宮本浩次 縦横無尽完結編 on birthday | ラフラフ日記

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宮本浩次 縦横無尽完結編 on birthday
2022年6月11日(土)12日(日) 国立代々木競技場第一体育館

 

それはもう期待していた。三年前に宮本浩次が自身の誕生日(6月12日)にライブをやるようになってから、恵比寿リキッドルーム(2019年)、作業場(2020年)、東京ガーデンシアター(2021年)ときて、10月から 47都道府県ツアー・日本全国縦横無尽が始まり、2022年5月に終わる(※1)。これはもう、6月12日にどでかいところでやってくれるだろうと。

エレカシでも 25周年・30周年でアニバーサリーライブをやった「さいたまスーパーアリーナ」、埼玉県民である私はひそかに期待していた。そうでなくても、ツアーを群馬と栃木で観て、このバンドをアリーナクラスの大きいところで観たい!と思っていた。このバンドとは、宮本浩次名越由貴夫(ギター)、キタダマキ(ベース)、玉田豊夢(ドラム)、小林武史(キーボード)の五人衆のことだ。この五人衆の歌と演奏をどでかいところで観たい!
(※1=宮本浩次コロナ感染のため延期になった公演があり、ツアーは 6月2日に終了)


そしたら発表された。

「縦横無尽完結編」

6月11日・12日の二日間。会場は、東京・国立代々木競技場 第一体育館

代々木!

私の頭にまっさきに浮かんだのは「あゆ」。代々木はあゆの「聖地」だから。ここで何度もあゆを観てるし、年も越したし、NHKホールの紅白からまさにリアルタイムであゆと一緒に代々木体育館へ移動したこともある。

へぇ、ミヤジが代々木体育館?

まぁ私にとってはあゆの聖地で馴染みがあるし、良いじゃん、楽しみだよ!!

そうして私は代々木体育館に向かったのでした。



客電が消え、真っ暗になった代々木体育館の中央にただ一人、スポットライトに照らされた宮本浩次がそこに立っていました。満員の会場、熱気に満ちているはずなのに、静寂とともに冷気さえ感じるほどでした。

“ここが俺の生きる場所 光の世界”

まるで今日この日この瞬間のために生まれてきたような。

大げさなことを言うようですけど、百年に一度の隕石の衝突とか彗星か何かを私は目撃しているのでしょうか。

ツアー同様、『縦横無尽』の曲を筆頭に、『宮本、独歩。』の曲、カバーアルバム『ROMANCE』の曲と歌い、その流れの先にエレファントカシマシの曲を歌う宮本浩次を観ながら、歌手・宮本浩次が昭和の名曲をカバーするように、歌手・宮本浩次がエレファントカシマシの名曲をカバーしている・・・という見え方もあるなぁと思いました。こんな見え方ははじめてでした。

それと同時に、これがエレファントカシマシの曲で、それは今目の前で歌っている宮本浩次が生み出し、宮本浩次はエレファントカシマシの宮本浩次でもあることも私は知っている。なんて贅沢な時間なんだと思いました。このことができるのはこの世の中に宮本浩次ただ一人だけなのです。

そして、私はあることに気が付きました。

はじめて群馬でツアーを観たとき、エレカシとあまりにも違うことに衝撃を受け、その衝撃を引きずったままライブを見続け、エレカシと「違う、違う」と気になっていたあれが、なかったのです。それはもう最初っから。

 

 

どれもがふさわしく、待ち望まれ、鳴り響いていました。

書き忘れていましたが、この日は “花道” がありました。1曲目の「光の世界」で中央に登場したのは、その花道の先にあるセンターステージ。

隕石の衝突だなんて書きましたが、宮本浩次にとっても、ステージにせり上がったら暗闇の中一人照らされて満員の観客に囲まれていた・・・というのはどういう光景なのでしょうか。まさに「光の世界」なのでしょうか。そこは暗闇の中一人照らされる世界なのですけど。宇宙に放り出されたような気分でしょうか。

