おすすめの経済入門書
経済データの読み方第2版 |
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
統計そのものの内容、つくり方などに関する解説は必要最小限にとどめ、その統計によってどんな経済の動きがわかるかということを、最近の経済の動きに即して明らかにした。指標の動きの背景にある経済のメカニズムをできるだけ明らかにした。長期的、構造的な変化を示す指標についても解説。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 経済変動を読むためのデータ(経済指標の整理/GNP統計/個人消費/住宅建設 ほか)/第2部 長期的変化を読むためのデータ(人口/産業構造/就業構造・労働力供給/貯蓄率 ほか)
【著者情報】(「BOOK」データベースより)
小峰隆夫(コミネタカオ)
1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、経済企画庁入庁。93年調査局内国調査第一課長(93、94年『経済白書』執筆)、経済研究所長、物価局長、調査局長、国土交通省国土計画局長を経て2002年退官。2003年より法政大学社会学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
読みました。
経済の入門書に最適ではないでしょうか。
経済学批判、反グローバリズム、反TPPの人も、まずはこれを読んでみましょう。世間で思われている通説が経済学的には違うということが学べると思います。
例えば、「競争の作法」では、戦後最長の好景気に投資が無駄な消費、小豆御殿になったと主張しています。
P14
この需用の区分は、いわゆる「景気の自律的な変動」ということと密接に関連しています。過去の日本の景気変動を振り返り、不況から好況に移っていくパターンを眺めてみますと、最初は、公共投資、輸出などの外生的な需用によって経済活動が盛り上がる局面が見られます。
まさに戦後最長の好景気時にいわれた、外需による景気回復です。
しかし、この状態は・・・
P14
この時期は、景気は回復しはじめているのですが、まだ外から与えられた需用によって支えられている不安定な状態です。
しばらくすると、稼働率が上昇し、企業収益が好転するにつれて民間設備投資が盛り上がりはじめ、さらに賃金が増えて消費活動が活発化します。内生的な需用が景気をリードしはじめるのです。この段階になって、経済は「自律的」に拡大することになるのです。
そう考えると、戦後最長~というのも、海外の所得要因による外生的なもので、まだ景気回復というには途中の段階だったといえるかもしれません。
また実質GDPの成長率は
2000/2.26
2001/0.36
2002/0.29
2003/1.69
2004/2.36
2005/1.30
2006/1.69
2007/2.19
プラスとはいえ、最高で2パーセント前半、1パーセントに満たないこともあるという低成長での推移でした。
あえて名目成長率での推移でみると
2000/0.98
2001/-0.84
2002/-1.26
2003/-0.05
2004/-0.97
2005/0.03
2006/0.55
2007/1.24
このように、好景気とはいえないような数値です。
この点についても、この本ではこうのように説明されています。
P17
第一に、名目の成長率がいわゆる「景気の実感」を示していることです。われわれの実際の経済活動は名目の世界で営まれています。給料をもらうのも、企業の収益も、名目の世界です。
中略
通常の実質成長率で考えられているより、実感としての経済活動の落ち込みが大きかったことを意味します。
これらを踏まえると、斉藤氏の「競争の作法」の指摘、戦後最長の好景気は無駄な消費、小豆御殿になったというのも少し違うということになります。
消費税についても参考になりそうです。
P22
ただ、92~93年度には可処分所得以上に消費が増えています。これはいわゆる「ラチェット(歯止め)効果」が作用したためと考えられます。つまり、われわれの消費はそれほど簡単に変えることはできません。そこで、所得の伸びが大きく鈍化すると、消費も鈍化するのですが、所得ほどは鈍化しないという「歯止め」がかかるのです。もちろん、「所得の伸びが鈍化したので消費が鈍化した」という基本的な関係には変化はありません。
これが消費税が景気に左右されにくい要因の一つです。
以前ビルトインスタビライザーと表現しましたが、ラチェットのほうが言い得てると思います。
また、消費を決めるのは所得です。需要が無いからということも指摘されます。
P24
消費が伸びないのは、「消費が飽和して売れるものがなくなったからだ」
中略
こうした議論は、消費が低迷しはじめると必ず出てくる議論ですが、この議論は、論理の道筋が逆転していると思われます。「売れるものがなくなったから消費が伸びない」のではなく、「消費が伸びないから、売れるものが出ないのだ」と考えるのが正解です。
さらに売れるものが出て、消費が増えるということは、前提として他の消費が変わらないということです。
ですが、マクロではその分他の消費が抑えられ、結果的には所得に見合ったものになります。
売れるものがないから、消費が伸びないということではないのです。
デフレで実質所得は増加するのだから、物価の下落は良いことである、ということも言われますが、物価とは所得でもあります。会社の売り上げの多くは、商品やサービスといったものによって占められています。それによって所得を得ているからです。
P68
輸入インフレ以外の要因で物価が下がるときには、だれかの所得下がっていることを忘れてはなりません。国民経済全体で考えますと、物価が下がると、名目所得も下がるので、実質所得がそのまま上昇するということにはならないのです。
リーマンショック後の日本の失業率が、2002年の失業率より下回った理由。
リーマンショック後の失業率は2001年のときを下回っています。

ですが、よくみればリーマンショック時のほうが就業者数を減らしています。
2000年頃の雇用調整だけをあげる、失業率だけから失業者数がそれほど高まっていない、というのは恣意的ということになります。
他にも、世間の認識とは違う経済学的なものの見方や、まずはデータを使ってみよう、という内容になっています。
この一冊でざっくりと日本経済を学べます。
おすすめです。
円高の正体?
