見えないではなく、見ようとしない
【送料無料】エコノミストたちの歪んだ水晶玉 |
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
本書は、デフレ不況がその深刻さを最もきわめていた二〇〇二年末から現在までにいたる、日本経済、日本の経済政策動向、そして日本の経済論壇についての、いわば「観察記録」である。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 長期停滞をめぐる経済論戦とその帰趨(日本経済はなぜ回復したのか/政策論争の事後評価ー何が正しく何が誤っていたのか/ポスト・デフレ経済へのシナリオ)/第2部 ケイザイを斬る!(人々はなぜデフレを好むのか/「構造」なる思考の罠/責任から逃走し続ける組織の病理/清算主義=無作為主義の論理と現実 ほか)/経済政策をめぐる利害と理念
【著者情報】(「BOOK」データベースより)
野口旭(ノグチアサヒ)
1958年生まれ。東京大学経済学部卒業。同大学院経済学研究科博士課程修了。専修大学助教授、イェール大学客員研究員等を経て、専修大学経済学部教授。主な著書に『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社、2004年、第47回日経・経済図書文化賞受賞)等(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
読みました。
野口旭氏の本も好きです。やはり経済における一般常識を覆すという痛快さがあります。11冊(共著含む)ほど所有しています。
金融緩和について。
不良債権処理優先説の反論に説明している部分が、そのまま景気回復時の投資拡大における銀行貸出が伸びない、マネーサプライの増加を伴わないことの説明に当てはまると思います。
岩田・八田両氏の「日本再生に痛みはいらない」からの引用で
「じつは現在、法人企業部門は全体として資金余剰部門になっています。直近の数字では、法人企業は設備投資した後でも二二兆くらいのフリーキャッシュフローを持っています。「困っている」といわれる中小企業ですら五~六兆円のフリーキャッシュフローを持っています。
中略
デフレと資産デフレが止まれば、まず、それらの内部にたまった資金によって生産拡大が行われるのです」
民間投資の拡大しても銀行貸出が増加しないことで、金融緩和無効とはならないのです。
輸入デフレについて
中国の低賃金労働力がの世界的供給増大がデフレを起こすというのですが、そもそもの発端は2001年からの世界的な景気後退によるものだそうです。
多くの国でこの時期、低いインフレ率をみたからといいます。
ですが2003年以降にはアメリカなどは1%以上回復しました。
P85
これらの数字が端的に示しているのは、構造デフレなどというものは存在しなかったという事実である。存在したのはたんなる景気循環的変動であった。そのことは同時に、リフレ派が主張し続けていた通り、各国のインフレ率は究極的にはその金融政策に依存していることを意味していた。というのは、その景気循環の制御に中心的な役割を果たしていたものこそ各国の金融政策であったからである。
見えないではなく、見ようとしない。だから今でも構造改革が主張される。
第10章で「経済学は役立たずの巨大戦艦か」や、「経済学的予想の社会有用性」、「経済学者はなぜ間違うのか」といった問題定義をしています。
これまで読んだ他の方の著作でも、経済学を宗教のように妄信している方はいませんでした。
格差問題を考える
【送料無料】日本はなぜ貧しい人が多いのか |
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
日本の地方に豪邸街がないのはなぜ?北欧は本当に日本より年金制度が充実しているのか?人口が減少すると国力も衰退する?世界金融危機の影響はどうして日本で大きいのか?日本のエネルギー効率は断トツに高い?経済政策、少子高齢化、国際競争力、教育、年金制度について流布している通説を統計データと経済学的思想で「逆説的」に覆す。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 日本は大丈夫なのか/第2章 格差の何が問題なのか/第3章 人口減少は恐いのか/第4章 世界に開かれることは厄介なのか/第5章 経済の現状をどう見れば良いのか/第6章 政府と中央銀行は何をしたら良いのか
【著者情報】(「BOOK」データベースより)
原田泰(ハラダユタカ)