エレカシのライブでも花道があったことはあります。さいたまスーパーアリーナでのアニバーサリーライブ。しかしそのときはなかなか花道の先まで来ない。25周年のときなんて、ライブも大分進んでもう(花道の先に来てくれるのは)諦めたころにやっと花道の先に現われた。20曲以上やったころです。

それが今度はどうです。最初からセンターステージです。そのあとも何度も花道を歩き、走り、転がり・・・。

「これがソロか」

と思いました。まさに縦横無尽。

エレカシのときは、どうせオレを見に来たんじゃなくてエレカシを見に来たんだろう?とでも思うのでしょうか。石くんやトミや成ちゃんと離れたくないのでしょうか。私にはわかりません。

ただ一つ、私の中で変わったことがありました。

 

宮本浩次がソロを始動させたころ、私はソロに対して不安があるんじゃない、ソロをやることでエレカシが今までのエレカシじゃなくなって(そう見えて)、そのとき私はエレカシをどう思うんだろう、受け止められるのだろうかと不安なのだ、それが怖いのだと書きました。それは、大げさに言えば、エレファントカシマシを失うかも知れないというくらいの不安でした。
 

 

宮本がソロをやったあとのエレカシが、宮本がエレカシを演じてるように見えてしまったら? いや、もちろん、今までだって演じているんだけれど、義務でやってるように見えてしまったら?

気付いたら、その「不安」が消えていたのです。

なぜだろう。

どちらも真実(ほんとう)だと思えたからかな。

縦横無尽 “完結編”。

この「完結」という言葉、私には重く響きました。そして確かに、「完結した」という感じがした。

縦横無尽は「完結」できるけど、エレファントカシマシは「完結」できないんだ。

よくわからないけど、そんなことを思いました。

あと、私は椎名林檎に感謝したよ。散々いろいろなこと言っちゃってごめんね。林檎ちゃん、あんなに楽しい曲をありがとう!
あなたは私の永遠のライバル(好敵手)!

ライブも終盤、「昇る太陽」をやった。こんな終盤でこの曲をやることにもびびったが、最初の方にやったらやったであとが大変そう。痙攣が止まらなくなったりしそうだから。とにかく凄まじく壮絶な曲なのだ。

けど、けど、待ってた!

が、この祝福に満ちた空間で歌われるのが、

“夢が破れてゆくだけの 灰色の俺の人生”

それが、嫌味でも皮肉でも嘯きでも逆説でも反語でも何でもなく、堂々と本当に響いているのだ!

夢破れてないじゃん! 虹色の人生じゃん! って突っ込みたくなりそうなところを、そんなことは微塵も感じさせず、真実(ほんとう)に響く。

手拍子も、このときばかりは追いつかない。いや、リズムに追いつかないとかそういうことじゃなく、手拍子もなんもかんも振り切って昇ってゆくのだ、太陽が。

太陽が昇るってこういうことなんだな、って本気で思った。

 

隕石の衝突やら彗星やら宇宙やら太陽が昇るやら、さっきからおかしな事ばかり言っちゃってますけど、なんなんですかね、これは。

 

大気圏突破もしくは突入ですよ。だから、そこで無事でいられる人しかこのステージには立てないんです。つまりそれが五人衆です。

 

バースデーライブだし、ソロ活動の中で何組かのアーティストとコラボしたから、ゲストあるかな?とか思ったけど、そんなことしたら大気圏突破も突入もできなくなっちゃうから、大気圏突破/突入は諦めるか、五人で突破/突入するしかなかったのです。そして五人は後者を選んだ。だって、ここに入っていける? こっちだってゲストとか受け止める余裕ある? 大気圏だよ?

