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おすすめの経済入門書

経済データの読み方第2版

経済データの読み方第2版
価格:1,575円(税込、送料別)


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
統計そのものの内容、つくり方などに関する解説は必要最小限にとどめ、その統計によってどんな経済の動きがわかるかということを、最近の経済の動きに即して明らかにした。指標の動きの背景にある経済のメカニズムをできるだけ明らかにした。長期的、構造的な変化を示す指標についても解説。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 経済変動を読むためのデータ(経済指標の整理/GNP統計/個人消費/住宅建設 ほか)/第2部 長期的変化を読むためのデータ(人口/産業構造/就業構造・労働力供給/貯蓄率 ほか)

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
小峰隆夫(コミネタカオ)
1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、経済企画庁入庁。93年調査局内国調査第一課長(93、94年『経済白書』執筆)、経済研究所長、物価局長、調査局長、国土交通省国土計画局長を経て2002年退官。2003年より法政大学社会学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


読みました。

経済の入門書に最適ではないでしょうか。
経済学批判、反グローバリズム、反TPPの人も、まずはこれを読んでみましょう。世間で思われている通説が経済学的には違うということが学べると思います。

例えば、「競争の作法」では、戦後最長の好景気に投資が無駄な消費、小豆御殿になったと主張しています。

P14

この需用の区分は、いわゆる「景気の自律的な変動」ということと密接に関連しています。過去の日本の景気変動を振り返り、不況から好況に移っていくパターンを眺めてみますと、最初は、公共投資、輸出などの外生的な需用によって経済活動が盛り上がる局面が見られます。


まさに戦後最長の好景気時にいわれた、外需による景気回復です。
しかし、この状態は・・・
P14

この時期は、景気は回復しはじめているのですが、まだ外から与えられた需用によって支えられている不安定な状態です。
 しばらくすると、稼働率が上昇し、企業収益が好転するにつれて民間設備投資が盛り上がりはじめ、さらに賃金が増えて消費活動が活発化します。内生的な需用が景気をリードしはじめるのです。この段階になって、経済は「自律的」に拡大することになるのです。


そう考えると、戦後最長~というのも、海外の所得要因による外生的なもので、まだ景気回復というには途中の段階だったといえるかもしれません。

また実質GDPの成長率は
2000/2.26
2001/0.36
2002/0.29
2003/1.69
2004/2.36
2005/1.30
2006/1.69
2007/2.19
プラスとはいえ、最高で2パーセント前半、1パーセントに満たないこともあるという低成長での推移でした。

あえて名目成長率での推移でみると
2000/0.98
2001/-0.84
2002/-1.26
2003/-0.05
2004/-0.97
2005/0.03
2006/0.55
2007/1.24
このように、好景気とはいえないような数値です。

この点についても、この本ではこうのように説明されています。
P17

第一に、名目の成長率がいわゆる「景気の実感」を示していることです。われわれの実際の経済活動は名目の世界で営まれています。給料をもらうのも、企業の収益も、名目の世界です。
中略
通常の実質成長率で考えられているより、実感としての経済活動の落ち込みが大きかったことを意味します。


これらを踏まえると、斉藤氏の「競争の作法」の指摘、戦後最長の好景気は無駄な消費、小豆御殿になったというのも少し違うということになります。


消費税についても参考になりそうです。

P22

ただ、92~93年度には可処分所得以上に消費が増えています。これはいわゆる「ラチェット(歯止め)効果」が作用したためと考えられます。つまり、われわれの消費はそれほど簡単に変えることはできません。そこで、所得の伸びが大きく鈍化すると、消費も鈍化するのですが、所得ほどは鈍化しないという「歯止め」がかかるのです。もちろん、「所得の伸びが鈍化したので消費が鈍化した」という基本的な関係には変化はありません。



これが消費税が景気に左右されにくい要因の一つです。
以前ビルトインスタビライザーと表現しましたが、ラチェットのほうが言い得てると思います。

また、消費を決めるのは所得です。需要が無いからということも指摘されます。
P24

消費が伸びないのは、「消費が飽和して売れるものがなくなったからだ」
中略
こうした議論は、消費が低迷しはじめると必ず出てくる議論ですが、この議論は、論理の道筋が逆転していると思われます。「売れるものがなくなったから消費が伸びない」のではなく、「消費が伸びないから、売れるものが出ないのだ」と考えるのが正解です。


さらに売れるものが出て、消費が増えるということは、前提として他の消費が変わらないということです。
ですが、マクロではその分他の消費が抑えられ、結果的には所得に見合ったものになります。
売れるものがないから、消費が伸びないということではないのです。

デフレで実質所得は増加するのだから、物価の下落は良いことである、ということも言われますが、物価とは所得でもあります。会社の売り上げの多くは、商品やサービスといったものによって占められています。それによって所得を得ているからです。
P68

輸入インフレ以外の要因で物価が下がるときには、だれかの所得下がっていることを忘れてはなりません。国民経済全体で考えますと、物価が下がると、名目所得も下がるので、実質所得がそのまま上昇するということにはならないのです。






リーマンショック後の日本の失業率が、2002年の失業率より下回った理由。

リーマンショック後の失業率は2001年のときを下回っています。
失業
ですが、よくみればリーマンショック時のほうが就業者数を減らしています。

2000年頃の雇用調整だけをあげる、失業率だけから失業者数がそれほど高まっていない、というのは恣意的ということになります。

他にも、世間の認識とは違う経済学的なものの見方や、まずはデータを使ってみよう、という内容になっています。
この一冊でざっくりと日本経済を学べます。

おすすめです。