大和総研常務理事チーフエコノミスト。1950年生まれ。1974年東京大学卒。経済企画庁国民生活調査課長、同海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て現職。『昭和恐慌の研究』(共著、日経・経済図書文化賞受賞)、『日本国の原則』(石橋湛山賞受賞)などの著作がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
読みました。
原田氏の本も8冊目、あと残り2冊あります。
連続して読むと、同内容というかほとんど同じ箇所も多々ありました。
同じ本をあまり読み返さない自分には、読み返すのと同じ効果で好都合でしたが。
人口減少
年金
公共事業
格差
グローバリズム
など、通説をデータとグラフ、経済学的思考で覆すのがスタイル。
格差について。
統計的な検証によれば、もともとあった高齢者の格差が、高齢者の増加により大きくなっているそうです。
もちろん実感としての若者の格差を否定しているということではありません。(実際にデータでは30歳未満で格差は大きくなっている)ですが、この原因は構造問題ではなくデフレなど経済の停滞にあるとします。
グローバリゼーションも格差要因にあげられますが、賃金格差のデータでは高賃金国より、中低賃金国が拡大しているという、よくあるグローバリズムが途上国の低賃金による、先進国の賃金を引下げるというのとは違う結果をもたらしているのが現実ということです。
むしろグローバリゼーションは格差を縮小するといいます。貧しい国には先進国に商品を売ることで所得を得られ、先進国でも安価な商品により実質所得が高くなるからです。平均年収がいざなみ期以降減少したことも、九〇年代後半まで賃金の下方硬直性で下落しにくかった賃金が、雇用調整で失業者を増加させ下落したのでは。(デフレでは、企業にとって実質賃金は高くなっています。)
派遣が格差を増大させたというのも、1/3に増加した非正規にその原因を求めることが多いですが、これもその内容は派遣以外の非正規の増加があるようで、実体は収入の減少や失業で働きに出る主婦などが増加したことが要因とも言えるのではないでしょうか。
原田氏は格差を無理やりなくすことよりも、セイフティーネットが必要といいます。
政府の公共事業は非効率である。バラマキは悪くない。そのほうが人は受け取ったお金を合理的に使うでしょう。(ここでいう合理的とはその人にとってのことです)これは小さい政府とは違います。
年金のカット、生活保護の引き下げと対象の拡大などの必要性を感じます。
人口減少でデフレ論の矛盾点
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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
人口減少こそが豊かさの源であることは歴史が証明している。根拠なき「日本衰亡論」の迷妄を断ち繁栄へのニューパラダイムを示す“新しい経済学”。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 人口減少社会では、一人ひとりがもっと大事にされる/第2章 人口減少で生産性が上昇し、日本経済は発展する/第3章 働きたい女性・高齢者の参加で、日本経済は一層発展する/第4章 介護の充実・医療の効率化が豊かな高齢社会をもたらす/第5章 年金改革で高齢社会のコストを下げる/第6章 人口減少社会の到来で高齢者の生活はどうなる
【著者情報】(「BOOK」データベースより)
原田泰(ハラダユタカ)
1950年生まれ。東京大学卒業。経済企画庁国民生活調査課長、海外調査課長などをへて、現在、財務省財務総合政策研究所次長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
読みました。
11年前の本である「人口減少の経済学」を読めば、簡単に人口減少のデフレ論に反論できます。
人的リストラによる(ここでは雇用削減での)労働生産性の向上が、マクロでは失業者を増やすという指摘があります。
ですが、人口減少が需用を減少させるなら、労働者も減るのだから釣りあうか、生産性向上はむしろ必須でしょう。
原田氏は年金カットが高齢化社会に必要とします。
年金は、物価スライドがインフレ時には適用されるのに、デフレ時にはなかなか採用されませんでした。
そのせいで、消費税も実質関係なくなっていました。
人口減少は、住環境や交通渋滞の改善で、生活を豊かにしてくれる。
仮に、労働不足になっても、若者は就職難で、女性の労働力も税制等で抑制されていますし、高齢者の労働力も規制が緩和されたら、どちらも更なる労働力が期待できます。