【送料無料】円高の正体 |
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
日本経済を蝕む円高が止まらないのはなぜか?為替介入はなぜ効かないのか?為替を動かしているのは何か?日銀総裁は何を考えているのか?河上肇賞受賞のエコノミストが真相をやさしく解説。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 為替とは何か?/第2章 円高・円安とは何か?/第3章 「良い円高」論のウソ/第4章 為替レートはどのように動くのか?/第5章 為替レートは何が動かすのか?/第6章 円高の正体、そしてデフレの“真の”正体
【著者情報】(「BOOK」データベースより)
安達誠司(アダチセイジ)
1965年生まれ。東京大学経済学部卒業。大和総研経済調査部、富士投信投資顧問、クレディスイスファーストボストン証券会社経済調査部等を経て、ドイツ証券会社経済調査部シニアエコノミスト。著書に『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社、2004年。日経・経済図書文化賞受賞)、『脱デフレの歴史分析「政策レジーム」転換でたどる近代日本』(藤原書店、2006年。河上肇賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
読みました。
こちらも参考になります。
円高が好きな人たちの「正体」とは? ―― 安達誠司(『円高の正体』)× 飯田泰之
http://synodos.livedoor.biz/archives/1901440.html
この本を印象付けるこのグラフ。
P53

(前略)
図表1は、円高によって、国民全体の収入が減り、日本の景気が悪化していることを示しているものに他なりません。
といいますが、このグラフはやや恣意的で、左右の縦軸の数値を重なるように調整しています。

長期推移で作成すると、もう円高でGDPが減少するということがいえなくなります。
P107
円高は貿易収支の赤字化を推進します。事実、日本の貿易黒字は、円高の進展とともに減少の一途をたどっているのです。
この表現は輸出が増えて、輸入が減ることが望ましいという重商主義的ではないでしょうか。
更に、円高が貿易収支の赤字化ということも間違えています。
2010年と2011年は、円高では過去最高のレベルですが、2005年以上に回復しています。

円高でも貿易(額)は増加しています。
これは世界的な不況が輸出を減らし、またその回復傾向から輸出が増えるという所得要因によるものです。円高の価格要因だけが貿易を決定するのではありません。
最近の貿易黒字の減少は、輸出が増加して黒字を増やす方向でしたが、原油価格の高騰や、原発停止に伴う燃料の輸入増加による赤字などがその要因でした。
確かに、円高は産業全体では、景気や企業収益にマイナスの影響があるのはその通りで、経常収支にもマイナス要因です。
私自身もリフレ派なので全体的な内容には同意しています。
円高の正体というのも、デフレの正体の反論もあることから、意図的なものだと思われます。
ですが、前半の主張が少し恣意的で、重商主義的だと感じたのでこのような感想になりました。
同じです
貧乏性なので、それを再利用(ボツグラフも含めまして)して記事にしてしまいました。

最初は、基準年が違うと指数のグラフは見え方が違うという指摘用に作成したグラフです。
これは、他の方のコメではっきりしたのですが、危惧したとおりグラフの位置関係から数値の高低を比較してしまう恐れがあります。
見やすく違いを比較してみました。

ですが、指数は基準年に対しての変化率を表しているので、基準年が変更になって見え方が違っても意味することは同じことに変わらないのです。(自分も統計とかグラフをちゃんと勉強したわけではなく、独学なのでトンデモかもしれません)

次に、消費者物価指数は総合値と、変動の激しい品目である食料を除くコアCPI、さらにそれにエネルギーも除くコアコアCPIがあり、それによっても実質値は異なります。

それを元にグラフを作成。
ピンクの枠は景気後退期です。

それを先ほどの比較のために作成した基準年の異なるグラフに当てはめると、実質賃金はあまりかわらないとおもいえるかもしれないということがわかります。
結局何が言いたいのかわからないと思いますが、基準年が違うと見え方が変わるということです。でも、内容は同じですということです。
競争の作法について
【送料無料】競争の作法 |
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
なぜ経済成長が幸福に結びつかないのか?懲りずにバブルに踊る日本人はそんなにバカなのか?標準的な経済学の考え方にもとづいて、確かな手触りのある幸福を築く道筋を考え抜く。まったく新しい「市場主義」宣言の書。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 豊かさと幸福の緩やかな関係-リーマン・ショック後に失われた豊かさとは(本章で議論すること/『国民経済計算』の生産と消費 ほか)/第2章 買いたたかれる日本、たたき売りする日本-「戦後最長の景気回復」がもたらした豊かさについて(「いざなみ景気」、「かげろう景気」、そして「戦後最長の景気回復」/状況からするりと抜け出すために ほか)/第3章 豊かな幸福を手にするための働き方-競争と真正面から向き合うために(保身と嫉妬を克服する方法/合理性を超えたところでの合意形成 ほか)/第4章 豊かな幸福を手にするための投資方法-持てる者の責任とは(「失われた10年」における日本経済の破壊と創造とは/「失われた10年」こそが「失われた」? ほか)
【著者情報】(「BOOK」データベースより)
齊藤誠(サイトウマコト)
