を唄うというのも新鮮だったけど、その新鮮さの一歩先というか一歩奥というか。
カバーは確立した。エレファントカシマシは不動のものとしてある。では、宮本浩次ソロは? そこはまだ確立してない何かがある気がする。……みたいなことここで書いたけども。 → 「ロマンスの夜」と「Just the way you are」
ライブは「Woman “Wの悲劇”より」ではじまり、「冬の花」で終わった。ソロの最新曲(カバー)ではじまり、デビュー曲で終わったということだ。一周したということか?
そうそう。ライブ後、JAPAN のインタビューを読んだんだ。そしたら、そこでもテイラー・スウィフトが出てきて、なんだか
テイラー、ありがとう!
と叫びたくなってしまった。宮本さんテイラーのライブ行ったというし、私もテイラーのライブ観たから、共有できる何か、わかる何かがある気がして。テイラーのライブ行って本っ当に良かった。 → Taylor Swift The Eras Tour @東京ドーム
それにしても、ちょうどこの宮本浩次ライブのころか、テイラーのエラズツアーが 100公演目と聞いて。テイラー、あのライブ 100回やってんのか! あゆが初の 47都道府県ツアーで 全53公演だったけど、100回だよ? しかも、あのライブを 100回! ひえー!
それだけ待ってる人がいるということも凄いけど、最近のツアー映像を見て、「テイラーはまだこれをやってるんだ!」って感動しちゃって。私は 2月で「観たー!」って終われても、テイラーはやり続けなきゃならない。それって熱いなって思ったんだ。
それはこの日の宮本浩次のライブでも感じたことで。新曲が増えたわけではないし、「ハレルヤ」だって 4年前の曲だ。すぐに新曲や新しいことを求めてしまいがちだけど、同じ曲をやり続けるのだって熱いことだなって思ったんだよね。(とかいいつつ、テイラーはあのライブをやりながら、新アルバムを出し、ツアーに新アルバムの曲を追加したりしてるのか。ひえー!)
私、テイラーの声が好きって書いたけど、「音域が広いわけでもなく、特徴的な声をしてるわけでもない」という指摘を見かけて、確かにって。でも、なんで好きなんだろうと考えてたら、萩原麻理さんがテイラーのこと「エモーションは本物」って言ってたことを思い出した。
このライブから二ヶ月経った今、ふと思った。
前に、桜井和寿からは「歌が上手く思われたい」という欲や主張を感じるけど、宮本浩次からは感じない…と書いたけど(※1)、「スターになりたい(スターでありたい)」だったら宮本浩次から感じるかもなぁ。
それでいえば、桜井和寿からは「スターになりたい」って多少はあるかもだけどあまり感じない気がする(むしろ「スターになれない」という感情を感じるかも?)。草野マサムネにも「スターになりたい」をほとんど感じない。
スターになりたい(スターでありたい)。
これが宮本浩次の特徴で、ソロ活動をやらねばならない原動力でもあるのかな? もちろん、それだけでなく、良い音楽を作りたいとかそういうのがあるに違いないけど。
今どきこんなにスターを引き受けてくれる人なかなかいないって、前にも書いてたんだ(※1)。
※1 どちらも同じブログに書いてました。 → 宮本浩次『縦横無尽』 ~破れし夢が躍動してる~