印象的だったのは、公共工事についてのこの部分。
P235
地価が下がるのに、なぜ高い費用で農地を造成し、土地を災害から護り、個室の狭い老人ホームを建てなければならないのだろうか。河川の流域を自然に戻して氾濫原とすれば、公共事業コストを削減できる。
人口減少社会を克服するために、コスト高の手段を講じてはならない。保育所の運営コストは引下げるべきであり、児童手当は穏当なものに改めるべきだ。
楽観的なものばかり取り上げましたが、もちろん前提として様々な諸制度が改善されなければうまくいかないでしょう。
印象論ですが、スーパーに買い物に行ったときに、こちらが計算機片手に予算を決めカゴに商品を入れている横で、値段も見ずに商品をカゴいっぱいに入れているご高齢の方々を見たり、自分の周囲の大人が、家を建てる、子供が進学するのに、ご両親から何百万も出してもらうといった話を聞くと、「なんだかな~」という気持ちになります。うらやましいとは思います、はい。
商品の魅力不足が需要減少の理由じゃない
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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
すべての原因は金融政策の誤りにある。間違いだらけの日本再生論を排し、徹底した実証分析による正しい処方箋を提示する。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 一九九〇年代以降の大停滞を検証する/第2章 大停滞は、なぜ起こり、なぜ続いているのか/第3章 実質賃金の高止まりは、なぜ不況を長期化させるのか/第4章 ほどけない日本のシステムがもたらした停滞/第5章 なぜアメリカの大恐慌は終わったのか/第6章 なぜデフレから脱却しないのか
【著者情報】(「BOOK」データベースより)
原田泰(ハラダユタカ)
1950年生まれ。東京大学卒業。経済企画庁国民生活調査課長、同海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て、現在、内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
読みました。
アフィしてますが、売り切れ商品ばかりなので当然ポイントにはなりません。それなのに、なぜ貼るかといえば単に本の紹介に便利だからという・・・。
原田氏に傾倒してると前回書きました。
過去に三橋さんに傾倒していたとこともありましたが、経済学というツールをかじってみるとその間違い(ストックからフロー、最近では自由貿易でデフレなどがあります)などに気がつき、いろいろな考え方に触れることと、経済学というツールで測られることによって考え方が変わりました。その人の主張なら、解釈を変えてでも都合よくに受け取るというのは違うと思うのです。
さて、この本で印象的だったのは、魅力的商品がないから需要が無いという通説を否定したところ。
P44
魅力的な新商品が生まれれば需要が高まる、という議論は信じがたい。仮に魅力的な新製品が生まれたとしても、その製品を買うためには、これまでの魅力的でない旧製品への需用を減らす必要がある。携帯電話は魅力的な新製品であるが、多くの若者が携帯電話の費用のために、それ以外の費用を減らしている。ゲームソフトや音楽CDへの支出が携帯電話によって減少しているといわれている。
この意見が的を射ていると思うのは、需要が無いのは欲しいものがないからと主張する人が、後に続けるこの言葉などからもわかります。「欲しいと思えるものがあれば、貯金して(節約して)でも買うだろう」これでなぜ的を射ていないことがわかるかといえば、その節約や貯金した分は消費されないからで、トータルで見れば消費は変化しないか、減少してしまうからです。
原田氏は、消費が伸びないのは所得と雇用がないからだとします。自分も所得があれば欲しいものがたくさんあります。
また、地方税・財政制度をゆがめたのが戦後アメリカ占領軍が採用した、コロンビア大学の財政学者シャウプ博士による、地方税制にあるとします。
P207
しかし、地方が他の地方の税を分配され、それを本当に有効に使うことができるものだろうか。日本における公共支出の効率低下も、シャウプの地方税・財政制度によって、税の負担と受益の関係が乖離していることに根本的な原因があるのでないだろうか
現行憲法をアメリカの押し付けという人がいても、この地方税・財政制度を押しつけという日本人を知らないそうです。
確かに、地方分権などにより、その地域ごとの裁量で税や財政を使うことができれば、効率的になると自分も考えます。