1960年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科教授。1983年京都大学経済学部卒業、1992年マサチューセッツ工科大学経済学部博士課程修了、Ph.D.取得。住友信託銀行調査部、ブリティッシュ・コロンビア大学経済学部などを経て、2001年4月より現職。2007年に日本経済学会・石川賞を受賞。主な著書に『金融技術の考え方・使い方』(有斐閣、日経・経済図書文化賞)、『資産価格とマクロ経済』(日本経済新聞出版社、毎日新聞社エコノミスト賞)がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
読みました。
藻谷氏の文章に似た部分があります。
P009
「お前も、経済学者のはしくれなら、日本経済の悲惨な状況を見てみろ。2008年9月のリーマン・ショック(米国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズの破綻)以降、100年に一度の世界的金融危機巻き込まれた日本経済の現実が見えているのか。
成長戦略に無頓着な民主党政権の失政で経済成長も望めず、金融緩和に無関心な日本銀行が(物価水準が低下する)デフレに手をこまねいている中で、何が豊かな社会だ、何が幸福だ。お前こそ、リアリティから目を背けているのではないか」
誰も言っていない批判を最初から言わせてそれに応えるスタイル?敢えて乱暴な物言いにして、批判者を暗に批判している気もしますが。
と、最初から否定的な感想ですが・・・。
P029
リーマン・ショックをはさむ2008年から2009年初の1年間で、実質GDPは570兆円から521兆円へと50兆円近くも低下したことになる。
GDPの9パーセントの減少は、戦後初めてのことだそうです。
ですが、それがもたらしたものはそれほどでもないということです。
P016
①2002年から2007年までまでの「戦後最長の景気回復」で、日本経済はうわべだけが豊かになったが、その豊かさが幸福に結びついたわけではなかった。
②2008年秋のリーマン・ショックで失われた豊かさは、幸福に結びついていなかったので、正味のところで失ったものはほんのわずかであった。
というのがテーマとなっています。
P022
『国民経済計算』の水ぶくれした生産量と消費量だけに着目していると、包丁を買っては捨てることを繰り返す方が、愛着を持って使うより幸せであるという、妙な結論をくだしかねない。
GDPを取り上げて、意味がないとはいわないがその中身を見ていない、と批判するところがデフレの正体と被ります。(ほぼ同時期の本のようです。)
といいますが、家やモノを大切に長期間使うとされ、そういう意味で豊かであろう欧米の国(個人的な趣味で自動車ブランド国)と比較しても、一人当たりのGDPは日本と同様、それ以上に増加しています。
ということは、日本は指摘のように買っては捨てるような生産と消費での豊かさで、豊かなような気になっているだけなのであろうか。
そういえば、日本の建築物も使用年数が少なく無駄ということをどこかで読んだことがあります。
確かに壊しては立て替えるというようなことが、地元周辺の小売店などでも見かけます。
雇用調整助成金について
P038 雇用調整助成金による失業の潜在化?
P041
将来的にも企業への貢献がまったく期待できない従業員であれば、いくら手厚い助成金があっても、解雇する方が企業収益は改善する。
製造業であれば、生産ラインが再開され次第、従業員を呼び戻すつもりではないだろうかと、雇用調整助成金が失業を潜在させたことを否定します。
P041
事実、助成届出数の推移をみると、2009年夏ぐらいから生産が回復するとともに、休業していた従業員を呼び戻し始めたのであろう。仮に企業がなんらかの理由(?)で解雇する心づもりの従業員に対して当該制度を活用していたとすれば、10ヶ月の助成期間を目一杯使ったであろう。
これがその根拠だそうです。
製造現場の一人として、例としては一部の、地方の中小企業だけでは全体を理解できないことは承知していますが、助成金について、私の勤め先の使い方と違うことを2点ほど指摘しておきます。
まず、雇用調整助成金についてのpdfを下にリンクしました。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/06/dl/h0608-2b.pdf
斉藤氏は、中小企業であれば助成金を、5分の4から10分の9の助成が受けられる、としか書いてありませんが、上のリンク先に拠れば、「解雇などをしない場合には助成金がUP 中小企業4/5→ 9/10」を支給と書いてあり、企業への貢献がまったく期待できない従業員でも解雇しない誘因があることがわかる。
また、休業させていた従業員を呼び戻すとありますが、これも私の勤め先では休日を数日増やし、それを助成で手当てして、不足分を引いた分の給与が支給されていました。
自動車の製造現場では、週休3日制などが報道されていました。これは休業させて呼び戻すということではなく、現場全体で生産減の分ラインを止めて調整していたということですよね。
しかし勤め先では、売り上げ減少のままの状態が長く続けられるわけもなく、銀行からは融資の条件に、売り上げ減少でも利益の出るような再建計画の提出をさせられます。
結果、斉藤氏の指摘する9月、企業によっては期の切り替わりにもなる頃、再建計画に則り50歳以上は解雇されました。
その中から、管理職(必要とされるであろう人材)は契約社員(長期雇用が保証されません)に、その他能力に応じてパート扱い(給与は大幅ダウンで雇用の継続も不安)での雇用に切り替わりました。
要は、最後の?年功賃金の恩恵を享受していた世代、斉藤氏のいうところの企業への貢献が期待できない、高給な方たちが給与を減らす、または会社を去っていきました。
自発的ではありませんが、後で斉藤氏が書かれるように、減給、もしくは退職することで若い世代の雇用と給与を維持したともいえます。
これが、助成金が減少していった原因かもしれません。
また、そのときの退職金は準備金のような上乗せがあったそうです。
P049
リーマン・ショックで賞与の受取額は激減したが、給与全体の実質総額の低下幅(2%から3%減)は、実質GDPの激減に比べればかなり軽微であった。
