経済は人間のためにある | ラヴログ

経済は人間のためにある

【送料無料】日本経済の構造変動

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価格:2,100円(税込、送料別)


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
「経済は人間のためにあるのであり、経済のために人間がいるのではない」-このごく当たり前の事が忘れられてはいないか。本書は、「人々の福祉・生活水準の向上」という本来の目標のためには「持続的な経済成長」が必要であり、その「成長」のために、たゆまぬ「制度・慣行」の変革が求められるという立場から、昨今の「構造改革」を含むここ十数年の日本経済の大きな構造変動を分析し、将来への提言を示す。

【目次】(「BOOK」データベースより)
序章 ドミノ倒し的に進む構造変動-日本型システムの行方を考える基本視点/第1章 日本型雇用はどう変わるのか/第2章 多面的に進行する企業経営改革の行方/第3章 産業構造の変化-これからのリーディング産業は何か/第4章 脱バブル後の日本型金融システム/第5章 構造変動の最終ランナー-ようやく本格化する公的部門の改革/第6章 中央依存から自立へ-変化の波にさらされる地域開発/第7章 少子・高齢化と日本の経済社会の構造変動-少子化対策の基本もまた構造改革/終章 日本型経済社会はどこに行くのか-どう変わっていくのか、どのように変えるべきか

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
小峰隆夫(コミネタカオ)
1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、経済企画庁入庁。93年調査局内国調査第一課長(93、94年『経済白書』執筆)、経済研究所長、物価局長、調査局長、国土交通省国土計画局長を経て2002年退官。2003年より法政大学社会学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)



読みました。
この本も激しくオススメです。

「経済は人間のためにある。」という、大切だけど当たり前すぎて、前提として忘れられていることがあると感じる。
成長のためにそれを主張しているわけじゃないのです。そんなことを気付かせてくれます。


TPPで不安を強く訴えることを目にしましたが、誰でも先の見えないことには不安になるものでしょう。
日本はこれまでも石油危機、円高、バブル崩壊、リーマンショック、最近では災害による経済的なショックにたびたびさらされています。
しかしながら、それらを乗り越えていくことで構造改革や自己革新など発展してきましたし、今後もしていくでしょう。

構造改革は景気対策ではなく、長期的に「進む」ものだそうです。
またよくある批判に、市場主義重視が格差をもたらすということについて、小峰先生はこのように述べられます。
P27

確かに、市場メカニズムが貫かれれば、格差は拡大する可能性がある。しかし、だから構造改革を行わない(または手加減をする)というのは、いわば、構造改革を弱者対策に使っていることになる(改革を行わないという政策が弱者政策となるから)。
 政策割り当ての観点からは、我々は「時代の流れにあった制度・慣行を作る」という目標と「社会的に恵まれない人々に手を差し伸べる」という二つの政策目標を持っているのだから、政策手段も二つなければならないことになる。すなわち、時代が必要とする構造改革を行うことによって経済を効率化し、その結果許容しがたい格差が発生した場合には、そのための政策を別途準備すべきである。



これについて、他にも「モノ作り重要論の誤り」として、生産性が高いからといって製造業が価値があるとはいえない。経済が人間のためにあるのだから、人々がサービスを欲しているならば成長率が低くともそれを提供するのが経済の務めと主張します。
これにはなるほどと感心させられました。

また輸出産業もしかり、生産誘発効果の大小(波及効果)もだそうです。
輸入のために輸出があるのではなく、どちらも経済取引なので相互に必要なものを取引しているだけであり、差がない。
波及効果の大小も、要は同じ100万円の需要があれば、その分だけの付加価値が生じることになるから、それは裾野の大小には関係がない。

ではなぜ観光業などが国際競争力がないかといえば、そこにこそ非製造業の低生産性の弊害があるのです。
だから構造改革や生産性の向上が必要となるのです。それを通じて国民全体の利益向上になるのです。これこそが経済は人間のためにあるということなのでしょう。


以下の引用から、TPPでも反対派と推進派の議論はこのような視点から対立すると思われます。
P163

 理念の対立ではなく、経済的利害の対立であると考えた方が理解しやすい。要するに、規制改革を進めようとする人は、構造改革の理念に賛成しているからそれを推進しているのではなく、規制改革によって大きなメリットがあるから推進しようとしているのであり、反対する人は、表面的には「弱者の保護」、「健康や安全性」などの理念的な理由を挙げたとしても、実質的には既得権益が失われることを恐れて反対しているのである。


構造改革をTPPに置き換えただけで本質は変わらないと思います。
ただネットなどでみかける反対派の方々は、それを扇動する主張によって影響を受けているだけで、純粋に理念で反対しているとは感じます。

人口減少についても、それが成長を妨げるから女性や高齢者の活用という発想はおかしいと主張します。働きたくない人まで駆り出すことも経済のために人があるという発想になっている。
人口減少で労働人口が不足するなら、失業率はゼロなはずです。
そうではないのは、雇用構造にミスマッチがあるからです。柔軟な労働市場と、教育システムの整備、やり直しのできる社会など、まだまだやることはたくさんあります。