というのも、デフレで利益を得ることにも繋がる(デフレ脱却ができない)からです。
市場原理に否定的な見方が多いと思いますが、かといって政府が効率的なことができるわけではありません。
P220
では、だれがデフレで利益を得るかといえば、規制、制度、慣行によって、その所得が固定的な人びとである。ほかの人びとの生産物の価格やその所得が自由競争のなかで低下するとき、所得が固定的な人びとは利益を得ることができる。そのような人びととはだれかといえば、公務員、規制産業(銀行、電力、新聞、放送、医療、大学など)で働く人びと、年金生活者などである。
P221
さすがに経済官庁の公務員は、九〇年代が低成長であることを認識していたと思うが、それ以外の公務員は、九〇年代が低成長であることを、少なくともその初期には認識できなかったにちがいない。公務員の所得は民間の所得に送れて上昇する。現実の物価は統計数値以上に下落しているので、実質所得は増大している。つまり、所得が固定的な人びとの生活水準は上昇していたのである。
これに正社員も含まれるでしょう。
九〇年代、自分も不況を(バブル崩壊後、九〇年代後半まで)実感できていませんでした。
デフレが怖いのは、給与を固定的に得ている、失業率が5パーセントとして残る95パーセントの就業者にはなかなかそれが伝わりにくいということではないでしょうか。
ですが、よくいわれるいざなみ景気時の平均給与低下(格差は高齢者によるものというのが実証的な見解らしい)がよろしくないというのは、一面でしか見ていないと思います。
それは失業率の改善です。
職を失ってまで高い給与を求めるのは違うと考えるからです。
知ろうとする、学ぶことが大切
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食卓の安全学 「食品報道」のウソを見破る
松永和紀
家の光協会
商品の説明
食卓の安全学
食の安全にかかわるマスコミの報道ぶりの問題点や、一般的な常識のウソを指摘する。「遺伝子組み換え作物は本当に危険なのか」「無農薬農業が危ない」「体験談は信用度ゼロ」など、意外感があり興味深い。
(日経エコロジー 2005/09/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
内容(「MARC」データベースより)
「食品報道」の実例を紹介し、なぜ問題のある報道になるのかを整理し、構造的な問題点に迫る。より正確で深い情報をどのようにして得て、どんな筋道で考えたらよいかを検討し、これからの日本の食の課題を浮き彫りにする。
読みました。大変勉強になりました。
ところで、昨日スーパーで中国のネギが販売されていました。
そして、気がついているでしょうか?
おせんべいなどの米菓の原材料のお米が、アメリカ産、中国産、タイ産になっていることに。
震災の影響かと思ったのですが・・・。(米の価格増に対応?)
少し調べてみると、トレーサビリティ法により表示されているだけで、過去から外国産を使用していたのかもしれません。
対象事業者に課せられる義務と施行日
取引等の記録の作成・保存(平成22年10月1日より)
米・米加工品を(1)取引、(2)事業者間の移動、(3)廃棄など行った場合には、その記録を作成し、保存してください(紙媒体・電子媒体いずれでも可)。
産地情報の伝達(平成23年7月1日より)
(1)事業者間における産地情報の伝達
(2)一般消費者への産地情報の伝達
詳しくは産地情報の伝達の仕方をご覧ください。
http://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/kome_toresa/index.html#PageAnchor04
農水省より
さて、中国野菜といえば、ホウレンソウの農薬問題が思い出されます。
P21
もう一つ、中国冷凍ホウレンソウ問題の背後には、日本と中国でクロルピリホスの使われ方が違っていた、という事情もありました。
クロルピリホスの残留基準がホウレンソウは厳しく、コマツナならその200倍の残留でも法的に問題なしとなっていたそうです。
P22
つまり、クロルピリホスの問題は科学的なものではなく、制度、あるいは政治的な話でした。しかし、それを多くのマスメディアは「食の安全を脅かす」として報道したのです。
中国の人は虫が食わない野菜を日本人が喜ぶと知っているから農薬をつかっていたともいえ、中国ばかりを責めるのはおかしい、見栄えの良い野菜を望む日本人の姿勢も問い直されるとの話も掲載されてます。
BSE問題も同様です。
P48
ところが、米国でBSE感染牛二〇〇三年に見つかって
中略