というのも、そのあたりを考慮しているのであろうか。
残された従業員は、残業カットと賞与のカットで、自分の場合では年収の100万円の減収でした。
確かにそれでもマクロではその通りだったのでしょう。
失業率は助成金の届出数の減少と入れ替わるように上昇して、その後回復したのは斉藤氏がいう生産が回復して呼び戻したのではなく、新たに派遣社員などを雇い入れたと思われます。
P047
こうしてみてくると、リーマン・ショック後、民間勤労者の多くが不況の影響をひしひしと感じるのは、解雇されるかもしれないという不安や、月ごとに決まって受け取る給与の引き下げに対する不満からというよりも、6月と12月に受け取った賞与袋がずいぶんと軽くなったことで大きく落胆したからであった。
と2009年の実質現金給与と年間賞与の支給額から指摘しますが、私の場合ボーナスカットはもちろんですが、ゼロになったのは2010年夏であり、自動車会社からの波及?により電機業界などその他へと及ぶ売り上げの減少は、地方の中小のような企業であればなおさら受けた影響というのは、後になってからだったのではないでしょうか。
同じデータが見つからなかったので厚生労働省の毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)から似たものを持ってきました。http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1.html
事業所規模500人以上の夏季と年末賞与の一人平均支給額
2008年 夏季738,645円
年末740,904円
2009年 588,281円
604,334円
2010年 609,077円
625,404円
2011年 620,000円
621,370円
やはり2010年の賞与も2008年レベルまで回復していません。
また戦後最長の景気回復に給与が増えないことも、非正規雇用の増加の影響もあることが考えられます。彼らには賞与がないことが多いからです。
斉藤氏が強調したいのは、
P049
・「戦後最長の景気回復」でも雇用者の給与水準が大幅に上昇したわけではなかった。
・リーマン・ショックで賞与の受取額は激減したが、給与全体の実質総額の低下幅(2%から3%減)は、実質GDPの激減に比べればかなり軽微であった。
・民間勤労者の実質給与は、「戦後最長の景気回復」期にも一貫して低下してきた。
景気回復分の生産が小豆御殿、つまり無駄なものに消費されてしまったという主張です。(なんだか水ぶくれとか小豆御殿とか、形容が浜矩子氏のようです。)
ただ、ここで私が反論したことも、斉藤氏の主張への影響はありません。
なぜかといえば、民間企業に勤めるよりも軽微な削減であったろう、守られた側の人への批判だからです。
でも、
P056
正直なところ、デフレをめぐる政策論議は、ご勘弁願いたいという気持ちがある。1990年代末ごろから展開されてきた「デフレ脅威論」は、①現実を見ていない、②目をこらして数字をみていない、③とことん理屈をめぐらしていない、④歴史的事実をねじまげている、という意味で、バーチャルな空間での思考様式おろかさを突実に示しているからである。
斉藤氏も、デフレはマイルドなもので物価安定だったという主張です。
(というか、数字をみていないなど、藻谷氏の本と似ています。)
経済を考える勘所--ワルラスの法則について 飯田泰之
http://synodos.livedoor.biz/archives/1475483.html
ここで飯田(泰之)氏が発言する「そうですね。BOEが3倍、FRBは2.5倍、日銀は1.1倍です。」という話(現実)はわかりやすいし、実際に日銀のインフレ目標が低くてもそれなりの効果がみえた。(観察)数字も目を凝らさなくても上昇したし、理屈も不要なほどシンプルだと思うのです。
P050
しかし、本章の最初のところで説明したように、経済統計から物価変動の影響を取り除いて実質値で議論するのには、立派な理由がある。たとえば、給与が名目額で上昇しても、物価も同時に上昇していれば、給与から購入できる商品の数量はかえって減少するかもしれない。逆に給与の名目額に変化はなくても物価水準が低下すれば、購入できる商品の数量はかならず増加する。
といいますが、マイルドなデフレを主張しているのに、名目値と実質値で乖離のあるGDPや民間最終消費の実質値を用いたり、それは少し都合が良すぎではないでしょうか。
そう考えると、氏が主張するGDPの成長分が消費に回らなかったというのは、デフレ分を上昇させた幻のようなものだった。
マイルドなデフレであれば、名目値こそが実態を現す数値となるでしょうから、給与に、消費に回らなかったのも当然かもしれません。
円高が好きな人たちの「正体」とは? ―― 安達誠司(『円高の正体』)× 飯田泰之
飯田 生鮮食品の価格が上がると、すごい値上がりだとみんな思うんですよね。でもネギなんて、年間にせいぜい1万円くらいしか買わないでしょう。それは残業が一日減っただけですっ飛ぶような値上げ幅にすぎないのに。それが不思議ですね。毎日買うものだから、ですかね。野菜の値段が上がったりすると、すぐにニュースも取り上げるし。
http://synodos.livedoor.biz/archives/1901440.html
ということがしっくりきます。
同様な反応を斉藤氏がしています。
P059
多くの消費者は、2008年の値上げを不快に思い、若干の下げ止まりのあったものの2009年の値下げを歓迎したに違いない。
そして、3割も物価が下落するようなデフレではない。程度問題とします。
(円高が好きな人たちの「正体」とは? ―― 安達誠司(『円高の正体』)× 飯田泰之
安達 ああ、なるほどね。だからもう日銀ではなくて、公務員の給与額を名目GDPに連動させるとか、そういう拘束ですね。
飯田 そう、まったくそれだと思いますね。
安達 インセンティブを与えないといけない。
飯田 誰かがツイッターで言っていたんですが、地方公務員の給与は原則としてその地方の経済水準にがっちり連動させられている、と。