 

それにしても、宮本浩次、「代々木体育館」似合ってた。

 

「東京協奏曲」で、スクリーンに銀座の和光やスカイツリー、東京の街や空が映し出されたとき、私は何かとんでもない歴史的瞬間を目撃しているかのような、いや、瞬間というより歴史絵巻? 宮本浩次と一緒に「東京」を見下ろす(抱きしめる)ような、何かとんでもない体験をしているんじゃないかと思った。宮本浩次と一緒に「東京」の歴史を、今を、体験するような・・・。

 

巨大なスクリーン迫力あった。というか、私は両日とも割と横から見る位置の席だったんだけど、情報番組でライブの映像をちらっと見たとき、それは正面からの映像で、すげえ!ってなったから。2019年の U2 のライブのようだったよ。いやマジで。

 

そんなこんなすべて、宮本浩次、「代々木体育館」にふさわしく似合ってた。

 

私は少しびっくりしたんだよ。「野音」とか「武道館」のイメージはあっても、「代々木体育館」のイメージはなかったから。

 

最初に書いたように、私は自分が埼玉県民で近いからという理由だけで(それとエレカシもアニバーサリーライブやってるし)さいたまスーパーアリーナを期待してたけど、ちょっと、悔しいくらい、宮本浩次「代々木体育館」似合ってた。

 

エレカシのアニバーサリーライブは「さいたま」で、宮本浩次のバースデーライブは「代々木」だったの、すごく合ってたと思った。というか、宮本浩次を育てた、宮本浩次が育った、「赤羽」と「渋谷」というものを感じたのかも知れない。「赤羽」と「渋谷」という二つの故郷を持っている。そしてそれはそのまま「エレカシ」と「ソロ」の必然性につながっていく。

 

小学三年生で NHK東京放送児童合唱団に入った宮本浩次は、そこで「赤羽の団地とは別の文化」を体験し、特権意識を育んだという。赤羽は現実の象徴で、渋谷は理想の象徴だった。

 

「教室にいても、オレはみんなとは違う! オレは特別なんだ! と思っていました」

その思いはどんどん増幅した。

「学校の友達といると楽しいのに、別の自分を求めてしまう。ギャップの間を行き来した体験が僕の中で根深く残り、エレカシの曲に表れていると思います。自分のなかに育んでしまった特権意識をすり減らしながら歌詞やメロディを作り、歌っている」

(『GOETHE(ゲーテ)』2018年2月号)

 

赤羽と渋谷。

理想と現実。

 

それならば、あなたはどうなんだ。わたしはどうなんだ。

 

それならば、なんと言われようと、赤羽と渋谷を切り離すことはできない。

 

そこを何度も行き来した道のりが、エレファントカシマシの、宮本浩次の、特権意識を育んだのだから。

 

「代々木体育館」で宮本浩次を観られて私、本当に良かったよ。

 

最後に、この写真を貼っておきたい。

 

 

これ、当日の写真です。前日の写真とかじゃありません。

 

私、代々木体育館で何度かライブ観たことありますけど(確かスポーツも)、こんな看板はじめてです。あゆだけじゃないですよ。海外のアーティストも含めて。代々木体育館でライブ観たことある人はわかってくれると思うのですが。

 

【セットリスト】

 

 1. 光の世界
 2. 夜明けのうた
 3. stranger
 4. 異邦人
 5. きみに会いたい -Dance with you-
 6. あなた
 7. 化粧
 8. 春なのに
 9. shining
10. 獣ゆく細道
11. ロマンス
12. 冬の花
13. 悲しみの果て
14. sha・la・la・la
15. 浮世小路のblues

16. passion
17. ガストロンジャー
18. 風に吹かれて
19. 今宵の月のように
20. あなたのやさしさをオレは何に例えよう
21. この道の先で
22. 十六夜の月
23. rain -愛だけを信じて-
24. P.S. I love you

25. just do it
26. 東京協奏曲
27. 昇る太陽
28. ハレルヤ

 

五人衆のドラマー → 玉田豊夢について