この若いウシに対する検査を、米国は問題としました。
「結果が出ないことがわかっている検査をするなんて、非科学的ではないか」と主張したのです。
これについて、非科学的でも政治的にやらなければいけないこともあるとします。
この方も、「科学的には何が真実なのか、ということと、政治的経済的な動きとを、きちんと分けて考えることが重要」と主張します。
政治と経済が一緒になっているような気もしますが、言わんとすることは政治と経済(科学)の切り分けと同様だと思います。
遺伝子組み換え食品についても、冷静な議論がなされず、実験で問題がある、しかし人体にリスクなしという結果でも、最後は伏せて誤解や危険を煽るようなものが多いそうです。
また、みのもんた症候群として、テレビで体にいいとされた食品の摂り過ぎで、かえって健康を損なう例もありました。
この本が信用できるのは、まず疑えという著者の主張です。
しかも著者自身さえ、読者に疑ってくださいといいます。
知ろうとする、学ぶことが大切なのですね。
ユニクロに失礼です
【送料無料】ユニクロ型デフレと国家破産 |
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
リーマン・ショック以降、猛威をふるう「新型デフレ」の下、値下げ競争と賃金安に歯止めがかからない。一方、ギリシャなどグローバル恐慌で財政破綻する国が現れ、その余波が世界中に波及している。明日はわが身か、“赤字国家”日本が二十一世紀に生き延びる道はどこにある?気鋭のエコノミストが読み解く地球経済。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 ユニクロ型デフレとは何か/第2章 グローバル・ジャングル/第3章 国債バブルと金融再暴走/第4章 国家総破綻/第5章 通貨大波乱/第6章 第三次グローバル化時代/第7章 二十一世紀型への処方箋
【著者情報】(「BOOK」データベースより)
浜矩子(ハマノリコ)
1952年生まれ。一橋大学経済学部卒業。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長、同研究所主席研究員を経て、同志社大学大学院ビジネス研究科教授。専門はマクロ経済分析、国際経済(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
読みました。
ユニクロ型デフレについては、これまでもいろいろと批判があるので、別の視点から指摘してみたいと思います。
P17
デフレ下では経済成長はマイナスになるはずだ。
中略
実質経済成長率がプラスに転じたのだから、従来の経済学の考え方から言えば、デフレは収束に向かい、物価の下落にも歯止めがかかるはずである。
でも、歯止めがかからない。経済が成長しても物価の下落が止まらない。
これが新型デフレだそうです。
生産と消費だけでGDPを見ているのではないでしょうか。しかも、リーマンショック後の経済の落ち込み後なのだから、プラスといっても、それ以前の総生産量には至っていません。
デフレなのだから実質でGDPが増加するのは当然ですし、名目では数値はその分落ち込んでいます。
名目ですと、500兆を下回ったままです。
© 世界経済のネタ帳 2012
このことが分かっていないからなのでしょうか・・・
P18
要するに企業は激烈な安売りという出血サービスを行うことによって販売量を確保しているということだ。
という、おかしなことも主張します。
ミクロとマクロを混同しています。
安売りで販売量確保なら、全体では消費額はその分減少して、経済成長はマイナスにならなくてはおかしくなります。
最初の前提からおかしいので、それぞれが週に二回は安売り大量スーパーではモノを買わない、ということがデフレ脱却の処方箋として出てきます。
自説のための結論しか出てこない
【送料無料】日本の「大停滞」が終わる日 |
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
30年代のアメリカの「大恐慌」に比すべき90年代以降の日本の「大停滞」。この異常事態はなぜ起こったのか、そこから脱却するすべは何かを明らかにする快著。
【目次】(「BOOK」データベースより)
「大停滞」の解明には何を説明しなければならないか/バブルの大きさはバブル崩壊後の停滞の大きさを説明できるか/ITバブル崩壊後のアメリカの不況は日本のように長期化しない/メガコンペティションは日本経済を停滞させたか/アメリカIT革命の限界/財政政策か、金融政策か/公共投資の乗数は継続的に低下したのか/実質賃金の上昇と金融政策/銀行はどれだけ重要か/日本の構造的失業率は上昇していない/日本の世界史的な超低金利はなぜ生じたのか/デフレ対策としての金融政策の有効性/なぜデフレーションが続いているのか/マクロ経済学の五つの法則