安達 まあ、たしかに。
飯田 なぜ国家公務員は日本経済に連動させていないんだ、と。そのとおりでございます(笑)。
安達 そうですね。だから公務員の給料を、名目成長率とリンクさせちゃえばいいんです。
飯田 公務員の毎月の給与は民間の給与水準と連動させる、ボーナスは名目GDPに連動させる、といったシステムにすると全然違ってくると思いますよね。
安達 全然違いますよね。もう、そういうインセンティブを与えないといけない。
飯田 マイナス成長だったらマイナスにします、と。企業だって業績に連動させますよね。
安達 それが当たり前のような気がするんですよね。外部ショックで業績が悪くなっても、民間会社は責任取りますからね。「一生懸命やりましたけどダメでした。だから給料は減らしません」ってことはない。
飯田 ない。そんなのはあり得ないですよ。例えば製造業なんて、この円高による打撃には彼ら自身の責任などないのに、給料はがっつり減らされていますよね。ちなみにぼくの大学は私立大学なので、「投資運用の失敗」という教員とは無関係の理由でしっかり給料削られていますし(笑)。その一方で公務員は、なぜ下がりにくいのか。GDPと給与を連動させて、マイナス成長ならばマイナスにする。逆に名目成長率が高いときは、公務員の給料もボンボン上げればいい。
安達 そうそう。
飯田 「インタゲ導入しろ!」とか、ぼくもいろいろ言っていますけど、じつはそこが本丸かもしれない。
http://synodos.livedoor.biz/archives/1901440.html)
斉藤氏も、これには同意だと思います。
生産への貢献と給与の多少とを受け入れることができるかと問うているのだから。
それができれば、90年後半からの雇用調整もしなくもよかったといいます。
ただ、上の引用のリンク先での対談では、貢献とは無関係に責任をとらされる(給与カット)ともあります。
こうやって検証してみると、戦後最長の好景気が無駄に消費されたというのは少し強引ではないでしょうか。
斉藤氏は上記のように敢えて実質で数値を扱っています。
こちらも敢えて名目も見てみると、氏の主張の1割の経済成長ではなく0.3割程度で、消費が0.6割ではなく0.2割の増加でした。(斉藤氏の数値と多少違いがあります)
次に名目と実質のGDPと民間最終消費を比較すると、確かに実質ではGDPの伸びに対して、消費は伸び悩みます。
それほどまでといいませんが、それ以前のGDPの増加時にも、そういう傾向があって、今回だけが特別ではないです。
また名目のほうでは、GDPの増加と同じように消費も推移していて、実感なき部分が経済の停滞にあることがはっきりしています。
戦後最長の景気を何度となく書いて好景気を印象付けますが、プラス成長の連続が戦後最長だったということで、80年代後半のバブルとは比べくもない成長率としか思えないのですが。
財務省の税収の推移をみても、戦後最長の好景気に財政再建に大いに貢献したのは法人税でした。
斉藤氏が主張する自分の頭で考えるという指摘には、その通りだと考えこのエントリを書きました。(と言いながら引用が多いですが、それを選んで反論するのも判断しているのは自分なので)
経済の教科書も執筆するような先生に、このような反論は何の力も持たず、その知識や理論ではかないそうにありませんが、納得がいかない部分(株のところなど理解できない部分もあります)があったので。
ありがとう。
台湾製パソコン基板、小さな字で「日本に神のご加護を」
先日、フェイスブックの会員の間で反響を呼んだ1枚の写真があった。写真は何の変哲もないただのパソコン基板。だがよく見ると小さな字で「God Bless Japan(日本に神のご加護を)」と祈りの言葉が印刷してあったのだ。
ソース元:msn産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120627/chn12062709570001-n1.htm
http://www.4gamer.net/games/047/G004755/20110605001/SS/007.jpg
その心遣いに感謝します。
貿易のススメ
【送料無料】貿易の知識第2版 |
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
貿易とは国と国との間で行われる財貨・サービスの取引を指します。外国の財貨やサービスを購入することを「輸入」、逆に外国に財貨やサービスを販売するのが「輸出」です。それでは、輸出・輸入はどのようにして決まり、経済にどんな影響を及ぼすのでしょうか?そのしくみをていねいに解説します。日本は海外との貿易によって、多くの利益を得ています。貿易の実態を理解することは、日本経済の現状を正しく認識することにつながります。WHO、FTA、アジア諸国との経済関係など、最新の貿易トピックスもカバーした改訂版です。
【目次】(「BOOK」データベースより)
1 貿易とはなにか/2 貿易と経済・社会/3 貿易と国際収支・為替レート/4 貿易をめぐる国際的枠組み/5 日本経済と貿易の歩み/6 貿易をめぐる新しい動き
【著者情報】(「BOOK」データベースより)
小峰隆夫(コミネタカオ)
1947年埼玉県生まれ。1969年東京大学経済学部卒。同年経済企画庁入庁、経済企画庁長官秘書官、日本経済研究センター主任研究員、経済企画庁調整局国際経済第一課長、調査局内国調査第一課長、国土庁審議官、経済企画庁審議官、経済研究所長、物価局長、調査局長などを経て現在、法政大学社会学部大学院政策科学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
最初にひとりごとです。
貿易理論が、他国の製品と自国の製品が質的、価格的に同じにと考えるというのは違います。
産業内貿易といって、製品差別化により消費者の好みに応じた多種多様な製品の貿易は、日本車と輸入車など現実に起きていることです。
安いものが買えるだけでなく、多様なものが買えるというのも貿易のメリットでしょう。