【著者情報】(「BOOK」データベースより)
原田泰(ハラダユタカ)
1950年生まれ。東京大学農学部農業経済学科卒業。経済企画庁国民生活調査課長、海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て、現在、内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
を読みました。
おすすめです。
P257
第14章 マクロ経済学の五つの法則
1 フィリップス・カーブは長期的には垂直だが、とくに物価上昇率が低くなった段階では、かなり長い期間にわたって緩やかな右下がりである。
2 オーカン法則は重要な経験法則であり、その係数はかなり安定している。
3 長期的にはマネーサプライは物価を決定する。
4 物価が上がれば長期的には名目金利を上昇させる。
5 マネーサプライの増大は短期的には名目金利を低下させるが、長期的には名目金利を上昇させる。
中略
「日本の『大停滞』は金融政策の失敗によってもたらされた」
について説明されています。
印象に残ったのは・・・
P208
九〇年代以降の大停滞を脱却するために必要なのは、宗教改革の精神であると私は考えている。
中略
経済学の教科書には、これまでに提示された最良の理論のうち、実証分析の試練に耐えたものが書かれている。
それを信じなくて、なぜ経済学を教えることができるだろうか。
経済学をしろうとせず、経済学を否定すれば、自説のための結論しか出てこないのは当然である。
都合の悪い事実も、他要因にすり替えてしまうだろう。
プロローグ
ということで、現在は買ってまだ読んでいない本を読むことにしました。
【送料無料】この世で一番おもしろいミクロ経済学 |
というかマンガです。
訳者解説P213
グレゴリー・マンキューによる経済学の10大原理(のうちミクロに関する7つ)
中略
1、人はトレードオフに直面する
2、何かの費用とは、それを得るために何を犠牲にするかである
3、合理的な人は限界で考える
4、人はインセンティブに反応する
5、貿易はみんなの得になりうる
6、通常、市場は経済活動を組織するよい方法である
7、政府はときに市場の結果を改善できる
ミクロの取り掛かりとしてはおすすめです。
ただ、絵と経済学に批判的なジョークが好みではありませんでした。
訳者である山形氏の訳者解説が毎回おもしろいので、この本も印象に残った部分が上記引用でした。
間違えた前提で導かれた結論は誤りであることが、結論が正しいから前提が正しいとはならない
【送料無料】TPP亡国論 |
内容は、当然ながらTPP反対がまずあって、反グローバリズム、デフレ脱却に財政政策をということでした。
その中から間違いや矛盾を指摘します。
間違いだからTPP賛成、とはなりませんが、少なくとも反対の理由にはなりません。
P34~35
中国はリーマン・ショックに端を発した世界不況以降、人民元を安く維持し、輸出を拡大することで成長
中略
しかし、そうすると外需依存度の高い中国の景気に影響が及ぶので、中国はアメリカの要求を拒否しています。
輸出の拡大で成長とあります。
他にも・・・
P66
特に中国は、アメリカやヨーロッパへの輸出に依存して成長していたのであり、自国の内需の拡大による成長では必ずしもないということです。
確かに輸出は増加しています。
でも、輸入も増加しています。
しかも、それ以上に中国の経済は成長しています。
更に、外需依存度が高い中国というのも・・・中国は外需依存度が高い経済ではありません。
内需拡大による成長です。
P96
これに対して、日本はGDPに占める輸出の比率は二割にも満たないという内需大国であり、韓国とは事情が違います。
日本の輸出の比率が2割=内需大国と書かれています。
最初のグラフでもわかるように、中国もGDP比で2割程度なので内需大国ということになります。
P34
日本が輸出できる市場は、実質的にアメリカだけなのです。
TPP参加国の小国はGDPの規模が小さい、外需依存度が高い、アジアの成長を取り込むというメリットはない、むしろ市場を開放するだけ、と主張しますが
P72
日本は輸出主導ではなく、内需の成長によって輸入を増やすべきです。
と書いているので、それでいいということになります。
ですが、
P72
ただし、輸入を増やすためのやり方は、TPPへの参加による関税の撤廃によるものではありません。
この根拠として中野氏は
P141
第一に、貿易自由化は、より安い製品の輸入を促し、物価を下げる効果をもつということです。これは自由貿易論者ですら認めていることです。
そして第二に、デフレのときに、さらに物価が下がるのはよくないということです。
このふたつの事実を認めるならば、デフレのときに貿易自由化を進めるのは望ましいことではないという結論になるのはあきらかではないでしょうか。
とします。
ですが、この二つ、特に第二の根拠は事実ではないのでその結論にはなりえないということになります。第一の根拠も相対価格を下げるというのは事実ですが、物価を下げるというのが絶対価格のことであれば事実ではありません。
自由貿易を進めても問題ないということになります。
わかっているような、わかっていないことも書いています。
P112
また、経常収支の黒字の拡大と経済成長とを同一視したり、経常収支の赤字の国の経済力の衰退と見なしたりするような考えをもっている人が、非常に多くいます。しかし、この考えも間違いなのです。
と間違いを指摘して、
P112
経常収支=国内総生産-消費-投資-政府支出=貯蓄(国内総生産-消費)-投資-政府支出
ここでは便宜上、政府支出を無視して考えると、経常収支とは、結局のところ「貯蓄-投資」と同じことになります。
というISバランス論が出てきます。
ところが、
P74
アメリカの経常収支赤字の削減は、裏を返せば、アメリカへの輸出に依存して成長してきた国々が、内需を拡大して輸入を増やし、その経常収支黒字を削減することと表裏一体です。したがって、アメリカの輸出倍増戦略は、同時に経常収支黒字国への内需拡大の圧力を伴います。
一応アメリカが消費を抑制、貯蓄を促しとはありますが、「輸入を増やし、その経常収支黒字を削減する」と書いていることで経常収支を輸出と輸入の差額として捕らえるということがわかります。
ですが、アメりカの貯蓄・投資バランスが改善されなければ、経常収支赤字は減らないというのが貯蓄・投資バランスの結論です。
P84
アメリカは輸出を飛躍的に増やしたいと切望しているのですが、輸入を増やすつもりは毛頭ありません。
P84
グローバル化した今日の世界において、国内市場を保護するための最も強力な手段は、関税ではありません、通貨なのです。
ISバランス論を説明しておきながら、経常収支の因果を逆方向、市場の開放性や国際競争力や為替レートで捉えています。
経常収支黒字の裏側に資本収支の赤字があることの考えが抜けています。
アメリカの経常収支の赤字を減らしたいなら、TPPよりも増税など財政赤字削減をすればいい、日本が経常収支の黒字を削減をしたいなら、確かに国債発行を増加させることでできます。
ですが、TPPがアメリカから日本への投資を増加させるというのなら、それは経常収支の黒字の削減に繋がるかもしれません。
TPPに反対する必要がなくなります。
だからでしょうか?
デフレが理由にならないことから、それ以外の投資協定や規制緩和をその理由に変えたのは。
これも結論ありきだからでしょう。
P95
もっと問題なのは、EUとアメリカの不況の深刻化・長期化です。すでにEUもアメリカも、高い失業率や需用の縮小に悩んでいます。このように深刻な不況の長期化が予想され、需用が縮小している先進国の市場に向けて、輸出を伸ばすことがどうしてできるのでしょうか。
需要が無い、輸出が伸びないと書いています。
この理由として
P67
日本が東アジアへ資本財を輸出し、東アジアで加工組み立てが行われて最終製品となり、その最終製品の消費地がアメリカやヨーロッパだということを示しているのです。
中略
これが、日本から東アジアへの輸出拡大の正体です。
というのがあるのでしょう。
ですが、ユーロ、米国はリーマンショック後は輸出が減少傾向なのに、東アジアへの輸出はまた増加してきています。
P67
ですから、アメリカの住宅バブルが崩壊し、最終消費地が不況になれば、東アジアも不況になり、日本の輸出も伸びなくなるのです。
その最終消費地のアメリカやEUの状況はどうなっているのかわかっていません。(好況だという意味ではありません)
EUとアメリカの輸出入の占める割合は現在も変化が少ない。
つまり輸入を減少させていない、需要があるということです。
この点からも、中野氏の主張が根拠なき反グローバリズムの意見ということがわかります。
しかも、アメリカが輸入を増やさないという根拠も否定されるので、日本にもメリットがあるということになり、TPPの反対の理由にならないということになります。
賛成派への重商主義否定は同意です。
経済学的に賛成するのはその根拠が違います。
ですから、間違えたり矛盾した前提で出される結論が偶然に正解ということもありますが、それは無効で不当ということになります。