TPPは、少なくても貿易を推進する障壁を低くします。
しかも、市場原理は国家の介入を否定していません。
規制があるから緩和されるのです。何が何でも自由ということが自由市場ではありません。
勝手に誰かを嫌うのはかまいませんが、私も経済学を理解しようとせずに批判したり、皮肉たっぷりな記事を書くような方は好きではありません。
逆に経済学を使い、相手を無知呼ばわりする方も好きではありません。しかしながら、少し勉強するとそのようになっている自分にも気が付きます。
そこは大いに反省するところです。
読みました。
TPPなど貿易に興味のあるかたにおすすめです。
P38
こうしてみると、単純に輸出が増えれば景気にプラス、輸入が増えればマイナスと考えるのは危険で、どんな状況の下で輸出入が変動しているかを見極めないと、その経済的な意味合いを正しくとらえられないということが分かります。
貿易は複雑な要因が絡み合っているので、単純に円高だから輸出減とはならない、など。
P40
石油、鉄鉱石などのエネルギー・工業原材料は、生産活動のために必要となるもので、しかも国内でほとんど生産されません。そのため、輸入総量は国内の生産活動に比例して変動し、価格の変化にあまり影響されません。
なので、円安で資源高でも輸出が好調であれば、輸入が増えても問題がないとも主張もできます。
一方で、海外でも同様に日本からの資本財は弾性値が低いと思われるので、円高の影響は受け難いだろうという主張もあるでしょう。
それだけではなく、海外の景気という所得要因や、為替レートや物価なども絡まり、単純にどちらが良いかはいえない。
P54
結局のところ、変動制の下では貿易の流れと国際的な資金の流れは、お互いに因となり果となりながら、同時に決定されているのです。
見逃しがちで重要なのが、経常収支の黒字は資本収支の赤字という関係。
これは日本の黒字が、海外投資に向かうということではありません。
日本からの資本流出でそれが円安をもたらし(外貨需要増)黒字になる、ということもあるからです。
現在、消費税について考えているので、多少強引な理屈かもしれませんが、経常収支とISバランスから消費税のメリットを述べます。
将来的には、高齢化の貯蓄の取り崩しによる貯蓄不足により、経常収支は縮小、赤字になるといわれています。
所得税は貯蓄の誘因を減らすので、消費税のほうが貯蓄に有利かもしれません。(そうはいっても、貯蓄世代より取り崩し世代の増加による貯蓄率の低下なので効果は期待できない?)
また消費税なら、その貯蓄を取り崩す高齢者や資産家などからも税を徴収できます。
日本の経済は低成長です。
生産性の向上は難題ですが、0よりは高い成長がまだ可能と思われます。
それにはデフレ期待の払拭が必要でインフレ目標の効果に期待できます。
ですがその効果は、現在のアメリカの目標が実質低インフレの引き締めだからにすぎない、という指摘もされます。
しかし、だからといって何もしないのでは、その差が広がるばかりです。
そのインフレ目標で円安になれば、輸出企業には有利に働くでしょう。
海外需要増となる海外の景気要因もありますが、それが持続できたなら国内需要や投資も増加による好景気を実現して生活向上、リーマンショック以前の税収増により実現しかけた基礎的財政収支改善につながればという考えです。
円高差益は還元されていないのか
【送料無料】日本経済・国際経済の常識と誤解 |
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
国際経済という分野は、「一般の人々の常識」と「エコノミストの常識」が大きく食い違っている。そこで本書では、日本経済の現状を踏まえながら、エコノミストの常識に照らして、一般に流布している常識を再点検する。本書は「日本経済論」でもあり「国際経済論」でもある。
【目次】(「BOOK」データベースより)
序章 国際経済をめぐる理解と誤解/第1章 円レートの変動メカニズム/第2章 円レートの変動が日本経済に及ぼす影響/第3章 内外価格差・高コスト構造問題をどう考えるか/第4章 日本経済の空洞化をどう考えるか/第5章 金融の空洞化と規制緩和/第6章 欧州の通貨問題から為替レートを考える/第7章 経常収支黒字はどんな意味を持っているのか/第8章 経常収支黒字はなぜ問題か
円高差益の還元に興味のある方は多いと思います。
この本のP83に、なぜ還元がなされないかがあります。
よくある日本の複雑な流通過程で円高のメリットが吸収されるというのは、誤りだそうです。
WTOまでもが、同様の指摘をしているといいます。(九十五年四月)
また、そういう批判をする人は資源価格高騰(本では石油危機とありますが)には、日本の複雑な流通経路がコスト上昇を吸収してくれたので、末端価格の値上がりが小さくなるといわなければならない。
ですが、
P84
念のために断っておくと。私は「円高差益が流通段階で吸収されていない」とか、「円高差益を還元させるために規制緩和が必要だという議論に反対だ」といっているわけではない。「消費者物価よりも卸売物価のほうが安定度合いが高いことが、円高差益が末端まで還元されていないことの証拠にならない」といっているだけである。
ここで注意したいことは、実際には価格は下がるより上がるものだというバイアスがかかっていると思われていることです。
ですが、家電製品やパソコンなど実際に値下がりは起きています。要はどちらかだけを見るだけでなく、視点をたくさん持ったほうがより多くのことがみえるということでしょうか。
(ここでその理由を説明してしまうのは作者の著作を購入する誘因を妨げると思われますので書いていませんが、詳しくはこの本をお読みください。)
経済は人間のためにある
【送料無料】日本経済の構造変動 |
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
「経済は人間のためにあるのであり、経済のために人間がいるのではない」-このごく当たり前の事が忘れられてはいないか。本書は、「人々の福祉・生活水準の向上」という本来の目標のためには「持続的な経済成長」が必要であり、その「成長」のために、たゆまぬ「制度・慣行」の変革が求められるという立場から、昨今の「構造改革」を含むここ十数年の日本経済の大きな構造変動を分析し、将来への提言を示す。
【目次】(「BOOK」データベースより)
序章 ドミノ倒し的に進む構造変動-日本型システムの行方を考える基本視点/第1章 日本型雇用はどう変わるのか/第2章 多面的に進行する企業経営改革の行方/第3章 産業構造の変化-これからのリーディング産業は何か/第4章 脱バブル後の日本型金融システム/第5章 構造変動の最終ランナー-ようやく本格化する公的部門の改革/第6章 中央依存から自立へ-変化の波にさらされる地域開発/第7章 少子・高齢化と日本の経済社会の構造変動-少子化対策の基本もまた構造改革/終章 日本型経済社会はどこに行くのか-どう変わっていくのか、どのように変えるべきか
【著者情報】(「BOOK」データベースより)
小峰隆夫(コミネタカオ)
1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、経済企画庁入庁。93年調査局内国調査第一課長(93、94年『経済白書』執筆)、経済研究所長、物価局長、調査局長、国土交通省国土計画局長を経て2002年退官。2003年より法政大学社会学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
読みました。
この本も激しくオススメです。
「経済は人間のためにある。」という、大切だけど当たり前すぎて、前提として忘れられていることがあると感じる。
成長のためにそれを主張しているわけじゃないのです。そんなことを気付かせてくれます。
TPPで不安を強く訴えることを目にしましたが、誰でも先の見えないことには不安になるものでしょう。
日本はこれまでも石油危機、円高、バブル崩壊、リーマンショック、最近では災害による経済的なショックにたびたびさらされています。
しかしながら、それらを乗り越えていくことで構造改革や自己革新など発展してきましたし、今後もしていくでしょう。
構造改革は景気対策ではなく、長期的に「進む」ものだそうです。
またよくある批判に、市場主義重視が格差をもたらすということについて、小峰先生はこのように述べられます。
P27
確かに、市場メカニズムが貫かれれば、格差は拡大する可能性がある。しかし、だから構造改革を行わない(または手加減をする)というのは、いわば、構造改革を弱者対策に使っていることになる(改革を行わないという政策が弱者政策となるから)。
政策割り当ての観点からは、我々は「時代の流れにあった制度・慣行を作る」という目標と「社会的に恵まれない人々に手を差し伸べる」という二つの政策目標を持っているのだから、政策手段も二つなければならないことになる。すなわち、時代が必要とする構造改革を行うことによって経済を効率化し、その結果許容しがたい格差が発生した場合には、そのための政策を別途準備すべきである。
これについて、他にも「モノ作り重要論の誤り」として、生産性が高いからといって製造業が価値があるとはいえない。経済が人間のためにあるのだから、人々がサービスを欲しているならば成長率が低くともそれを提供するのが経済の務めと主張します。
これにはなるほどと感心させられました。
また輸出産業もしかり、生産誘発効果の大小(波及効果)もだそうです。
輸入のために輸出があるのではなく、どちらも経済取引なので相互に必要なものを取引しているだけであり、差がない。
波及効果の大小も、要は同じ100万円の需要があれば、その分だけの付加価値が生じることになるから、それは裾野の大小には関係がない。
ではなぜ観光業などが国際競争力がないかといえば、そこにこそ非製造業の低生産性の弊害があるのです。
だから構造改革や生産性の向上が必要となるのです。それを通じて国民全体の利益向上になるのです。これこそが経済は人間のためにあるということなのでしょう。
以下の引用から、TPPでも反対派と推進派の議論はこのような視点から対立すると思われます。
P163
理念の対立ではなく、経済的利害の対立であると考えた方が理解しやすい。要するに、規制改革を進めようとする人は、構造改革の理念に賛成しているからそれを推進しているのではなく、規制改革によって大きなメリットがあるから推進しようとしているのであり、反対する人は、表面的には「弱者の保護」、「健康や安全性」などの理念的な理由を挙げたとしても、実質的には既得権益が失われることを恐れて反対しているのである。
構造改革をTPPに置き換えただけで本質は変わらないと思います。
ただネットなどでみかける反対派の方々は、それを扇動する主張によって影響を受けているだけで、純粋に理念で反対しているとは感じます。
人口減少についても、それが成長を妨げるから女性や高齢者の活用という発想はおかしいと主張します。働きたくない人まで駆り出すことも経済のために人があるという発想になっている。
人口減少で労働人口が不足するなら、失業率はゼロなはずです。
そうではないのは、雇用構造にミスマッチがあるからです。柔軟な労働市場と、教育システムの整備、やり直しのできる社会など、まだまだやることはたくさんあります。
データは語ります
【送料無料】 データで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問 / 小峰隆夫 【単行本】 |
サブプライム危機はなぜ起きたのか。政策的にどう対応すべきか…。サブプライム危機後の世界経済、日本経済が直面している諸問題について、6人のエコノミストが30の問いに答える。
〈小峰隆夫〉法政大学大学院政策創造研究科教授。日本経済研究センター主任研究員。経済企画庁の経済研究所長などを歴任。著書に「日本経済の構造変動」ほか。
近未来予測―日本の失業率は7%に迫る、アメリカ経済は2010年半ばに反転する。6人のエコノミストが迫る危機の深層と経済の展望。