間違えた前提で導かれた結論は誤りであることが、結論が正しいから前提が正しいとはならないのです。
反対するしかないじゃない。
【送料無料】FTAが創る日本とアジアの未来 |
を読んでみました。
出典が政府資料に偏っているので参考程度ですが、それでも反対派の主張は過去から一貫して同質で、反グローバリズムということが分かります。
P78参照
当時(2003~4年?)の経済産業省の「グローバリゼーションに対する主な批判」という資料によれば
・貿易自由化は雇用の損失を招く
貿易投資の自由化によって労働費用の低い途上国に先進国の健全な雇用が奪われる。
・商業主義的な大規模農業経営は零細農民を滅ぼす
・国際的ハーモナイゼーションは食品安全基準の低位平準化を招く
食品安全基準は各国の主権のもとで決められるべきであり、国際的なハーモナイゼーションは各国主権を侵害する。
・国内環境保護政策を貿易障壁として協定違反にするWTOは問題
・WTOに透明性が不十分
WTOは大国主導で途上国などの利益が反映されず、不透明。
またWTOの紛争処理過程においては、直接的な利害関係にある市民の参加が認めらておらず、不透明。
・貿易投資自由化は国内所得格差を拡大させる
・貿易自由化は自国文化を失わせる
少し書き出しただけでも、TPPの反対派の主張とまったくといっていいほど同じです。
なので、反対派はTPP以外にも協定があるという主張もしますが、今後も自由貿易の協定に上記の問題が常に絡むということは反対し続けていくしかありません。
TPPの憂鬱 ―― 誤解と反感と不信を超えて 若田部昌澄
上記リンク先に、「グローバリゼーションに対する主な批判」に対する誤解の回答がほぼ揃います。
TPPは、参加国全員を拘束するルールをつくらなければならない。アメリカは強力に自国の利益を追求する交渉を進めるが、他の国も強力に交渉をしてくる。そこにはベトナムのような手ごわい国もある。オーストラリアやニュージーランドのように交渉に手なれた国もある。各種国内規制は今回のTPPでも維持されるし、民主党政権のアメリカが国内の労働規制や環境規制を開発途上国並みに引き下げることができるわけがない。アメリカがいろいろと注文を出してきたとしても、アメリカの思い通りになりにくい仕組みがまさに今回のTPPだ。
過去の経緯、日本側が半導体協定の反省から、後に不利な輸入制限が残らない輸出自主規制を貫いたこと、スーパー301条がアメリカ国内からも反対が出たりしたことなどを見てもアメリカの思い通りになっていない。
ちなみに、これはアメリカの政策担当者がこれまでも、あるいはこれからも「理不尽なこと」、「ヘンなこと」をいわないことを意味しない。まず交渉を有利に進めるためにさまざまな牽制球を投げてくるであろう。しかし、そもそも日本の政策担当者ですら「理不尽なこと」「ヘンなこと」を言わない保証がない。オバマ大統領がアメリカの輸出を増やそうというときに、彼は先にあげたゼロサム的、重商主義的、戦略的通商政策的世界観に染まっているのかもしれない(オバマ大統領の経済観に問題があることは、今回の経済危機をめぐる過程で明らかにされた。以下のブログ記事を参照のこと。http://www.washingtonpost.com/blogs/ezra-klein/post/could-this-time-have-been-different/2011/08/25/gIQAiJo0VL_blog.html)。それでも、TPPから日本は利益を得る可能性がある。
いちいち牽制球をまともに受けて、ほら見たことかといろいろなところで引用する記事もありますが、説得力に欠けているのはこれまでの引用からも明らかです。
透明性については、赤旗の
TPP交渉に「守秘合意」発効後4年間、内容公開せず
がありますが、ミスリードかもという記事もあります。
http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65781757.html
最終内容は公開、交渉過程は非公開かもしれないとのこと。
それでもその過程が非公開はおかしいという声もあるでしょう。
ですが、TPPに参加表明をしなくてもその内容が公表されてしまうと、その過程を見て他国が参加を決めることが出来てしまいます。
更にこれまでの歴史を踏まえても、貿易問題はかなりのデリケートさで反対派の感情や政治的な問題に触れ、その扇動的な行動(これまでの自由化問題を振り返れば、混乱は反対派が起こしているのは歴然としていますし、今回のTPPもそうですよね。)によって、なかなか交渉が進まないということにもなります。