目次 : 1 金融危機の発生(住宅バブルはなぜ起きたか?/ 経済理論はサブプライム問題をどう説明するか? ほか)/ 2 危機の拡大(住宅バブルはどのように崩壊したか?/ 日本のバブルと比較すると何がわかるか? ほか)/ 3 政策当局の対応(アメリカの金融対策は効果があるか?/ 大恐慌と何が同じで何が違うか? ほか)/ 4 日本経済への影響(日本の景気はどこまで悪化するか?/ 日本の金融機関への影響は本当に軽いか? ほか)/ 5 世界経済と日本経済はどうなるか(アメリカ経済はいつ反転するか?/ デカップリング論は幻だったのか? ほか)
読みました。
小峰先生を筆頭にする共著です。
ビッグスリー救済における、破綻なら失業者が250万~300万人になる、という雇用問題について、小峰先生は
P129
では、本当にそれほどの雇用が失われるのでしょうか。この点については、経済学で登場する「部分均衡と一般均衡」という考え方が役に立ちます。部分均衡というのは、他の部分は変化しないと仮定して、変化した部分だけを見る考え方で、経済学ではできるだけ避けるべきだとされています。これに対して、他の部分への間接的な変化も考慮して全体として影響を考えるのが一般均衡の考え方です。ビッグスリーが破綻すると250万~300万人の雇用が失われるというのは、典型的な部分均衡の考え方なのです。
なぜなら~
これ以降に重要なことが書いてあるのですが、大事なことを忘れがちな自分には、小峰先生の言葉は相変わらず勉強になります。
また市場主義についての批判にも、このように述べています。
P246
市場原理そのものについては、「市場万能論は間違いであったことが、今回の危機で証明された」、「市場万歳でいいのか、規制撤廃でいいのかという疑問が投げかけられている」、という指摘を目にします。しかし筆者は、「市場は万能だ」とか「すべての規制を撤廃すべきだ」という主張を聞いたことがありませんし、そのような主張をする人に会ったこともありません。
これもまた、議論するときに参考になります。
ネットで交わされる議論も、このようなお互いに極論的なものが多いような気がします。
他にも、「輸出主導型経済は間違いだったのか」や、日本を含むリーマンショック後のアジア諸国の急激な落ち込みの原因など、いろいろな疑問に答えてくれています。
現在、小峰先生の「日本経済の変動構造」という本を読んでいますが、これもまた同様に考え方として勉強になることが多く、先を読むのが楽しみな1冊となっております。
国債経済学オススメ本
【送料無料】日本経済・国際経済の常識と誤解 |
小峰 隆夫(こみね・たかお)
法政大学大学院政策創造研究科教授。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。著書に『日本経済の構造変動』、『超長期予測 老いるアジア』『女性が変える日本経済』、『最新日本経済入門(第3版)』、『データで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問』、『政権交代の経済学』、『人口負荷社会』ほか多数。
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
国際経済という分野は、「一般の人々の常識」と「エコノミストの常識」が大きく食い違っている。そこで本書では、日本経済の現状を踏まえながら、エコノミストの常識に照らして、一般に流布している常識を再点検する。本書は「日本経済論」でもあり「国際経済論」でもある。
【目次】(「BOOK」データベースより)
序章 国際経済をめぐる理解と誤解/第1章 円レートの変動メカニズム/第2章 円レートの変動が日本経済に及ぼす影響/第3章 内外価格差・高コスト構造問題をどう考えるか/第4章 日本経済の空洞化をどう考えるか/第5章 金融の空洞化と規制緩和/第6章 欧州の通貨問題から為替レートを考える/第7章 経常収支黒字はどんな意味を持っているのか/第8章 経常収支黒字はなぜ問題か
読みました。
激しくおすすめします!!
小峰隆夫氏の経済論は、こちらでも読めます。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20110214/218425/?rt=nocnt
日経ビジネスオンラインより
この本はやはり僕の好きな、経済における一般常識を覆すようなスタイルとなっております。
ただ、これまで読んできたそれらに比べて少し違うのは、こういう反論も成り立つとか、誤解や間違いについても見方を変えれば全てが間違いではない、自分としてはこういう風に考える、という内容で鵜呑みしやすい僕にとっては目から鱗でした。
印象に残ったのは、
P34の「円高と輸出価格との因果関係」
円高(購買力平価説)が先か、輸出企業の生産性向上が先かの答えがあり、企業の円高と合理化の無限循環の現実に対する意見です。
また貿易についての議論で意見が噛み合わない原因に、長期や短期などその見方によって違うということの認識が不足していることを気がつかされました。
P64の円高が「国内生産に及ぼす影響」では、所得要因と価格要因による影響の違いが解説されています。
単純に円高がプラス要因、マイナス要因とはならず、そのときの状況・・・
P72
以上のように、円高の影響は多岐にわたっており、しかも部門間、時間の経過、そのときの経済環境のよって現れ方が異なる。円高の経済状況を「プラスかマイナスか」「良いか悪いか」と単純に割り切ることはできないのである。
これ以外にも日本経済の空洞化の議論の疑問の解説(ミクロとマクロの違い)。
経常収支の誤解。
よくある資源がないから輸出が必要という誤解。
黒字の誤解、黒字はどこへいったのかが詳細に解説され勉強になりました。
更に、TPP反対論の方に読んでもらいたいのが(賛成論の反論に役立つ?)、失業の輸出論が成立するためのハードル。
政治的な配慮の問題点・・・などなど。
大変勉強になりました。
思わず他にも小峰隆夫氏の本4冊買いました!!
ふと本棚を見ると、日本経済入門が小峰隆夫氏のものでした。計5冊。
まだ読んでない・・・。